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シナリオ詳細

<Chaos Cherry Blossoms>UTUTU日和

完了

参加者 : 28 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●御衣黄
 春に混ざる怒鳴り声。
「一体、何処にいくんだい!」
 そこにはアイマスクを付けられた『ふらり、ふらりと』青馬 鶇(p3n000043)の姿。
「何処って……んー? そうね、強いて言うなら天国かしら」
 財産家のフィーネ・ルカーノ (p3n000079) がくすくすと笑う。
「天国? なんたってこんな……依頼人じゃなきゃ、一発以上殴ってるところだよ……」
 鶇はうんざりしたような声を出す。
「あら、それは痛そう。痛いのはあまり得意ではないの、だから、手加減してくれる?」
「手加減って……」
「ふふ、あたくし、貴女みたいな女性、好きよ」
「……」
 鶇は身の危険を感じ、黙り込む。体格差はあるものの、油断は出来ない。毒や媚薬の危険もある。そもそも、手を引かれ(拉致)、とある場所に連れて行かれているのだ。逆らってはいけない。
「はっ、嫌な女だよ。まったく……」
 綺麗な舌打ちをし、フィーネはその音にからからと笑う。
「あー、飽きないわ。ローレットも情報屋さん達も……全てが愛おしい! これからもあたくしを満たし続けて頂戴。退屈は嫌、あたくしは刺激の為に生きているの。ふふ、知っているわよね?」
「……知りたくもないね」
「ふふ、もっと会話しましょう? あたくしは予想のつかないやり取りが大好きなのよ……」
 フィーネが立ち止まる。
「ん? 着いたのかい?」
「ええ、天国にね」
 背伸びをし、アイマスクを外す。
「さぁ、どう? 素晴らしいでしょう?」
「……なっ!?」
 そこには、満開の桜。ただ、色は桜色ではなく、ハイビスカスを思わせるような薄緑の桜が見える。満開だ。フィーネは、満足そうに笑う。桜の中心部にある紅色の条線がとても美しい。
「珍しいでしょう? 御衣黄って言うのよ。これをイレギュラーズの皆さんにね、見せてあげたくて」
 フィーネは笑う。

●大切な人と
 『ロマンチストな情報屋』サンドリヨン・ブルー(p3n000034) はフィーネに声をかける。桜は、風にそっと揺れている。
「フィーネさん、とても綺麗です」
「でしょう? ありがとう、最高のおもてなしが今回も出来そうよ。それと、屋台と屋台バーを準備したの! あと、御衣黄のしおりを作れる場所もね?」
「わっ、楽しそうです! 作った春のしおりで、本を読む……とても幸せですね。あの! 屋台には、何があるんですか?」
 はしゃぐサンドリヨン。フィーネは笑う。
「何でもよ、事前にイレギュラーズの皆さんに要望を聞いているから、特別なもの以外は何でもあるの」
「何でもですか! わー、何を食べましょうか! ワクワクしますね」
「ふふ、沢山、食べて? そして、屋台バーは飲み放題よ。浴びるように飲んでくれて構わないわ。あ、勿論、ジュースもあるけど」
「あー、良いですね! 桜を見ながら、屋台とお酒ですか……あ、フィーネさん」
「なぁに? どうかした?」
「そこに媚薬はあるんですか?」
 笑うサンドリヨン。
「ああ、そうね、あるわよ。今回はりんご飴の飴部分に仕込んでおいたわ。まぁ、秘密なんだけどね。あら?」
 フィーネは目を細めた。

「素敵ね……」
「え? あらまぁ!」
 驚くサンドリヨン。見れば、鶇がりんご飴を三本、握り締めこちらに歩いてくる。
「ん? なんだい、へんな顔をして……」
「ふふ、あー、とっても楽しい! ねぇ? 御衣黄の花言葉を知ってるかしら?」
 フィーネはくすくすと笑い、鶇に抱き付いた。

GMコメント

 ご閲覧いただきましてありがとうございます。フィーネ主催の花見をお楽しみください。

●依頼達成条件
 御衣黄という珍しい桜を見ながら、その日を楽しむ。

●依頼人
 フィーネ・ルカーノ(何度も登場しておりますが内容は特に繋がっておりません)で、皆様のプレイングに記載があった場合のみ、登場致します。ただ、想像以上に絡まれる場合がございますのでご注意ください。また、フィーネにして欲しいことがある場合、明記ください。内容と誘い方によっては実現することがあります。

●時刻
 昼間から夕暮れまで

●天候
 快晴だが、少し風が強い(帽子が飛ばされるかもしれません)

●桜
 沢山の御衣黄が咲いています。芝生があるので、ビニールシート(貸し出しています)を敷いて、食べながら花見を楽しむことが出来ます。
 
●場所
 幻想のとある公園で、屋台や屋台バーがあります。屋台では、媚薬入りのりんご飴を提供しており、食べると至極、とろんとし、嘘を吐きたくなります(嘘をつきたくなるだけで、嘘つきになるわけではありません)
 
 屋台は、特別なものじゃない限り、ありますので、ご指示ください。
【例】焼きそば、海鮮、焼き鳥、牛串、おしるこ、クレープ、チョコバナナ、たこ焼き、ラーメン、蕎麦、唐揚げ、カレーなど

 屋台バーは、アルコールとソフトドリンクの提供のみです。

 また、目立たない場所に『御衣黄のしおり』を作れる場所があります。桜の花びらを好きなように散りばめた、しおりを作ることが出来ます。思い出にどうぞ。
 

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【注意】年齢がUNKNOWNの方にアルコールの提供は致しません。


 情報屋NPCもおります。アドリブは頑張れたら入れます。また、お一人の場合、他の方と一緒になる可能性がございます。もし、お一人で行動したい場合は必ず、明記ください。

  • <Chaos Cherry Blossoms>UTUTU日和完了
  • GM名青砥文佳
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年04月14日 21時25分
  • 参加人数28/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 28 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(28人)

透垣 政宗(p3p000156)
有色透明
如月 ユウ(p3p000205)
浄謐たるセルリアン・ブルー
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
カレン=エマ=コンスタンティナ(p3p001996)
妖艶なる半妖
ジョセフ・ハイマン(p3p002258)
異端審問官
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
姉ヶ崎 春樹(p3p002879)
姉ヶ崎先生
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
秋空 輪廻(p3p004212)
かっこ(´・ω・`)いい
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
悪鬼・鈴鹿(p3p004538)
ぱんつコレクター
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
宮峰 死聖(p3p005112)
同人勇者
ロク(p3p005176)
クソ犬
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏
沁入 礼拝(p3p005251)
足女
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)
薊の傍らに
シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて
鞍馬 征斗(p3p006903)
天京の志士
ビーナス・プロテウス(p3p007066)
渇愛の邪王竜

リプレイ


 桜は美しい花弁を風に纏わし、春を大胆に運ぶ。

 シュテルンはカレンとともに歩く。
「カレンッ! 屋台いっぱい! 行こ行こっ!」
 無邪気にカレンの手を引くシュテルン。
「ん、慌てすぎて転けないようにのぅ?」
 優しい眼差しをカレンは恋人に向ける。
「カレン、今度はあそこ!」
「ふふ、楽しいのぅ」
 笑顔。たこ焼き、クレープ、そして、林檎飴。何もかも美味しい。大好きな相手といるからだろうか。

「綺麗じゃのぅ」
  立ち止まり眺めた桜。カレンは目を細め、シュテルンは首を傾げた。
(りんご飴食べてからなんだかポカポカ〜?)
「どうしたんじゃ?」
「んー……? なんでもないよぉ? あれ、今ちょっと、嘘つくしたくなる? ……した?」
 瞳を潤ませるシュテルン。恋人に嘘は吐きたくない。
(りんご飴を食べたシュテルンの様子が少し変だのぅ?)
 気が付くカレン。
(これは、媚薬か何かかのぅ?)

「……ちょっと、フワフワな気持ち〜。あ、カレンと……キス……したくなる……気持ち?」
 カレンはその言葉に口角を上げる。
「ん、シュテルン、愛しておるぞ?」
 カレンは唇を塞ぎ、柔らかな乳房を揉む。
「んっ……」
 シュテルンは声を漏らしながら、カレンに抱き着く。

 ふと、唇が離れ、見つめ合う。
「へへ〜! カレン、だーい好きっ!  ふふ、シュテ、カレンの恋人だもん〜! ねっ、カレン! またいろんなとこ、行こっ! ねっ!」
「うむ、またデートしようのぅ、シュテルン」
 笑うカレン。互いの唇は甘く濡れる。

 征斗は桜を見つめる。見たことのない桜。それでも、思い出す、前の世界。
「ん……やっぱり春の桜はどの世界でも良い物だね。郷愁とは違うけど……ちょっとばかし、懐かしいかな」
 征斗は蛸の唐揚げを食べなからゆっくりと歩く。
「やっぱ、花見はいいよな」
 風にさらわれる花弁。賑わう屋台。
「お嬢ちゃん、海鮮好きならこっち! 海老のガーリック焼きがあるぜ!」
「いいね、食べてみたいな」
「よっし、とてつもなく、大きいのを焼いてやる!」
「とてつもなくって」
 男の言葉に征斗は笑う。

「ん、美味しい」
 食欲を誘う味付け。
「だろう? 今度はホタテはどうだ? それとも、海老か?」
 男は娘を見るような眼差しを征斗に向ける。

「綺麗だな」
 ゲオルグは桜を見上げる。
「ジーク、沢山、食べような」
 笑う。ジークは屋台に心奪われている。

「──美味いな、こういう場所で食べると普段より美味しく感じる」
 たこ焼きを頬張り呟く。ジークは焼きそばの麺を夢中で引っ張る。
「ふふ、こっちはどうだ?」
 ゲオルグは小さく切ったお好み焼きをジークに。ジークは跳ね、今度はチョコバナナとクレープをねだる。ふと、ゲオルグの頬にその身を寄せるジーク。牛串を食べていたゲオルグは首を傾げる。
「りんご飴を食べさせてから一段と甘えてきてくれるな」
 ゲオルグは疑問を口にしながら、ジークの柔らかな身体を両手でわしゃわしゃと撫でる。今日はうんと構ってあげよう。

 珠緒と蛍は歩き、微笑む。
「ん、この気品のある薄緑色も風情があるわ」
「ええ、色が異なると、大分印象も変わるものですね」
 蛍の言葉に目を細める珠緒。
「上品な佇まいも、珠緒さんに通じるものがあるし」
「気品、ですか? 桜咲は、単に激しく動けないだけですので……たまに、染色等で別いめーじを狙ってみるのも、面白そうではあります」
「……色が変わってても、やっぱり桜は桜で、珠緒さんは桜咲さんだわ! ねっ、珠緒さん、どれがいい? ボクは……あの桜たいやき、桜色が綺麗で珠緒さんみたいだわ。あとは桜汁粉にりんご飴でも」
「ふふ、甘いものばかりですね。お茶も合わせてお願いします」
「勿論だわ」
 嬉しそうに駆ける蛍。

 シートに広げた甘い食べ物。
(暖かさに微睡むこの感覚は、色合いが変わってもよいもので)
 少し強めの風に吹かれた桜を見つめ、珠緒は心を揺らす。
(桜色じゃない桜のお花見って、なんだか不思議な気分になってくるわ。自分の常識が――思い込みが、あやふやになってくるような)
 息を吐く蛍。

 珠緒は林檎飴を齧ったり舐めたりと首を傾げている。
「ねえ、ボク、今すごく珠緒さんに……」
 震える声。珠緒は知る、潤んだ黒色の瞳を。
「その食べかけのりんご飴くれないかなって思ったのよ!」
(……これ、嘘、よね?)
 驚く蛍。
「はい? これを、ですか。蛍さんは食いしんぼですね。血混じりでよろしければ……」
 珠緒は蛍の口内に濡れた飴を含ませる。

 賑わう屋台。フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウは笑う、目移りしてしまいそうだ。
「小夜さん、ここで『御衣黄のしおり』が作れるらしいですよ!」
「あら、そんなところがあるのね」
「ええ。早速、花弁を探しに行きましょう!」

 風に飛んでいく沢山の花弁。
「キャッチするのは……意外に難しい、ですね……」
 フィーネの手には二枚の花弁。
「風が悪戯してしまうのね?」
 小夜は花が落ちる音を聞き、動く。
「そうみたいです、でも、大丈夫、花びらはいっぱい舞ってますから!」
 触った時に分かりやすいように、沢山の花弁をフィーネは散らしたいのだ。

 テーブルには、小夜と集めた沢山の花弁。
「あれ、小夜さんは作らないんですか?」
「ええ。そもそも、私は本を読めないし……」
「……本は今度、私が読んであげちゃいます。その本に挟んでおくようにしたら……素敵だと思いませんか?」
「そうね、フィーネに読んでもらえるなら」
 小夜は微笑む。

「フィーネ、御衣黄の花言葉は永遠の愛だったわね」
 ふと、口を開く小夜。
「はい、それに心の平安も……」
「そうね、沢山の意味があったわね。ねぇ? これからも魔種と戦っていつか死ぬことになるかも知れないけれど、出来るだけ長くフィーネと居たいと思うわ」
 フィーネの手に触れる小夜。フィーネは頷き、小夜を真っ直ぐ見つめる。
「……二人で暮らせる平和な時間が、ずっと続いてくれるように願いを込めてみましょう」

 弥恵は気になった屋台バーでフィーネを見つける。
「フィーネ様、お久しぶりです……」
「くちづけ以来ね?」
「ぜ、前回のことは言わないでくださいませっ!」
「あんな……」
 弥恵は慌ててフィーネの口を手で押さえた。
「もう! 意識してしまうではないですか」
「駄目なの?」
「まったく……あ、後で踊ろうかなって思うのですが、フィーネはど……!?」
 フィーネが弥恵が組み替えた脚に触れる。
「駄目、此処にいて。それと誘ったのは貴女」
 自らの行動に戸惑う弥恵。理由を問うフィーネ。
「そうですね、今日は……飴でも食べたのかもしれませんし、そうで無いのかもしれません」
「そう、お上手ね」
 フィーネはふっと笑う。

 鈴鹿は大量のアルコールを抱え、張り切っている。
「姉様とした、「大きくなったら一緒にお酒を飲む」の約束を今日、果たすの!」
 その言葉に輪廻は申し訳なさそうに目を細める。
「ごめんなさいね、鈴鹿ちゃん。私、正体を隠す為にこうなっちゃってて♪ 今、Unknownなのよ」
「嘘なのっ! うう……折角叶うと思ってた約束が……! こうなったら姉様には鈴鹿の我儘を叶えてもらうの! さあ、まずはお酌してなの!」
「やぁ、お二人共こんにちは。鈴鹿の姿が見えたから、愛を育みたくて来ちゃったんだ」
 にこりと笑う死聖。鈴鹿は死聖をちらりと見つめる。
「にしても…演技だったとは言え、輪廻さん変わったね。いや、そっちが素だったんだね。今の方が僕は好きだよ♪ そうだ、折角だから写真でも撮ろうか」
「姉様との写真なの!」
 鈴鹿は輪廻の腕に自らの腕を絡ませる。
「ふふ、自然にしてて良いよ。二人の自然な笑顔を見るのが好きだから。あ、良いね! そう、その表情だよ!」
 死聖は車椅子に備え付けられたカメラのシャッターを切った。

 酒器に花弁が散る。
「あの小さかった鈴鹿ちゃんがこんなに大きくなって……まさか私がお酌を出来る日が来るなんてねぇん」
 呟く輪廻。鈴鹿は酩酊し、林檎飴を口に。
「えへへ♪ 輪廻姉様大好きぃ♪ もう絶対に離さないの……」
「ふふ、はいはい。輪廻さんは何処にも逃げないわよん♪」
 頭を撫でる輪廻。輪廻はシャッターを切り続ける死聖に声をかける。
「こちらに来たらん? 折角なのだから三人で楽しまないとねん♪」

(ん……何だか火照ってきたの……でももっと姉様の温もりを……)
 鈴鹿は輪廻を見る。
「鈴鹿ちゃんってば、や~ん♪」
 熱い指先が輪廻の服を脱がそうと這う。
「むむっ! これは…!」
 突然のボーナスタイム。死聖が目を見開く。
「フフ……流石僕を同士と呼ぶだけの事はある、とても素晴らしいよ鈴鹿」
 何百枚もの写真を撮り続ける死聖。あっという間に脱がされ、抱かれる。
「輪廻姉様」
「全く……大きくなっても本当に甘えん坊さん、なんだから。でも、お返しっと♪」
 恥らいつつも抱き締め返し、鈴鹿の着物を死聖に見える様に捲くり、ゆっくりと脱がし始める。

 優雅に桜を楽しむクリスティアン。
「ここの桜は他とは少し見た目が違うんだね。他とは違った様子が、またとっても綺麗だ」
「ねえ、王子! 花見もいいけど何か食べようよ!」
 叫ぶロク。
「屋台もたくさんある事だし……では、何がいいかな?」
「さっきからいい匂いのする……あそこのラーメン屋台!」
「ふふ、じゃあロク君に買って来てもらおうか」
「うん、ちょっと待っててね!」
 クリスティアンはその背を見つめ、目を細める。
「普段、遠目にロク君を見る事はあまりなかったね。ふふ。おっ、無事にラーメンを買えたようだ」

「よーし、無事に買えたし、はやく王子のところに運んであげなき……」
 ロクは途端に円らな瞳を輝かせる。
「あ、ちょうちょだ! ちょうちょ! 待ってちょうちょ! この!」
 回り、追い掛けるロク。

「見て! 王子! ちょうちょ捕まえたよ! 見て見て! きれいだよ!」
「ふふふ、おかえり。可愛いちょうちょだね。ラーメンはどこに置いてきたんだい?」
「え? ラーメン? あ、ああ! 置いてきちゃった! 待ってて、今取ってくるから! ってアレぇぇぇちょうちょ逃げちゃった!」
 飛んでいく蝶。
「ははは、ちょうちょは逃がしてあげよう!」
 笑うクリスティアン。ロクは名残惜しそうに空を見上げる。

「王子……ごめん…」
 ラーメンが伸び、しょんぼりするロクを励ますクリスティアン。
 そして、桜吹雪の中、ロクとクリスティアンはラーメンをすする。

  ビーナスは美しい緑の桜を栞に散らせ、花言葉を独り想う。

 『優美』『心の平安』『精神美』
 そして──
 『永遠の愛』
「いいなァ……永遠の愛……私もそんな愛が欲しいな……でも、嫌われ者には無理かな……」
 溜め息。舞う花弁。視界にフィーネ。
「あっ、主催の人だ……」
 フィーネは頷き、ビーナスを見上げる。
「あっ、ごめんなさい。私、大きくて危ないから……」
「いいえ、大丈夫よ」
「あ、あの、フィーネ……さん」
「何かしら?」
「今日はこんな素敵な花言葉を持つ桜を見せてくれてありがとう……私も……いつか「永遠の愛」が欲しいです……ねぇ、どうす……──」
「籠絡すればいいわ」
 フィーネはビーナスの包帯に触れ、口角を上げる。

 巡る屋台。
「あそこのチョコバナナ、青い!」
 はしゃぐ政宗。
「チョコ用の青色色素だろ。食べない方がいいぞ。ん?」
 酒のつまみを探す春樹。ふと、露店の綺麗な赤に目をひかれる。
「もう! そんなこと言ってー! え? あ、林檎飴だ! 綺麗だねー」
 うっとりとする政宗。同時にその心に浮かぶ、とある噂。
(フィーネさんが催しの度に媚薬を混ぜるって聞いたけど)
 ちらりと春樹を見上げる。
「ん? 食うのか? 林檎飴なんて、店で売れない規格外の林檎ばっかで美味かねーぞ?」
「……相変わらずロマンがない。林檎飴って宝石みたいで好きなのに!」
 政宗は林檎飴を受け取り、齧る。
「美味しい! でも、あげない!」
 拗ねたように出した舌は赤く濡れる。
「おいおい」
 春樹は屋台に視線を移し、驚く。ふらつく身体を支える様に腕が抱き締められた。
「春樹さんの事なんか、ちーっとも好きじゃないんだからね!」
 政宗は腕に頬を擦り寄せる。意地悪な言葉に籠る熱と、火照る頬。
「政宗、お前ーー」

 政宗は咄嗟に目を瞑る。顎を掴まれ、近づく春樹の顔。
「あ」
 軽く触れる額。
「お前、熱あるだろ?」
 春樹は言う。
「!?」
 驚く政宗。あっという間に横抱きされる身体。顔に集まり出す熱。
「もう、もう! この鈍感ーっ! 言うけど、ときめいてなんかないから!」
 暴れる政宗。
「煩い、黙ってろ」
 息を吐く春樹。
(……俺は認めないぞ。手のかかる奴ほど愛おしい……なんて)

 クローネは空を見上げ、嘆息する。
「……憎たらしいほど理想的な天気ッスかね……夜型の者はお構い無しって奴ですか……まあ、気分の問題なので溶けたり消えたりするわけじゃあありませんけど……」
 齧る林檎飴。思い出す、男とのやり取り。

「ごめんよ、アルコールの提供は出来ないんだ」
「……そういう決まりなら仕方ないッス」

「……はぁ、自分で用意しとくべきだったッスね……てか、りんご飴って何です? そんなに幼く見えます…? 私…?」
 男は、似合ってるという理由で林檎飴を手渡したのだ。
「……これを機に禁酒でもしてみましょうか……」
 クローネは木に寄りかかり、林檎飴を齧った。春の陽気だろうか。妙に気だるい。

 眺める桜。花弁は風に舞う。
「うん、美味いぞ」
 ジョセフは屋台を眺め、ようやく牛串を手に。
「ジョセフ様、このりんご飴もとっても美味しいです」
「そうか、それは良かったぞ!」
 ジョセフの言葉に礼拝は目を細める。
(美味しいというより嬉しいのかも。貴方が一緒いてくれる、私の好意を信じて。ああ、この信頼を裏切ったらどうなるのかしら? そんなの駄目。でも、すぐにそれとわかる嘘なら……)
「ふふ、こういう和やかな一時もよいものだ。特に君と一緒なら……誘ってくれてありがとう。君の慈愛に感謝する。──礼拝殿?」

「ジョセフさま、きらい」
「……礼拝殿、今何と言った」
 ジョセフの喉が鳴る。
「きらい、だいきらい」
 腕を絡め、身を寄せる。
「ああ、そんなことは言われたら、私は、ぼ、僕は君を『愛』したくなってしまう」
 かぶりを振るジョセフ。
「きらい」
 礼拝は腕に力を込める。そうすれば、貴方の苦痛を感じられる。
「僕なりの愛、苦痛と愉悦を。消えぬ印と痕を肉に、心に。触れられたらもう我慢が出来ない。ああ……細く、白い首をこの両手で……」
 伸びていく手は大きく震える。
「──嘘。すき。すきすき、じょせふさま。じょうずにうそつけたので、ほめてください。だいすきなきずだらけのてではやく」
「……えっ、嘘。いや──分かっていた、最初から分かっていたよ。ふふ……ふはははは!」
 ジョセフは濡れた手で落ちる花弁を掴み、バラバラにする。

 リトルは見上げる。吹き付ける風。揺れる身体を支えるのは小さなウグイス。
「ねぇ? ぎょ、ぎょいこう……であってるっ?」
 リトルの問いに答えるように、ウグイスが鳴き、リトルは目を細めた。
「そっかっ! あってるんだね。よかったー、でも……さくらのようでさくらじゃない、なんだろうこれ」
 ウグイスが首を傾げた。その可愛らしい動作にリトルは笑う。
「あっ──」
 ふと、花弁が舞い、帽子のようにふわりとリトルの頭に落ちた。
「へへ、おどろいたね?」
 リトルはウグイスの頬を撫で、花弁を両手で掴み、息を吐く。
「──でも、たしかにきれい……」
 リトルは呟き、ふふと笑う。リスが駆けてきたのだ。

 ビニールシートに座るミディーセラとアーリア。
「ふふ、沢山お酒を買い過ぎちゃったわねぇ……」
 アーリアはシートに広がるアルコールに笑う。
「それにしても、外で飲むのが気持ちいい季節になってきたわねぇ~。桜といえばピンク!って思っていたけど、不思議な色の桜もあるのねぇ」
 アーリアは瓶ビールを傾け、しみじみと呟く。
「ええ、ええ。知らないことばかりですわ」
 瓶入りのカクテルを飲むミディーセラ。
「そうねぇ」
 アーリアは揺れる髪を押さえ、桜を見上げる。黄金色に変わる髪。

「気持ち良いわねぇ」
 アーリアは寝ころぶ。視界には青空と桜。
「ねぇ、ミディーくんもいっしょに」
 無意識に伸びた指先が、服の裾を引く。
「まあ、まあ……」
 寝ころぶミディーセラ。
「綺麗ねぇ」
 呟くアーリア。酔いが回り、ふわふわと心地よい。
「そうですね、なんだか、森みたいです」
 ぼんやりするミディーセラ、楽しそうに笑うアーリア。
(でも、終わってしまうもののどこが美しいのでしょう)
 散っていく姿に少しだけ眉をひそめ、息を吐く。

 気が付けば、花弁がミディーセラの髪を彩る。
「……」
 アーリアは目を細め、手を伸ばす。触れた花弁は大切なもののように思えた。
「……ねぇ、みでぃーくん。このお酒ぜーんぶ飲み終わるまで、一緒にいてくれる?」
「ええ、ええ。飲みきれないぐらい、たくさん買ってきたのですよ。だから、まだまだ一緒にいられるのです。ね、あーりあさん」

 幻は林檎飴を齧り、桜を見つめるフィーネの肩を強引に抱き、耳元で囁く。
「おい、ルカーノ、アンタ、俺の女になれよ。他の奴より刺激的な日々を送らせてやるよ」
 奥底で感じる、言葉の違和感。幻は首を傾げつつも──
「いい肌してんじゃねぇか」
 幻は指先から鎖骨を舐めるようになぞる。
「至極、強引な人」
 フィーネは笑う。幻は林檎飴を齧り、唇を近づける。
「いただくわ」
 フィーネは口内から飴をさらう。
「格別な味だろ?」
 幻は笑い、フィーネの唇に指を這わせる。呑み込まれる指先。熱い舌が指を愛撫する。
「あら、あら……」
 フィーネは知る。腕の中で、気を失っている幻を。己の行為の意味を知り、瞬く間に羞恥が込み上げたのだろう。

 ティアは目を細める。
「ユウ、お誘いに乗ってくれてありがとうね」
「季節の物を楽しむのはいい事よ。まあティアの誘いだし、少しぐらい付き合ってあげるわよ。屋台で何か買うんでしょ?」
「うん、色んな物を買いたいな」

 下げた袋には、大判焼き、ベーコン焼き、林檎飴。
「此処に座る?」とティア。
「ええ、そうね」
 ビニールシートに座る。風が枝を揺らし、潮騒のような音を奏でる。
「あ、りんご飴買ったけど食べる?」
 ティアはユウに声をかける。
「リンゴ飴? ……何でわざわざ果物を飴に包むのよ……まあ折角だから頂くわ。こういうのは雰囲気も楽しむものなんでしょ?」

 真っ赤な林檎に染まる舌と頬。
「あら意外と美味しいのね……」
「ユウ? 顔赤いけど大丈夫?」
(何だか、とろんとしてる)
 ティアはじっと見つめる。小首を傾げ、見上げるユウ。その瞳はベニトアイトのよう。
「ティア? んっ……」
「──ユウ、温かいね」
 ティアがユウを抱き締め、頭を撫でる。ユウはぼんやりする自分に違和感を抱きつつ、なすがまま。むしろ、気持ちが良いのだ。
「もしかしてこのりんご飴……」
 ティアは呟き、思いつく悪戯。
「ねっ、ユウは私の事どう思ってる? 好き?」
「ティアの事? ……ん!?」
 揉まれる乳房。
「……そういう所は嫌いよ」
 一瞬、正気に戻ったユウ。自らの乳房に手を置いたままのティアの手をつねり、ジト目で睨みつける。
「……本当?」
 耳元で囁くティア。

 楽しそうに屋台を回るルーキスとルナール。その手には、焼き鳥。
「うーん、焼いただけでも美味しいのが不思議よね」
 焼き鳥を食べ、笑うルーキス。タレが絶妙だ。
「確かに焼いた鳥って美味いよな。俺は塩が好きだ。……あ、勿論、タレも捨てがたいけどな」
 ルナールは咀嚼し、目を細める。
「次は何がいいかなぁ、焼きそばでも食べようか」
 屋台を眺めるルーキス。
「ん、食べたい物は何でも食べていくか。屋台なら甘いのもあるぞ?」
 ルナールはクレープを見つめる。ルーキスは思う。食べることも良いけど、今は──
「はーい、先生。新しい髪留めが欲しいです」
 屋台を指差すルーキス。その瞬間、ルナールは目を瞬かせ、すぐに少し首を傾げ、苦笑を零し、「屋台の髪留めでいいのか……ルーキスは欲が無いなぁ」と呟く。
 だが、その瞳に、屋台がしっかりと映っている。

 花弁が風に踊る。ルーキスは桜を見つめ、ルナールを想う。
 どんなものを? 
 どんな色を?

 舞う桜。
「ルーキス」
 振り返り、ルーキスは微笑む。
「おかえり、どれか決まった?」
「うん、これにした。似合うと思う」
 真剣に選び、運んだのは、深紅の花が目立つ髪留め。
「わぁい。新しい髪留めだー、大事にするね」
 ふと、ルーキスは目を細めた。ルナールの指先が髪に触れる。
「あぁ、やっぱりよく似合うな」
 ルナールは満足げに微笑む。髪留めは、白色の美しい髪に映える。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お花見、屋台、栞に媚薬、ワクワクしかなかったですね! ご参加いただきまして、ありがとうございました! 

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