シナリオ詳細
<グラオ・クローネ2018>チョコレイトラプソディア
オープニング
●
「ばれんたいんでい? ですか?」
とあるウォーカーが自分のいた世界の話をしているところに出くわした『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が小さな羽をパタパタさせて問い返す。
崩れないバベルによって、大体の内容は通じてはいるとはいえ、異世界の話を効くというのは面白いものである。
「ああ、チョコレートを意中の異性にあげて恋を成就させるっていう呪われた行事だ」
「ふむふむ」
「普通、本命チョコなんていうものは、眉唾だって僕は思っている」
「ふむ? その本命チョコじゃないと恋は成就しないのですか?」
「無論。だが、僕の国では、和の心。調和、空気を読むなんていう、ふざけた風習があってね……」
「はいはい」
「義理チョコなんていう、トラップチョコがあるんだよ」
ウォーカーは両手を握りしめギリギリと歯ぎしりする。
「恥ずかしそうにワタシてくるから、すわ、これは本命、こまったなぁって思ってホワイトデーにこっちも三倍返しとかするじゃん? でも男だろ? ここは30倍返しだ! ってスワロスなんたらのリングを返したんだよ! そしたら相手なんて言ったと思う? 『えー、先輩、その、あれ、義理ですからそんな高価なもの貰えませんし、その、リングとか重いですよ、ありえません』とか言ってきたんだよ!」
「ふええ……」
「今はそれだけじゃない! 友チョコ、逆チョコ、マイチョコ、ファミチョコ、ユリチョコ、ホモチョコってなんだよ! ああ、ユリはいいな! ユリバンザイだよ! つうか、余ったチョコを職場で友人(男)に渡しただけで、ホモ認定だぞ! ふざけるな! 次の日からあだ名がホモ先輩だよ! うちの会社情報リテラシーについて考え直せよ!!!」
「あわわ……」
「というわけで、この呪われた悪の祭りを幻想でも広めたいと思う」
「えええ~……というか灰色の王冠(グラオ・クローネ)の、ことですよね? こちらの世界にもありますよ」
「ユリーカたんも協力してよ! もしかしてさ、この幻想なら僕に本命チョコを渡したいって思ってくれてる誰かがいるかもしれない!」
ユリーカはそれはどうでしょうかなのです……と小さい声でつぶやきつつも、大切な誰かに絆を確認し合う意味で、贈り物を渡し合うというのは素敵なことだと、思っている。
「そうですねぇ……」
指先を口元にあてて、ユリーカはこのイベントの詳細を考えはじめた。
- <グラオ・クローネ2018>チョコレイトラプソディア完了
- GM名鉄瓶ぬめぬめ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年02月23日 21時35分
- 参加人数45/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 45 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(45人)
リプレイ
●立てよ乙女。クッキングタイムは戦場だ!
「うおー! よろしくお願いしますお師匠!」
元気に両腕を振り上げテンションが高いのは『ロリ宇宙警察忍者巡査下忍』夢見 ルル家(p3p000016)。いやちょっと属性盛りすぎ。
「はい、師匠!拙者ハンバーグが食べたいです!」
のっけから既にテンションは振り切って、おやつを通り過ぎて突撃晩御飯である。
(グラオ・クローネでチョコレート作り……それだけ聞けばハートフルなのに、どうしてかしら? 乙女のときめきの空間という概念が既に崩れ去っているわ)
『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)はため息をつく。彼女の戦場はここに幕を開いた。
「任されたわ。だから、少しは真面目にしましょうね、ルル家」
「あぁ! 怒らないでくだされ! 真面目に! 真面目にやりますゆえ! 故に、折檻は、折檻だけはお許しを!」
「しないわよ! ハンバーグなら夜にでも作ってあげるから。ったく、この子は……」
「でもハンバーグは作ってくれるのですな 優しい!」
大げさにビビるルル家に呆れ声で竜胆が答えれば、涙目が一瞬でキラキラとしたものにかわる。元始、女性は実に太陽である。そしてどうしょうもなく単純でもあるのだ。
「さあ、どんなのを作りたい? あ、でも難しいのはやめときなさいよ」
「はい! ユセンであります!!」
「ルル家、あんた知ってる言葉適当にいったでしょう?」
「はい!! そうであります!!」
「湯煎っていうのはチョコレートを暖めて、型にいれるための準備のことよ」
「師匠! おかしいであります! チョコはカカオなる豆から作るのであります」
「って言うか、知識が偏り過ぎよ!?」
ひたすら竜胆が突っ込んで、ルル家が奇想天外な反応を返すというなんやかんやがありながら、無事チョコレートは出来上がる。(だいたい竜胆の功績)
「じゃあ、試食してみましょうか? ルル家の、もらえるかしら?」
ルル家は自分の作ったチョコレートを真剣な瞳で見比べる。ややあって、すこしだけ。ほんのすこしだけできの良いチョコレートを、師匠にわたせば、チョコレート師匠は微笑むのであった。
交換して食べたチョコの味はまるで蜜のよう。
『カレーメイド』春津見・小梢(p3p000084)は大鍋と向かい合っていた。
日頃お世話になっている皆さんに対してのお返し。並々と大鍋に入っている茶色い液体からは、クミンシードにターメリック、カイエンペッパーにコリアンダー、クミンパウダーとガラムマサラのスパイシーな香りが漂っている。
よし、間違いなくカレーである。
気を取り直して、玉ねぎを刻み飴色になるまで炒める。別の鍋で軽く野菜と肉を炒めて茶色い液体(未確定名カレー)に投入しコトコト煮立てる。お玉にすくった熱いカレーの中に板チョコを1/3。多すぎてはチョコレートが主張しすぎる。少なくてはコクが足りない。黄金比の量だ。お玉のなかで溶かした板チョコとカレーの混合物を鍋にもどし、じっくりとかき混ぜて完成! 美 味 し い カ レ ー が 出 来 ま し た !
「チョコレート入ってるかもしれないのでワンチャンチョコですよ! この板チョコカカオ80%ですから、カレーにいれることで50%くらいに薄まるかもですが、50%チョコなら実質チョコ!」
すごく雑な言い訳でチョコ判定に持ち込んだ小梢は大鍋を持ち上げ、仲間たちの元にむかった。
彼の聖剣騎士団団長の『魔法騎士』セララ(p3p000273)はトレードマークの赤いうさみみリボンを揺らしながら気合は十分だ。彼女の擁する騎士団団員六十余名のための義理チョコレート!
料理だって得意なのだ! 年若き団長は湯煎のための撹拌を怠らない! 頑張れ! 君の両手!
応援をされた『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)は半眼で、ひたすら撹拌を続ける。団長の命令ならしかたねーすけど、この人60人て正気か……。
マリナは思う。これいつまで混ぜるんだ。
「テンション上がってきた感じ! マリナ、この調子で目指せ義理チョコ5000個オーバーだよ! どうせなら聖剣騎士団だけでなく、ローレットの全員に配るのを目指すよっ! うおー!」
「あんたアホですか!! そんなに作ったらバレンタイン終わる前に私の私の腕が爆発四散します!」
ふとマリナは思う。ああ、これって誂う格好のネタだと。
「ねぇ所で団長……本命は作らないんです?」
びくりとセララの手が止まる。
「え? 本命チョコ? ええと、まだ渡す人いないけど」
少しだけ脳裏で考えてみる。皆大好きな仲間。皆大切な仲間。特別な相手というのは、思い浮かばないけれども……。
「ふっ……まだお子ちゃまには早い話でございましたね……」
マリナのそのニヤケ顔にはカチンと来る。
「マリナだっていないでしょ! もうっ!」
ぷんすこと頬をふくらませるセララ。こんな顔を他の団員がみたら、惚れちゃうかもしれないけど今は私だけのもの。
「私も今はいませんけど……いずれ取っ替え引っ替えになりますし……? ほらほら、手が止まってますよ。続けて続けて」
この時間を今は楽しもう。
ダンディな『智の魔王』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)は、板チョコと向かい合う。
チョコというものはどうやって作るのであろうと、思っていたが知の魔王たる彼が聞くわけにもいかない。だが、材料の時点で既にチョコであるというのは、流石に埒外であった。ここから、加工をすることで、美味しく、なおかつ美しくなるのだな。……ふむ。
「……刻んで溶かして固める。らしいけど、このまま食べられそうだね」
はじめてチョコを作る魔王と勇者『遠き光』ルアナ・テルフォード(p3p000291)は難題(チョコ)に取り掛かる。
チョコのもとを手に取りつつ刻むための準備。……包丁……。
両手で握る包丁を見つめ頭のなかで事前に調べてきたレシピを反芻し呟くルアナに、グレイシアは心配の視線だ。
その視線が心地いいのかルアナは少しだけこころがはずむ。心配してもらうことが嬉しいと思うなんて!
「…刻むのは良いが、怪我をせぬように気を付けるのだぞ。難しいようなら吾輩が手伝おう」
勇者たるもの刃物の扱いは長けているのだろう。流石に怪我は……。
「いったーーーーーい! 指きったああ!」
してしまったようだ。多少の予想はできていたグレイシアは応急手当をテキパキとこなす。魔王たるものこの程度できなくてどうするか! 内緒だけれども。
(……手当てしてくれた。やっぱりおじさまは優しい)
きゅんきゅんと魔王に心をときめかせる勇者。しかし、真実を知ったとき、勇者はこの魔王を倒すことができるのであろうか? それはまだ誰も知らぬ遠い未来の話。
だからこそ今は。
「あ、そだ。露店でチョコに合うシロップを貰ったの。隠し味に入れていい? 『相手を骨抜きにする効果もある』らしいんだけど」
あわや、真実を知らぬままに勇者にノックアウトされてしまいそうになってしまう魔王。
「……それは辞めておこう。大方、呪術の材料か何かであろう」
効果の程は怪しいが、今この成長過程の勇者に倒されるわけには行かぬと回避する魔王の頬には冷や汗が流れていた。
『正直な嘘つき者』リュグナー(p3p000614)は、はじめてのチョコ作りに挑む。購入するよりは自作するのが低コストであるからだ。
材料や機材は情報としては知っている。しかしいざやってみるとそれはなんとも思い通りにいかないものである。
「む? ボウルの中のチョコはどこへ消えた?」
かき混ぜるうちに、遠心力の悪戯で消失したチョコに焦りを隠せないリュグナーをハラハラ見つめていた『儚き雫』ティミ・リリナール(p3p002042)が声をかける。
「はわ、こうすると良いですよ」
ボウルをうけとり、仕切り直しで優しく撫でるようにチョコレートをヘラでならしていく。
彼女は料理は得意なほうだ。奴隷時代(むかし)は粗末な材料から工夫していたが、今は豊富な材料から、料理を作ることができる。だから沢山。沢山いろんなものが作りたくて。覚えたくて。一生懸命に勉強した。
「どうやらこの分野は、ティミ……貴様の方が優れているようだ。大人しく助言を聞くとしよう」
彼が自分を頼ってくれるのは嬉しかった。いつもは尊大な彼がおとなしく言うことを聞く姿というのは少々意外でもあり、微笑ましいことだ。
「ふむ、こうか……」
べきり。ヘラから嫌な音がしたが、この際無視だ。
「ふふ……」
「……む、何だ、ティミ。何を笑っている?」
笑い声に、不満げにティミを見やれば、またチョコがボウルを飛び越えた。
「リュグナーさん……」
「なな! なんと暴れもののチョコだ」
器用そうで何でも出来ると思っていた相手の意外な弱点。それを知ることができたのが、一番の収穫だ。
ティミは嬉しそうに笑顔をリュグナーに向けた。
チョコはこぼしたこともあり小さなものになった。でもそれは一生懸命の証。
リュグナーは納得は行かないけれども、このはじめて芸術品の行き場を考える。
「助言の礼だ、貴様にくれてやる」
ティミに向かってラッピングされた小さなチョコを押し付けようとして、考え直す。それじゃだめだ。
「ありがとうございます」
『渡された』小さなその宝石は、きっとティミの宝物になるだろう。
『魔剣少女』琴葉・結(p3p001166)は借り物のキッチンでチョコレートケーキに挑戦する。
簡単なものだけど。凝った所で渡す相手もいないし。まあ、自分のためのチョコっていうのもあるのでしょう?
「おい、結。もっと湯煎は丁寧にしろ!」
相棒の【魔剣ズィーガー】が姑よろしく小言をはじめる。
「おい!分量はちゃんと測れ! 菓子作りは分量が生命だぞ!」
「ああもう、うるさいな。アドバイスは嬉しいけど!」
「ところで、結よ、お前渡す相手もいないのに……酔狂なやつだな」
「別にいいでしょ? チョコケーキたべたいときだってあるもの」
「もしや……寂しい自分チョコか? そんな大量に……全部一人でたべるのか?」
「そ、そうだけど? 作って食べないわけにはいかないでしょ?」
「食い過ぎだろう、最近俺を振るときに二の腕がぷるぷるしているの気づいて……おい、やめろ! ボウルは! やめろ! 柄が、欠ける! 叩くんじゃねぇ!」
なんとも騒がしい一人と一振りの一コマであった。
『揺蕩う魂』幽邏(p3p001188)はひとり部屋の片隅で、チョコレートを作る。誰にあげるわけでもないけれど。
器用な手先が作り出すその繊細な動きはまるで芸術。
チョコレートの羽はまるでともすれば本当に飛び立ちそうに成るほどの出来栄え。
彼女はウンウンと頷くと、そのチョコを持って外にでる。自分の羽はあるけれども。このチョコで空がとべるといいなとすこしだけ想いながら。
『宿主』ブラキウム・アワリティア(p3p001442)は同胞へのお土産にとチョコを作る。
ギフトのお陰で量産体勢はバッチリだ。
「さぁって、明日はグラオ・クローネだしあの子達にお土産でも作ってやるかね」
少女は幸せそうな顔で語る。人のために作るとき、本人もまた幸せな想いができるものだ。
『すっかり板についたな…まぁ、似合ってはいるがな』
術具は答える。親愛なる契約者に。
「生活力の無いのが多いからねぇ、仕方ないだろうさ」
出来上がるは、チョコチップクッキー、厚い板チョコ、カップケーキ、チョコ菓子というあらゆるそれをどんどん作り上げる。
「制約はあるけどアンタと契約してほんと便利だわ」
少女は笑顔で術具に語る。
『こんな形のギフトになるとは我も予想外だったが』
呆れたという口調で語る術具はまんざらでもないのだろう。
「手料理じゃないとうまくいかないのはちょいと面倒だけどね」
『贅沢な悩みだな?』
「ははっ、違いない。ちょっと前まで食うのに困ってたっつうのにね?」
術具がいることで、少女は少しだけ救われた。彼らの関係は良好である。
『リグレットドール』シュリエ(p3p004298)と『断罪の呪縛』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)は並んでキッチンに立つ。
「チョコ作りを教えてやるにゃ! 見てるからとりあえず作ってみろにゃー」
(初めて作るけど……経験者が隣にいると少し安心ね)
レシピは読み込んできた。そらで内容を言える程だ。言われてぎこちないながらも堅実な手つきでアンナはレシピ通りに作りはじめると、ぴしゃりとその手にシュリエのしっぺがとんでくる。
「ええと、これをこうし……な、何っ?」
「……ちっがーう! なんにゃそのLv10の勇者がスライムを狩るような淡々とした手つきは!」
猫の先生は厳しい。
「せめてぬいぐるみ愛でる時の十分の一ぐらいは愛情出せにゃ!バレンタイン舐めてんのかにゃ!?」
愛情こそが最大のスパイス。手つきにそれが見えないことに憤慨する猫先生。
「ぬいぐるみは関係ないでしょう、というかこんな所でそれを大声で言わないで……!?……ま、まあ例えは分からないけれど、駄目な事は理解したわ。でもレシピ通りにしたのだけど……」
間違っていないはずだ。今は2頁目の第三項。ここまでの流れにミスはなかったはずだ。
「レシピとかいらねーにゃ! そんな本ヤギに食わせちまえにゃ!」
猫先生のめちゃくちゃな理論にあわあわと目を白黒させるアンナ。
「愛情…?難しい事を言うわね」
猫先生は失敗を恐れているわけではない。人から人への想いを込めることが『料理』であると伝えたいのだ。
「別に恋人じゃなくても、アンナにも大切な人はいるにゃ?思い浮かべながらやってみるにゃ」
言われてひとり、ふたりと大切な人を思い浮かべるアンナ。……うん。折角ならあの人達には美味しい物を届けたい。
……それに喜ぶ顔が見えたら……きっと嬉しい。
頭のなかのレシピが消え去り、手つきが不器用になっていく。でもそれでいいのだ。と猫先生は思う。
「……うむ、少しマシになったかにゃ♪」
「……あれ。今、砂糖の分量合っていたかしら……?」
今やレシピはない。彼女らが作った後にレシピは完成していくのだ。
「致命的なミスはフォローするから、そのままやってみるにゃー」
人のレシピじゃない。アンナだけのチョコレイトレシピ。それはきっと尊いものなのだと、猫先生は頷くのだった。
「なんて美しい城!」
ロスヴァイセ(p3p004262)は芸術的なチョコの城を建設中だ。精緻な文様、ロココ調の美しい装飾。ナイフで刻んだ模様は芸術の域だ。
「ふむ、混沌肯定でも培われた技術は弱体化してないものね」
えへんと胸をはる。
そんなロスヴァイセの袖がくいくいと引かれ、振り向けばそこには『銀血』白銀 雪(p3p004124)。
「その、作り方、教えてくれ」
白銀雪は不器用である。作り方は聞いていた。だからできると思っていた。なのに、十数回も焦がしている。
甘いのは得意じゃないが、焦げたチョコの苦味までいくとそれはもう違うものだ。
誰か、だれか教えてくれ。チョコレイトの作り方を! どうしてうまくいかないのだ! そう思った彼女が見たのは美しいチョコの城壁。プロの人だ! そう思った雪はいてもたってもいれなくなり、ロスヴァイセに声をかけたのだ。
二三度目をぱちくりとさせたロスヴァイセはニッコリと笑って答える。
「いいわよ、でも私は甘くはないわよ!」
「うむ、甘くないチョコがいいのだ」
少しだけずれた返答。先生ができたことに雪は無表情なりに喜びを表現する。
「あー! だめだめ! 直火だめ!!」
即席の先生と生徒の戦いが今始まった!
「何かお困りの事がありましたら、お気軽にお申し付けくださいね」
あらゆるシーンをお手伝い(おせっかい)いたしますわ、皆様が素敵な一日を過ごせますよう。
『クールミント』アンジェリーナ・エフォール(p3p004636)がそんな二人に声をかける。
雪の先生がまたひとり増えた。メイドに声をかけられた二人は、現在進行系で大変になっている鍋を指差せば、テキパキとアンジェリーナが片付けて、簡単な作り方をせつめいしていく。
それはわかりやすく、不器用な雪でもなんとか形になるものが出来ていく。
それに満足した笑顔を浮かべながらアンジェリーナもまた、合間に余った材料でチョコを作った。
「ん、我ながら上出来です。渡すモノでもないんですけどね」
『静寂望む蒼の牙』ブローディア(p3p004657)は困惑していた。インテリジェンスナイフである彼はストロベリーブロンドの少女がひたすら作り上げていく大量のチョコレイトに当惑しかない。
「何だ……そんなに多くの材料を持って。私の分もあるのか?」
少女は頷く。
「いつも言ってあるように、私は食べることが出来ないのだから形だけでいいのだ。もしや妹御に渡す分か?」
少女は頷く。
「それにしても少し多いな……が、その他に渡すあてがあるとも思えないぞ?」
少女は頷く。
「ちょ、ほんとうに大丈夫なのか? よもや自分のためのチョコレートではあるまいな。それにしては多すぎるのではないか?」
少女は頷く。彼女の目方が危険域になるだろう未来を想像し、蒼の牙は震える。
「程々にな? 本当だぞ? フリじゃないからな?」
少女は三度頷いた。
乙女の花咲くキッチン。最後は全力、全身全霊の『魔王勇者』ルーニカ・サタナエル(p3p004713)だ。
とびっきりの甘いチョコレイト。
食べた人間がとびきりの笑顔になれるような、そんな幸せなチョコレイトがつくりたい。
味見をしながら慎重に器具を使い、丁寧に行程をすすめるルーニカは楽しそうだ。
同じようにチョコを作る同輩とも情報を交わしながら、味見をしながら、完成したそれは、とてもとても素敵な宝石。
交換して食べたチョコもとても美味しかった。自分が笑顔になってしまうのに少しだけ、ほんの少しだけ嫉妬したけど、交換した相手も同じくらいの笑顔だった。だから満足だ。
出来上がったチョコを手に、ルーニカの冒険がはじまる。みんなに笑顔を届けるために。
素敵な笑顔になってくれるといいなあ! きっとそれは叶うはずの未来!
●グラクロのメインイベント! ファミチョコ
シュトロゼック・ファミリーがマスターである『拳力者』リオネル=シュトロゼック(p3p000019)に誘われ集まる。
「ファミリーの皆へ、オレからの日頃の感謝を込めて、ってやつだな」
事前に作ってきた、チョコタルトをリオネルは披露する。それぞれのファミリーにたいして、イメージする何かを象ったそれは、愛情に満ち溢れている。
「ヒィロ!」
「はい!」
『夢見る狐子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)に渡されるのは星型。世界を回る願いを星が叶えてくれるように。
そんな彼女からはおっきくて真ん丸で、これでもかってくらい甘々~なチョコ。茶色のリボンのついた赤い包装紙はリオネルをイメージしている。他の皆にも髪色の包装紙に眼色のリボン。大切な仲間を思って包まれたおっきくてまんまるなチョコは甘い宝物。新顔だからこそ皆をみていることを知らせたい。そして自分を知ってもらいたい!
「クラリーチェさん!」
「はあい」
『ねこだまりシスター』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)には猫の形。
「それしか、浮かばなくって……」
頬をかくリオネルにクラリーチェは柔らかく微笑む。
「ありがとうございます。大切に食べさせていただきますね」
猫のシスターはうれしそうに、猫型のタルトを受け取る。
リオネルに渡されるは、一口サイズのチョコマフィン。かわいいラッピングのなかに収まる小さなマフィンは見るだけでも楽しさが伝わってくる。
「お口にあえばいいのですが……」
手作りのものを交換するというのはちょっと緊張するものだ。
「次はクロジンデさん!」
「はーい!」
彼女に渡されるは開いた本の形。
「おー!」
「前の仕事で資料に囲まれてそうって思った」
『Esper Gift』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)はマーブル模様のランプチョコ。透明な袋にいれて色違いのリボンでラッピングされたそれは皆の笑顔を照らすような仕上がりで。
「ローレットで受付嬢やってた頃は毎年大量の義理チョコを用意していたものだけど、今回は内輪だしね」
ぱちんとウインクをして、クロジンデは特別だよ。と嘯く。
「で、最後に樹里さん!」
「はい」
『飴色』伊吹 樹理(p3p000715)に渡されるはハートの形。
「おおー」っとメンバーがざわついた。
「ちっげえ! この交換会をおもいついたのは樹里さんなんだ! そういう気遣いとか、そういうの考えたらハートしかないかなって思って」
オレ、作るだけで精一杯だったから……と口の中でモゴモゴと呟くリオネル。
「その方がきっと楽しそうだよね、っておもったからね」
普段時間が合わないメンバーと時間を合わせてのイベント。それはきっと楽しいと思ったから。
彼女が用意したのはチョコの詰合せ。
ちょっと苦いビターなのと、甘さ控え目にしたミルクチョコ。それぞれ、動物の形に焼いたビスケットに乗せて、見た目も楽しく。
「あ、オレ、なんか飲み物もらってくる! チョコにあう飲み物ってなに? 誰か詳しくない?」
リオネルがそう問いかければ、紅茶、緑茶、ジュースとそれぞれの答えが返ってきた。
「バラバラじゃねーか!」
文句をいうものの、皆は笑顔だ。
甘いチョコレートが呼ぶ笑顔のこの時間は何ものに変えることの出来ないキラキラとした思い出。
ファミリーで共有できる宝物になるだろう。
ファミリーの面々はリオネルだけではなく各々で交換をはじめ、その場で食べ始めるチョコレイトパーティ。
甘さと美味しさで皆の顔が綻ぶ。緊張もあったけど、それも最初だけ。リオネルがもってきた飲み物と一緒に彼らは楽しい時間を過ごしたのだった。
「みんな!これからもよろしくな!」
乾杯の音頭をとったリオネルの笑顔はファミリーにとってもきっと忘れることはないだろう。
●グラクロ、メインイベント。スイートな交換会。
『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)が用意するは、あまあまドラゴンフルーツ味のチョコ。
上半分を白と赤の斜めのストライプに。熟したドラゴンフルーツはスイカのように甘いのだ!
食べると血行が良くなり頭が冴え、元気はつらつ! 何度も試行錯誤した自信作なのだ。
ラッピングには『社長LOVE☆』手書きメッセージも可愛くきめた。だからもじもじとしながらシエラは敬愛する社長に恥じらいながら渡すのだ。ナイス演出! 自分でもはなまるにじゅうまるだ。
「あのあの、これ、私の気持ちです! 受取って下さい!」
『悪い人を狩る狐』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)もまた、自分の世界にはなかったこのグラオ・クローネを楽しむ一人だ。
朝早起きして買いそろえた最高級の素材――カカオから砂糖までこだわりの逸品で作り上げたデフォルメされた可愛らしい猫さんチョコレイト。パステルカラーのかわいい包装紙までがミアをイメージしたもので出来ている
「ミアちゃん、どうぞ」
そんな白猫ミアの宅急便社員わんわんおねーちゃんと金色流れ星のマスタールルに『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)がお返しするのは白猫型ホワイトチョコレート!
ミアそっくりにできたかわいいにゃんにゃんだ。きっとふたりともメロメロになるだろう。
「ミアの会社の……お得意様……と……No1どれ……じゅーぎょーいんに猫天使ミアから……愛のプレゼント……なの……♪
さぁ……感謝して、味わうといい……の……♪ これからも……白猫ミアの宅急便を……よろしく……なの♪」
「やったー! 社長からのチョコ! 一生の宝物にします!!」
天に掲げながら片足でくるくると回りながら喜びを表すわんわんおねーちゃん。
「ありがとう、ミアちゃん」
どんなチョコをもらえるか楽しみで寝れなかったルル。
そんな二人に告げる猫天使の言葉は、ずいぶんと守銭奴もとい現金なものであった。
「そしてお返しに……3倍のチョコをよこす……のっ……♪」
●嫉妬団はくじけない
行事自体は構わん!
ただ実際に街中で睦まじゅうしとるんを眺めとると何か腹立つ!(嫉妬)
自分で恋人やら家族やら作る努力をする気は一切ないけど他人が持ってるの見るのはむかつく!(クズ)
『風前の塵』艶蕗(p3p002832) は平常運行だ。冬は恋人たちの季節。どうぞどうぞ、世の中の商業が滞りなく周るよいイベントではないか。
「おお、艶蕗か。息災だな。今日は妻がグラオ・クローネの庶民の祭りをみたいといってな」
ニコニコ笑顔のお腹がてっぷりとした貴族に声をかけられひきつり笑顔で挨拶を返すが心はどんより雨曇だ。
「言う訳でこの大量に買い込んできた竹輪で台無しにしたる!」
両手の指の間に竹輪を構える。明日の食事はどうしようってちょっと思う。だって素寒貧で明日からの生活の当てが無いのだ。けどまあそれはそれ! と全力後ろ向き独走状態の前向きさで艶蕗は目を光らせる。
さあ、幸せのグラオ・クローネよ! 泣き叫べ! 甘い雰囲気よ! 磯臭ぁなれ!
その横を『暴牛のモルグス』Morgux(p3p004514)が通り過ぎる。
「この時期のチョコは何処見てもたけぇな。安いとこはねえのかな?」
街を歩きながら、安い店を物色する。竹輪が目の端を飛んでいった。ちくわ大明神。あいつ誰だ。
「お、ここは安そうだな。ここで買うか…。姉さん、これを五つ頼む。」
会計は滞りなく進む。
「ギェー」
艶蕗が濁った悲鳴をあげる。巡回中のヤクザである『任侠』亘理 義弘(p3p000398)と自警目的の『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)に捕縛されたのだ。
「あ、いや、その。違うんでやんすよ旦那、そのええと別に悪事をしようとしてたんやなくてその祝福的な何かな様な気がしなくもない何かであってでやんすね……」
上目遣いでおどおど艶蕗が言い訳をするが両腕をむくつけき二人の男に掴まれ身動きができない。
(グラオ・クローネ……バレンタインみたいなもんが幻想にもあんだな。そして、幻想にもにたような奴らはいるもんだな……。年に一度のグラオ・クローネなんだから、嫉妬だ何だと言わずに祝福すれば良いのによ)
暴れる艶蕗を見ながら、黒羽は、はぁとため息をつく。あ、あまり暴れるな。怪我が痛む。
「こういうのは柄じゃねえんだがよ。想いを込める日ってのは大事だからな。ヤクザって言ってもよ、悪い事ばかりが仕事じゃねえのさ」
艶蕗はとうとう暴れることをやめ、素直に連行される。
その面々とスレ違いMorguxは思う。「人として恥ずかしくはないのかねぇ」
とはいえ、今日もことはなし。平和な一日だ。買ったばかりのチョコの封をあけかじれば甘い香りが鼻孔を擽る。
ああ、今日も平和だ。平和が一番だ。
バレンタイン…っていっても、渡す相手、もう……ううん、でも……これから、ギルドにも、同じイレギュラーさんたちにも……お世話になるだろうし……こ、怖いけど…勇気、出して……渡したい……これから、宜しくって…気持ち、込めて……
断られる、かもしれないけど……それも、仕方ない……き、気にしない、よ
『死と悲哀に寄り添う者』カシャ=ヤスオカ(p3p004243)はチョコレイトをもち当て所なく歩いていた。
艶蕗を官憲に引き渡してきた、義弘とすれ違う。確かあの人は、見回りをしていた人だ。
「……あのっ」
勇気を出して引き止めれば、いかつい顔で振り向く義弘。
「どうした? こまったことでもあったのか?」
ビクリとカシャが体をすくませれば、しまったと出来る限り優しい声を出したつもりだったが、彼女につたわっただろうか?
「あの、おつかれ……さまです」
疲れたときには、甘いものって……ともごもご言いながら、両手でチョコレートをカシャは義弘に渡す。
「あんがとよ、お嬢ちゃん」
怖そうだったヤクザのおにいさんの笑顔は以外にも優しく見えた。
世の中というものはどうしても嫉妬に狂い、嫉妬で暴れるものというのはいくらでもいるものである。
『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)は思う。
「世界にも居るものなんですね、こういう方達。理解はできますが共感はできませんね。バレンタインデーにチョコレートをあげる、もらうという仲になっていないのはほぼ確実に自己責任だと思うのですが、それはおいておいて……」
辛辣なその寸評は的を射ている。
「こうやって発散行為をしないと”やってられない”人はきっちり発散させてあげないといけないんですよね」
一念発起、アルプスは革命の乙女さながらに、そんな嫉妬団をまとめ上げ、先導する。カップルに危害が及ばないように。
(負の感情が燻ぶったまま何か月も、何年も寝かせてこじらされたら困りますからね)
というものの、わりと暴れることが楽しく感じてきているのは気のせいだろうか?
「こら! なにを暴れているんだ!」
「うわー、にっげろー!」
黒羽と義弘の自警団コンビとアルプス率いる嫉妬団の逃走劇が始まったのである。
●グラクロメインイベント! 交換会。ランダム
『木漏れ日の妖精』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)は深緑の霊樹の葉をイメージした葉っぱ型の抹茶チョコの詰め合わせを用意していた。
誰に渡すかは決めてはいない。だからこそ、自分を知ってもらうために。自分らしさを大事にしたかったのだ。
「はじめまして、僕はマルク。普段は【金色流れ星】っていう宿屋にいるんだ。これを切掛に知り合いになれたら嬉しいな。よろしくね」
そんな彼女に声をかけるのはマルク・シリング(p3p001309)。彼のチョコはカカオから手作りし、丹念に磨り潰して練って来た本格派である。
「あ、私は、リディア・ヴァイス・フォーマルハウト、です」
渡されたチョコを手に、おどおどと答える彼女にマルクは柔らかな笑顔で交換したリディアのチョコの包をあけた。
「わぁ、とっても綺麗なチョコだね。ハーモニアの君らしいね。うん、美味しいよ。渋みと甘みがマッチしているね。ありがとう」
期待通りの返答にふわりとリディアは微笑み。もらったチョコを齧る。苦かったらどうしようと思ったけれども、それはふわりとした上品な甘さでぱちぱちと目を開閉する。
「砂糖とミルクの量も紅茶にちょうど合うように調整してきたつもりだよ。というわけで、紅茶もどうかな? フロイライン」
そんな気取った執事の言葉にリディアは頬をそめながらなんども頷くのであった。
『特異運命座標』ヴィエラ・オルスタンツ(p3p004222)が用意したのは大人の味のビターなチョコレートケーキ。シンプルだけども深い味わいのそれは料理が得意ではない彼女の一生懸命つくったもの。
「初めまして、私はヴィエラ。あなたが私とチョコを交換してくれる人?」
交換相手に声をかけたヴィエラに答えるは『流浪の騎士』クロガネ(p3p004643)。
「はは。面白い催しだな。これは。失礼、私はクロガネ。流浪の騎士だよ。よろしくね。コレをきっかけに縁ができるというのも悪くないね」
性別不明の獣人が渡すそれは無骨なビターチョコレイト。
おりしも、大人のビターチョコレイトと被ったふたりは、笑みを零す。
「宜しくね。よかったら食べた感想とかまた教えて貰えたら嬉しいわ」
二人はお互いにチョコレイトを食べ合う。
「ああ、丁寧な仕事だ。この香りはラムかな? ビターなチョコによくあうよ」
「ええ、あなたのチョコもシンプルで、大人の苦味が……好みだわ。なんだかいくらでも食べれてしまいそう。いやだわ。横に大きくならないか不安」
「女性は少しくらいふくよかなほうが可愛らしいと思うがね」
不安がりながらも食べるのをやめないヴィエラにクロガネはやんわりと微笑んだ。
ばれんたいん ぐらお・くろーね。知識としての部分や、今回聞いて理解した部分はあります。
ただ、それだけの情報。桜咲には触れたことがないものです。
『希望を片手に』桜咲 珠緒(p3p004426)は一人で生きることが出来ないことは理解している。だからこそ、誰かとのつながりを欲していた。
「数は多いのです。出会いを運にも頼ろうというものです」
けほん、と咳が出る。吐血はしなかった。よかった。また包装紙を汚したら交換ができなくなってしまうところだったわ。
目を上げて、目の前の交換相手をみやる。
「大丈夫?」と声をかけるのは『特異運命座標』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)。
せっかくだから仲良くしたいと、出会いを求めていたのは珠緒と同じ。折しも体が強くない、病弱体質なのも同じ。
だから通じ合うものはあった。引きこもりであったからこそ極めることのできた得意分野のお菓子づくりで培ったノウハウで完成したチョコは多分美味しいはずだ。
「アレクシアといいます。良かったらお友達になりませんか」
「ありがとうございます。桜咲 珠緒と申します」
似た者同士のふたりはチョコを交換する。
「御期待に沿えるとは、考えにくいのですが。限界でして」
手作りにたいして市販品。そこがすこし恥ずかしく思う。
「ううん、気にしないで。うん、美味しい。十分期待にそっているものだよ」
「そうですか、あなたのも、ええ、美味です」
アレクシアは思う。感情表現は得意じゃなさそうだけど、たぶんよろこんでくれてるのだろうなと予測する。
この縁が続き、また来年お互いに友としてチョコを送り合うことができればいいなと思った。
『猫メイド』ヨハン=レーム(p3p001117)はどんなチョコをもらえるのか、どんな相手になるのかと期待していた。
「ざんねん、セティアちゃんでした! がっかりした?」
柱の影から眠そうな顔のままシャドーボクシングをする『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)にヨハンはびっくりした目を向ける。
「いや! そんなことはないよ!」
「いちゃらぶでも、チョコレートだけの割り切った関係でも、性別不問でかかってこい」
しゅっしゅ、とシャドーボクシングは続く。その対応はひとみしりだからこその防衛策。声はいつもより張り上げてるつもりだ。小さいけど。ゆっくりなのは田舎訛りがでないように。
「ちょこは、あげる、さっき、買ってきたやつ。わたしがつくったやつじゃないから、安心、たぶん。流行りの燃焼系。チョコのケーキが建物の形で、ベリーのゼリーが炎。かっこいい」
家焼くな。
「良く知らないですが、エモい事件あったらしい。孤児院焼くの、エモい」
とつとつと喋る彼女に圧倒されながらも、ヨハンは凝ったものではないけれどと前置きをして、猫の形のチョコを渡す。
「あ、こんなメイドな格好ですけどぼくは男ですからっ!えーと…ホモチョコ…じゃない、友チョコ?になるんですかね。実は料理好きなんですよねぼく、えへへ」
セティアとヨハンはお互いに自己紹介をして、チョコを交換する。それ以外にもいろいろな話をした。仲良くなれるといいなとお互いに思う。
セティアのチョコは見た目の割に味は美味しかった。家焼いてるけど。
「このちょこ、がちめにぱない。ありがとう」
「気に入ってもらえたのなら、作り方、教えますよ。多分一緒に作ったら、もっと楽しいはずですから!」
そんな二人の間に『風花之雫』アルファード=ベル=エトワール(p3p002160)も混ざる。
「ふふ、どんな方と交換できるのでしょうとわくわくしていたら、お二人も!」
真白い少女はころころとわらって、白いボックスに黒のリボン。リボンの両端の水色の水晶がふれあってりぃんと音がなった。
「わぁ、素敵ですね、はい、猫チョコです。お気に召すといいのですが」
「なかみ、生チョコ。生。焼こう。これ、孤児院焼きチョコ。ゼリーが綺麗」
「うふふ、おふたりともとっても個性的ですね!」
三人は交換したチョコの感想を言い合い笑い合う。
「そうだわ、紅茶も用意しましょう」
アルファードが紅茶を用意すればそこは新しい友人たちのパーティ会場だ。
●:*:・。,☆゚'・:*:・。,みなさんおまちかねストロベリーシュガーゾーン:*:・。,☆゚'・:*:・。,
グラオ・クローネというイベントは、街中がお菓子だらけになるんだな……。
『銀閃の騎士』リゲル=アークライト(p3p000442)はフィアンセと過ごすはじめてのグラオ・クローネに少しだけ浮足立つ。
それは『慈愛の恩恵』ポテト チップ(p3p000294)も同じだ。前日からレシピをひっくり返しながら、リゲルのためにと必死で作ったお菓子たち。プレーンとココアのマーブルクッキー、ブラウニー、チョコ味のマカロンにザッハトルテ。
どれが彼の口にあうかわからなかった。美味しくないといわれたらどうしよう? 作りすぎていないだろうか? 苦手だったらどうしよう? 男性は甘いものが苦手なものがおおいとも聞く。だから甘さは控えめにした。
「わあ、すごいな。これはまた種類が豊富だな、作るのも手間がかかっただろう? 形も綺麗で市販品も顔負けだな……わざわざ有難うな。じゃあ、せめて紅茶は俺に淹れさせてもらっていいかな」
「あ、ああ、じゃあ、紅茶はリゲルにお願いしようかな」
席を立つリゲル。ポテトは第一関門は成功だと小さくガッツポーズする。あとは味だ。何度も味見しすぎて何が正しいのかわからなくなっている。愛情だけはこめまくった! だからミスはないと、思う。
「ポテト?」
「な、なんだ!」
紅茶を淹れてきたリゲルが席につけば二人だけのグラオ・クローネのパーティがはじまる。
緊張するフィアンセを可愛らしく思う。きっと自分のことを想い一生懸命作ってきてくれたのだろうと思うと笑みが自然に溢れる。
一つつまむ度にフィアンセの顔が指先と口元に集中しているのがわかる。
「どれも飽きが来ない食べやすい甘さだ。流石はポテトだな!」
リゲルの表情、動き、全てを見守ってきたポテトの表情が緩む。よかった。駄目かもしれないというのはただの杞憂だった。
「ありがとう、ポテト。これは俺も奮発しないとだね。ホワイトデーのお返しは何がいいか、希望はあるかい?」
やはり手作りの菓子がいいのだろうか? と呟けば少々食い気味にポテトが答える。
「ホワイトデーのお返しか……リゲルが考えて用意してくれたものなら何でも嬉しいぞ?」
それは心からの気持ち。でも、リゲルの手作りのお菓子をもらったら、大切に締まっておきたいな。食べれるのだろうか?
と難しい顔をすれば「望まれるのならば精一杯頑張ろう!」とリゲルは闘志を燃やす。
「本当は」
ポテトがリゲルを上目づかいに見上げる。その愛らしさに抱きしめてしまいそうになる気持ちを抑えるのにいっぱいいっぱいのリゲルが「なに?」と続きを促す。
「もっと色々作ろうかと思っていたんだが、食べきれなくても困るから一応種類は減らしたんだ。今年作れなかった種類は、また来年頑張る」
「これ以上チョコ菓子の種類があるというのか? それだけで吃驚だな……ポテトの手作りならば、何でも大歓迎だよ。ああ、来年も楽しみにしているよ! 」
そんないじらしくも驚きの言葉にリゲルは驚嘆の声をあげ、来年への約束を結んだ。
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●魔術師は世界を覗く
『灰燼』グレイ=アッシュ(p3p000901)は媒体飛行で杖に腰掛け、幻想のグラオ・クローネを見聞する。
邪魔はしない。ただただ面白い光景がみたいだけだ。
修羅場かな? それとも胸焼けするほど甘い光景かな?
好奇心はとどまらない。どっちも見たい! だって両方大好きだから!
全ての人間の隣人でありたい彼は、幻想の空をのんびりと遊覧する。無邪気で、無慈悲な魔術師は、今日のこの喧騒にどんな愉悦を抱くのだろう?
向こうで騒ぎ声が聞こえる。すわ、おまつりごとかい? 楽しげなそこに向かって杖の上の魔術師は微笑む。
ああ、この世界はなんて愉快! 暇なんてありはしない!
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
なんだかいっぱいかいちゃいました。ご参加ありがとうございます。
ぐらくろの楽しい一日を満喫していただければ嬉しく思います。
45人全員描写をしたつもりですが、ミスがあればごしてきください。
それでははっぴーぐらおくろーね!
GMコメント
お世話になっています。鉄瓶ぬめぬめです。
バレンタインデーのイベシナをお届けします。
上記の彼はともかくとして、普通の楽しいバレンタインデー当日のお話になります。
(選択肢Aのみ前日です)
●選択肢
・A チョコレートを作るのを楽しみます。大きなキッチンをお借りしてるので、手作りを楽しんでください。
基本的な材料は揃っています。持ち込みも可能です。食べれるものをつくってください。
味見しながらなどで、楽しんでもらってかまいません。
・B 交換し合う。お連れ様がいない場合は【ランダム】と追記していただければ、同じくランダムの方と交換しあうカタチになります。
本命、義理、友ホモユリマイファミなんでもOKです。
知らない方との交流を希望されない場合は、【☓】と追記してください。プレイング内容に沿った、『PCや、公式NPC以外』の誰かと交換することになります。(たとえばPCじゃないお母さんや、ご兄弟など)。
ぬめのリプレイで登場したNPCについては数は多くはありませんが選択して頂いてかまいません。(状況的に出来ないNPCにはすみません!)
・C 意中のあの人にチョコを。所謂甘々なストロベリーシュガーゾーンです。多くは説明しません。そういうことです。
・D こんな呪われた祭りを許してはいけない。 所謂嫉妬。邪魔をするのはNPCになりA~Cの皆さんを邪魔することはできません。公序良俗はお守りください。
・E その他、上記にないことをやりたい場合はこちらをどうぞ。
●書式
一行目:選択肢
二行目:同行キャラのフルネームとID、もしくは【】でかこんだグループ名
三行目以降はプレイングをどうぞ。
書式については強制ではありませんが、書式通りにかいていただくととても助かります。
●注意
公序良俗に則ったプレイングでおねがいします。ちゃんと食べれるものを作ってくださいね!
お酒とたばこははたちをこえてから。
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