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シナリオ詳細

<グラオ・クローネ2019>空に願いを

完了

参加者 : 13 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 深緑――アルティオ=エルム。大自然へと馴染み独自の発展を遂げた、幻想種の都。
 中央には天にも届こうかというほど高い巨木が聳え立ち、その威容を周囲に振り撒いている。そして、地に根を張る木々と共に、古くからの様々な文化や伝承が根付いているのだ。

 ――天樹祭。

 その名を知るものは数少ない。だが、参加した誰もが「一度はやるべき」という、なんとも不思議な人気を誇る祭りだ。

 その起源は、混沌へと伝わる『グラオ・クローネ』の御伽噺。巨大樹ファルカウは、罪をその身に背負わされた一人の少女のため、その力を振り絞り、天へと願いを届けたといわれている。
 その伝承に準えて、自身の願いを書き留め、灰色の王冠(グラオ・クローネ)を模したケースに入れ風の魔術で空へと飛ばす。それが天樹祭だ。

「一人でも、二人でも、大勢で飛ばしてもいいのです。楽しいものなのですよ!」
 アレは一度は体験してみるべきだと思うのです! と、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は太鼓判を押してくれた。

 一人一人の心の内に込められた思い。
 愛し合う二人の想い。
 皆が希う祈りの感情。
 誰もが心に秘めるモノ。

 その全てを天へと届けるのだ。巨大樹ファルカウがそうしたように。

「ちなみに私は、お菓子をたくさん食べたいと書いたのです!」
 目をキラキラとさせるユリーカ。その期待に満ちた瞳を見れば、なるほど、それは悪くないものなのだろう。

 何気ない願いも、追い求めている祈りに近い感情も。
 善悪の区別なく、一つの区切りをつけてくれる。そんな祭りこそが天樹祭なのだ――。

GMコメント

 お久しぶりです、鉈です。エモいのが好きです。
 皆さんの願いや祈りを空へと飛ばしましょう。

●天樹祭
 参加する全ての人の願いを風の魔術で空へと飛ばす祭りです。やれば叶うとかなんとか。
 『お菓子が食いたい』とか『単位が欲しい』とかのくだらない悩みや願いから、『あいつに復讐したい』とか『失踪した彼を見つけたい』とかの重たい願いまで。
 この祭りと空は、そのすべてを受け入れてくれることでしょう。

●補足
 『パフェ一年分』

  • <グラオ・クローネ2019>空に願いを完了
  • GM名
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年03月06日 21時15分
  • 参加人数13/50人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 13 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(13人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)
盲目の花少女
ノア・マクレシア(p3p000713)
墓場の黒兎
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
閠(p3p006838)
真白き咎鴉

リプレイ

 溢れる人の中に混じる黒色が一つ。
 目深に被ったフードがレイチェルの顔を隠し、漆黒の外套が体を覆う。
(願い……やっぱ一つだけだよな)
 外套の袖から伸びた陶器の如く白い腕。
 それを辿った先にある紙には、既に文字が書き込まれていた。
『美味い血が飲みたい』
『死んだ双子の……』
 しかし、その悉くに引かれた射線が彼女の逡巡を物語っているといえるだろう。

 はあ、と紡がれる溜息。
 彼女は迷いを振り落とすように首を振ると、ふと天を仰ぎ見る。
 混沌世界の空。旅人としてこの世界に訪れたその時から、大きな天蓋のように頭上に在り続ける空に変化はなく――しかし彼女には、大きな変化があったのだ。
 迷うように揺れていたペン先がピタリと止まり、滑らかに紙面を走る。
「――今の俺の願いは。これだ」

 ヨルムンガンドは書き込んだ紙を手に、変わらぬ空を見上げている。
 嬉しさや楽しさ、そして寂しさや後悔さえも受け入れてくれた夜空と星々。
 今、迷宮森林の大自然から見上げる空は、今までのどんな夜空よりも綺麗かもしれない。
 きっとそれには、横に友人が居ることも関係しているのだろう。
「うーん……」
 友人――マルベートは、悪魔だ。
 人の願いを叶えることは多くとも、自分の願いを考えることの少なかった彼女の握るペンは未だに空中を彷徨っている。
 同じく漂う視線は、横で空を見上げるヨルへと。
(愛らしいものほど食べたくなるよね)
 今までの迷いは何なのか。すらすらと紙面にペンを滑らせると、空を見上げる友人をつんつんとつつく。
「ねえ、どんな願いを書いたんだ?」
「見たいかぁ…?」
「見てみたい」
(食いしん坊なヨルのことだ。きっと食べきれないほどのご飯とか――)
 しかし覗き込んだマルベートは、予想を裏切る文字に反応に窮することになる。
 彼女を満たすのは、形容し難い不思議な感情。
 黙り込んでしまった大切な友人をヨルは軽く抱きしめた。
 そこは二人だけの、満ち足りた世界。
「えへへ。これからも仲良くしてくれ……な?」
「勿論だよ。だって、ヨルは――」

「――大切で、特別だったのかしら」
 すぐ近くから聞こえてくる二人の会話に耳を澄ませ、ソフィラは大樹に伝わるグラオ・クローネの御伽噺に想いを馳せる。
 彼女には“特別”が分からない。皆を平等に愛し、大切にするようにと。そう教えられてきたからだ。
「……」
 黙する全盲の少女は、しかし、興味をそそられる。

 ”特別とは何か?”

 恐らく平等ではないのだろう。
 教えられて来たことと相反するそれは、ソフィラの中で燻り、身を焦がすような感情を起こさせる。
 見えなくても、聞くことも、触れることもできるのだ。そして――想うことも。
 紙の上に、少しだけよれた不格好な文字が躍る。
「だから、私の願いは――」

 うさ耳フードを目深に被った少女がいた。
 ペン先が動こうとしないのは、彼女も例に漏れず迷っているのだろう。
「五郎さんは何がいいと思う……?」
 かくりと首を傾げ、手にしたクマのぬいぐるみにそう問いかける。
 願いがないわけじゃない。むしろ、叶えたいことはいっぱいあるのだ。
 だからこその、迷い。
「……ん、そうだね。これは、僕が自分で叶えなきゃいけないこと、だね」
 彼女にしか聞こえない声があるのだろうか。
 返答しこくり、頷くノアは、確かな芯を持っているようだ。
(叶えたい願い……自分だけじゃ叶えられない願い、だよね)
 希う。それは、自分だけではできないことを願うこと。
(みんなとずっと、仲良く居れたらいいな……)
 夜空の下、少女の純粋な願いと共に、滑るペンはインクを紙に乗せる。

 8文字と感嘆符を堂々と大きく書き込んだ便箋を、ニーニアはケースへと丁寧に封じ込める。
 ニーニアの職業は『郵便屋』。彼女の夢は、どんな場所にでも手紙を届ける真の郵便屋になることだ。
 ケースへと切手を貼り、消印もペタリと押したニーニアは茶目っ気たっぷりに微笑んだ。
「今回の配達先は、空の上だね!」
 紙に染みたインクで綴られる文字には、それを書いた誰かの想いが込められている。
 それを届け、想いを繋ぐのが『郵便屋』という仕事であり、彼女の目指すところなのだ。
(イレギュラーズになって力を得たんだから、普通の郵便屋じゃ行けない所にも行けるはず! それならどこまでも配達に行かないと!)
「お届けしますよ、空の上の神様!」
 自身の願いも、皆の願いも、全てを届け叶えて見せる。
 それに答えるように、星がきらりと瞬いた。
 ――郵便屋の少女の決意は、父なる空へと届いただろうか。

 雪之丞の握る筆は遅々として進まない。
(願いを、と言われても難しいものですね……)
 普段あまり文字を書かないからだろうかと首を傾げた雪之丞は、横の蜻蛉の紙も未だ白いことに気づくと安堵したように肩を落とす。
「蜻蛉さんは、どんなことを願いますか?」
「せやねぇ、どないしよ……すんなり書けんもんやね」
「本当に」
 蜻蛉は、雪之丞の口の端が小さく、小さく微かに動いたのを見逃さなかった。
 それはきっと本人も気づかないほどの微かな変化。
 しかし、化け猫であり機微に敏感な彼女には、妹のようにも思っている雪之丞のそれを見切ることなど容易いことだった。

 筆を置く音が二つ、コトリと響く。
 同時に書き終えたのだろう。顔を見合わせ、蜻蛉は微笑むように目を細める。
「どこの神さんも、たくさんお願い事聞かなあかんよって忙しそうやね」
「……まったくです」
 二人をふわりとした時間が優しく包む。
「綺麗ですね」
「あら、おおきに」
 蜻蛉の文字は達筆の一言に尽きる。
 拙も綺麗な文字を綴りたいものです、と無表情に零す雪之丞。
 それは最大級の賛辞でもあるのだろう。
「書いとったら、そのうち上手になるよって」
 二人は互いの綴った願いに視線を滑らせた。
 ごく自然で気負いのない動作は、気心の知れた親しい間柄を示すようで。
「蜻蛉さんの願いは、きっと届くと思います」
「……平々凡々なお願い事や」
「それさえも難しい世界です。だから、きっと大丈夫ですね」
 会話は弾み、時は過ぎる。二人の紡ぐこの刻は、永遠にも思われた。
 願わくば、彼女たちに永く続く幸福な時間が、唯、そこに在ることを。

「変わりませんね、この辺りは」
 ラクリマは故郷である深緑の変わらぬ緑に懐かしさを覚える。
 紙は白。願いはまだそこにはない。
(……此処で何を願うべきか)
 彼は夜空を見上げ目を閉じる。
 浮かんでは消え、落ちては浮かぶ有象無象の願いを押しのければ、瞼の裏に映るのは亡くなった友人の姿。
 しかし、彼はそれが叶わぬ願いだと知っている。
「ふむ……」
 なれば、書くべきことは一つ。
 そうして紙に綴られたしょうもない願い事を笑うように、金の髪を風が弄ぶ。
「……笑うなよ、●●――」
 最後にふわりと優しく吹いたそよ風は、彼を見守るように頬を撫でた。

「家の蛇口をひねったら、お酒が出るようになればいいのに」
 すらっと放たれたアーリアの願いは、周囲が滑って転びそうになるのに十分なものだった。
 冗談よと手を振る彼女は、視界に広がる魔法でライトアップされた緑色を眺める。
 天義とは違う、どこか神聖さを纏う雰囲気にアーリアは溜め込んだものを吐き出すように、大きな溜息を洩らした。
「そうねぇ」
 願いごとと真面目に考えれば、浮かぶのは大切なあの人の表情。
 だが、想いは願うまでもない。そんなものは自分で伝えればいいのだ。
 自然と綻んだ表情は、しかし、ふと陰に飲まれる。
(……私が、ハーモニアならよかったのに)
 彼女にもどうしようもないものはある。
 あの人のことを置いて行ってしまうと思っただけで、冷たい何かが背を這うようだ。
 恋慕と、どうしようもないものへの恐怖と寂しさが彼女の心を冷たく冷やす。
「100年なんかじゃ足りないの。もっと、ずーーっと――」
 永久に、永遠に。数えられないほど永く長く――!

 うんうんと唸るメイメイを深緑の木々が優しく見守っている。
「何を願いましょう、か……」
 願いが天に届くように。
 それはきっと叶うに違いないと、彼女は一生懸命に自分の願い事を考えていた。
 ふわもことした羊の少女が懸命に悩む姿は、周囲の夜の冷たい空気を暖かく包み込む。
 欲しいものも、特に無いのだ。優しくしてくれる人を大切にしたいけれど……それは願わなくとも自分でできること。
 それなら。
「美味しい、もの……?」
 ふむ、うんうんと頷いたメイメイは、小さな手で紙にペンを走らせる。
 彼女を緑が、大樹ファルカウが見守るいま、その願いは叶うに違いないのだ。

 メリルナートは願いの籠ったケースを胸に抱き、顔を伏せる。
「……分かってる」
 自分が書いた願い。それが虫の良すぎるものであることを彼女は理解していた。
 どの面下げて、と思う。自分が没落させた相手だ。
 自分のせいで、全てを失った相手に逢いたいと願うなど……。
「……」
 彼女に後悔はない。やったことに後悔はないが……彼に対する想いは薄れることなく、今も胸の内で燻っている。
 きっと、届かないのだ。きっと、叶わないのだ。
 しかし願わずにはいられない。縋らずにはいられない。
 伏せられて見えない彼女のその表情が、全てを物語っていた。
「……願うことくらいは、許される筈ですわー……」
 自分自身へと言い訳するように、ぽつりと零した言葉は夜の闇へと消えていく。

 いつもよりも乱雑な言葉で殴るように書いた紙をケースへと。
 閠はそれを強く握り締めた。夜の暗さが心に落ちた影を更に濃く彩る。
嘆息する。
(あの人達は、死んでしまった以上、絶対に、ボクを許さない)
 死人に口は無いのだ。
 だが、閠もそれは同じ――。
(あの、赤に染まった、記憶の欠片を、ボクの罪を、背負って、抱えて、飲み込んで……だから……!)
 暗く閉ざされた思考。脆く滲むように溢れ出る、炉端で煮詰まった毒のような感情。
 しかし、そんな彼の思考を現実へと引き戻したのは、心配そうに周囲に浮かぶ白と黒の霊魂だった。
「……大丈夫ですよ」
 心を落ち着かせた彼はふわりと口元に笑みを浮かべる。
 肺に入り込む冷たい空気は、熱くなった心を鎮めるのに十分なものだった。
 彼は吐き出すように溜息をつくと、ケースをそっと空へと放つ。


 煙草を吹かす医者。
 ――愛しい彼、そして友人達が無事に日々を送れますように

 友への想いは永久に。
 ――ずっと一緒にいられますように
 ――ヨルを食べたい

 憧れを胸に秘めた全盲の少女。
 ――特別が知りたい

 黒い兎のネクロマンサー。
 ――これからも、みんなと仲良く出来ますように

 人の想いを繋ぐ郵便屋。
 ――郵便配達世界制覇!

 鬼と化け猫。確かな絆は唯、そこに在る。
 ――結んだ縁が、来年もつながっていますように
 ――大切に思う人たちが、無病息災元気で居ますように

 友を想う白き歌い手。
 ――悪の秘密結社新人入団

 永久を願うセイレーン。
 ――永久に、長生きできますように

 ふわもこ子羊。
 ――すてきな、巡り合わせがありますように

 死の香りを纏う咎鴉。
 ――生きる。死んでたまるもんか

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 親戚のお通夜と葬儀で少々お時間をいただきました。お待たせして申し訳ありません。
 
 皆様の想いと願い。空の上の神様は、いつか然るべき時にその願いを叶えてくれることでしょう。
 ご参加ありがとうございました。皆さまの一側面を描写できたこと、とても光栄に思います。
 またご縁があれば、よしなに。

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