シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2018>冬の間にだけ現れるもの
オープニング
●氷のバー
「へぇ、寒いのを我慢すれば最高じゃないか」
『ふらり、ふらりと』青馬 鶇(p3n000043)はショートグラスを優雅に揺らし、チョコレートを摘まむ。 鶇は防寒着に身を包み、口から白い息を吐き出している。鼻先はとても白い。
「とても素敵な空間ですよね」
『ロマンチストな情報屋』サンドリヨン・ブルー(p3n000034)は微笑み、ホットココアを飲む。サンドリヨンはニット帽を被っているが格好はいつも通りである。 此処は氷で出来たバー。バーカウンターも、椅子も食器も、勿論、グラスでさえ氷。
「それにしても、どうして溶けないんでしょう」
サンドリヨンはホットココアが入ったマグカップを見つめる。 湯気はある。ぬるいわけではない。
「さぁ? 美味いならそれでいいと思うけどね、あたしは」
鶇は言い、サンドリヨンは「そうですね」と頷く。
「ほら、食べな!」
鶇はクラッカーを勧める。
「あっ、ありがとうございます」
サンドリヨンはクラッカーにクリームチーズと無花果のジャムを塗り、笑顔を見せる。とても美味しかったのだ。
「ああ、これはとっても素敵な食べ方ですね……」
「だろう? 梨のジャムもある……ん?」
途端に鶇は顔を曇らせた。
「え? ああ、 フィーネさん 」
サンドリヨンは財産家のフィーネ・ルカーノ (p3n000079) を知る。眩いドレス、指先には宝石が輝く。フィーネはイヤリングを揺らし、目を細めた。 フィーネは着飾りながら、一人だ。
「あら、奇遇ね? 青の情報屋さん達はデートなのかしら。ああ、妬けてしまう! ねぇ、今度はあたくしとデートしてくださらない? 後悔だけはさせないわ」
フィーネは鶇の肩に触れ、キャロルを注文する。鶇はうんざりしたようにフィーネを見つめる。鶇はフィーネが苦手なのだ。フィーネは、その事実を知りながら鶇をかまう。フィーネは鶇の長い髪に唇を落とし、微笑む。鶇の身体がぴくりと動いた。
「……」
返答を待たずに、フィーネは踊るように移動する。サンドリヨンは困り顔で気分を害した鶇と、楽しげなフィーネを見つめている。
●提案
夜──
呼び出されたサンドリヨン。
「今回の依頼はシャイネン・ナハトですか?」
「ええ、そう。今年を飾る盛大な催し。あたくし、思い付いてしまったの。海をスケートリンクにすることをね」
「え……?」
サンドリヨンは驚いている。フィーネはふっと笑い話し続ける。
「素敵でしょう? 隣には氷のバー。ああ! 美しいこと……リンクの中央にはツリーが煌めく。バーでは寒さに身を寄せ、囁きあう声。そうね……これもまた、置きましょう? きっとまた、面白くなるわ」
フィーネは笑う。その手には、メイプルシロップ。 あろうことか、メイプルシロップには媚薬が入っている。
「メイプルシロップですか? それをどうするのです?」
何も知らないサンドリヨンは首を傾げた。
「ふふふ、スケートリンクでホットメイプルレモンジンジャーを振る舞うの。ああ、素敵! とても美味しくて刺激的な日……」
「刺激的……? 美味しそうではありますが……」
サンドリヨンはくすくすと笑うフィーネをじっと見つめた。何が何だか解らない──
- <Scheinen Nacht2018>冬の間にだけ現れるもの完了
- GM名青砥文佳
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2019年01月10日 21時55分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
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参加者一覧(30人)
リプレイ
●舞う、雪
蛍は珠緒とともに。
「カカトの位置が合ったら次にヒモを縛りましょ!」
蛍は言う。
「学校のスケート教室で鍛えたボクに隙は無いわ」
蛍の滑りはなかなかだ。
「わぁ、凄いですね」
珠緒はその滑りを眺める。
「さぁ、人の少ないところで落ち着いてゆっくり慣れていきましょ」
「せんせい、よろしくおねがいします、なのです」
珠緒は微笑む。ゆっくりと進む身体。
「桜咲さん、上手いわ!」
「蛍さんのお蔭です」
珠緒は簡易飛行でこっそり転倒を抑制する。
休息。その手にはホットメイプルレモンジンジャー。美味しそうに飲む蛍と僅かに眉を寄せる珠緒。
「……桜咲には、少々刺激が強いようです」
「そう? 体がぽかぽかしてほっとするけど」
飲み終えた蛍に珠緒は自らのドリンクを。
蛍は手を伸ばす。繋がれた手。二人は滑り出す。目が合う。微笑む珠緒、跳ねる心臓。
「蛍さん?」
甘く囁かれた声、蛍は珠緒の頬に片手を伸ばしかけて──
「ッ──!?」
気が付いた時には蛍は尻餅をついていた。蛍はぼんやりする。見下ろす珠緒はとても眩しい。
レイチェルはシグとバーへ。吐く息は白く、レイチェルは震える。マフラーと手袋、コートを着込んだ厚着。
それでも──
「どうする? 私のコートも使うかね?」
シグはからかうような視線を向ける。本体は剣、寒さにはそれなりに強い。
「……ん、大丈夫。シグが風邪引いちまったら大変だし」
レイチェルは美しい光景に目を輝かせる。
「ああ、シグ! 凄いぞ、これ全部氷で出来てる! 綺麗だなァ」
声には熱。シグはレイチェルの横顔を眺めながら「確かに綺麗ではある。……座る時に凍り付かないよう注意するのだぞ?」と笑う。氷は室内の光を反射し煌めき続ける。
「そうだなァ、気を付けよう」
そっと腰かけ、レイチェルは赤ワイン。シグはマンゴージュースを。
「折角だし、乾杯しようぜ?」
レイチェルは笑う。
「……ん、そうしよう。……我らの何れも……無事に戻れた事であるしな?」
「帰って来れなかった奴も居るから……な。今一緒に居れる事が、一番の幸せだ」
グラスを持ち、見つめ合う。そして、グラスはそのまま、唇に引き寄せられていく。
スケートリンクに二つの影。
「ジェイク様、あそこに!」
幻は指を指す。夏色の魚が時を止めている。
「ああ、綺麗だぜ」
ジェイクは幻が伸ばした手に自らの手を絡ませる。
「幻、滑ろうぜ」
「はい、ジェイク様」
染まった頬。ジェイクは時折、揺れる幻の身体を支え、風を裂く。
ツリーの下で待つ幻。
「ホットメイプルレモンジンジャー、持ってきたぜ」
ジェイクが笑う。遊び疲れた身体は冷え切っている。
「ありがとうございます。あ、美味しい……?」
幻は表情を変え、ジェイクに寄り掛かる。
「ああ……どうして……?」
擦れる声、堪らずジェイクが幻を抱き締める。互いに感じる熱、息が混じり合う。
「んっ」
乱暴に塞がれる唇。ホットメイプルレモンジンジャーが足元で弾け、氷を甘く溶かす。蠢く舌、痺れていく感覚。
「あっ、んんっ……」
幻は呻く。恥ずかしくて離れたいのに、離れられない。
それでも──
幻ははっとする。気が付けば涙が零れ、ジェイクの身体を濡らし始める。
銀はクランベリージュースを飲みながら、目を細める。
「ねぇ、何処を見ているの?」
「フィーネ嬢」
くすぐったくなるような笑い声。触れられる肩。フィーネの指先が躍る。
「外を見ようと思っていたのだがね」
「外? 見えないわ」
フィーネは笑う。分厚い氷は冬の景色も、スケートリンクすら映さない。
「なら、スケートはどう? とても楽しいと思うのだけど」
銀は呻く。
「……お恥ずかしながらカナヅチゆえ、凍った海が……ね……」
「あらあら」
「貴女のお誘いがなければ来ていないよ……」
口笛。
「ねぇ、聞かせて? 貴方はあたくしを──」
フィーネは嗜虐的な笑みを浮かべ、深紅の瞳を覗く。
スケートリンクで、マナはぎこちない笑みをヨハンに。
「お、お手は離さないでくださいね……! 絶対ですよ……!」
「はい、ちゃんと繋いでいますよ」
ヨハンは笑う。
(といっても、僕もそんなに滑った事はないんですけど)
「なら、ツリーまで行ってみましょう!」
「と、遠くはありません?」
不安げなマナ、ヨハンは「大丈夫ですよ! ゆっくり行きましょう!」と頼もしい。恐る恐る進むマナを見つめるヨハン。
「ヨハン様?」
「えへへ……氷上のマナってなんか、こう、冬の妖精さん? みたいで可愛いですよ……」
「え? あっ!?」
伸ばされたヨハンの腕にしがみつく。同時に腰へと回される手。
「マナ、大丈夫ですか?」
「ありがとうございます」
「左右に体重を移動させながら滑ってみましょう。転びそうになったら、僕が必ず支えますから!」
ヨハンが精一杯のレクチャー。マナは頷く。ヨハンにしがみ付きながらゆっくりと滑り出す。
「ヨハン様! 私、滑ってます!」
「あ、マナ、危ないですよ!」
途端に身体が反転する。伸ばされる手。目を開けるマナ、気が付けば氷上に倒れ込むヨハンの腕の中。ヨハンは安堵の表情を浮かべ、そっと微笑んだ。
アーリアは目を細めた。借りたブランケットが揺れる。
「こんなに厚着なのに寒いです」
ミディーセラが言う。此処はバー。彼らはカウンターに座り、二人用のブランケットを膝に。
「そうねぇ」
アーリアは楽しそうに笑い、帽子とマフラーを揺らす。アーリアはホット・バタード・ラムを飲み、ミディーセラはキャロルを飲みながらチーズをつまむ。
(今度はもっと甘いものを頼もうかしら)
ミディーセラは気が付く。手に息を吹きかけるアーリア。ミディーセラは互いに冷えていく指先を知る。視線が合う。ざわめく心。何かを言う前に身を寄せるアーリア。消える隙間。
「ミディーくん?」
アーリアは不思議そうにミディーセラを。
(何も言わないわねぇ? 酔ってしまったのかしらぁ)
(ああ、こんなに傍にいるのにどうしていつまでも寒いのだろう。わたしは……)
ミディーセラは無意識にアーリアの手に触れる。
ルルリアとアンナは息を呑む。点灯を繰り返す眩い光が雪を色づける。
「綺麗ですねっ!」
「ええ、そうね」
手にはホットメイプルレモンジンジャー。ルルリアが気が付く。
「……ってこれジンジャーエールです? ルル、苦手なのです……ちょっとクセがあるというか……アンナ、飲んでくれないです?」
「ルルは……レモンジンジャー苦手なのね」
アンナはルルリアのドリンクに口づける。飲み干したアンナの表情は何処か眠たげで──
「アンナ?」
「ルル……寒くない? 温めてあげましょうか……?」
言葉は震え、強張る。触れた手と頬は冷たい。
「えへー、暖めてくれるんです? 外寒いですしお願いっ……!?」
強引に抱き寄せられる。
「好き。大好き。離したくないの。離れたく……ないの」
擦れた声。衝動。驚くルルリアは苦しげにもがき、アンナを呼ぶ。だが──
「ん……ぁ……。ん……」
頬に触れる唇。アンナの熱と吐息。ルルリアは目を細める。アンナは震えている。ルルリアはそっと抱きしめ返し頭を撫で、くすりと笑う。
「……ルル告白されてしまったのです。えへー、ルルもアンナのこと大好きですよ! 大切な親友。ううん、それ以上なのですから」
ガドルは海を眺める。
「はっ! カシエさん、凄いな! こりゃあ!」
鮮やかに染まったスケートリンク。
「久々だがどうにか転ばない程度には滑れるな」
ガドルは滑り、息を吐く。
「ガドルさん、私」
未経験のカシエはその場で固まっている。ガドルは豪快に笑う。
「この俺が手取り足取りバッチリコーチしてみせよう! 目標はあのツリーまでだ!」
「まあ、まあ、あのツリーまで行くのですか?」
カシエはおっとりとした口調で驚きながらガドルのレクチャーを受け滑り始める。
「あら? あら……? 意外と難しいですね……」
「おっと!」
伸びた腕が肩を支える。しがみ付くカシエ。
「あら……転びそうになってしまいましたわ」
「ん、ほら!」
「え?」
「手を繋げば転ばないだろう?」
人懐っこい笑みと向けられた大きな掌。カシエはその手に触れる。
見上げたツリーは美しい幻のよう──
「……近くに来ると本当に大きいですね、キレイだわ」
「だろう? 頑張って滑って良かっただろう! ほら、飲み物も!」
「まぁ……温かい飲み物も頂けるの? あら……なんだかとろんとしてきたような……でも、美味しい……」
「おっ?」
ガドルは驚き、支える。カシエは寝息をたてている。
メリルナートは息を吐く。凍りついた海を見るのは初めてではない。
だが──
美しく磨かれた氷上、雪を払うように光るツリーは見たことがない。メリルナートは舞う。
「ああ、久々でしたが滑れるものですわー」
呟く声に心を揺らす。兄姉たちの声が響く。
「昔はよく、転んでいましたねー……とても懐かしい思い出ですわー」
笑い、肩の雪をそっと払う。込み上げる寂しさ、かじかんだ指先と心は、温かな飲み物を求める。
「ああ……」
自嘲気味に笑う。美味しいがとても刺激的な味。
嘴はペストマスクの奥の瞳を細めた。バーでは寒さに身を寄せ合う人々。
「いや~……若いって羨ましいデスねぇ……げんきだな~。ボクもあと50若かったらナァ~……」
嘴はクリスマスティーを持ち、震える。
「輝かんばかりのこの夜に。ハァイ、こんばんは♪ グリューワインを一杯いただけるかしら?」
ブランケットを二枚持ったジルーシャ。ジルーシャは微笑みブランケットを嘴に。
「キミも一人デスかぁ~」
「ええ、そうよぉ」
微笑むジルーシャ、纏うのはラベンダー。
「アンタが飲んでるカクテルもいい色ね。それ、何かしら?」
ジルーシャは湯気の立つグリューワインのグラスで手を温める。
「クリスマスティーデスヨ~。ノンアルコールで赤色がキレ~ですよね~」
(おや、アッチには銀クンと主催のオネーサンじゃないですか~。ふふ、邪魔しないでおこ~っと。何かあったら娘サンにチクっちゃいましょ~)
嘴は楽しそうに笑う。
「へぇ、そういうものがあるのねぇ。素敵じゃない♪」
「ああ、たのしーナァ~」
「バニラアイスとガトーショコラのフローズンカクテルでございます。氷は天然氷です」
バーテンダーがカクテルを。
「どうゾ、頼んでおきましたヨ~」
「ふふ、ありがとう。あら、美味しい♪」
ジルーシャは笑う。息がふわりと舞い、静かに消えていく。
無邪気な声。そこにはルチアーノとノースポールの姿。
「ああ、ポーは運動神経がいいね。バランスよく滑れていて流石だよ!」
シマエナガマフラーが揺れる。
「ふふっ、ルークも上手いね! 難しい技とかは出来ないけど、十分楽しいね♪」
繋いだ手には、シマエナガを模した手袋。
「ツリーを回ってみようよ!」
はしゃぐノースポール。ルチアーノは頷く。舞い続ける雪と、ツリーの煌めき。
「わっ、やったね! ちゃんと回れたよ!」
興奮した声、息を荒げ滑り続ける。
そして──
「うん、ホットメイプルレモンジンジャー美味しいよ! ルークも、飲んで……え、あれ……んん、じゃま……あつい」
上着を脱ぎ始めるノースポール。慌ててその動きを止めるルチアーノ。だが、口元には薄い笑み。察したように手はノースポールの頬へ。ノースポールはふにゃりと笑う。冷たい手が心地よくて──
ノースポールは求めるように両手を首に回す。耳元でルチアーノが笑う。
身体が揺れる。横抱きされた身体が柔らかなベッドに落ちる。
「余計に熱くなっちゃったらゴメンね……?」
ルチアーノは笑い、ノースポールに手を伸ばす。
エリザベートは、はしゃぐユーリエを眺める。
「えりちゃん、今日は来てくれてありがと~! スケートって一回やってみたかったんだぁ!」
「別に、ユーリエとなら何処とでも行きますよ。スケート……ねぇ」
エリザベートはユーリエの睫毛に落ちた雪に触れる。
「えへへ。よーし、滑っちゃうよ~!」
滑り出すユーリエ、追うエリザベート。大きく揺れる。伸ばした手がバランスを崩したユーリエを抱き留める。散る氷、氷面に突き立てられた腰の羽。見つめ合う。吐き出される息。ユーリエは笑う。滑りながら繋がれた手が何度も強く握られる。
「あー、レモンの良い香り~!」
冷えた身体を温めようとホットドリンクを口にするユーリエ。
「ん、美味しい! あ、れ? えりちゃん……私……」
切なげな声、変わっていく姿──
銀髪の髪、ほんのりと赤く染まった毛先が揺れる。絡み合う指先、突き刺さる視線。エリザベートは首を傾げる。
「えりちゃん……っ、愛してるよ」
求め、近づくユーリエ。エリザベートはふっと笑い、ユーリエの唇を受け入れる。柔らかな唇が甘く濡れる。
マルベートは八重歯を見せ笑う。
「折角のチャンスなんだし、私もスケートを楽しませてもらおうかな。優雅にのびのびとね」
滑り、マルベートは目を細める。そこには、ゲオルグの姿。ふわふわ羊のジークを優しく抱き締め滑っている。
(上手いものだな)
ゲオルグはアクセルジャンプを華麗に決め、スピンを。マルベートは左に曲がり速度を上げていく。皆、寒空の中、スケートを楽しんでいる。
「おっ、凄いスピードだな。なぁ、ジーク?」
ゲオルグは美しい声を響かせ笑う。ゲオルグは目を細めた。転倒したマルベートは素早く立ち上がり、瞬く間に加速する。
「美味いか?」
猫舌のゲオルグは問う。マルベートは一足先に温かな飲み物を。
「そうだね、体がぽかぽかしてくるし、それになんだか……ほんわかと良い気分になってくるよ」
マルベートは微笑み、歩き出す。そこには、ツリーを見上げるメリルナート。
ゲオルグはマルベートを見送り、溜息を吐く。
「ああ、甘酸っぱい飲み口にジンジャーのピリッとした刺激がちょうど良いな……」
目を細める。ジークの姿が霞んでいく。ゲオルグは空を見上げた。頬に落ちた雪すら心地よい。
扉を開けたシュテルン。冷気が頬に触れる。人々が身を寄せ合う。
「さむい、のに、あつい……?」
口笛。這うような視線、触れられる頬。フィーネだ。
「ふふ。ねぇ? バージンブリーズ、貴女の瞳のようね」
フィーネは手渡しくすくすと笑う。
シュテルンは回る。繋がれた手、向けられる視線はフィーネのもの。
「フィーネ、おーきな、ツリー、とっても、きれー!」
「そうね」
(ああ、可愛いひと)
フィーネは無防備なシュテルンを見つめる。互いに吐く息が夜に溶けていく。
リジアはバーの外観を眺める。分厚い氷は美しいフォルムを描き、中の者達を閉じ込める。
「寒いな。ん?」
殆どの者が温かな飲み物を持つ。
「私も、あ、あれを飲むぞ!」
ふと、爽やかな風。振り向く。
「ふふふ、踊れる僕は当然、スケートくらい完璧さ! さあ、見たまえ! 僕の素晴らしきスピン、そしてジャンプ!」
クリスティアンが叫び着氷。
「さぁ、ともに!」
「えっ!? あ、ちょっと!」
リジアは強引にクリスティアンに手を引かれ、滑り始める。不安げに揺れるリジアをさり気なくエスコートするクリスティアン。
「そうだよ、此処でターン! 素晴らしいね。そして、僕は!」
クリスティアンがリジアから離れ、誰もいない氷上で二回転を決める。途端に軋む水面。
「わっ!?」
クリスティアンは叫び、水飛沫を上げる。
リジアは飲み物を飲み、震える。
「あ、う……熱いな。なんだ、これ」
リジアは口を開け、降る雪で舌を冷やす。
弥恵は雪と舞う。優雅に体を流し、トゥループにルッツ。弧を描くような、キャメルスピン。そして、ビールマンスピン──
弥恵は驚く。視界にはフィーネ。惑わすようにまとわりつく。導かれるのはバー。弥恵ははっとする。指先で塞がれる唇。
「挨拶なんて要らない。此処で必要なのは駆け引きだけ」
「え、えっと……冷えては何ですからブランケットを」
口笛。
「ちが、誘っているつもりは、ないのです……」
「なら、貴女はどうしてあたくしといるの?」
フィーネは笑う。弥恵は唇を舐めた。飲み物はまだ来ない。
寛治はカウンターで、ハードリカーを。
「フィーネ様、お招きありがとうございました」
くすりと笑うフィーネ。
「ふふ、来てくれると思っていたの」
黒い厚手のロングコートに同色の手袋。白のマフラーはスカーフ風。
(ああ、隙すらない)
「こちらには媚薬が無いと聞いて、私、安心しております。残念な気持ちが無いとは言いませんが……」
フィーネは笑う。
「なら、あたくしから素敵な貴方に」
そこにはドライマティーニ。
「美しい空間じゃな。全てが氷に包まれているなんてな……不思議じゃ」
ヴェッラが寛治に声を掛ける。ヴェッラはシンデレラを飲んでいる。
「ええ、美しくて素晴らしい日です」
寛治はドライマティーニを口にする。
「ふふ、ビターチョコも美味いしの。ただの、ツリーが見えぬのじゃ……」
ヴェッラは息を吐く。分厚い氷は景色を隠してしまう。
「それはそれは……」
寛治は目を細め、「ならば」と扉を開ける。強い風とともに、鮮やかな光が入り口を惑う。人々は身を寄せ合う。
「おお!」
ヴェッラは目を細める。グラスを踊る、宝石にも勝る光。
「ああ、酒は飲んでおらんが最高の酒の肴はあった、それでよいの……」
ヴェッラは微笑む。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
皆様、ご参加いただきましてありがとうございました。イベント大好き青砥です。今回、色々とアレンジを入れさせていただきました。少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。感想と致しましては、皆様のプレイングに悶えながら書いておりました。スキンシップやキス描写がわたくし、大好きなので……本当にありがとうございます。バーもスケートも媚薬も楽しかったです……媚薬、これからちょこちょこ出したいですね。ちなみに、わたくしでしたらスケートをして、こっそり媚薬を飲ませ、その様子を眺めながらにこにこしたいなぁと思いました。ただ、フィーネには絶対に近づきたくないです。わたくしの存在を悟られたくないですね。でも、来てしまいそうな雰囲気はあります……あの人は、絶対に意地悪でしょうから。
そして、そして、海に落ちた方は風邪をひかぬよう、ホットメイプルレモンジンジャーを飲んで身体を温めて帰っていだだければと思います。
では、また、皆様とお会いできますことを。ありがとうございました!
GMコメント
ご閲覧いただきましてありがとうございます。フィーネ主催のシャイネン・ナハトをお楽しみください。
●依頼達成条件
シャイネン・ナハトを楽しむことです。
●依頼人
フィーネ・ルカーノ(何度も登場しておりますが内容は特に繋がっておりません)皆様のプレイングに記載があった場合のみ、登場致します。ただ、想像以上に絡まれる場合がございますのでご注意ください。
●時刻
夜です。雪が軽く降っております。
●場所
フィーネ・ルカーノ所有のプライベートビーチ
真っ青な海は巨大なスケートリンクになっております。スケートリンクの中心に大きなツリーが光っています。また、スケートリンクにある唯一の飲み物はホットメイプルレモンジンジャー(媚薬入りホットドリンク)です。食べ物はありません。飲むと身体が温まり、至極、とろんとします。
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併設された氷のバーはアルコール、ノンアルコールが飲めます。氷は溶けません。ただ、椅子やテーブルは冷たいので防寒着は必須です。寒さに強い方は薄着でも水着でも大丈夫です。厚手の真っ赤なブランケット(一人用~四人用まであります)を借りられます。カウンターまたはテーブルに座れます。食事は軽食程度。バーにはホットメイプルレモンジンジャー(媚薬入りホットドリンク)の提供はありません。スケートリンク限定ドリンクです。
【年齢がUNKNOWNの方にアルコールの提供は致しません】
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情報屋NPCは今回、おりません。フィーネ・ルカーノのみです。アドリブは頑張れたら入れます!!
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