シナリオ詳細
分かつ少女に安らぎを
オープニング
●骸骨を操る少女達
鉄帝の端にある廃村。
そこで、白骨化した死体が動き出す事件が散発していた。
その数は廃村それぞれの墓地を埋め尽くす程度。
骨を使って人型となった3m程度あるスケルトンゴーレムの存在も確認されている。
これだけの状況ではあるが、事はさほど荒立っている状況にはない。
事件が起こっているのは廃村ばかりということもあり、生きている人間に対する被害はほとんどない。
だが、接近すれば、そのスケルトンは害を及ぼしてくる。
また、徐々に勢力を広げていることもあり、鉄帝としては見過ごすことが出来ぬ状況にあった。
この事件の解決には、鉄帝の手練れである両手剣使いアニバルの一隊と、格闘家リカルダの一隊が当たっていた。
それでも、多数の廃村で多発する事件に対処できず、その首謀者を叩く為に、できるだけ多くの手数がほしいとローレットにも声がかかる。
討伐依頼を重ね、格闘家達が重傷を負う中、ローレットの一隊がフードを来た少女を発見する。
その少女がスケルトンを作り出していたのは間違いない。
依頼を重ねながら、一行はこの少女の素性を調査していたのだが……。
その少女は、2人いた。
いや、正確には1人だった、が正しい。
生身の肉体と骨を補い、2つに分かれた肉体。
少女は戦いの最中で『完全な肉体』と言葉を発したらしいが、死霊術と錬金術を使い、スケルトンとスケルトンゴーレムを操る少女達。
その目的は分からないが、彼女達を脅威となる存在。
態勢を整え、鉄騎のチーム達は改めてローレットへと依頼する。
●今度こそ、少女の討伐を
「概要は以上ですね」
ローレットにて、張り出された依頼に興味を示すイレギュラーズ達へと、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が説明を行う。
現地では、すでに依頼主である両手剣使い達、格闘家達がローレットの到着を待っている。
彼らは同時に、少女達がスケルトンを生み出し続けているのを見張っている状況だ。
今のところ大きな動きはないが、何かあれば彼らが報告をくれる手筈となっている。
「少女達の名前は、マドレーヌ……人間であった頃の名ですね」
幼くして、錬金術に優れたこの少女は死霊術にも長けていたことが調査で分かっている。
どうやら、その力を脅威と判断した周囲の物が殺害を試みたようだが……、狂気によってマドレーヌは先に歪な形で魔種となり果ててしまった。
体の半分が骨となり、一切の錬金術を失ってしまったのだ。
それにひどく慟哭した彼女は、その身に残された死霊術を使い、もう1人の自分を……錬金術師の自身を作り出した。
「この少女の目的は、一つの姿に……元の自身を取り戻すことのようです」
その為に、自らに残った死霊術と、自らが蘇らせた錬金術師としての自分の力で、なんとかして生前の自分を取り戻そうとしている。
……というのが、鉄騎のチーム達が調べた調査結果だ。
例え、どんな理由があろうが、世の理に逆らい、人々に危害を加える可能性のある存在を放置するわけにもない。
「鉄帝に到着して、依頼主と合流の上で、目的の廃村に向かってください。あとは、この少女達を倒すのみです」
様々な思惑はあるだろうが、依頼は依頼。
この少女達を倒し、鉄帝の脅威を取り去ってほしいとアクアベルは最後にイレギュラーズ達へと願うのだった。
- 分かつ少女に安らぎを完了
- GM名なちゅい
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2019年04月25日 22時35分
- 参加人数10/10人
- 相談5日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●2つに分かれた少女を想う
鉄帝の端の廃村を目指し、ローレット勢イレギュラーズ10名、そして、鉄帝の手練れの戦士、格闘家合わせ12名。
総勢22名という一団で、一連の骸骨事件を引き起こす少女の討伐へと当たる。
「……以上だ」
道中、両手剣使いのリーダー、アニバルが改めて彼らが調べた敵情報について、イレギュラーズ達へと説明する。
「なるほど、彼女ら……彼女はそういう来歴ですか」
全身、白い装束を纏う『黒フードの少女の正体を暴きし者』久住・舞花(p3p005056)は、その話に納得する。
同時に現れ、いくつかの廃村で死体をスケルトンとして蘇らせていた少女マドレーヌ。
元は1つでありながらも、2つに分かれてしまった少女はその片割れが魔種となり果てているという。
「魔種が相手か……」
白い髪に2対の黒翼を背に生やす『穢翼の回復術師』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)が小さく呟くと、彼女の首飾りから別の声が聞こえてくる。
『冷静に、油断するなよ?』
「うん、分かってるよ。しっかり倒さないとね」
自らを操る神と語りつつ、ティアは敵の打倒に意欲を見せる。
ただ、この話を聞いて、少女に同情を覚えるメンバーも少なくない。
「魔術師の成れ果てた姿だったのか」
義肢となった左腕を持つ隻眼の少年『小さき盾』ユー・アレクシオ(p3p006118)は、高い能力を疎まれて殺されかけた少女の境遇もあり、憐れみを覚えていた。
「かわいそう、助けてあげたい。それがボクの正直な気持ちだよ」
愛と戦士の魔法少女『魔法騎士』セララ(p3p000273)も本心を吐露する。誰だって、生きていたいと思うのは当然なのだ。
「聞かなきゃよかったかね。せっかく思いっきりぶっ倒そうと思ってたのにさ」
一度、敗北を喫してしまっているリカルダ含む格闘家勢も、これにはやや心情的に戦いづらさを感じていた様子だ。
「だけど……、魔種は世界を滅ぼすもの。それに、彼女達はいずれ人々を襲うかもしれない」
それでも、セララは力強く告げる。
――だから、倒さなきゃいけない。
「悲しくて悔しいけれど、ボクにできるのは彼女達を永遠に眠らせることだけ」
とはいえ、セララも完全に迷いを振り払っているわけではない。
イレギュラーズ達はこんなにも優しく、そして、理不尽な世界の理に抗えぬほどに無力だ。
現場の廃村が近づくと、薄紫色の長い髪を靡かせる『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は視界を気にして『紫苑の紋章』を使っい、明るい炎を灯して視界を確保する。
漆黒の牝馬ラムレイに跨り、ここまでやってきていたイーリン。
彼女は一度馬から降りて地図を広げ、戦場となるであろう場所を仲間と共に確認していた。
鉄帝出身の鉄騎種、大柄で恵まれた体格を持つ青年『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)は、携帯式の双眼鏡『閃緑の目』で廃村の様子を……これから戦場となる地形、そして、戦うべき敵を確認する。
「いますね。墓場はスケルトンだらけです」
頭を覆う兜に遮られて声をくぐもらせるオリーブは、まだ敵もこちらの接近には気づいていないことを合わせて指摘し、仲間達へと気づいた点を逐一報告していく。
準備が整ったところで、メンバー達は固まって墓場へと接近する。
音の反響でユーは敵の位置を確認しつつ、敵からの奇襲に警戒していた。
「だいたい配置は掴んだ。ここはお先に行かせてもらうな」
これだけの大所帯だ。さすがに少女も接近は察しているはずだが、敵は逃げも隠れもしていない。
墓場には多数のスケルトンが屯しており、中には大きな人型のゴーレムも混じっている。
さらに、その後ろにいた2人の少女がこちらを見つめていた。
すでに、正体は知られていると察しているのか、彼女達は黒いフードは取り払っている。
「自分が2人って、なんだか不思議な現象だなぁ」
天義出身の幻想種である『本当に守りたいものを説く少女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はこれから戦うべき相手を一通り眺める。
それぞれ、体のあちらこちらが白骨化してしまったような見た目をした少女達。
肉が残った部分を合わせれば、丁度一人の少女になる容姿だ。
「どうして、そういう事になっているのかは気になっちゃうよね」
その状態を維持する為に何か触媒があったりするのではないかと、スティアは推察していたようだ。
「また……来た……」
「鉄騎の戦士……、ローレット……」
流暢に喋ることができないのは、半身を失っている故か。
その姿がまた、悲壮感を抱かせる。
「亡き者にされそうになって狂気に堕ちたのか、その狂気故に脅威と断じられたのか……」
どちらが先だったのかは舞花には判らないし、今更追及しても仕方がないことは確かだ。
「魔種になった経緯は確かに辛く、悲しい物だと思う」
フード付きのマントを纏う三つ編みにした赤茶の髪の少年、『天翔る彗星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)も己の心情を漏らす。
力そのものに善悪はないはず。
少女が真っ当に成長できていたなら、どんな風に成長していただろうか。ウィリアムはそう思わずにはいられない。
「でも、この女の子は魔種になって、歪になり果てた。それが現実」
――なら俺は、俺達は戦うしかないんだ。
ウィリアムは星の光を湛えた杖『流星の奏杖』を手にし、術式の展開を始める。
少女が望んで魔種となったのかはわからないが、舞花もまた少女達を敵視して。
「もはや、討ち滅ぼす以外の選択肢は存在し得ないと言う事です」
「邪魔は……させない……」
少女達もそれぞれ、血肉ある右手、骨の右手を上げると、手前のスケルトンやゴーレムが動き出す。
雑兵となるスケルトンは、手練れの鉄騎の戦士達が抑える手はずとなっていた。
「どうか、今回は勝利の報告を」
「……頼みます」
両手剣使いや格闘家達の想いをそれぞれのリーダー、アニバルやリカルダが受け取り、猟兵達と共同戦線を張ってくれる。
直接、少女達……便宜上魔種となり果てた死霊術師をマドレ、血肉を得て別個体となった錬金術師をレーヌと呼称するが、それぞれに抑え役を担うメンバーが近づこうとする。
まず、錬金術師レーヌは、セララがメインで抑えに当たる。
レーヌはゴーレムを新たに生み出す為、イーリンが注視していて。
「同情するわ。たかが恐怖で殺されたんだから」
その上で、半身を取り戻すこともできず――イーリンは辛いと表現したが、その心境はこの場の誰にも同じように推し量ることはできないだろう。
「わたくしは、ヒーラーですわね」
きらめく金髪に、普段は尊大な態度の『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)だが、今回はそのタントも少しばかり感傷的になっている。
思うことがあるのか、彼女は敢えて少女2人を仮称であるマドレ、レーヌとは呼ばず、マドレーヌと生前の名前で呼ぶことにしていた。
相手は周囲の人々の恐れに殺され、その末に体を分かたれた少女……ただ元に戻りたいだけの少女。
「そんな貴女を前に、いたずらに名まで分けて呼ぶなど……とても出来ませんわ」
相手に気遣いを見せるタントはタンク役となるユーとツーマンセルとなり、魔種となった死霊術師側のマドレーヌ……仮称マドレの抑えに当たる。
仲間達がレーヌや取り巻きを倒し終わるまでとあって、状況によっては最も負担が大きくなりそうだ。
それ以外の面々は、レーヌと彼女が生み出すスケルトンゴーレムを集中して叩くことになる。
衝撃に比較的弱いそのゴーレムは一番対応しやすい相手だが、錬金術師のレーヌが生み出すことができるとなれば、話は変わる。
「この少女にも、辛い過去はあった様ですが……」
オリーブは相手にどんな過去があれ、魔種となった挙句にこの鉄帝国で碌でもない事を企むのであれば、同情の余地は無いと断言する。
「この世に、彼女の居場所はありません。死体遊びはあの世でやるのが良いでしょう」
それも、鉄帝の脅威となる相手だからこそ。
オリーブは自分と立場を同じくする戦士達が苦戦する相手ということもあり、目の前の難敵と対する。
「前回は逃しちまったが……、今回は逃さない」
赤い天使の翼を背に生やす小柄な女性、『茜色の恐怖』天之空・ミーナ(p3p005003)は両手に短刀を手にしつつ、少女達へと告げる。
「お仕置きの時間だぜ、お嬢さんよ」
「眠らせてあげる……神がそれを望まれる」
「……させない」
ラムレイに騎乗したイーリンも墓場を駆け始めると、レーヌもまた自身のゴーレムを使い、応戦を始める。
仲間達が抑えてくれることもあって、マドレへと近づくユー、タント。
「……皆、私を……拒絶する……」
その瞳は、全てを嫌悪しているようにも見える。魔種となり果てたから一層、だ。
「生前は良い奴だったのかもしれないが、今は魔種だ」
殺意の塊をこんなところで、野放しにはできない。
依頼を成功させて皆で無事に帰る為、ユーは飛びかかってくるマドレーヌの片割れの前で身構える。
「ええ、倒さねばならぬ相手。──参りますわ!」
タントは御天道の煌めきが救いとならんことを祈りながら、仲間達が大きく散開する前にと指を鳴らす。
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
自らの華々しくも優雅な光の煌めきにより、タントは仲間達の士気を高めていくのである。
●邪魔な取り巻きの排除を
イレギュラーズ達と鉄騎の戦士達はそれぞれ、自身の役割を果たすべく動き出す。
まず、無数に現れ自己再生能力を持つスケルトンは面倒な存在。
これらを両手剣使いと格闘家達が抑えてくれるだけでも、非常にありがたい。
それだけに、イレギュラーズ達は他、3体いるスケルトンゴーレムとそれを生み出す錬金術師レーヌ、そして、この場の全ての統括となる死霊術師マドレの討伐を目指す。
「最初の目標は、スケルトンゴーレムだ」
オリーブは仲間と改めて確認をとる。
無制限にゴーレムが生み出されてこちらが疲弊する前に、レーヌと合わせて集中して叩きたい。
ウィリアムは早速、『流星の奏杖』を突き出し、その先端よりゴーレムを狙って連なる雷撃を発射する。
それらはまるで、うねり、のたうち回る蛇のようにこの場のゴーレム達を狙い撃ち、貫通していく。
ゴーレム達は近づいてくる猟兵達へと骨や怨念を撒き散らし、猟兵達を殴りつけてくるのだった。
魔種マドレに向かうユーとタント。
もっとも負担が大きい部分を担う彼女達は、気合を入れて戦術を練ってきていた。
「後ろは任せたぞ、タント様」
「ええユー様、お任せを! 不倒の盾、お支えしますわ!」
前に立つユーは後方のタントの言葉を背に、手乗りサイズの球型マシンを周囲へと大量に召喚していく。
それらの球体は相手の熱を奪うだけでなく、怒りを煽って注意を引く効力もあって。
「バカにする……許さ、ない……」
マドレは僅かに顔を顰め、飛びかかってきた。
手にするナイフは文字通り人外の速さで振るわれ、ユーの体を傷つけてくる。
そのユーは予め電子精霊【ルーメ】をタントに追随させ、自らの体力状態やマドレの攻撃情報を共有する。
タントはマドレ……彼女の中では呼称少女Aだが、その少女Aとユーからある程度距離を取っていく。
防御態勢を取るタントは相手の動きを見つつユーの回復を優先し、手の届く範囲で他メンバーの状態も逐一確認していた。
レーヌの抑えに当たるのは、セララだ。
他メンバーがうまくスケルトンやゴーレムなどを牽制してくれたこともあり、うまく接敵できたセララ。
彼女はゴーレムを巻き込むように両手の聖剣から、必殺剣『セララストラッシュ』を放つ。
ゴーレムもろともその斬撃を浴びたレーヌはその小さな体躯で身構え、ナイフを煌めかせる。
「……ボクに君は救えない。だからせめて、キミの事を記憶に刻み込む!」
「させ、ない……!」
レーヌはセララを睨みつけ、一直線に飛びかかってくる。
「行くよ、レーヌ! イレギュラーズと互角に渡り合う、凄腕の錬金術師!」
セララは盛大に名乗りを上げ、彼女と刃を交わす。
その間、やや前寄りに位置取るスティアはレーヌを注視しつつ、臨機応変に立ち回る。
すでに、レーヌの刃を浴びていたセララの為に、スティアはハイ・ヒールを使っていく。
後は根競べといったところだが、スティアは仲間の支援だけでなく、錬金術師であるレーヌが何か触媒となる物を持っていないかとチェックする。
頭以外は外套を纏り、その姿を隠す少女達だ。触媒らしき物をすぐには確認できない。
また、レーヌの注意が逸れ、ゴーレムを生み出すスタンスに戻ることは避けたい。
イレギュラーズの布陣中央に位置するティアは、ゴーレムや邪魔なスケルトン、そして、レーヌを巻き込むように、心の底に渦巻く悪意を殺傷の霧に変えて敵陣へと展開していた。
例えアンデッドであろうとも、その霧の中では毒に侵され、呪いに蝕まれることとなる。
だが、仲間達が一気に攻め込み、抑えに当たりだすと範囲攻撃は味方に及ぶ危険が出てしまう。
「皆さん、範囲攻撃行きます」
ティアはその都度声をかけ、仲間達に注意を促していたようだ。
その間、残るメンバーはゴーレムの数減らしへと全力で当たる。
「何度でも言うが、この程度で囲んだって思うんじゃねぇ!」
ミーナはゴーレムに挟まれてもまるで臆することなく、両手の短刀『胡蝶の夢』を旋回させていき、ゴーレムの体を傷つけていく。
ゴーレムは骨を集めただけとあって、かなりもろい。
相手が繰り出すパンチの反動で自らにダメージがいくほどの強度でしかないが、それ以上に耐久力が高くそう簡単には倒れてはくれない。
そこに、ラムレイに騎乗したイーリンが駆けてくる。
「上手くいくといいのだけれど」
彼女は割り込んでくる邪魔なスケルトンに対し、紫苑の魔眼で注意を引きつつその撃破に当たっていた。
そんな中、舞花は戦況を確認し、レーヌの方を見やる。
(レーヌの方がスケルトンゴーレムを新しく生成できるようですが……)
すでに、レーヌはセララが接近戦を仕掛けて抑えてくれている。
今の状態であれば、時間のかかる手段……例えば、ゴーレムの生成などはそう使えないはずだ。
まずはスケルトンゴーレムを駆除すべく、舞花は率先して他の仲間と攻撃対象を重ね、ゴーレムを叩く。
『斬魔刀』を握る舞花は瞬間的に高速移動することで敵を翻弄しながらも、幻影の一撃でゴーレムの体へと亀裂を入れていく。
続けざまに、オリーブが仕掛ける。
残念ながら、後手に回ってしまったこともあり、仲間に合わせる形で攻撃する彼は、相手の体勢が崩れたタイミングで、慈悲ある一撃をと全長1.2mの大剣『クレイモア』を叩きつける。
ゴーレムの体に亀裂が入れば、ウィリアムが星の杖を差し向けて多重展開した中規模魔術を次々に撃ち込んでいく。
すると、ウィリアムの連撃に衝撃に耐えられず、ゴーレムはその身をボロボロと崩し、その場で骨の山となり果てたのだった。
アニバル、リカルダの2人もイレギュラーズ達の方針に沿って、ゴーレムを相手にしてくれている。
両手大剣を機械となった両腕で軽々と振るうアニバルは、すさまじい剣圧で敵を叩き潰そうと長く太い刀身を敵の頭上から叩きつけていく。
同時に、下からはリカルダが機械となった両脚で素早く蹴りかかる。
まるで獅子が猛るようなオーラを放ちながら、繰り出す両脚。
彼らは見事に1体のゴーレムを叩き潰していた。
ゴーレムを相手にするのは、初めてではないメンバーも多かった。
また、ゴーレムの能力は、少女やスケルトンとセットで輝く能力ともいえる。
単体だとゴーレムは大したことがないと踏んだメンバー達は、一気に攻め落とす。
相手の体勢が崩れたところで、ミーナは短刀の刃を浴びせかけると、ゴーレムは刃に沿って身を崩してしまったのだった。
●錬金術師、仮称レーヌ
魔種マドレを抑えるユー。
小手調べとばかりにナイフを振るってくるマドレは相手がユー1人とあって、一度後方に下がってからの飛びかかりで威力を高め、彼を張り倒そうとしていた。
だが、ユーも棺型の盾『機甲盾-竜花-』で受け止め、可能な限り衝撃を軽減していく。
「あいにく、ここから先は立入禁止なんでなっ!」
そう言いながらも、ユーは仲間から離れるようにマドレを誘導する。
ユーの体力などはルーメを介し、タントがしっかりと管理していた。
外側へと誘導するユーを追うタントは、全身に流れる血を柔らかな癒やしの光で塞ぎ、さらに、調和を賦活の力へと変換してユーの体力を取り戻す。
その間に、ゴーレムを討伐し終えた面々がレーヌへと集まる。
比較的ゴーレムをスムーズに撃破したこともあり、セララもさほど負担が大きくなる前に仲間が駆け付けて安堵した様子を見せていた。
「補充……」
ただ、レーヌも丁度我を取り戻し、その場で新たなゴーレムの生成を始めてしまう。
それを見たセララは勢いのままに正義の心を剣に宿し、両手の聖剣『ラグナロク』と『ライトブリンガー』を手に切りかかっていく。
だが、レーヌは強引にもゴーレムを増やそうと構えをとる。
「増やさせはしません」
それを見た舞花は身体能力のギアを瞬間的に引き上げ、目にもとまらぬ速さで踏み込み、レーヌ目掛けて斬魔刀を一閃させる。
「まずいね」
『これ以上ゴーレムを生み出されると、後手に回るぞ』
一方で、ティアはこの場は攻撃と判断。レーヌへと呪いを振りまき、その体へと強い負荷を与えようとしていく。
ウィリアムも、ユー、タントペアの傷を気掛けながらも、レーヌ目掛けて再び中規模魔術を連発させ、ゴーレム召喚を止めようとしていた。
アニバル、リカルダの鉄騎ペアも以前は敵対したとは思えぬコンビネーションを見せる。
リカルダが飛び込んで風を纏う拳で牽制を行うと、アニバルは渾身の力でレーヌの体を叩き潰そうとする。
「……まだ、だ」
例え、多少体を崩されかけてもレーヌは錬成を止めず、徐々に形作られていくゴーレム。
仲間達がレーヌへと畳みかける間、傷つくセララの回復をと、治癒魔術の行使を続けるスティアは小さな骨を煌めかせているのに気づいて。
「狙うなら、あの骨だよ」
それを聞いたセララは錬成を中断させようと、スティアが指摘した骨目掛け、両手の聖剣を構えて。
「大地を斬り、海を斬り、空を斬る……セララストラッシュ!」
2つの刃を交差させるように振るい、十字の剣閃がセーヌの体を切り裂いていく。
そこで、途中まで組み上がっていたゴーレムを崩してしまった。
「……よくも」
ゴーレム錬成を邪魔され、セララへと睨みを利かせるレーヌは一部錬成に切り替える。
地面から延びる骨の腕がセララを強く殴りかかり、さらに近場のイレギュラーズ達を纏めて拳を叩きつけていた。
そこで、再びイーリンがラムレイで戦場を駆け抜け、戦旗『紅い依代の剣・真秀』に魔力を限界にまで注ぎ込み、敵目掛けて振りぬく。
「タント、私のキラメキ具合はどうかしら?」
「ええ、ええ! ナイスきらめきですわ、イーリン様!」
余裕を見せてイーリンがウィンクすると、ユーを支えるタントは鼓舞もまた癒し手のお役目だと絶賛し、少女Aこと魔種マドレの抑えに当たる。
レーヌも徐々に体を崩しており、長くないことは一目瞭然。
オリーブは鉄帝の地で好き勝手する敵目掛け、意志抵抗力を破壊力に変換してクレイモアを叩きつけていく。
なおも、レーヌは一部錬成で地面から骨でできた足を一時的に作り出し、イレギュラーズを蹴り飛ばそうとする。
だが、その程度の傷はオリーブも織り込み済みで、すぐさま次の攻撃に移っていく。
同じく、攻勢に出るミーナは、相手が無理な体勢で錬成していたのを見逃さず。
「年貢の納め時だ。これで終わりにしてやるよ!」
ユー、タントがうまくマドレを抑えてくれていることも横目で見つつ、ミーナは全力で華麗にして優雅な立ち回りで2つの刃を振るい、レーヌの体を切り刻む。
まさに、それは、天国への七光。
「い、いや、だ……」
それに包まれ、レーヌは体を完全に崩してしまう。
少女の片割れの討伐を確認したイーリンは、マドレの逃走する可能性を思い立ち、仲間と共にそちらへと向かっていくのである。
●魔種マドレ
「はっ、やあっ!」
「どおりゃあああ!!」
依然として、墓場には無数のスケルトンが蠢いており、その対応に鉄騎の戦士達が追われている。
そんな中、残る強敵は、この一連の事件を生むきっかけとなった魔種マドレのみとなっていた。
「おまたせミーナ。まだダンスの相手は残ってるかしら」
「ああ、とびっきりの相手がお待ちかねだぜ、イーリン!」
イーリン、ミーナは敢えて、自分達に半身がいると言わんばかりに肩を並べ、見得を切る。
キリッ……。
それに、マドレは聞えよがしに歯ぎしりし、周囲へと怨嗟の呻きを響かせる。
戦線を持たせていたユーは疲労困憊のところ、怨霊達の声を耳にして僅かに顔を引きつらせた。
魔術で生み出す光の刃で敵から体力吸収し、タントが回復支援の手を切らさないにも関わらず、ユーは追い込まれてしまって。
「……想像以上の化け物だな、魔種って奴は」
それもあって、マドレの気を引くべく、セララは必殺剣を浴びせかけていく。
「私が相手になろう」
舞花もほぼ同時に、名乗りを上げる。
2人はしばし抑えに当たるものの、全力で防御態勢に当たっていたユーがなんとか回復役のタントと2人がかりで抑えていた相手だ。
「調子に、のるな……!」
マドレはそれらを軽やかに避けて挑発を逃れ、周囲に骨の腕を召喚して見せる。
セララ、舞花は再度マドレを挑発し、2度目で気を引くことはできた。
だが、そうなればマドレはナイフを振りかざし、彼女達を一気に追い詰めていく。
レーヌとの闘いで疲弊していたこともあってあっという間に体力を奪われ、セララ、舞花はパンドラに縋って踏みとどまることとなる。
その間、後ろに下がったユーと前線2人をタントが纏めて、恐怖を振り払う。
スティアも、ティアも、倒れかけたセララ、舞花が地に沈まぬよう全力で回復を行っていた。
相手を注視しようとしていたスティアだが、さすがに仲間のピンチとなればその余裕もなくなり、全力で回復に当たっていく。
ティアも攻撃の手を止め、柔らかな癒しの光を放出し続けていた。
鉄騎の2人もボロボロになっている。
全身をナイフで刻まれ、機械の手足でさらなる斬撃を食い止めていたが、回路が切断されかけているのか、満足に動かなくなってきていたようだ。
だが、あと一息。
マドレも今度ばかりは総力戦だからか、逃げる素振りを見せない。
それだけの準備を行っていたこと、そして。
「体、わたしの……」
失ってしまった半身への執着。
最悪、半身を再び蘇らせるにしても、この場でその術を使う必要がある。
だからこそ、マドレも逃げるわけにはいかないのだろう。
仲間達が注意を引いてくれている間、イーリンは敵の背後へと回り込む。
幻の戦旗を輝かせた彼女はマドレ目掛けて突撃して武器を振り払うと、紫の燐光が舞い散った。
イレギュラーズ達に、ほとんど気力は残されていない。
ミーナは残る力を振り絞り、華麗な暗殺技をレーヌと同様に浴びせかけ、七色の光で包み込む。
しかしながら、マドレは天国に行くことを拒絶して。
「一つに、なるの……」
気を引くメンバーから注意を逸らし、彼女は周囲へと怨嗟の声を響かせる。
呪いに蝕まれる感覚を感じながらも、オリーブはクレイモアを打ち込む。
その刃で叩ききることなかったのは、彼のせめてもの恩情だったのだろうか。
だが、マドレは抵抗を止めない。
人外となり果てた力で刃を振るい、死霊を操り、イレギュラーズ達を攻め立てる。
もはや、気力も枯れ果て、ウィリアムは回復も難しいと判断して素の状態で魔力を発していく。
「もう、眠っていいんだ」
「あ、う……」
さすがの魔種もウィリアムの連撃はここにきてかなり応えたらしく、ついに体を大きくぐらつかせる。
「私にできることは、これだけです」
そこで、飛び込む舞花が総力を挙げ、残像で翻弄しながら相手の体を切り刻み、刃を体深くまで埋め込んだ。
「……どうして、私だ、け」
命の灯が消えたマドレは物言わぬ躯となり、レーヌやゴーレムと同様にバラバラになる。
それと同時に、彼女の操っていたスケルトンの大群もまた、糸が切れたように全てが人型を保てなくなり、乾いた音を立てて崩れていったのだった。
●分かたれた少女に祈りを
ようやく、墓場は静まり返り、メンバー達は後処理を始める。
鉄帝を思うオリーブは散らばる骨や残骸を叩き砕き、踏み砕こうとする。
「徹底的に行い、後顧の憂いを断てれば良いのですが」
彼は火を放っての処分まで考えていたようだったが、同じ鉄騎の戦士達が、そのオリーブの行為を止めた。
「もう同じ事件は起きない。そこまでする必要はなかろう」
まして、この地域は元々同族である鉄騎種の民が暮らしていた場所だ。罪もない同族の遺体に鞭打つこともないだろう。
その鉄騎のチームも含め、スティアは治癒魔術を使って傷つく仲間達の回復に当たる。
被害状況を確認していたティアもまた、癒やしの光でイレギュラーズ達の手当てを行っていた。
そんな中、セララ、ミーナ、イーリンはマドレ、レーヌを同じ場所に埋め、2人の……いや、マドレーヌの墓を作っていく。
「魔種になっちゃったきっかけは気になるけど……こんな小さい子でもなるんだね」
せめて安らかに眠ってねとスティアも冥福を祈ると、同じく、仲間達の治癒を終えたティアも黙祷を始める。
「天国で幸せになることを祈ろう」
「来世では、幸多き生である事を」
セラも祈りを捧げ、ミーナも死神の名の下にそう願う。
「眠れ、今はいと安けく、あした窓に訪いくるまで」
――来世は良い半身と巡り合うように。
イーリンはそう祈るが、タントは戸惑いながらも、元は1人だった少女へとこう告げる。
「何が弔いで、何が救いとなるかわたくしにはわかりませんが、ゆっくりお休み下さいまし、マドレーヌ」
今度は、本来の自身として生まれ、生を謳歌できるだろうか。
イレギュラーズ達も鉄騎の戦士達もそれを願いつつ、廃村を後にしていくのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは倒れることなく、魔種の攻撃を凌ぎ切ったあなたへ。
一連の事件はこれで解決です。
解決に導いた皆様に感謝を。
本当にありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
廃村の骸骨討伐依頼の最終シナリオを想定しております。
解決できるかは皆さま次第ですが……。
検討を祈ります。
●敵
◎黒フードの少女達
10歳くらいの少女と思われます。
フードの中は、骨と肉体を突き合わせたような見た目となり果てており、並々ならぬ身体能力を持っています。
◯少女A・仮称マドレ、死霊術師。魔種。
血肉ある右手、骨の左手を持つ少女。
・骨の腕召喚(神中範・停滞)
広範囲に無数の骨の腕を地面から現し、敵を拘束します。
・怨嗟の呻き(神遠域・呪殺)
死霊の声を響かせ、相手に呪いを与えます。
・飛び掛かり(物中単)
・ナイフ捌き(物近列・流血)
◯少女B・仮称レーヌ、錬金術。魔種ではありません。
骨の右手、血肉ある左手を持つ少女。
・ゴーレム部位錬成(神中範)
一時的に腕や脚のみを錬成して敵に攻撃を仕掛けます。
・ゴーレム錬成(溜1)
スケルトンゴーレムが1体増えます。
・飛び掛かり(物中単)
・ナイフ捌き(物近列・流血)
〇スケルトンゴーレム×3体(初期)
死者の骨を組み上げて作られた全長3m程度のゴーレム。
遺骨を使って人型に組み上げられています。
近距離でパンチ(ブレイク・反動ダメージ)、
遠距離で骨乱舞、怨念(災厄)を振りまきます。
○スケルトン×無数
鉄騎の死者が蘇った存在です。
強い自己修復力を持つ上、群がってくる面倒な相手です。
基本的には、鉄騎のチーム達が相手にしてくれますが、
少女やゴーレムの戦闘に割り込んでくる可能性はあります。
近距離で喰らいつき(ドレイン)、
遠距離に向けて骨、呪い(呪い)を飛ばします。
●NPC
いずれも鉄騎種。
それぞれに同僚が6人ずついますが、
彼らは雑兵となるスケルトンの殲滅に当たってくれています。
〇アニバル
両手剣持ちリーダー
機械の右腕を持つ鉄騎種で屈強な肉体を持ち、
全ての技を両手大剣1本から繰り出す凄腕の戦士です。
・破砕断(物近単・防無)
・轟烈斬(物近列)
・大地鳴動波(神特レ・自身を中心に5m以内の範囲)
〇リカルダ
格闘家リーダー
両脚を機械とし、しなやかで引き締まった身体を持ち、
身軽な動きで相手を翻弄する女性です。
一連のスケルトン事件で重傷を負っており、
今回、自体の解決に強い意欲を見せています。
・烈風掌(神至単・ブレイク)
・猛蹴連撃(物近単・連)
・戦王咆哮破(神中貫)
拙作「迷惑な喧嘩は両成敗!」で登場する者と同一人物です。
読む必要はございません。
以前は仲が悪かった両者ですが、
その後は彼らなりに良い関係を築いているようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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