PandoraPartyProject

シナリオ詳細

光彩陸離

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夜空の華
 ――花火の音が鳴っていた。
「大きな音でしょう。この付近の名物でしてな」
 鉄帝のとある街。大通りの一角に止まっている馬車の中――貴方達は『そこ』にいた。
 花火の音が鳴る度に、挙がる歓声が素晴らしい盛り上がりを伝えて来る、が。
「さて、それでは互いの条件の確認です。我々が勝てば、明日行われる大橋建設工事の入札の権利を頂きます。無論、そちらが勝てば……権利はそちらのモノに」
 貴方達は観光ではなく『依頼』を受けてここにいるのだった。
 事業の権利を巡ってある二つの商社でもめ事が発生。交渉は中々妥協点を見せず、やがて鉄帝らしい殴り合いの気質で決着を着けないか――という事になり、依頼人の代理として貴方達は雇われたのだ。
「もう一つ、念の為の確認だが俺達はイレギュラーズ。戦いの代理だが問題ないか?」
「ええ無論。むしろイレギュラーズの方々と拳を交わせられるとは光栄の至りです」
「そうか……無問題なら結構。で、どこでやる? 場所・内容はそちらに委ねられているようだが」
 花火の音が未だに聞こえる。まだまだこの催しは長引きそうか。
 小窓から微かに見える光の点滅が美しさをも引き立たせて――
「それなのですがね」
 瞬間。小窓に付けられていた窓掛けを相手の男が引く。
 外の景色が遮られ、一層薄暗くなった馬車内。そこで男は囁く様に。

「この箱の中で、終わらせませんか?」

 言葉を紡ぐ。
「――ここで?」
「あと一分すれば連続的に打ち上げられる花火が始まります。時間は二十秒。凄まじい音の連続でしてな……馬車の中とはいえ多少激しく音を出しても誰も気づかない。この馬車自体……それなりに頑丈な造りにもなっております」
「二十秒か。精々数撃だな」
「音が始まり、音が落ち着くまで。此度の案件は欲しいが命の奪い合いをしてまで、とは思いませぬ」
 成程。逆に時間制限があった方が、都合がいい訳か。
 どちらがどれ程の被害を相手に与える事が出来るか……そういう勝負だ。しかし馬車の中で戦闘とは。これでは小柄・小躯以外な者は立って戦闘を行う事は出来まい……座ったままか、あるいは身を屈めた上で体を動かすことになりそうだ。
「少々変わった戦いにはなりますが……まぁ悪くはありますまい?」
 それに。
「二十秒で終わらせれば、花火の最後に間に合います」
「それもまた美しく?」
「かつ、特大で御座います」
 成程それは。
「楽しみだ」
 聞こえる歓声。響く音。
 あぁ花火はまだまだ鳴っている。星空よりも近くあり、眩き輝く美しさ様――

 光彩陸離はここにある。

GMコメント

 本シナリオは非常に短い戦闘が主眼となっています。パンドラを使用する状況に至るかはともかくとして【重症】になる確率が通常より高い事が予想されます。お気を付けください。

■勝利条件
 【2ターン内】で
 【敵全員に与えたダメージ量】が
 【味方全員の被ダメージ量を上回っている事】

 治癒・再生などによって回復した分は考慮しないモノとする。
 味方の範囲攻撃に巻き込まれた場合でも被ダメージ量として取り扱う。

■戦闘場所
 少し長めの馬車内。薄暗い中だが視界には問題ない。
 それぞれの初期配置は以下の通り。

1←敵|3 4|敵 6
   |↑ ↑|↓ ↑
敵→2|敵 敵|5 敵

 *数字=イレギュラーズ。どこかを選択してください。
 *「|」は椅子の背。壁ではないので貫通攻撃ならば貫通する。
  乗り越える事はやろうと思えば可能。
 *矢印は敵の攻撃予定方向。
  ただしイレギュラーズの攻撃方向によって変動の可能性あり。
 *縦2m×横2mの広さが椅子で区切って3区画ある様なイメージ。

■敵
 鉄帝の者達。全員が【普通】以上の体格の持ち主。
 拳で戦う者が2名。剣が2名。トンファー1名。R2銃が1名。
 スキルの類は不明だが非常に攻撃的な戦い方をしてくると思われる。

■他
・壁は特別製。貫通攻撃を外にも内にも通さない様に耐えられる改造品。
 短い戦闘なので壊れる恐れは無いモノとする。
・戦闘開始前に自・他付与に関わらず付与行動を【一つ】しておいてもOK。
・戦闘開始前に付与行動等によって消費されたHPがあるのならば、それに関しては勝利条件に影響しないモノとする。戦闘開始後にHPを消費して発動するスキルに関しては全て影響する。

・天井は低いので【普通】以上の身長の者は【立って】戦闘は不可。
・敵にも味方にも回避に若干の影響があるモノとする。

■つまり?

 よ り 強 く ぶ ん 殴 っ た 方 が 勝 ち !!

 ……とはいえ相手からのダメージを抑えればそれはそれで勝利条件的に有利になりますので防御的なプレイングを書くのも勿論アリです! 超攻撃的なプレイングにしても良し。防御をしつつ攻撃を行っても良し。完全防御で他者の援護に徹するのも一つの手。
 たった2ターンでは書くことが……となれば強気の攻撃心情を書いて頂いたり、過去の回想から踏み止まる思いを書いてみたり、細かな工夫(有用なアクセサリー・ギフトの活用等)をプレイングに記して頂ければと思います。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!

  • 光彩陸離完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年03月08日 22時45分
  • 参加人数6/6人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
サンディ・カルタ(p3p000438)
抗う者
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
迷い猫
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)
<不正義>を知る者

リプレイ

●花の下で
 振動。打ち上げられた花火の音がより強く響いた――その瞬間全ての影が一斉に動いた。
 真っ先に武器に手を掛けたのは『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)である。早撃ちで負ける気はしない。リヒテンベルク模様……放電の跡の如き樹木模様が描かれた木剣を弾く様に。音を激しく鳴らして火種と成せば。
「今宵はとても大きな火種が上がる日」
 同時。木剣を追うように生じるは炎。燃え盛る、紅蓮をここに顕現し。
「せっかくですし我が紅蓮を以て、この場にも花火を再現してみるのです」
 瞬間的に生じる炎の波がまるで放火の如く。眼前にいた二人だけを巻き込む様に覆い包むのだ。半歩だけ前に。誰よりも早く動いた故にこそ行えた一手。その様子を『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)や椅子越しに捉えていた。
 戦いの様子ばかりではない。椅子の強度、障害物として如何程の硬さを持っているだろうか、という推察も兼ねてだ。もしそうまで強度が高くないのならば『考え』があり……ともあれ先んじて付与した力を皆に、そして拳に。されば始まる肉弾戦。
「馬車の中ってのも、珍しい環境だよな……!」
 サンディに振るわれるは銃だ。リボルバーから射出された早抜きの三発が、彼をめがけて直進する。
 集中。さすれば見えてくる銃弾の回転。身を屈め、左腕を盾に。二発を潜って一発を受け止めて。
 走る激痛――を脳が知覚するよりも早く。早く、体を動かす。速度の戦いで身を止める訳にはいかない。四発目の銃弾が放たれる寸前、繰り出した右の足がリボルバーを持つ手諸元椅子へと蹴り叩く。
 同時、椅子の背へと放たれる逸れた一撃。抉る銃弾。やはり椅子の材質はそう硬い物ではない。貫通攻撃ならば容易く届き、そうでなくとも椅子の破砕をする事は出来よう――問題はその時間が惜しい、と言う事であるが。ともあれ。
「ああ、全く。馬車の中で駆け引きとは――粋だね!」
 面白い話だ存分に乗ろう、と『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)が構えるは妖刀とナイフだ。眼前の敵が備えているも剣であり、奇しくも刃物同士と相成って。
 突き放たれる刃の切っ先。だが、予測していた事だ。身を低くし、潜り込むような形からの。
「ぬ、ぉ!?」
 眼前の敵達に降りかかる――重力。ルチアーノの異能たる力だ。
 馬車の揺れ、微かに吹き飛ばされるかの如く揺らぐ身体。そこを彼は見逃さない。突っ込む。
 妖刀は短く持ち、ナイフを主体として。近寄らせるか、とばかりに突きの形で振るわれる剣があるが、体勢の乱れた形から放たれるソレなど恐れるものか。剣撃を、逆手に構えたナイフで『逸らさせる』
 確固とした力が宿っていないのだ。ほんの少し、斜めに構えてやれば後は勝手に流れる。甲高い音を鳴らして、逸れた剣筋。故に、体勢を戻す前にこちらが動く。突きの形に構えた妖刀をそのままに。振るうは一閃。
 そして――花火の光を微かに反射する剣閃の中、薄暗い闇の中で羽ばたかんとするは『黒鴉の花姫』アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)だ。馬車の中で即座に展開するは、マグダラの罪十字。
「神、よ……」
 それは彼女の所有する聖遺物。一つの謳い文句によって顕現する修道女人形。
「深き彼女に……」
 望みしは何か。誰の望みか。
「贖罪の機会を……与え給え」
 今ぞ女の骸は――ここに在り。構えた右手、握りし預言書に魔力を込めて。人形に放たせるは無数の糸。自由を奪わんと、眼前の敵へと放つそれは、武器諸共絡め取らんとしている。
 静かに、静かに事を成さんとアイリスは呼吸すら極小に。闇に紛れんとして。
 狭き馬車の中だ。隠れる場所も、潜むことが出来そうな場所も遺憾ながらありそうにはないが、それでも呪いの黒鳥として。些かなる闇すら味方にせんと羽搏いていく。糸を振り切り、鉄帝の民の剣撃が彼女を襲うが――まだだ、まだこの程度では終われない。誰も彼もが健在なのだ、それに。
 最後方の席『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)は闘志を振るわせて。
「ここに俺を呼んだのは正解だったな……」
 振るわれる拳。狙われる頭部、故に顎を上げて軸を逸らす。
 頭の中心が微かに後ろへ。そこを狙われる二撃目――されば捉える横目、割り込ませるは己が手の平。甲にぶつけて稼ぐ0.数秒が高速の世界で意味を成す。
「そして、お前は」
 捻る身体。顔は前へ、耳を微かに薙ぐ感触。
 握り込ませる四指。拳の硬さは岩をも超えて。
「本当に運がいい」
 同時、両の足裏に込められる力は馬車の床を抜かんとする程。彼の身は大柄。故に、座った体勢のままだ。『座った体勢のまま』で、彼は馬車を穿たんとする程の圧を半身に込めている。それは数瞬。二秒に満たぬ、その間にて。
 振るわれた三の拳――に合わせて、アランの圧が射出される。
 見える軌道。狙うカウンター、手首の下の前腕骨。
「この俺の全力を受ける事が出来るんだからなッ!」
 衝突。響く骨の粉砕音、されど歪めぬ戦士の顔。鉄帝の証。
 ――だから本命だ。先に放った腕を折りたたむ形で身体を前面に、全体重を乗せた肘突き。低くなる重心がより体重を乗せやすく、捻じ込まれる肋骨を折らんとする。生かすまい。殺すつもりの一撃を、必殺の二文字をここに。
 戦い辛き環境の中でも目指すは勝利の美酒。『鋼の力』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)また、矜持を抱いてこの高速の死闘に挑んでいた。
「よもや――この身小さき事を良かったと思う時が来るとは」
 考えてもいなかったと、彼は言う。
 戦いにおいて有利なのは大きい事だ。小さいという事はそれだけ力で劣る可能性があるという事であり、あと一寸、あと一寸の身の丈を幾度思った事か。
 しかし此度だけは――この身であるからこそ十全を期し奮えると言うモノ。
「ぉ、おおッ!」
 狙う眼前。繰り出されるは鉄棒――トンファー。
 攻撃の一手に全てを成す故、回避は捨てる。斜め上から振るわれし鉄を左の盾を割り込ませ、防御。
 激突音。左腕全体に衝撃が走る。腕から肩へ。肩から首へ。首から頭部へ微かへと――揺れる左目。されど右目に影響はなく、しかと捉えた敵の姿をリュカシスは決して見逃さない。
 固めた拳の一閃。吐く息、飛び出す雄叫び。捩じり込ませる敵の胸へと、己が鋼の力を。
「このリュカシス……」
 そのまままだまだ。敵を蹂躙せんとする勢いで攻勢を仕掛けていく。
 捻じ込む二撃目。三撃目が、盾にされたトンファーで防がれる。返す形で振るわれる鉄の一閃が頭部に向かって振舞われ――寸での所、間に合った盾の割り込み。再度なる衝撃がリュカシスを襲うも、盾越しでは致命に至らぬ。
「――最後まで膝着くつもりはございませんよ!」
 花火が上がる。花火が上がる。美しき光景に馬車の外では驚嘆と歓声の声で溢れて。
 馬車の死闘には、誰も気づかぬ。十の時を過ぎ去っても。

●残十秒
 短い闘いである。或いは、戦っている彼らにとっては長く感じるかもしれない。
 ルチアーノの放つ超重力は続いていた。歪む視界。否、歪んでいるのは空間だ。
 馬車の軋む音が耳に届く――されどこの馬車も特別製だ。あと十秒程度で壊れはすまい。故に鉄帝の者も破砕音に注意は払わず、ルチアーノだけを狙っている。振るわれる剣撃。力を籠めやすくするべく落としていた体勢を狙って放たれた、薙ぎ。
 突きではなく大振りが来たか。しかしこんな狭い中では見えやすい軌道だ。
 膝に力を、足の力だけで身を宙へ。これは完璧に躱す――が。
「ッ!!」
 瞬時。生じた音は――金属音。割り込ませたのは己がナイフ。コルテッロ・ダ・タスカである。
 衝突したのは銃弾だ。隣の席の方からの援護射撃か。ルチアーノはあらゆる方向への警戒を成していたが故にナイフを割り込ませるのが間に合った。銃弾がナイフの方向に沿って天井へ。穿ったのは頭部ではなく、こめかみから上へと。噴き出る血。抉る様に、しかし致命というに一歩届かぬ赤き血閃。左目を反射的に思わず閉じている。力強く、力強く。
 されどこの程度何するものぞや。銃弾を浴びるなど、かつて日常茶飯事であった。横からの銃弾など恐れる程ではない。そうだ、今己が背後には誰もいない。フレンドリーファイアはここには無い。
「あぁ……」
 戦場は命の奪い合いの場だ。一瞬の気の緩みが命取りになる。
 生きたい。生きて帰りたい。その為に死力を尽くさねばならないのなら、容赦はしちゃいけない。例えば仲間が後ろにいたのだとしても。そう、たとえ相手が『誰』であろうと。
「殺られる前に――殺らないとねッ!」
 激痛に身を悶えている暇はない。奥歯を噛み締める。
 開いた瞳で敵を見据えて。重力の圧を強めて己も前面に接近する。時間がない? 何、人なんてのはね一秒あれば、殺すに足りる。ナイフを喉に抉らせればそれで死ぬのだから。
 かなりの接戦だ。相手の気迫も尋常ではない。
 些かばかりのチャンスも見逃すまいとしている鉄帝の者達。衝術で一手稼ぐ暇は無いかとサンディは思考して。
「まぁそれだけしか出来ない訳じゃない。幾らでもやりようはあるだろ……!」
 あらゆるモノを使って勝利を掴もう。ルチアーノへと攻撃した眼前の相手の隙を突いて、その顔面に投げるのは胡椒――の爆弾。炸裂する多量の胡椒。もはやそれは粉塵と言えるか。
 可能であれば隣へ行く動きのフェイント共に後ろに回り込んで衝術を……と考えていたが、鉄帝の者からすればサンディが隣に行くのならば残ったリュカシスへと攻撃を紡ぐだけだ。勝利の為、無理に追う必要はない。
 故に突然の胡椒で怯んだ一瞬で――サンディの拳が再び襲う。
 たった二十秒の戦いだ。その内の一瞬は貴重も貴重。迂闊に目を瞑っただけで如何に致命か。
「教えてやる。その意味をなッ!」
 放つ拳。反撃の銃弾が飛んでくるが、無駄だ。ルチアーノへと攻撃を紡いだ後の出鱈目撃ちが当たるモノか。跳んで躱す。前へ、前へ。身を翻して――敵の頭部へと踵を落とし。
「美しいものはより近く」
 クーアは往く。本来ならば足を使う方が得意で、密室空間など戦場が限られた状態での戦闘は決して得手とは言えないが。それならばそれで別にやりようはあるものだ。誰よりも早く動き、誰よりも早く武器を抜く。
 先に放った放火の残滓は残っている。美しい。どこまでも『コレ』は美しい。己が身を焼いたあの日の輝きには未だ程遠いが、かつての『アレ』を再現すべく研鑽は怠らない。今までも。今も、この時も。
 己が魂に焼き付いた焔を、彼女は追う。例え好奇心の果てに猫が死のうと。
「己が身を以て味わった方がいいでしょう?」
 可能であれば多くの敵をまきこむ『ぼむ』を放ちたい所だったが、流石にこの狭い空間では中々位置取りが上手くいかない。故に、即座に手を変えて舞う焔舞。先の放火で付与した者へ。焔の如く舞う動きが敵の身を制せんとする。
 放たれる敵の拳。合わせる木剣。弾く、弾く切っ先で。見据えた一瞬。木剣・琥珀灯火をかち上げ敵の肘へと狙い撃つ。彼女は物理的な熱にばかり焦がれる子猫に非ず――彼女は火の総てを愛している。熱も、動きも造形も、何もかも何もかも――
「――紅蓮色の舞をご存知でしょうか?」
 近付けば焼けて、触れば滅びる。
 イカロスの如く。クーアが焦がれたのは天に聳えるソレではないが。
 焔に恋したその舞は――崩すに容易くはない。

 あと数秒で終わってしまう。アイリスはなるべく長く戦い続けていく予定だったが、終わりを感じていた。小柄な体格であるが故、普通以上の体格の持ち主達よりは自由に動ける身だが――あくまでもここは密室空間。
 馬車の中。霊魂は非ず、植物は無く、鴉は窓を突破できず。中々に取れる手が厳しい戦場だが。
「……私は、呪いの黒鳥」
 傷を癒す術はなくとも、呪いを齎す悪夢であろう。
 纏え死の匂いを。麗しき黒鳥の羽ばたきを知る時、万物に不吉が訪れる。恐らく最も負なる要素を携えている敵――クーアが相手取っている敵を目に、収束させるは死者の怨念。罪十字の人形が構える弓引きの姿勢。引き絞る怨嗟。放つ絶叫。それを隙とばかりに、眼前にいた鉄帝の者が剣撃を放つ。
 迸る激痛。弾ける血潮。されど修道女人形の力は衰えぬ。呪い、齎すべく弓を射出し――着弾。
 事を成す。呪いの黒鳥は決して逃がさない。敵の姿を。
 トンファーの軌道が弧を描く。リュカシスが狙うは、それ自体だ。己がギフトで鉄の武器を己が装飾と認識できないか? 掴み、離さず足止め。さすれば敵の意表を突く事も出来よう――が。
「くっ……流石に掴むのは至難ですね……!!」
 そう簡単にはいかなかった。なにせ動き回っているモノで、かつそれは相手の武器。
 中々掴んで、ギフトを使うという動作までいけない。それでもリュカシスは不屈たる精神でトンファーの軌道を追う。この時点で既に、相手の武器を制することが難しいと分かった事もあるのだ。ならばもう一歩先にも行こう。モノは試し、恐れるものなどなし。
 故に鉄帝の者が見切った。武器を掴もうとした意識を突いて、急に軌道を変えたのだ。
 盾が間に合わない。リュカシスに、凄まじい衝撃が脳天から顎へと。されど倒れぬ死なぬ。矜持は折れぬ。
 衝突から噴き出した血筋が右の顔面を濡らすも。
「ぬぁあああああ――ッ!」
 赤に塗れる世界の半分。それでも、黄金色の瞳が赤き世を泳いで。
 往く。今この時にこそ総てを掛ける時であると。飛び込む懐、掴んだトンファー。敵の腹へと握った拳をぶち込んで。放つ一閃、衝撃波。身の内から破壊せんとする一撃を更に深く、深くへ捻じ込んで――解き放つ。

 アランは抜く。偽千剣=フラガラッハ・レプリカを。
 千の剣を凌駕する伝説の剣に近付かんとした魂の具現。並み居る誰をも粉砕する剣。
「さぁ――その五体で味わえ」
 この剣に込めた憎悪を。そして、それを振るう。
「勇者の」
 オレの。
「最強を証明する一撃をッ――!!」
 相手の拳撃を左腕で逸らす。右腕で抜いた剣をその場で回転させ、持ちやすい所で――握り直した。
 時間にして一秒に満たぬ動作。されど『その先』を止めようと相手が全力の拳を振るってくる。一の拳が胸を撃ち抜き。二の拳が頬に入り。それでも、彼は止まらない。痛ければ止まっていい身の上は送っていなかった。
 この世に訪れて一つの年が超えていった。
 更に半分を過ぎ去り、かつての過去は遠のくばかり。
 落ちた力を鍛え直し、あの日の己に未だ遠く及ばずとも。

 確かにあるのだ。この世界で培った、アラン・アークライトの新生した力は。

「さぁ、受け切れるなら受けてみろ……鉄帝の民よ!!」
 焼き直しに非ずんば。抱いた日々の結晶は、その手に確かにある。
 降り注ぐ拳の物量。知った事かと、彼の剣はその無数を。
 たった一筋で凌駕した。

 衝撃音。馬車が揺れる、大きく揺れる。

 それは奇しくも、特に巨大な花火が一つ鳴った――それと全く同時の事であった。

●光彩陸離
 戦いは終わった。皆が馬車から降りて来る。
「クソが……こんなボロボロじゃあ花火なんて楽しめるわけねーだろ……」
 悪態を付きながら後方の扉を開けたのは、アランだ。
 帽子を被り直して、天を仰ぐ。あちこちから響いてくる痛みが『早く身を癒せ』と伝えて来るが、まだだ。馬車を背に座り込みながらも……見据えるは花火。
 ああ全く、痛みはあるが。この数十秒に凝縮した力が出せて――いい気分だ。
「誠その通り! 戦いが終われば敵も味方もありませんから、後は花火を楽しみましょう!」
 リュカシスだ。彼もまた中々の傷だが、負傷を負わせたものを恨む気持ちなど欠片もない。いやむしろ……鉄は打たねば鍛えられぬのだ。これもまた己とそして、鋼の力が鍛えられた証と思って。
 花火はまだ今少し続く様だ。響く轟音は鉄の身に染み渡り心地よく。
「――ゼシュテルバンザイ!!」
 満点花火の光彩陸離。ああ――楽しむとしよう。

成否

成功

MVP

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者

状態異常

アラン・アークライト(p3p000365)[重傷]
太陽の勇者
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)[重傷]
無敵鉄板暴牛
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)[重傷]
Calm Bringer
アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)[重傷]
<不正義>を知る者

あとがき

たった2ターンの戦いでした――お疲れさまでした!

MVPは与えたダメージもさることながら戦いに掛ける心情も素晴らしかった貴方へ。

それではご参加ありがとうございました!!

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