シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2018>雪降る夜を見上げて
オープニング
●聖夜のプレゼント交換
幻想北部の小高い丘の上の街、ティルシャ。
そこには『聖女』の御伽噺と共に、昔から言い伝えられてきた伝説がある。
ティルシャの街の裏にある、小高い丘に生えた一本の樅の木。
そこで伝えたい想いと共に贈り物を交換しあえば、想いは成就するという。
真偽はともかく、ティルシャではこの言い伝えを古くから守り受け継いできた。
丘の上の樅の木は、そうして様々な人々の思いを受け継いできたのだ。
今年もまた、想いを告げる人々が集うだろう――
「と、言う話を聞いてきてね。
よかったら、今年は特異運命座標ちゃん達と皆でティルシャでプレゼント交換でもどうかしら?」
「わあ、素敵ですね」
『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)の提案に『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)が両手を合わせる。
シャイネン・ナハトの聖なる夜に、親しい人に想いを打ち明け合う。それもプレゼントと一緒にだ。
ロマンチックな所と、少し現金な面とが入り交じるが、それも含めて楽しそうなイベントには変わりない。
「ふーん、プレゼントを贈り合うのね。
何でもいいのかしら。なんでもいいわよね。私の秘蔵の缶詰コレクションにしようかしら」
「ルーニャちゃんはあとで一緒にお買い物行きましょうね」
『はらぺこ王女さま』ルーニャ・エルテーシア(p3n000050)は相変わらずのはらぺこ具合だ。まあ自分の食料を渡そうというのだから、ちょっとした想いが入っているのかもしれないが。
「それじゃ、シャイネン・ナハト当日はティルシャの街に集合よ!
プレゼント、沢山準備して待っているわ!」
誰に言っているのは定かではないが、こうしてリリィ、ラーシア、ルーニャの三人の行動は決まったようだった。
雪降る夜、空を見上げて。
素敵なプレゼント交換会の予感がした。
- <Scheinen Nacht2018>雪降る夜を見上げて完了
- GM名澤見夜行
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2019年01月09日 22時15分
- 参加人数34/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 34 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(34人)
リプレイ
●ティルシャに集う
小高い丘の上の街ティルシャ。
シャイネン・ナハトの当日、賑わう街並みの中に特異運命座標達の姿があった。
仲良しグループはワイワイと。告白を決めた二人はドキドキと。
プレゼントを選び、樅の木の下へと歩み行く。
奇跡の夜に、どんな想いが繰り交わされるだろうか。
樅の木が、静かに葉擦れの音を響かせた。
●プレゼント
ファントムナイトに芽生えた友情は、聖夜のこのときも続いている。
『また会おうね』の約束を果たすために、二人はこの日この場所を指定した。
互いに仮初めの姿を脱ぎ捨てて、出会う今日はどんな印象を持つだろうか。
互いに距離は近づいて、互いの”音”を確かめた。
「やっと会えた! ギアハート。
ワタシよ、鹿のポシェティケト」
その柔らかで楽しげな声に、はぐるま姫は上品にスカートをつまんで、とびきりの笑顔で答える。
「こんばんは、ポシェティケト。
その呼び方もよいけれど、わたし、今は「リラ」ってお名前があるのよ?」
「……まあ! あなたリラっていうの。
ギアハートで、リラなのね」
そんな挨拶を交わしつつ、二人は揃って樅の木の下でプレゼントを渡し合う。
ポシェティケトからは《オレンジとバニラの香りのお花キャンドルサシェ》を。
はぐるま姫からは《歯車の髪飾り》。
仮初めの姿を脱ぎ捨てて、二人は今一度友達になろうと誓い合うのだ。
想いを、願いを贈る。
大人になっていくと、それがどんどん難しくなると、サンティールが言った。
大人になると、難しい。それは経験を重ねたからか、素直になれなくて。
特別な言葉はいらないはずなのに。自分も出来ているか、不安を零した蜻蛉。
それなら、と。サンティールは願いを、祈りを込めて小さな贈り物を差し出した。
《フリージアの髪飾り》淡い紫色にこめられた、親愛と憧れ。
見慣れない花の髪飾りを、匂いを嗅ぐように口元に近づけて――そっとそれを黒髪へと飾った。
「ふふふ! とってもすてき。
あのね、蜻蛉が元気になれますようにっておまじない!」
「……おおきに、大事にするわ」
愛おしそうに髪飾りを撫でる蜻蛉は今度は自分の番だと、サンティールの手をとりそれを響かせ置いた。
サンティールの目が大きく見開かれる。
《星のチャームが付いたピンク色の口紅》は憧れていた『おとな』の持ち物だ。
「特別な日、特別な相手の為につけるおまじないや」
「蜻蛉、蜻蛉。
それなら僕、いまつけたい! だめ?」
お化粧の指南はまた今度。願うサンティールに微笑んで、二人は樅の木を見上げた。
聖夜を満喫したシオンと鳴はゆったりと歩いて樅の木の下までやってきた。
「今日のお出かけとっても楽しかったね鳴……!」
「えへへっ、素敵な夜で楽しかったのー!」
微笑み合う二人は、そうそう、とプレゼントを取り出した。
「ふふーはいこれー……!
《狐の金のネックレス》……! 町で見かけて鳴に似合いそーだなって思って買ったんだー……!」
「鳴は《銀色の翼のネックレス》なのー! シオンさんに似合うと思ったの!」
互いに渡し合う金と銀のネックレス。微笑みはさらに湧き上がった笑顔に変わっていった。
鳴はすぐに自身の首へとネックレスをつける。
「どうかなー、似合ってるかなーなのっ」
「ふふーとっても似合ってるし可愛いよ鳴……!
俺も付けてみるー……!」
「どーかな?」と尋ねれば「とっても似合っているのー!」と顔を綻ばせる。
高まる想いは口に出さずにはいられない。
「好きだよ鳴……!」
大胆な愛の囁きは二人だけのものだ。
クラリーチェと雪之丞の二人が、樅の木傍の焚き火の傍へと移動する。
ほぅ、と漏れ出る白い息がひらひらと舞う白い雪と混ざり合う。
目にする雪の光景は幻想的で、二人は思わず眺め見る。
「こちらを雪ちゃんと大福ちゃんに。気に入って貰えると嬉しいのですが……」
思い出したかのようにクラリーチェが雪之丞にプレゼントを手渡す。《ふわふわな手触りのストール》。受け取った雪之丞も用意した物をクラリーチェへと渡した。
「拙からは、こちらを。飾り物はあまり、使わないかと思いましたので」
一年、縁を結んで頂けた感謝と好意を込めて、雪之丞が贈ったのは《手套》だ。
ストールを受け取った雪之丞は「今、付けてみてもいいでしょうか?」と尋ねる。クラリーチェはもちろん、と笑顔で答える。
猫の大福と共にストールに包まれれば、胸の内も熱くなる。
クラリーチェもまた手套を手に嵌めて。外気に触れていたその部分が温まれば心まで温かくなるようで。
互いに感謝を述べて、二人は今しばらくの間、焚き火の傍で会話を続けた。
「この間はありがとうございました」
「ふふ、楽しかったわ」
ラーシアとリリィの感謝の言葉に、どこか安堵したようにルフトは微笑んだ。
だが、すぐに追い詰めたような表情となって――
「決戦のとき、俺は二人が心配だった――」
無事であったことに安堵と喜びを覚えると同時、傍で守りたいという想いに気づいたと告白する。
それは友人に寄せる想いではないかもしれない。それでも二人が大事なのだと、儚げに伝える言葉は、罪の告白のようで――
「ありがとう。ルフトちゃんが守ってくれるのならば安心ね」
「私もあまり無茶しないようにしますね」
二人を大切な人だと告白するルフトに、リリィとラーシアは微笑んで、もう一度感謝の言葉を述べる。
親愛を込めた二人の眼差しを受け、ルフトは今一度自身に誓いを立てるだろう。
二人を守る騎士として。
「わぁ~……! 真っ白に積もってます!」
「聖なる夜に雪景色か、幻想的だな。
――やっぱり、少し肌寒いね」
降り積もる雪景色を眺めてユーリエが声をあげる。後につくリゲルは感嘆の息と共に白い息を吐いた。
「ああ、流石に雪の降る中は冷えるな。
でもみんなと一緒ならあったかいし、雪は綺麗だ」
ポテトの言葉に、シュテルンがこくこく頷く。そんなシュテルンはこれから始まるプレゼント交換会を楽しみにしていた。
「それじゃ一斉にプレゼントをだそうか。せーの」
リゲルのかけ声で、それぞれが持ち込んだプレゼントを見せる。
「私は《焼き菓子の詰め合わせ》だが……ユーリエと被ってしまったな」
「平気ですよ! 《ケーキ》と焼き菓子どっちも美味しいですし!
これ、ジルバプラッツ通りで売ってる美味しいと評判のお店のケーキなんですよ~!」
「俺からは皆に《手帳》を贈るよ。色々と便利に使って欲しいな」
「リゲルの、てちょー、カッコイイ!
ヨテー? お仕事、とか? お出かけ、とか? 書く、する?
……シュテ、ぷれぜんと、とっても、悩む、した、だけど――」
そう言ってシュテルンが出したのは《折り紙で出来た花》だ。
「リゲルは、あお〜ブルースタ~信じ合う、心~。
ポテトは、きいろ〜ガーベラ〜やさしさ〜。
ユーリエは、あか〜バラ〜じょーねつ〜」
それはシュテルンが見てきた各人の心の形。自らの心の形をこうして表現されるのはなんとも照れくさい感じもあるが、同時に嬉しさもあるというものだ。
「シュテルンは優しい花を有難う。
折角だし、家に飾らせて貰うな」
「初めて見たよ。綺麗な青色だな!
一人一人の事を考えてくれたんだな……想いが伝わるようでとても嬉しいよ」
「シュテさん、折り紙ありがとう!
確かにこの赤色の薔薇は……愛。
お店に飾っちゃおー! ありがとうございます!」
四人は交換し合ったプレゼントを喜びのままに受け取る。そこには、互いに感謝と親愛の想いも受け取った。
樅の木の下で、温かな紅茶とケーキを摘まみながら、今しばらく雪景色を堪能するとしよう。
この世界の文化の成り立ちに、古の昔にいたかも知れない旅人の存在が関わっているのかどうか。
そんなことも頭の片隅において、冬佳と千歳は交換用のプレゼントを探しにティルシャの街を巡る。
「さて、今年は何を冬佳さんにプレゼントしようか」
「色々あって目移りしてしまいますね」
服に、アクセサリーに……と、並ぶ商品に視線を這わせ、何が良いかと考える。
そうしていくつかの店を巡って見つけたのは一つの《ペンダント》。
「んー、これ何かどうだい? お互いに持っていれば、離れていても心が通じ合えるペンダントだってさ」
千歳の提案に、冬佳が覗き込んで興味深げに見つめる。
「ペンダントのお守り……ふふ。こういうものがあるのは、何となく自然な感じがしますね、この世界だと」
異世界――日本で言えば海外由来の物品であるが、ここ幻想においては自然に生まれた物のようにも思えてくるから不思議だ。
「素敵です。じゃあ、これにしましょう。これを一つずつ買って……」
互いに交換し合えば、喜びに笑みを浮かべる。
「改めて、これからも宜しくお願いするね。冬佳さん」
「はい。宜しくお願い致します、千歳君」
仲睦まじい二人の首元でペンダントが輝いた。
樅の木の下、緊張と高揚に鼓動を早くする二人がいた。
告白。
純粋な好きという気持ちを言葉と共に届ける行為は、それ相応の覚悟が必要だ。
ヨハンは十分に覚悟していた。たとえ恥ずかしさに顔を紅くして、口からでる言葉がたどたどしくなったとしても、全ての”好き”を伝えるのだと。
「僕は決めました! 決めたんですっ!
マナさんが大好きという気持ちを! マナさんの誕生日、この日に!
いつもマナさんは僕を支えてくれてました……ずっとマナさんを愛し続けます!
僕と付き合ってくださいっ!」
勢いと共に《チョコ菓子》を差し出すヨハン。
視線の先、マナの表情は紅潮し、すぅ――と湧き上がる涙を零した。
期待していた告白は、歓喜の涙を零させて、震える唇を開かせる。
「心から、喜んで……」
覚悟はもう一つ。
言葉と共に返す贈り物は――二人の影が近づいて、そっと唇が重なった。
「あう」
そっと唇に触れれば、今し方感じたぬくもりが溶けていくようで。
自分の行った行為に心は散雑となって、紅潮した顔をふらふらと揺らす。
アマリリスは溢れる想いの行き場に困り、勢いままに愛するシュバルツへと抱きついた。
「おっと」
抱きつかれたシュバルツもアマリリスが愛おしく思う。自然と手がアマリリスの頭を撫でた。
「あうっ、あの、これっ!
せ、先日の大戦では守ってくださり、ありがとうございました」
「あぁ、砂蠍の件か。俺としちゃ当然の事をしたまでなんだが、お前が無事で良かったわ」
そう言って見るのはアマリリスの顔ではなく、その前に差し出された《練達遊園地のチケット》だ。
アマリリスが遊びに誘うとは珍しい、とシュバルツが笑う。一緒に遊びに行くのはもちろん歓迎だ、とチケットを受け取った。
「それじゃ、俺からもプレゼントだ。ちょっと腕を借りるぜ」
大好きオーラを悶々と放ち抱きつき続けるアマリリスから腕を取るのは苦労したが、その腕に《白銀のブレスレット》を付ければ、アマリリスは喜びに顔を蕩けさせた。
「今年も色々あったが、来年もよろしくな。アマリリス」
「はい、こちらこそよろしくお願いたしますっ」
銀凜の騎士も、今日という日ばかりは一人の恋する女の子だ。
「ほらほら、セティアちゃん色々あるよ」
ゆるふわ日常モードのエメが指さし、寒さにエモーショナルを感じて眠くなってるセティアを引っ張る。
並ぶアクセサリーが、ライティングを反射して輝いている。
「セティアちゃんはどんなアクセサリーが好きなの?」
「わたし好きなの、なぞだから、たぶん」
自分で装飾品を選ぶ事がほとんどなかったというセティアにクスりとエメが笑って。
「いっとくけどわたし、ふゆはおこたがアクセサリーだから。エメさんは?」
「なあに、それ。
私はね星と花のモチーフが好きなんだ。こんなのとか」
選んだアクセサリーを見て、セティアはエメにたぶんよく似合いそうだと言葉にした。
「こういうのどう?」と選んだ白銀細工の宝石をつけたアクセサリーは、中々に良いお値段だ。さすがにこれは手が届かないねと笑い合う。
「セティアちゃんには、こういうのが似合うと思うの」
エメが選んだ《七色の小さな花と別添えの蝶の細工のイヤリング》は実に見事な出来映えだ。二人はこれにしようと、買い上げる。
すぐに付け合って見れば、ゆらゆらと揺れる遊色が綺麗だ。
「にあう?」「うん。とっても可愛いね」
鏡に映る自分にドキドキのセティア。そんなお姫様のようなセティアにドキドキのエメ。
楽しい買い物に気分はてんあげぽよだ。
【木漏日】の面々が、揃って樅の木の下へとやって来る。
楽しみにしていたアレクシア、アリス、ヨルムンガンド、初めての事に少しドキドキしているLumilia、緊張で吐血しかねない珠緒の五人は用意したプレゼントを囲ってぐるぐる回す。
ワイワイと、楽しみながらのプレゼント交換。
そうして、ランダムに巡ったプレゼントを、それぞれが手に取った。
「よぉし……それじゃ開けるぞぉ……!」
最初に開けたヨルムンガンドには《医療キット》が贈られた。
「桜咲の用意したものですね。
使用経験のある実用品です」
「戦闘じゃ前に立つ事が多いからなぁ……! これは役にたつぞぉ……!」
「それじゃ次は私の番だね」
アレクシアがプレゼントを開ける。中には《赤いゼラニウムの花を模した髪飾り》が入っていた。
「わぁ綺麗!」
「私のですね。皆さん女性の方ですので使用できるかと思いました。
感謝を込めて贈らせて頂きますね」
「こちらこそありがとう! 大切にするね」
「それでは次は桜咲が開けさせて頂きます。おぉ、これは……」
珠緒が開いた中には《お菓子作りの本と簡単な調理器具》が入っている。
「あ! それは私の!」とアレクシアが声をあげた。
「お菓子作り、大変興味があります」
「混沌はお菓子なイベントが多いからね。
なんて、ふふ、本音を言えば、一緒にお菓子作り出来る人が欲しいなっていうのもあるんだけどね!」
「桜咲にもできるでしょうか? よかったら今度一緒に作って下さい」
新しい挑戦事が生まれた珠緒は喜ぶ。
「それでは私も開けさせて頂きます」
Lumiliaが開けば、そこには《マフラーと手袋》のセットだ。
「それ私が用意しました!
まだまだ寒い日は続くし、直ぐにでも使える物の方が良いかなって」
手を上げたアリスは自分のプレゼントを喜んでくれるか内心ドキドキだった。
「ふふ、とてもお洒落で素敵ですね。早速使わせてもらいます」
雪景色の中では手袋もマフラーも、どちらも暖かくて良いものだ。装着したLumiliaが暖かさに微笑む。
「それじゃ、最後私が開けるね!」
アリスが開けると、中からは《超ロングのマフラー》が。
「それは私のだ……!
一人一個ずつって事だが、折角皆で集まったんだ……!
ふふ、皆で一緒に巻けば……きっと暖かいからなぁ……」
そこには「これからも皆が仲良く、新しい縁も含めて一緒に居られますように……」と願いが込められている。
せっかくなので、と五人はそのマフラーを巻いて身を寄せ合う。
ほっこりとした暖かさに五人は顔を寄せ合って感謝の言葉を交わしながら、微笑みあった。
それはまるで【木漏日】のような、そんな暖かさだった。
「聖夜の御伽噺って素敵ですよね……!」
「樅の木の下でプレゼント交換だなんて、ベタと言えばベタと言えるシチュエーションだけれど……」
ワクワクしている九鬼に、少しばかり乗ってあげても良いかとクールに付いて来た竜胆。
早速九鬼がプレゼントを手渡す。
「冬なので、暖かい物に……まぁ、私は年中マフラー巻いてますが……えへへ」
苦笑する九鬼が渡したのは《竜胆の花と同じ色の布に、白い糸が花の形で刺繍されたマフラー》。寒くなってきている今の時期にはもってこいのものだ。
受け取った竜胆は此処まで来てプレゼントを交換しないというのは悪いとも思うもので、しっかりと用意していた紙袋を手渡す。
「 ――ほら、コレ。
マフラーはいつものがあるとは言え、手の方はそうでもないしょ?」
「《手袋》……! もしかして手編みですかっ!」
「そんなわけないでしょ」
そんなふざけたやりとりに、しかし九鬼は嬉しくなって。
混沌に来る前の出来事、自分の立場を思い出し、こうして仲良くしてくれる竜胆が嬉しくて。これからも一緒に、いて欲しい。
そんな告白に、竜胆は一つ息を吐いて。
「……全く。
もしそうじゃなかったらそもそも今日此処に来ていないわよ。
さっき渡したプレゼントが今後も宜しくって言う証。ねっ、分かり易いでしょ?
――改めて、今後とも宜しくね、九鬼」
その返答に、九鬼の顔がパッと華やいだ。
プレゼント交換というだけあって、ティルシャの街は二人組以上が多い。
そんな中をクリスティアンはルンルンスキップで巡っていた。
今日は一人。そう一人なのだ。
けれど、それを寂しいとは思わない。
「楽しんだもの勝ちだろう?」なんて呟きながら、やはりルンルンッスキップするのだ。
美味しいケーキに紅茶の茶葉、そして新しいティーカップ。
家に帰れば盛大なティーパーティが行われるに違いなかった。
樅の木の下、湧き上がる殺気を殺そうともせずに由奈が聖奈を睨み付ける。
「……邪魔したら……殺す……」
「ひぇ……」
そんな二人の元に渦中の人物、死聖がやってくる。
「聖奈、由奈、お待たせ。
寒くないかい?」
到着早々に自らの足で立って自分の上着やマフラーで二人を暖める。
由奈は告白と共に《手編みのマフラー》が渡されて死聖はニッコリ微笑み受け取ると、由奈を抱きしめる。
次いで、聖奈もプレゼントを贈る。
そっと渡される《ネックレス》。これも死聖は感謝の言葉と一緒に受けとった。ハグは当然ある。
そうしてお返しに、死聖は用意したプレゼントを二人に贈る。
「お洒落なものとかあまり知らないから――」なんて言いつつ渡したのは聖奈に贈った《純白のドレス》と、由奈に贈った《ガラスの靴とメッセージカード》。メッセージカードには『約束という魔法が切れたら迎えに行くね』なんて書かれていて。
そのメッセージは由奈にとっては最高のものだ。約束待ってる、と頬を上気させた。
プレゼント交換を終えた死聖は、聖奈の腰を抱くと、顎をクイッと上げて、耳元に言葉を零す。
「聖奈。
プレゼントとは別に今夜、部屋を取ったのだけど……僕と一緒に、過ごしてくれないかな?」
「ふぇ!? あ、あの……聖奈で宜しければ是非!」
そんなやりとりを遠目に見ていた由奈がいもうと復讐帳に名前を書きつつ、
「……二人でどこ行く気なのかな?
……やっぱりあの女……いつか殺す……」
「……ハッ! 殺気! ……由奈ちゃん怖い……」
零れる殺気に聖奈の顔が青ざめた。
「お待たせしましたぁ」
ニーナが降りしきる雪を雑観抱きながら眺めていると、そう小さく声が掛かった。
「ファンの方と一緒に遊ぶなんて本当はダメなんですけどね」
なんて言いつつ今日という日を楽しみにしていた幻想アイドルすぴかちゃんは束ねた髪を帽子で隠し、ニーナと共に店を見て回る。
温かくなるニーナの心。その内に秘めたる想いは『愛』なのだろうか。
二人で選んだ《月と星のネックレス》。揃いネックレスを交換し、短い秘密の逢瀬は終わりを告げる。
「これからも応援するよ、すぴかちゃん」
その言葉に、すぴかちゃんはとびきりの笑顔で返すのだった。
樅の木は、その足下で行われる気持ちの交換を静かに見下ろしていた。
多くの想いが繰り交わされて、暖かな波動を生み出していく。
聖なる夜の特別な気持ち。
その気持ちを受け取って成長する樅の木は、いつかその想いを空へと届けようと、手を伸ばしていく。
きっとそれが届けば――願いは叶うに違いなかった。
シャイネン・ナハトの夜が、ゆっくりと深まっていく――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
皆さん贈り物は贈り合えたでしょうか?
アイテム配布は行いませんが、これを記念に特殊化してみても良いかも知れませんね(商売上手ではないですよ)。
依頼お疲れ様でした。素敵なプレイングをありがとうございました!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
聖なる夜は想いを伝える絶好のチャンス。
プレゼント共に素敵な告白をしてみましょう。
●出来る事
雪降る夜空のその下で、プレゼント交換ができます。
プレゼントの用意を忘れたという貴方、心配いりません。
ティルシャの街はそう言う人の為にプレゼントを販売しています。一緒にお買い物というのも悪くないでしょう。
一人で参加される方も、二人以上で参加される方も以下のシチュエーションを選択してください。
ピンポイントにシチュエーションを絞った方が描写量が上がるはずです。
【1】樅の木の下でプレゼント交換
いつもの感謝や、思い切った告白、雑談まじりにプレゼントを交換しましょう。
互いの思いを確認しあえば、きっと素敵な聖夜になるはずです。
樅の木の下では小さな焚き火も起こされているので、暖かいはずです。
【2】プレゼントを買う
プレゼントの用意を忘れた貴方はこちら。
ティルシャの街でプレゼントを買いましょう。
二人で選んでから交換をするのも悪くないかも?
【3】その他
その他、迷惑にならない範囲で自由に楽しめます。
●書式
書式運用しています。
出来るだけ沿うようにプレイングを記載ください。
一行目:上記出来ることから【番号】または内容
二行目:同行PCやグループタグを記載ください。NPCにご用命ならばこちらに。完全単独もこちらに記載ください。
三行目以降:自由記載
●NPC
リリィ=クロハネ、ラーシア・フェリル、ルーニャ・エルテーシアの他、ステータスシートのあるNPCは『ざんげ』以外、呼べば出てくる可能性があります。
リリィとラーシアはプレゼント交換を楽しみにしています。ルーニャは焚き火の前で涎を垂らしています。
幻想アイドルすぴかちゃんは呼べば変装して出てくるかもしれません。
●その他
・可能な限り描写はがんばりますが描写量が少ない場合もあります。その点ご了承ください。
・同行者がいる場合、書式に従ってグループ名の記載をして頂く事で迷子防止に繋がります。
・単独参加の場合、他の方との掛け合いが発生する場合があります。
・白紙やオープニングに沿わないプレイング、他の参加者に迷惑をかけたり不快にさせる行動等、問題がある場合は描写致しません。
・アドリブNGという方はその旨プレイングに記載して頂けると助かります。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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