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シナリオ詳細

銀閃の乙女とまつろわぬ者達
銀閃の乙女とまつろわぬ者達

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 蒸気が町中を覆い、霧がかったような水っぽさが大気を包む。
「……またか」
 石畳の大地を踏みつけ靴がぴしゃりと飛沫を上げた。
 銀の髪が水気を吸って少し重く、やや冷たい印象を受ける綺麗な顔にぴたりとくっついて、色っぽさを増していた。
「ユリアーナ自警団長、救援助かった」
「ラスゲブ自警団長か、すまない。救援と言っても、ろくに何もできなかっただろう」
「それは前回の襲撃でうちもそうだったから、お互い様だろう」
 銀髪の女性――『銀閃の乙女』ユリアーナ(p3n000082)は、翡翠色の瞳を宿すその双眸を、悲し気に細める。
「損害は?」
「幸い、あんたらが速かったから少ない。幾つかの店舗は火を放たれたみたいだが、各店舗の自己消火機能で何とかなるぐらいだった」
「それは良かった。しかし……今回も、か?」
「あぁ。あんたらが来る数分前だ。突如として引き上げて行きやがった」
「やはりか……」
 ユリアーナは機械の腕を組んで思考の中に身を落とす。
(こうも何度も来る前に逃げられるとなると、考えたくはなかったが、やはり、いるか……どこの誰だか検討を付けたいが……)
「ユリアーナ自警団長、どうかしたのか?」
「ん? ああ、すまない。こちらから何か出すか?」
「町長がどういうかはまだ分からんな」
「分かった。うちの町長からはいかなる支援もすると言われている。何でも相談してくれと伝えておいてくれ」
「了解した」
 ユリアーナはラスゲブが立ち去るのを待ってから踵を返す。
 ぴちゃりと、水が軍靴に再び跳ねた。


「君達に仕事を頼みたい」
 鉄帝にて依頼を受けた君達は、依頼人であるユリアーナと帝都にある支部にて会合していた。
「私は幻想との国境線付近にある町の一つで自警団の長を務めている、ユリアーナと言う」
 明らかに何かを警戒する依頼人は卓に地図を広げたうえで君達に依頼の要旨を語り始めた。
「ここがその町なんだが、ここから西に行くと古い砦がある。ずっと昔、幾度目かの我々鉄帝国による南征の際、拠点として建設されたらしい。数ヶ月前、不服住民がそこに居を構えた」
 町があるあたりに丸を付け、砦があるあたりに三角を付ける。
「最初、我々は何とか交渉で片を付けようとしたのだが、決裂した。そこで、近隣の町で連携して彼らに対して包囲網を敷くことにした」
 いくつかの場所に丸を付け、多少歪でも大きな円を形作る。
「そのようは事情から、彼らも我々と幾度かぶつかるようになった。先月、我々は各町の自警団による一斉侵攻を計画、実行し――負けた。裏をかかれ、包囲網に加わってくれている町の一つに攻撃を受け、そちらの救援に向かわざるを得なかった」
 三角にバツを付けて、ユリアーナが苦虫をすり潰したような表情を浮かべる。
「最初は、敵に搦め手を得意とする――鉄帝らしくない戦上手がいるのかと、思った」
 機腕を震わせ、羽ペンを握り砕いた。
「それ以降、不服住民は包囲網の諸都市に向けて略奪行為を繰り返すようになった。そして――他の町から援軍が到着するよりも前に、成果の有無を問わずに常に撤退するようにも」
 忌々しい、そういう気持ちが透けて見えるほどに怒気の籠められた声。
「最初の数回は、斥候の腕がいいのだと思ったが……流石に毎回過ぎる。恐らく――口に出すのも腹が立つが、どこかに不服住民と通じている者がいる」
「……つまり、俺達の依頼はその内通者を探す事か?」
「いいや。探さなくていい。今はまだ。これまで私達は自分達で片付けようとしてきた。自分達で攻撃し、包囲を形成し続けようとな。だが、君達は私達のどの自警団でもない。自警団が動くような挙動を見せることもなく、わざわざ情報を伝えてやる必要もない」
「なるほど、俺達の依頼は、砦への侵攻か」
「あぁ……とはいえ、陥落は難しいだろう。不服住民共は射撃兵が多かった。完璧な籠城戦となれば、城壁の上、高台から一方的に撃ち込まれる可能性は高い。なんとか、砦から引きずり出す必要があるだろう。砦こそ高台にあるが、幸いと麓には荒野が広がっている」
 そう言って目を閉じて、目尻を抑える。よく見ると、化粧で隠しているがやや深い隈が見え隠れする。
「君達が不服住民と戦えば、情報を知らない彼らは動揺し、きっと内通者と連絡を取ろうとする。それがだれか分かれば――私達も反撃に出れるだろう。歯痒いが、どうか、力を貸してほしい」
「そういえば、なぜ軍を動かさない?」
「今までは冬だったからな。軍隊を動かす兵糧は少なかった。何より、前線まで軍を動かしたくないのだろうし、やるほどのことではないと判断したんだろう」
 そこまで言って、ユリアーナは目を開いて、君達を見渡した。
 濃い疲労を押し殺すユリアーナは少しだけ口を閉ざしたままで。

GMコメント

そうか、ゴールデンウィークってこの土曜からか、
ってこれを書いているときに思い出しました。
こんばんは、春野紅葉です。

●オーダー
砦を拠点とする不服住民と戦い、勝利する。

なお、戦った不服住民の生死及び砦の完全攻略は成否条件に含みません。
あくまで、戦うことになった不服住民戦力の無力化を以って成否を判定します。


●戦場
不服住民が占領する砦の麓に広がる荒野です。見渡しは抜群です。
その一方で、奇襲を行なう場合には相応の準備が必要になります。

●敵戦力
・不服住民
規模は不明。
砦を占拠した全てが戦闘要員というわけではないと思われますが、
相当の人数がいると思われます。

皆さんの人数を考えるに迎撃してくるのは最大でも16人程度と思われます。

なお、砦は攻略するにはかなりの難易度になってしまいますが、偵察などをおこなうと、
今後いいことがあったりするかもしれません。ただし、無理だけはくれぐれも禁物です。

・フィリベルト
絶対に皆さんの元へ迎撃に出てくる、迎撃部隊の隊長と思われる人物。
ライフルを握る盗賊面の男です。皆さんと同格かやや格上と思われます。

毒性弾・貫 物超貫 威力中 【万能】【猛毒】【致死毒】
炸裂弾・中 物特レ単 威力大 至~中、至近であればあるほど威力が増加します。
斬裂弾・長 物長貫 威力中 【万能】【出血】【流血】

・不服住民兵
皆さんと同等から格下までまばら。

跳弾 物超単 【怒り】【泥沼】【装制レンジ4】
精密弾 物遠単 【乱れ】【崩れ】【装制レンジ4】
速射 物中単 【連】【麻痺】【装制レンジ2以上】

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 銀閃の乙女とまつろわぬ者達完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月17日 21時45分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
勇者の使命
咲花・百合子(p3p001385)
ラブリー・ドーベル
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈る暴走特急
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
守護天鬼
津久見・弥恵(p3p005208)
嫣然の舞姫
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)
衝羽根・朝姫(p3p006821)
美少女系陰陽師(男)

リプレイ


 陽がまだ上り切らぬ頃のこと。
 高台に築かれた砦を前に、イレギュラーズ達はせっせと準備を始めていた。
 依頼人から提供してもらった木材やら、スコップやらを、『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)の持つ馬車で運送し、砦からやや離れた所で塹壕を掘り始めていた。
(不服住民、ね。奴らも何かの大義を背負ってるんだろうが…今回は大衆の側に付いておこう
 ……というか、女子ばっかか!今回の依頼は!!)
 そんなことを思っていた『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)は、地面に向けて思いっきり霊樹の大剣を振り下ろし、塹壕の起点を無理やり作り上げる。
 たしかに、一見すると男女比=1:7である。実際の所はまあともかく。
 そんな、人数比を混乱させてる張本人こと『美少女系陰陽師(男)』衝羽根・朝姫(p3p006821)は、依頼人の様子を気にかけつつ、仕事を始めていた。
 ファミリアーたる鴉が、敵の砦に目掛けてまだ仄暗い空を疾走する。
「……でもまさか、塹壕を掘ったりする事になるとは。まるで軍人さんですわね」
 スコップ片手に、ほんの少しばかりの小休止を入れた『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は、ふぅと息を吐くと共に口に出した。
「占領統治の失敗、野放図な南下のツケでありますな」
(こういうことを言うと敢闘精神を疑われそうでありますが……)
 ――と、そんなことを考えつつ、『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)も片手にスコップを持って掘り進めている一人だ。
 そもそもが高台なのに加えて、やや高めに築かれた城壁の向こうを見るべく、フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)も鳥を飛ばしている。
 力仕事こそあまり手伝えそうにないと考える彼女は、『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)が丸太に布をかけて砲台っぽくするのを少し手伝っている。布をかけるぐらいなら力はいらない。
 朝姫とフィーネ。二人係で行なったファミリアーによる偵察は、砦の内側を見下ろしている。
 残念ながら、完全に人数を把握するまでにはいかないが、最低でも三桁は居そうな気配がする。
 二人の偵察により、敵の注意を惹けそうな場所を見つけた『銀月の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)は、雪之丞に視線を投げかける。
 フィーネは全員に自らの生命力を犠牲に加護をもたらす。
 その輝きをもたらされた雪之丞と弥恵は砦へ向かった走り出した。

 見張りが二人の姿を視認するよりも前に、二人は各々の行動を始めた。
 ちょうど、陽射しは昇り、陽光が砦を照らし始める。
 雪之丞は陽射しを感じながら、思いっきりソレを砦の中に向けて放り込んだ。
 数秒――轟、と、爆裂音が砦の内側から聞こえてきた。
 どよめき、城壁の上から敵兵の姿が複数見えた。
(射手ばかりとは、やり辛いものですね……しかし、逆に弾薬を補充する伝手がある、ということでもあるでしょうか?)
 姿を見せる複数の兵士が、一様に銃を携える姿を見つつ、気づかれる前にもう一発とばかりに轟々雷々を放り込む。
 一方、弥恵の方も負けてはいない。
 雪之丞の放つ爆音に気づいた兵士達が姿を現わし始めれば、その場でゆるりと氷上を滑るがごとく舞を見せる。
「月の舞姫これここに、花びら舞い散る拍子の調べ、戦う事も忘れて見ているというのならどうぞご自由になさってください。手を伸ばせば自由にできるかもしれませんのに…♪」
 大胆に肢体を振り乱すその様子に、複数の兵士達が気を取られ始めたころ、不意に砦の門がぱっくりと口を開いた。
「野郎ども、行くぞ!」
 そう声を張り上げるのは、堅気にはとてもじゃないが見えない顔に刀傷を残す虎髭の男――その男を中心に、ざっと8人ほどの兵士がこちらに向かって走ってくる。
 弥恵と雪之丞はある程度まで引き付けてから、仲間の居る方向へ向かって動き出した。
 砦から溢れるように出てきた敵を引き連れ帰ってきた雪之丞と弥恵の二人と入れかわるようにしてエッダは敵の方へと割り込んでいく。
 ただゆるりと佇んだだけの騎士は、気を操り始めた。
 そこに佇むだけで、中てられた兵士達が動きを留めた。
 百合子のしずしずと俯き気味に緩やかな歩みで敵陣の後ろ、虎髭の男――フィリベルトの後ろに回り込んだ。
「はっ、やるねえ」
 回り込まれたフィリベルトは落ち着いた様子でちらりと百合子の方を見たあと、イレギュラーズの陣地を睨めつけた。
 百合子はそのまま後背からフィリベルトへと近づき、頭突きを叩き込む。
 その瞬間、フィリベルトの脳内で美少女の概念が揺さぶられ、ほんの一瞬、動きが止まった。
 その様子を見ながら、アランは霊樹の大剣に魔力を注ぎ込む。燦然たる救済の輝きが、霊樹の加護深き大剣の神聖さを更に深める。
「俺からやろうってのかい?」
 体を硬直させながらも、それに気づいた敵が声を上げた。
「ハッーーもう遅せぇよ」
 悟ったフィリベルトにアランが剣を振り下ろせば、その救済の輝きが叩きつけられる。純粋な火力が輝きとなってフィリベルトを焼いた。
「主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え。毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に」
 聖句の一節と共に、フィリベルトへと至近したヴァレーリヤが打撃部を引っ張るようにしながら、思いっきりメイスを叩きつける。
 それと共に、衝撃波が生じ――強かにフィリベルトの肉体に新しい傷を刻む。
「ぐぅ……別嬪さんよ……あんた等どこのもんだ?」
 強かに打ち据えたメイスを逆にがっしりと抱え込まれながら、ヴァレーリヤはフィリベルトを見上げる。
「アンタは司祭さんだろうが、ほかの連中はまるで服装に統一感がねえ……自警団の連中じゃあねぇだろうこたぁ分かるが」
 どうやらこの男、面格好の割にある程度の視野があるらしい。
 至近距離で動きを止めあう二人の後ろ、フィリベルトの背後からエッダはその巨体を鷲づかみ、螺旋のごとくぐるりを回す。
「うお!?」
 螺旋の軌道がフィリベルトの抵抗力をわずかに下げる。
「拙らが誰か分からないのですか」
 凄まじい反応速度で動いた雪之丞がフィリベルトの懐に潜り込み、逆巻く波の如く美しい軌跡を描く。
 それに続くように、氷上を滑るような舞を見せる弥恵がその肢体を魅せ、強烈な蹴りを叩き込む。
「っつぁ――お嬢さん達、すまねえなぁ……女子供に手を出すのは俺の主義に反するが――戦場じゃあしゃあねぇ。
 あんた等も手加減なんて腑抜けたことを言われたかないだろうしよ」
 そんな言葉の直後、フィリベルトは手に持つライフルに凄まじい速度で装填しーー目の前にいたエッダの腹部に突きつけ、引き金を引いた。
 鋭い銃声と共に、無数に炸裂した弾丸が、エッダの生身の部分を切り裂いて抉る。
「テメエら!! ガンガンぶち込め! 俺のことは気にするな!! 一人ずつ、確実にだ!!」
 フィリベルトが叫ぶ。その直後ーーイレギュラーズを更に取り囲むようにして布陣した他の敵兵達が、一斉に弾丸をぶちまけた。
 前線にいるイレギュラーズを狙い済ますような砲火は、一部が彼女たちを打ち据える。
 体勢を崩す者、注意をほんの一瞬そらされる者もありつつ、それに気づいたフィーネによる聖なる光が癒しを施し、朝姫の高等医療魔術が傷を治し始めた。
 フィリベルトへと至近したアランの憎悪の牙が、フィリベルトの肉体を猛烈な威力を伴って切り刻む。
「抵抗しなきゃ殺しやしないから安心しやがれ。ローレットはそこまで残酷じゃねぇからよ」
「ローレット……なるほど、魔種なる者の専門家だとかいう冒険者の集団か」
 攻撃を受けた男の目には未だ爛々と気迫に満ちていた。


 戦闘が始まってからやや時間が経っている。
 フィリベルトはまだ倒れていない。流石に、多くの傷を受けてはいる。
 しかし、生命力は衰えをみせてなかった。それが彼を救わんとする敵兵の増加につながってもいた。
 わらわらと出てきた兵士たちが、イレギュラーズの方へ向かってきながら砲撃を放つのだ。
 前線は後退しながらも、それでも徐々にイレギュラーズの方に回りつつあった。
 その理由のひとつはヴァレーリヤだ。
「主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
 メイスより吹き上がった紅蓮の炎。濁流のごとき炎の奔流が敵陣を焼き払うことで倍の敵を恐れさせるに足る状況操作を生み。
 ずば抜けた反応で走り抜けた雪之丞が至近すると同時に凍狼を迸る紫電と共になぎ払い、確実に斬り伏せる。
「おう、ここが吾のまあいぞ。逃げるでないわ」
 撤退を決め込もうとした敵兵に複数手の行動を可能とした百合子が凄艶な笑みと共に立ちふさがって殴りつける。
「非戦闘員の戦闘従事者というものは恐しいでありますゆえ。芽は摘まねば。丁寧に。丁寧に」
 距離のある敵兵へと走り抜けたエッダが、推進力もろともに放った拳が敵兵の鳩尾を殴りつけ、ふらりとそのまま悶絶させる。
 そして何より、フィーネと朝姫という回復役が二人もいることが大きかった。
 距離をとって戦うことを主目的としている一方、回復手段を有さぬ敵兵に対して、本陣から引きずり出しつつ、自分たちは常に支援を得られる場所に布陣するーーイレギュラーズの作戦は大いに益があった。
 もちろん、それに気づいた敵兵が回り込もうとたくらむが、雪之丞が両手に霊気を込め、硬質化させると、手を打ち鳴らして拍手すれば、鈴の音にも似た音が戦場に響き渡って大いに注意を惹く。
「ちっ――こりゃあ負け戦か……」
「こっちは手加減できねぇからよ、お前も必死に死なねぇように努力しろよ?」
「上等だっ!! やってみせろ、若造!!」
 アランの持つ全身全霊の魔力を霊樹の大剣にこめていく。それに対するようにして、フィリベルトが笑う。
「死ねえ――」
「っるラァ!!」
 大剣が振り下ろされ、銃口がアランの懐に伸びる。
 軍配は――アランに上がった。
 フィリベルトの盗賊面が、一瞬歪む。
 それは百合子と弥恵が強制的に齎した不吉な宿命。
 引き金を引く手が引きつったその一瞬、必殺の剣閃が、盗賊面の大男を豪快に切り下ろす。

 フィリベルトが大地に伏した後、それまで敵陣からわらわらと出てきていた兵士たちが途絶えた。
 完全に沈黙し、堅く門を閉ざすさまは、迎撃部隊を完全に見捨てたことを意味する。その様子に哀れみすら感じながら、ヴァレーリヤのメイスは再び炎を上げた。
 幾度か放たれたその砲撃が兵士たちを焼き払った。
「戦場に出た限りは死ぬのはしかたなかろ?」
 凄絶に笑いながら、できる限り手加減をした一撃で百合子が再び兵士を屠る。

 戦いが終結に向かう中、フィーネと朝姫はファミリアーの視覚共有にある者を見た。
 それは城砦を抜けて南北へ向かって走る早馬の姿。
「……あれが内通者の……?」
「たぶんそうだよね」
 フィーネと朝姫はお互いに頷きあう。
 情報源や交渉の材料になりそうだと考え、ヴァレーリヤは倒れた兵士達とフィリベルトを持ってきたロープで縛り上げていく。


「殺せ」
「そうだな……反乱指導者の一人として首を断つのも手だが……そうしないほうがいいかもしれないな」
 捕虜となった計17人の身柄を依頼人の下へ届けると、開口一番にフィリベルトはそう言って、それを静かにユリアーナが返す。
「拷問でもする気か! 俺は何もしゃべらんぞ!」
「あぁ、喋ってくれるとは思ってない」
 何やら思いついた様子のユリアーナは彼をそのまま屯所に送るよう部下に命じて、君たちの方を向いた。
「助かったよイレギュラーズ。ついでに、君たちが戦いで築いた仮陣地は、そのまま使わせてもらうかもしれない」
 そういう彼女の表情は依頼を受けたときより些か人間らしい。どうやら、イレギュラーズが戦っている間は、ゆっくりと休息を取らされたようだ。
「特に、シュネーブラウ殿と衝羽根殿。お二人が放ったファミリアーが捕捉した情報はこちらにとって大変役に立つ。まさか二匹もいたとは思わなかった。
 全く持って想定外だが……分かった以上はやりようもあるというもの」
 静かに告げたユリアーナが微笑む。
「貴女の頼みならこの衝羽根朝姫、身命を賭して働きましょう……なんてね♪」
「ふふっ、そうか、ありがとう」
 朝姫の冗談めかした言葉にそう笑って、手を取って頷く。
「えぇ、苦労なされているようですし、無理だけはなさらぬよう」
「あぁ、大丈夫だ。まぁ、まだ何とかなるだろうさ」
 フィーネが心配そうに言えば、静かに目を細めて、その後少しばかり目を閉じ――やがて気迫の満ちた瞳でフィーネに答えた。
「彼らはどうするのかしら?」
「うん? 取りあえずはどうにもしない。少なくとも、鼠共にとっては返されず討たれずの方が困るだろうからな」
 ヴァレーリヤの問いに、ユリアーナは笑ってそう答えた。
 捕虜となった誰かが逃がされず、討たれなかった。そういう時、特にその人物のことをよく知らぬ者であるほど、情報を喋られたのではないかと焦ってしまう。
 それは秘密を抱えるものであるほど、ミスにつながる。
「そう時をかけることなく、君たちに仕事を頼むことになるだろう。よろしく頼むよ」
 次の一手をなんとなく推察したように、ユリアーナが笑っていた。
 
 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

そんなわけで、お見事でした。

敵将の捕縛と陣地の作成、内通者の情報は、今後に役立つことと思われます。

お疲れ様です。

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