シナリオ詳細
スパルタンWX
オープニング
●強き者が生き残る。ならば皆が強くなれば良い!
熱気蒸すグラウンド。
雑草の一切が綺麗に刈り取られた平地で、規則正しい屈伸運動をする男がいる。
否、男『たち』がいる。
彼らの肩には大馬車の車輪と見まがうほど巨大なダンベルに、車輪状のストーンウェイトを大量につけたものがのっている。
「アップトレーニング終了。次はウェイトランニングだ」
男たちはダンベルを豪快に投げ飛ばすと、手足に激しいウェイトを装着して走り込みを始めた。
風を感じながら走ってみれば、同じようにランニングをする人々と頻繁にすれ違う。
原っぱでは縄跳び運動や木剣を使った格闘訓練をする者が目立ち、空を飛ぶ鳥に混じってスカイウェザーの戦士たちが過酷な訓練をしている。
彼らの目が時折どこかを見ているのはわかる。
町の象徴であり、国の中心ともいえる闘技場ラド・バウ。
その周辺には同じく戦闘試合を扱う大小様々な闘技場が建ち並び、ある種の激戦区と化していた。
そんな風景の中を走っているだけで、国と一体になったように、男は感じた。
手足のウェイトが鳥の羽根のごとく軽くなったような気さえ。
「なあ、聞いたか。ローレットの噂」
「鉄幻戦争のことか」
鉄帝民の多くには伏せられていたが、鉄帝が幻想に大規模侵攻をかけた噂は細々とだが伝わっている。
その『両陣営』にローレットが協力したことも、噂には上っていた。
「世界の中立ってわけか」
「ああ、侵攻の噂を聞いたときにはローレットを呼べないかと心配になったもんだが……これで心置きなく試合に呼べるな」
男は加速し、周りの仲間たちも苦笑して速度を上げた。
彼らは鉄帝闘技場の『カルテット戦部門』でランク争いをしているチーム、その名も『スパルタンWX』。
●対ローレット、エキシビジョンマッチ
身体のほとんどを覆うような円形シールド。レンズ状の曲面には美しい彫刻がなされ、その裏側からこちらをのぞき見るようにして片手剣を構える黒髭の男がいる。
対するこちらは両手剣を持ち、ゆらりゆらりと左右移動をしている。サイを模したカブトが印象的な男だ。
ただ立ち位置を変えているのではない。お互いにとって有利な間合いをじりじりと奪い合っているのだ。
盾を構えて突進してくる黒髭。
サイカブトは迎撃をしかける――と見せかけ、相手が盾に力を集中した瞬間に相手の盾面を駆け上がった。
背後をとる。
剣の重量があるだけ相手のほうが反転が先……のように思わせ、サイカブトは豪快に上下反転。空中に居ながらにして相手の背中を両手剣で浅く切りつけた。
そのままスピンし、相手の背後に着地。
遅れて反転した敵の盾にタックルを浴びせよろけさせると、高速スウェーで側面へ移動。剣を打ち付けて足で押さえると、さらなる斬撃を相手の首――の寸前で止めた。
「このように」
剣を握ったまま、サイカブトの男は『あなた』へと振り返る。
「俺たち『スパルタンWX』は剣や盾、槍や斧といった中世タイプの武器を専門に扱う闘技チームだ。
特に肉体の鍛錬に関しては随一と自負してる。肉体の屈強さと動き、あふれるスタミナ。
そしてなんといってもこの美しく整った肉体美と躍動する筋肉の派手さこそが魅力だ!」
闘技チームにも色々とスタイルがあるが、スポンサーから運営費用を得ているタイプのチームはその個性も重視していることがある。
『スパルタンWX』はそのクチだ。それゆえ、ファンへのパフォーマンスも重要視される。
「今度、君たちローレットの戦士を招いてエキシビジョンマッチをすることになった。
勝敗は勿論大事だが、何よりも『良い勝負』がしたい!
へんな頼みになってしまうが、俺たちと試合で戦ってくれ。それが依頼内容だ!」
あなたはつまり、今度のエキシビジョンマッチで彼らと戦うのだという。
- スパルタンWX完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年12月27日 21時40分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●闘技場が呼んでいる
鉄と戦いの国、ゼシュテル鉄帝国。
地元ではそれなりの人気を誇る闘技チーム『スパルタンWX』よりエキシビジョンマッチの依頼をうけたイレギュラーズたちは、出番をじっと待っていた。
スタッフの声がけに応えて扉を開ける。
バトルフィールドへ向かう広い通路を歩けば、光と歓声が近づいてくる。
『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)は聖剣リーゼロットを引き抜くと、光さすフィールドへと歩み出た。
「聞け! 鉄帝に相応しき屈強なる戦士たちよ! 我らはローレットのイレギュラーズ! 魔種を討ち、砂蠍を誅した武勇! しかとその目に焼き付けよ! 我もラド・バウに轟く戦士の武勇! しかと心に刻もう! さあ、存分に戦技を競い合おうではないか!」
鉄帝にもイレギュラーズのファンは少なくない。
ハロルドのサービスに、会場は沸いた。
続いてフィールド入りした『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が、観客にビッとサインを送ってから霊光器・槍棍型特種『乾坤炯圏』の霊刃を展開してみせた。
「鍛え方を熟知した者特有の体付き。なるほど、単なる筋肉馬鹿とは格が違う。気張らねば呑まれるか。――派手に行かせて貰うぞ」
その横を歩くのは『猛犬王』ベテルギウス(p3p006505)。
「がっふがふぅっ!!」
(今回、戦うだけために呼び出されたってことで、闘犬としては、戦いに挑まなくてはならないと、覚悟して挑むんだぜ。愚直なまでのしつこさで、泥臭い戦いをさせてもらうぜ)
多くの世界から集まったウォーカーによるチーム。それだけに顔ぶれも個性的だ。
そんなチームの四人目は『黒の騎士』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)。
「俺の名前はシュバルツ=リッケンハルト。お前の話は聞いてるぜ? デュオ。どうやらスピードがご自慢のようだが、俺もちょっとばかり自信があってな」
戦う前から因縁をつけようと、シュバルツはくいくいと手招きをして見せた。
「俺の疾さとお前の捷さ、どっちが速ぇか勝負と行こうじゃねぇか!」
「上等。皆も見たいよな!?」
デュオは短剣を振りかざすと、観客席に振り返った。
拍手と歓声がより大きく盛り上がった。
こっくりと頷く汰磨羈。
「御主の槍捌きは、中々のモノと聞く。手合わせを願おうか」
汰磨羈がテタレスへ霊刃を向けると、テタレスは黙って二歩前に出て槍をぐるぐると回して見せた。
ならばとハロルドが前に出ようとした所で、両手剣を武器とするヘースが名乗りを上げた。
「俺は『剛剣』のヘース。聖剣使いハロルド。お前のことは気になってたんだ。俺とやってくれるだろう?」
願っても無い。ハロルドはどこか凶悪に笑うと、剣を突きつけて見せた。
「アンタの武勇も聞いてるぜ! 両手剣による的確な攻撃! 反撃を許さぬ身のこなし、とな! 俺の守りを崩せる自信はあるか!?」
「やって見せようじゃないか」
なら、と顔を向けるベテルギウスに、トレスは盾を叩いて応じる。
四人と四人。8人の戦士は広く分散し、それぞれの相手へと近づいていく。
そのタイミングをまるで待っていたかのように、始まりのゴングが鳴り響いた。
さて、時系列は前後するが第二試合。
鳴り響く大太鼓とリング縁で燃えさかる炎。
ゲートを潜って現われたのは、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)だった。
駆動星鎧『牡丹』のチューブ側面から飛び出した装甲が全身を包み込み、幻棍『咸燒白』を真上に投げる。
回転しながら落ちてきたそれを流体盾『傾蓋』で弾くと、器用に柄をキャッチした。
「よぉそこの! オメェさんの投げ斧と俺の防御、ちょいと比べてみねぇか?」
棍棒のさきをヘプタに向けてにやりと笑うゴリョウ。
ヘプタは腕組みをしていたが、ガハハと笑って前に出た。
「ローレットの腕利き相手が俺を指名たぁ光栄だ。受けて立つぜ。楽しく踊らせてくれよ」
早速のカードに観客たちは沸き始めている。
そこへ、戦闘フィールドに放置された銅鑼を思い切り打ち鳴らして登場する『鋼の力』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)。
打ち鳴らしに使ったハンマーを頭上で振り回しながら観客たちにアピールした。
「ヘクスサン!」
「応ゥ!」
ハンマーをずずんと大地に打ち鳴らすヘクス。
対決の趣旨をほどほど理解してきた観客たちに、『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)が追い打ちのように声を上げる。
「私は、ユーリエ・シュトラールと申します! 炎神の弓『ガーンデーヴァ』の称号を拝命している者。この一戦をこの目・この体・この魂に刻む一戦にしましょう!」
「あなたはもしや、聖剣騎士団のメンバーでは?」
意外な反応に、ユーリエは目を見開いた。
相手は弓の名手ペンテ。
「名の通りは幻想でよく聞いています。弓の名を持つ者どうし、一矢お手合わせを」
「望むところです!」
「随分とスムーズに決まってしまったね」
美咲・マクスウェル(p3p005192)が後からやってきて、観客席に『見て起きなよ?』とサインを出した。
放置された銅鑼めがけ、拳を突き出すようにしてライトニングを発射する。
「私の拳には雷が宿る……音の440倍の速度であり、1ギガジュールのエネルギーよ。あなたには、かわせない」
「ほう……?」
オクトは顎髭を撫で、渋めに笑った。
「ならばその雷、拳で破壊して見せよう」
それぞれが位置に付き、狙うべき相手を見定める。
開戦のゴングが、高らかに鳴る。
●バトルスタート
水平飛行する鳥のようにフィールドを駆けたシュバルツと、弾丸のごとく飛び出したデュオ。
二人がごくごく僅かな瞬間だけ交差し、激しい火花を散らす。
急所を一瞬で切り裂くようなデュオのナイフに、シュバルツは全力でのダッシュと竜巻のように走る蹴りの二段行動によって対抗していた。
鉄板を仕込んだかのような頑丈な靴底がナイフを弾いて散らす火花が、観客には二人が交差して生まれる花に見えた。
宙返りからの着地で強制ブレーキをかけるシュバルツ。
黒いジャケットが追いつくように垂れ下がる。
「速えし鋭いし当たらねえ。やべえなアンタ」
「お前さんこそ。ステップテンポが人の倍はありやがる」
「そこが売りなんでな!」
フィールド外周を回るように走り始める二人。
これで互いに有利な間合いを奪い合っているのだ。剣士がすり足で円周移動をするのと同じ原理である。
一方、霊刃を展開して真正面から突撃する汰磨羈。
と見せかけて、汰磨羈は跳躍。回転。遠心力をのせた靴が大地を打ち付け爆発のように砂を舞い上がらせる。
「御主の槍捌きは、中々のモノと聞く。手合わせを願おうか」
ぴくりと眉が動くテタレス。
穂先と石突き、そして柄。その全てを使った高速連撃が汰磨羈を襲った。
防衛本能から生まれたという汰磨羈の霊刃がそれを打ち払っていく。
槍と呼ばれる武器には種類があり、テタレスのものは和槍に近い形状をしていた。この槍の特技はフィールド掌握である。
小回りがきき攻撃部位が広く設定された武器でもって、『槍の間合い』から立ち入らせないのだ。
対する汰磨羈のスタイルは肉体の掌握。
体内をめぐるマナを操作して瞬間的な突破力を生み出す。
全身それ凶器の汰磨羈と、槍を肉体の一部とする堅牢なテタレス。攻めと守りのせめぎ合い。
汰磨羈による連続マナショットと槍による牽制が3メートル球形範囲でぶつかり合う。
その横を駆け抜けるベテルギウス。
純粋に肉体を強化された闘犬ベテルギウス。彼の突撃はきっと岩をも破壊するだろう。
対するトレスは大きな円形盾で身を隠し、ベテルギウスの突撃を斜めに弾いた。
盾使いは力使い。受け流すことと狙いを反らすこと、そして距離感を鈍らせることにかけてトレスは天才的だった。
ベテルギウスが突撃の踏み込みをするタイミングで盾を突き出すことで狂わせ、身と盾を同時に引くことで残像でも殴ったような感覚をもたらす。
そうして隙を見せれば即座に盾をオープンして剣で突く。
……が、ベテルギウスもさるもの。攻撃の手応えがなくとも闘犬の執念で即座に対応し、さらなる食いつきをみせていく。この『めげなさ』こそ売り。警察犬が対象のホールドに用いられる理由でもある。
結果トレスは防御に専念することになった。
「盛り上がっているようだな」
「ああ、呼んだかいがあった」
ヘースは剣をしっかりと両手で握ると、ハロルドへと斜めに翳して止めた。
ギラリと悪そうに笑い、しかしハロルドも同じように剣を握り、相手の剣に交差させるように押し当てた。
「この日が楽しみで眠れなかった。悪いが……殺すかもしれん」
「心配するな『ひとつ』くらいくれてやる」
剣が離れる一瞬。ハロルドは素早く剣に聖なる光をあふれさせた。光の力に弾かれるヘース。その隙を狙って回り込み、左目の死角より鋭く切り込んだ。
が、その剣が激しく弾き上げられる。
のけぞった姿勢から無理矢理全身をひねり片腕の力だけでハロルドの剣を払ったのだ。
「――ッ!」
目を見開き、しかし笑う。
間違いない。こいつは……。
勝つか負けるかの、強敵だ。
さて、時を前後して第二試合開始直後。
美咲とオクトは互いの拳をぶつけ合っていた。
バチン、とはじける雷。衝撃によって吹き飛ばされたオクトだが、追撃の雷を拳を高速で打ち付けることによって『破壊』。
更に拳の風圧で自らを加速させ、美咲へ再び接近した。
「むう……この距離で破壊できん。なにか、あるな?」
「さて?」
美咲には秘密がある。
スキル効果を視線の力によって行使するという秘密だ。
飛来する雷を拳で破壊できるというオクトも、それが美咲の拳から出ていると錯覚したために至近距離での破壊ができなかった。
跳躍。空中を蹴って素早くオクトの背後に回り込む美咲。
振り込まれる拳に魔弾を連続で打ち込んでいく。
と同時に、リュカシスのハンマーとヘクスのハンマーが真正面から激突した。
金属平面が強引に衝突する『バギュン』というとんでもない音が鳴り響き、しびれるような振動が周囲に広がった。
しかしなによりしびれるのは、馬車を吹き飛ばしそうなハンマーアタックをぶつけ合ったというのに二人ともその場から微動だにしないことである。
「さあ、もう一発、デス!」
作法か。礼儀か。それともプライドか。
リュカシスとヘクスは互いに防御せず。回避せず。その場から一歩も動かず、ハンマーを正面から打ち合わせるだけで勝負を決しようとしていた。
引いた方が負け。ごく単純な、命がけのチキンレースである。
そんな彼らの頭上を抜けていく矢。
ユーリエはそれを刀で切り落とすと、十字に刀を切り払って斬撃を発射。
飛んできた斬撃を跳躍によってかわすと、背面跳びの姿勢のままペンテは弓矢を三連射した。
三度のバックステップをかけながら飛来する矢を払うユーリエ。
防御に手を使いすぎたか。
その隙を狙ってペンテは残像が生まれるほどの速度で矢を高速連射。ガトリングガンもかくやという矢が飛来する――が、ユーリエは半身状態で斬撃を飛ばすとごく僅かな矢だけを破壊。その僅かなスペースをすり抜けるようにスライド。反撃にさらなる斬撃を飛ばした。
純粋な筋力増強と反復練習によるシンプルな強さ。それこそがスパルタンWX。ユーリエはその圧を身体に感じ、思わず笑みを浮かべた。
「――ぶははっ!」
ゴリョウは盾を翳してずんずんと進んでいく。
飛来する斧をたたき落とすためだ。
初撃の斧を盾で払い、上から放物線を描く斧を棍棒で払い、ブーメランのように真横から迫る斧を盾の側面を打ち付けて払う。
「いい投げっぷりだ! と見せかけて後ろォ!」
棍棒の柄を後ろ向きに振り込み、真後ろから迫る斧を打ち払う。
不思議なのは、こうして打ち払っているのに全てヘプタの手元に戻っていくことである。
「磁石でも入ってのかそりゃあ?」
「ンなもんに頼るのはウチじゃあ二流だぜ。上手に投げりゃあ防ぐ動きも分かるってもんだ。そんなら弾かれる力も計算して投げりゃあいい」
「簡単に言ってくれんなあまったく――うお!?」
斧が前後左右上すべてから全く同時に迫る。まるいぶたさんの顔になって、ゴリョウは相手を見た。
「これも?」
「上手いこと投げた」
「ぶはははははははは!」
ゴリョウは笑いながら高速回転した。
●踊れここが最上のステージ
執念岩をも穿つ。
ベテルギウスの激しい突撃は盾ごしのトレスを突き飛ばした。
が、同時にトレスの剣がベテルギウスの身体に突き刺さる。
ダメージをかかえて引き下がるトレスとベテルギウス。
入れ替わるように飛び込むシュバルツとデュオ。
「アンタにゃ、フルドライブじゃなきゃ追いつけねえな!」
デュオは剣を捨て、更に高速化した。
ニヤリと笑うシュバルツ。
デュオとシュバルツの額が真正面から激突し、コォンというひどく軽い音がした。衝撃が早く走りすぎて音が追いついていかないためだ。
目を見開くシュバルツ。目を見開くデュオ。
残像が無数に分かれ、大量の蹴りとパンチがお互いの間で激突しあい、まるで後から気づいたかのように吹き出した血が散っていく。
二人の頭上。俯瞰で激突する汰磨羈とテタレス。
「素晴らしい技巧だ。燃えてくるよ、心の底からな!」
「貴公もな。守るだけでは、勿体ない!」
交差した二人は着地直後にターン。
汰磨羈は武器を双刃モードに切り替えると大きな竜巻となって突撃。対するテタレスもそれに応えて正面からぶつかっていく。
鉄を切断するような火花が飛び散っていく。
シュバルツと汰磨羈、デュオとテタレス。彼らがほぼ同時に吹き飛んでいく。
全く時を同じくして、ハロルドの剣が相手の首に。ヘースの剣が彼の腹にそれぞれ押し当てられた。
ぴたりと止まる両者の剣。
「引き分けか?」
「いいや、お前の勝ちだ」
見れば、ヘースの身体からは激しく血が流れていた。身体は気合いだけで動かしていたらしい。
もはやこれ以上戦うことはできない。
「首を落とす権利はあるぜ」
「ははっ」
ハロルドは笑って、己の剣を納めた。
そしてこちらは第二試合。
左の拳を突き上げた美咲が、エクスプロードの魔法を瞬間発動させていた。
それに巻き込まれたオクト。
「言ってなかったね。こっちの拳には炎が宿ってるの」
「そういう『設定』か」
見れば、オクトは正拳突きの構えのまま立っていた。拳圧だけで爆発をしのいだらしい。
「視線が必ず打点に向いていた。はじめはそれが自然だと思ったが、今の一撃、宙を見ていたな」
「バレちゃったかな。けど」
「ああ、タネが分かっても貴様は強い」
オクトのさらなる拳を後方宙返りによって回避する美咲。
今度は余計な動作を一切入れない瞬間ライトニングを連射した。
機関銃のようなパンチで雷を次々に破壊していくオクト。
その横を駆け抜けていくユーリエ。
天空から、そして正面からそれぞれ無数の矢が迫る。
ユーリエはそれらを――。
「さぁ」
一切避けずに、直進した。
「勝負を決めましょう!」
ユーリエの頭髪がみるみる銀髪となり、腰から吸血鬼の羽がはえる。
「それが貴女の『聖剣』なのですね。深い愛を感じます。であれば私も――」
ペンテは弓を握ったままユーリエへ直進。
一気に距離を詰めると、ユーリエの突きだした刀を自らの腹で受けた。
突き刺さる剣。根元までずぶりと深く詰め寄り、ユーリエを抱くように固定する。
「命くらい、かけて差し上げなくては釣り合いませんね!」
握った矢が、ユーリエの首筋へと突き立てられる。
その一方で、リュカシスとヘクスの勝負にも決着がつきつつあった。
ヘクスの真上からのハンマーアタックを、リュカシスはあえて頭で受けた。
肉体が縦に潰れるかと思うような衝撃を……リュカシスは気合いでこらえた。
「見事――!」
目を見開くヘクス。被害は甚大。しかし相手の隙は巨大。リュカシスは自らのハンマーに全てを込めて、ヘクスの脇腹へと直撃させた。
弾丸のように吹き飛んでいくヘクス。その場を動かぬという勝負は、リュカシスの勝利と言えよう。
そしてチームの決着は……。
「悪いな」
ヘプタにじりじりと迫り、背負い投げによって地面に寝かせたゴリョウ。彼が馬乗りになり、棍棒を押し当てたことで決着が付いた。
「こちとらどうにも芸が無くてよ」
「謙遜すんな。どっしり肉厚。質実剛健。今すぐにでもスカウトしたい人材だぜ」
ゴリョウは立ち上がり、ヘプタの手を掴んで引き起こした。
歓声が、より大きく沸き起こる。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
エキシビジョンマッチは成功を納めました。
このことがきっかけで、ローレットに試合を申し込むチームも現われるかもしれませんね。
GMコメント
【オーダー】
成功条件:『スパルタンWX』のチームと戦闘を行なう
オプション:良い勝負をする
エキシヴィジョンマッチは『スパルタンWX』のファンおよび無料公開に興味をもってやってきた初見さんたちをギャラリーとして行なうバトルです。
バトルは基本『4対4』で行なうため、ローレット側もチームを4人ずつに分けて配分してください。
あえて偏ったチームを作ってもいいですし、コンセプトチーム化してもいいでしょう。バランスをとるのも勿論アリです。
ただし目的はあくまで『いい勝負をすること』としてください。勝敗はそのついでくらいの認識です。
【いい勝負って?】
普段はガチで勝敗を競っている彼らもショーとしてバトルをすることもあります。今回がそうです。
よって勝ち負けよりもいい勝負であることが重要視されます。
工夫の仕方は色々あるのですが、単純なテクニックでいうと『1対1の構図を作ること』にあります。こいつとぶつかると絵になりやすいなーという相手を選んでみてください。
全員が何かしら機能している状態に持って行くと、戦っているお互いも盛り上がりますし、見ている側も楽しむようになるでしょう。
【スパルタンVX】
今回はチームの中から八人(2組)を選抜してエキシビジョンマッチにあててきました。
●第一チーム
・ヘース:身軽な両手剣使い。回避と命中が高い
・デュオ:片手剣二刀流。高反応スピードスター
・トレス:巨大な盾と片手剣。堅実な防御と打撃
・テタレス:槍使い。相手の体勢を崩すテクニシャン
●第二チーム
・ペンテ:天才弓使い。クリティカルゲッター
・ヘクス:巨大ハンマー使い。防御を無視してぶっ潰す
・ヘプタ:投げ斧の名手。EXAがやたら高い
・オクト:素手で戦う巨漢。拳でなんでも解決する
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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