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シナリオ詳細

<終焉のクロニクル>安穏なる世界を竜と

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「遂に、その時が来るでごぜーます」
 空中神殿のざんげから遂に確実かつ最悪の『凶報』。
 混沌の滅びを確信的に決定づけてきた『神託』がついにその姿を現す。
 これまで、マリアベルを始めとしたBad end8による猛攻が各地で続き、各国もその対応に死力を尽くしていた。
 魔種達やレオン、イレギュラーズにも様々な思惑があるが、イノリの臨む魔種の成就の時はそうすぐそこまで迫っている。
 Case-Dと称された滅びの概念がこの世界に完全顕現すれば、混沌は勿論の事、混沌に連なる全ての世界も破壊されてしまうという。
 衝撃を受けるメンバー達へと、ざんげはさらに告げる。
「最悪な事に、顕現先は『影の領域』と確定しているです」
 幸い、これまで溜めてきた空繰パンドラで顕現までの時間は稼げているようだが、終焉勢力の『滅びのアーク』が顕現先を引き寄せたのかもしれない、とのこと。
 結論から言えば、Case-Dの顕現先は魔種の勢力圏のど真ん中。
 『顕現』をどうすれば世界が救われるかなど、イレギュラーズ内でも答えは出ないが、敵陣の真ん中では何をするにしてもかなりの妨害を受けることになるのは確実だ。
「ですが、『ワーム・ホール』が複数生きているのは僥倖でごぜーました」
 マリアベル・スノウが生じさせたというワーム・ホールは影の領域へと直結している。
 魔種陣営はワーム・ホールを通じて自陣の兵力を混沌各地に送り込んでいたが、当然その逆も成り立つ。
 生身でまともに飛び込めば、辿り着く前に狂ってしまうかも知れないというその通路の安全はざんげがパンドラで確保してくれるという。
「出たとこ勝負は否めねーですが、もうやるべき事はシンプルでごぜーます」
 イレギュラーズは乾坤一擲の大勝負、そして決戦に臨む。
 ざんげとて、無理なことを言っているのは承知だが、こうメンバーへと言わざるを得ない。
「……影の領域、影の城のイノリ達を倒し、Case-Dの顕現を回避して下せーでごぜーます」
 彼女の気持ちを受け止めつつ、メンバーは死地へと赴く。


 メンバーはその後、覇竜へと向かう。
 『滅びを見守る少女』ステラの支援によって開かれたワームホールは、亜竜集落『アスタ』にある。
 影の領域に最も近いワームホールとあり、他国からの救援はほぼ期待できない状況であったが、ローレットは覇竜においても心強い援軍を得るほどに信頼を勝ち得た者達がいた。
「此度も貴公らの助力となろうぞ」
「「押忍!」」
 そう告げるのは、覇竜轟雷拳の面々。
 師範、徐・宇航自ら、多くの門下生を引き連れて参戦してくれており、皆、気合十分といった様子。
「うちらもいるよ」
「足手まといにならぬよう頑張るね」
 また、亜竜種少女ペア、『シェインの相方』カレル・タルヴィティエ(p3n000306)と『カレルの相方』シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)の姿もある。
 変わらず一緒の2人は戦いでも、息の合った掛け合いを見せてくれることだろう。
 そして……。
 後方で控えている3つの影。
 2つは人型をしていたが、もう一つは巨大なヒルの姿をしていた。
 いずれも、竜種と呼ばれる強大な力を持つ者達だ。
「此度の戦い、我らも加わろう」
「貴様らの邪魔はせんが、私達は勝手にさせてもらう」
 人型2人、将星種『レグルス』のティフォン、アルディがそっけなく告げる。
 後方の巨大ヒル、明星種『アリオス』ラードンは黙したまま、格上の2人に付き従う。
 心強い援軍を得たイレギュラーズ一行は、集落内のワームホールへと突入していく。

 ざんげによるパンドラの加護もあり、無事に影の領域へと至ったイレギュラーズ、亜竜種、竜種の混成隊。
 光の入らぬ薄暗い場所を歩く一行は、影の城を臨みながらも、小高い丘を登る。
 そこで待ち受けていたのは、一人の少女だった。
「ようこそ。共に滅びを迎えるヒト達」
 思った以上に可愛らしい声でそう告げたのは、亜竜種を思わせる姿をしていた。
 だが、その全身から放たれるのは魔種のそれだ。
「ステラは滅びを見守るって言っていたけれど。あたしはそれを確実なものとするの」
 原罪の呼び声を発するその少女は、セネリィと名乗る。
 彼女だけでもかなりの強敵であることは確実だが、その後ろには巨躯の滅気竜が数体と、亜竜を象った蒼白い体躯をした変容する獣が多数並んでいる。
 敵の数はこちらよりも多いかもしれないが、こちらも実力者が連なっており、簡単には負けない。
 メンバー達がそれぞれの言い分を魔種へと叩きつけると、協力者達も黙っていられなかったようで。
「勝手なことを」
「結局、終焉を押し付けているようにしか見えぬ」
 竜種ティフォン、アルディがばっさりと魔種セネリィの言い分をぶった切る。
「滅びを迎えるなど、認められるわけがなかろう」
 徐・宇航もまた、流派を代表して告げる。
「精一杯生きるよ、この世界で」
「ええ、カレルと一緒に」
 こんな時でも、亜竜種少女ペアはぶれない。
 魔種セネリィはそんなイレギュラーズ達の言葉に小さく体を震わせて。「それ全部、全て、無くなるのよ……何もかもが無駄なの!」
 叫ぶ魔種少女より放たれる膨大なる力。
 アオオオオオォォォ!!
 ブオオオオオ、オオオオオオオォォォ!!
 それに呼応し、亜竜の姿をした部下達が嘶く。
 もはや、問答は不要。
 安穏なる世界を気づく為、イレギュラーズは竜種、亜竜種らと共にこの戦いへと身を乗り出すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <終焉のクロニクル>のシナリオをお届けします。
 ついに最終決戦です。覇竜の民も竜種も、混沌の終焉は受け入れられぬようで、戦いに身を投じる構えのようです。
 彼らと共闘し、終焉獣、滅気竜の群れを掃討していただきますよう願います。

●概要
 幻想にあるワームホールから突入します。
 影の領域(ラスト・ラスト)での交戦となります。
 薄暗い場所で遠くに影の城を臨みながらも、小高い丘で滅気竜数体と無数の終焉獣を相手することになります。
 遮るもののない広い空間での交戦となり、敵も最大限広さを活かした戦いを仕掛けてくるものと思われます。

●敵:滅気竜+終焉獣
〇魔種セネリィ
 『滅びを見守る少女』ステラの見守る滅びを確実に遂行しようと動く亜竜種の少女。
 狂暴な亜竜らに襲われた際に生き残り、魔種と化してしまったようです。
 飛翔からの強襲の他、高い魔力の放出、炎、冷気、衝撃波と多彩な技を繰り出します。

〇滅気竜:6体
 基本、竜種と協力して討伐に当たります。

・竜虎×2体
 全長4mほど。全身を竜の鱗で覆う虎。
 炎を操り、その炎を使って浮遊して素早い動きによる食らいつき。

・フロストワイバーン(略称:氷亜竜)×2体
 全長4m程、
 吹雪、鋭い氷の刃、凍気のオーラ。

・デルピュネー(略称:蛇女竜)×2体
 上半身は艶やかな女性、下半身は蛇の姿をした亜竜。
 誘惑して相手を魅了、混乱させるのを得意とし、水の術を使いこなすのと合わせ、蛇の尻尾を叩きつけ、相手を締め付けようとします。

〇変容する獣
 主に亜竜を模した蒼白い終焉獣です。
 オリジナルの亜竜と同等かそれより弱い印象ですが、数で攻めてくる分面倒な相手です。

・アームドウイング(略称:腕翼魚)
 ヒレの代わりに太い腕と背にヒレが大きく変形した翼を持つ巨大な川魚のような亜竜。
 飛翔も可能。
 ドルフィンアタック、つかみかかり、ウォーターガン、アクアスプラッシュ。

・アビススネーク(略称:混沌蛇)
 大物は全長3m程。小物は50cmから1m程度。
 麻痺、毒など状態異常を使用。
 大物は食らいつき、締め上げ、飲み込み、尻尾。
 小物は食らいつき、尻尾。

・ウイングヒュドラ(略称:双頭翼蛇)
 2つの頭と翼を持つ全長4mほどの蛇。
 毒の牙での噛みつき、連続噛みつき、回し蹴り、麻痺睨みなど主に体躯を活かした攻撃を仕掛けてきます。

・クラッグザース(略称:岩亜竜)
 全長6mほど。岩の体と膨らんだ腹。
 熱線発射、タックル、岩石投擲。

・ドラゴゲイター(略称;鰐竜)
 全長3m強。竜の頭、四肢と尻尾、鰐の口と体。
 食らいつき、跳躍からの強襲。

・ミネライドン(略称:鉱亜竜)
 全長3mほど。黒褐色、堅い鉱石で覆われた四足歩行の亜竜。
 見た目に対して動きは素早く、力で攻めてくるだけでなく、鉱石を利用して防御、抵抗も高い。
 噛みつき、体当たり、鉱石飛ばし、エネルギー光線。

・ラウンドウォーム(略称:地虫竜)
 全長7mもの巨体を持つ亜竜。動きは鈍重。
 吸い込み、薙ぎ払い、衝撃波、岩石群吐き出し。

・ラウンドウォーム幼体(略称:地虫竜幼体)
 全長2mほど。のしかかり、食らいつき、尻尾はたき。

・ランドイール(略称:電鰻竜)
 全長5m程。
 じたばた暴れる、突撃、尻尾叩きつけ、薙ぎ払い、電撃放出(直線、放出)。

・ワイアーム(略称:翼蛇)
 翼を持ち、脚を持たない蛇。
 噛みつき、尻尾叩きつけ、尻尾締め付け。

●NPC
〇竜種
・将星種『レグルス』:ティフォン
 全長6.5mほど。人間の姿とった彼はかなりの美男子。
 本来の姿は、複数の蛇の尾を下半身として持ち、背には大きな翼、腕を大きな斧状に変化させることもできます。

・将星種『レグルス』:アルディ
 人型は麗しい女性の姿ですが、本来は全長7m複数の頭を持つ竜種。
 高い治癒力を持ち、全身から発する様々な種類の毒が恐ろしい竜です。
 いくつかの頭による連続食らいつき、複数のブレスを使いこなします。

・明星種『アリオス』:ラードン
 全長5m程。巨大な黄色い体躯のヒルを思わせる姿。
 森を守護する若き竜。黄金のリンゴの守護者でもあります。
 人の姿こそとることができませんが、強力な力を有しています。

〇覇竜轟雷拳師範、門下生
 徐・宇航が開いた武術の一派。
 翼や尻尾までも技に活かし、極めるには亜竜種であることが必須です。
 全身を凶器として利用することで、思いもしない攻撃が可能であり、覇竜の亜竜、魔物とも互角以上に渡り合うことができると言われています。

・徐・宇航(じょ・ゆーはん)
 長く伸びた髭が特徴的な40代男性。師範。
 攫われた門下生の身を案じ、同じ姿をした敵との交戦が叶わぬことに無念さを感じながらも、イレギュラーズに今回の状況を託して別の戦地へと向かいます。

・門下生×50名
 20~30代の亜竜種男女。
 意欲的にこの戦いに加わりますが、彼らも死力を尽くす戦いとなることでしょう。

〇亜竜種少女ペア
 フリアノン出身、互いを友情以上の感情を抱くペア。

・カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
 赤いショートヘアの長剣使い女性。
 軽装鎧を纏い、剣舞で周りを魅了しながら相手を殲滅します。

・シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
 緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
 樹でできた長い杖の先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使います。

●『パンドラ』の加護
 このフィールドでは『イクリプス全身』の姿にキャラクターが変化することが可能です。
 影の領域内部に存在するだけでPC当人の『パンドラ』は消費されていきますが、敵に対抗するための非常に強力な力を得ることが可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <終焉のクロニクル>安穏なる世界を竜と完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2024年04月06日 22時35分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
結月 沙耶(p3p009126)
怪盗乱麻
ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)
ライブキッチン
リスェン・マチダ(p3p010493)
救済の視座
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

サポートNPC一覧(2人)

カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
シェインの相方
シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
カレルの相方

リプレイ


 覇竜某所にある亜竜集落『アスタ』。
 この地には、『滅びを見守る少女』ステラの働き掛けもあってワームホールが開かれている。
 間近に迫っている『終焉』。
 それを阻止すべく、ローレットイレギュラーズが集う。
「押し付けられた終焉なんてまっぴらごめんだ」
「このまま滅びを迎える訳にはいかないし、全力で抗うよ!」
 異世界では『怪盗リンネ』の名で世間を賑わせていた緑髪の長髪、『少女融解』結月 沙耶(p3p009126)が言い切ると、天義出身の貴族で、原罪聖職者としても活動する『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)も力強く告げた。
「何もせずに滅びを待つだけなんて性に合わないしね」
「僕も頑張るよ。滅びを確実なものになんてさせないからね……!」
 美青年の印象を抱かせる中性的な青年、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も、この戦いにかける意気込みを口にする。
 さて、ここから影の領域へと攻め込むと聞いて、ローレットイレギュラーズの他に、覇竜に住まう者達が続々と駆け付けていた。
「此度も貴公らの助力となろうぞ」
「「押忍!」」
 覇竜轟雷拳の面々の前へ、覇竜でドラネコ配達便を営む『竜域の娘』ユーフォニー(p3p010323)が挨拶を交わして。
「宇航さん、門下生のみなさん、初めてお会いしたのは悲しい事件のあとでしたね」
「うむ……」
 思い返せば、門下生の姿をとったアダマンタイトと対した一件だった。
 師範、徐・宇航が小さく唸り、他の門下生もやや沈み込むが、犠牲になった青年の為にも、自分達が生き延びねばならない。
「その為にもこの一戦負けられぬ」
 そんな覇竜轟雷拳には、ユーフォニーも世話になっている。
 彼女の名にもちなんだ覇竜交易路『交旅の路』の道中にある昇降機の建造を手伝ってくれていたのだ。
「みなさんのおかげで昇降機も作れました」
 ユーフォニーはそのことに改めて感謝を示す。
「どうか今回も、誰も欠けることなく一緒によろしくお願いします!」
 頷く宇航師範らへ、フリアノン出身の亜竜種『救済の視座』リスェン・マチダ(p3p010493)もまた声をかける。
「えっと、覇竜轟雷拳のみなさん、カレルさんもシェインさんも、どうかご無事で」
 リスェンは合わせて、亜竜種少女ペア、カレル、シェインにも声をかける。
「どこまでできるかわからないけれど、シェインと一緒に」
「カレルと足手まといにならないよう頑張るね」
 変わらず2人は手を繋いで寄り添い、仲の良さを見せつける……が。
「カレルさん、シェインさん、足手まといなんかじゃないです」
 やや弱気にも聞こえる亜竜種少女ペアへ、ユーフォニーは2人がいてくれることが本当に頼もしくて心強いと檄を飛ばす。
「2人の冒険譚が続くように生き抜きましょう、この先も!」
「「ええ!」」
 そんな彼女達へ、リスェンも続ける。
「覇竜が、世界が、滅ぶなんて受け入れるわけにはいかないですから」
 リスェンにとって、頭に生えたツノが嫌いだったとのこと。
 それは、過酷な地で生きる亜竜種という存在にもかかわらず、非力な自信には過分だという負い目もあったようだ。
「でも今は、わたしも亜竜種であることが、亜竜種としてこの地を守るために戦えることが、少しだけ誇らしいです」
 亜竜種として亜竜種達と共に戦うことに特別な感慨を覚えるリスェン。
 また、その亜竜種達と約束したのだと沙耶も強く主張する。
 ――私達はこの世界を救う、と。
「此度の戦い、我らも加わろう」
「貴様らの邪魔はせんが、私達は勝手にさせてもらう」
 人型をとっていた竜種、将星種『レグルス』のティフォン、アルディ、それにヒルの姿をした明星種『アリオス』ラードンだ。
「以前に戦った事もあるし、実力はよく知ってるしね!」
「竜種の方たちとともに戦えて、心強い限りです」
 リスェンもまた、今回の共闘に頼もしさを覚えていた。


 影の領域。
 敵の居城を臨む薄暗い空間を進むイレギュラーズ一団だが、やや小高い丘へと登ったところで足を止めることとなる。
「何かいるね」
 周囲を警戒していたヨゾラの一言で、皆前方にいる何かを注視する。
「ようこそ。共に滅びを迎えるヒト達」
 待ち受けていたのは見た目亜竜種を思わせる少女。
 だが、その全身からは原罪の呼び声を発しており、魔種と化してしまっていることが分かる。
 少女は後ろに、滅気竜と化した亜竜数体と亜竜を象った変容する獣を無数従えている。
「ステラは滅びを見守るって言っていたけれど。あたしはそれを確実なものとするの」
 セネリィと名乗った少女からは、この世界に対する並々ならぬ恨みのようなものを感じさせる。
「覇竜領域も、わたしの村も、やっと、いい感じになって来たのよ。滅びなど容認できないわ」
 聖職者であるオッドアイの亜竜種少女、『ライブキッチン』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)は普段、包容力を感じさせる態度をとっているのだが。
「そんなに滅びたければ、自分たちだけでおやんなさい。他者を巻き込まないで欲しいものね。一緒するなら、もっと創造性のあることにしない?」
 破滅を望む相手に、アルフィオーネは厳格な態度で対する。
 相手がまるで応じる素振りを見せぬこともあり、彼女は真っ先にイクリプスを発動させた。
 子供の見た目から、アルフィオーネの姿は大人の……竜の女神様を思わせる姿へと一変して。
「どう? 大したものでしょ?」
 日頃の姿は親しみやすさを重視した、言わばギャグの姿とアルフィオーネは話す。
 ちょっと本気を出せばこんなものだ、とも。
 その彼女に続き、他のメンバーもまたパンドラの加護を使って姿を変えていく。
「滅びもさせないし、反転も狂気もお断りだよ!」
 現在の呼び声を断固拒否するヨゾラは、本体であり自分自身である魔術『魔術紋』が体の外にまで拡張し、その背からは翼のように広がる。
「私は戦う。相手が終焉だろうと何だろうと!」
 状況を察した沙耶もまた背に発したAURORAを翼のように展開する。
 ポニーテールにした茶髪にオッドアイの気まぐれ少女『あたしがいるっすからね』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)もまた、すぐに姿を変えた。
「向こうの竜虎は炎系の攻撃を多用しているみたいっすね」
 黒いドレスを纏った彼女は滅気竜となった竜虎に狙いを定めるよう公言する。
 この場には、魔種という強大な相手こそいるが、竜種は間違いなく比較的手慣れた相手である滅気竜の抑えに向かう事だろう。
「だったらあたしが相手取るのが有効っすかね?」
 それを踏まえ、ウルズは竜種らに認めてもらえるよう演技もしつつ、スピーカーボムも使って前口上を上げる。
 それは、周りの鼓舞と合わせ、味方陣営をうまく扇動する狙いもウルズにはある。
「…………」
 彼女の意向を組んでくれたのか、竜種らは無言で他の滅気竜、フロストワイバーン、デルピュネーを相手してくれるようだ。
 次々に、姿を変えるイレギュラーズ。
 ギターを携える小柄な銀髪の人間種少女、『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)も、あり得た自身のIFの姿をとる。
 『涼花』であるわたしでなく、ボク自身に。
「敵は多い、でも味方も多い。なら、わたしが――ボクが、やることはただ一つ」
 とはいえ、やることはいつも通り。
 皆が盛大に暴れても大丈夫なように、最後まで皆が立ってられるように。
 味方へと精一杯の支援を、涼花は届けるだけだ。
「今回は、ラードンさんやティフォンさんが力を貸してくれるのは嬉しいな」
 倒すべき敵が多い状況とあって、彼らが好き勝手に暴れてくれるだけでも助かるとスティアは心より喜ぶ。
 その傍ら、仲間達や友軍へと亜竜、滅気竜などの情報を共有していたユーフォニーも、敵を前にイクリプスを発動させる。
 凪色の竜へと変貌した彼女は、竜種達へと呼びかけて。
「ティフォンさん、アルディさん、ラードンさん。竜の姿で共にこの場に立てること、今とても嬉しいです」
「貴様は……」
 ティフォンは少し目を見開くが、ユーフォニーが自分達と似て非なる存在と気づいてすぐに背を向ける。
「一緒に戦ってくれてありがとうございます」
「……私達は、信ずる道を進んでいるだけだ」
 アルディは素っ気なく返すのみ。
 共闘というにはまだ距離があるようにも思えたが、それでも、ユーフォニーはこの姿で、同じ舞台に立てるだけでも感慨深いものを感じていたようだ。
 敵を前に、ティフォン、アルディはその体躯を膨れ上がらせて。
 ティフォンは複数の蛇の尾を下半身とした大きな翼を背にする嵐の竜に。
 アルディは複数の頭を持つ毒の竜へと変貌する。
 なお、ラードンは他2名に比べれば若い竜であり、人型をとることができずヒルの姿のままだ。
(見ているだけで心が暖かくなるほどに彼らは強い)
 落ち着いた物腰の人間種女性、『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は竜種とさえ手の取り合えるこんなにもまだ素晴らしい世界と再認識して。
「だからこそ、まだ滅びを受け入れるわけにはいきません」
 同意するのは、異世界からやってきた勇者パーティーの一員、『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)もパンドラの加護を使用する。
 その姿は、亜竜種を思わせるような黒い鱗纏う『黒竜魔人』へと変貌する。
「滅びを確実な物にさせたりなんてしない!」
 ――大丈夫、この姿でも私はみんなを助けられる!
 ヴェルーリアの叫びに、魔種セネリィは露骨に顔を歪めて。
「全て、無くなるのよ……何もかもが無駄なの!」
「無駄というのは勝手ですが……」
 マリエッタは少しばかり呆れた態度をとりつつ、魔力を高めた。
「……この世界が如何に素晴らしいか、見せつけてあげますよ! セネリィ、貴方の絶望をいつかの希望に変えるぐらいにね」
 マリエッタに同意するカレル、シェイン。
 覇竜轟雷拳の面々もそれぞれが身構え、敵の出方を窺う。
「これだけ多くの面子がいるんだ、弱気な事なんて言っていられないんだ!」
「同じ想いの人達がここにもいる。皆で力を合わせて勝利を掴み取る!」
 沙耶は友軍達に不格好な姿など見せられないと、スティアも友軍達とこの先にいる敵を掃討すべく、それぞれ気合を入れる。
 この影の領域では、いくつもの戦いが繰り広げられているが、その全ての戦いがまさに総力戦だとユーフォニーは把握している。
「覇竜で出会えたみんなとともに、きっと絶対、護りましょう世界を!」
「貴方達は倒すし、死ぬ人が居ないように全力を尽くすよ!」
「そうだ、全力で暴れてこい!」
 ヴェルーリア、涼花が戦意を高ぶらせる。
「……皆、よろしくね。ここで絶対に打ち勝とう!」
 頼もしい者達と共に、ヨゾラは終焉の手勢へと立ち向かう。


 アオオオオオオオオォォォオ!!
 グアオオオオオオオウウウ!!
 小高い丘で魔種セネリィに率いられていた敵はいずれも亜竜の姿をした敵ばかり。
 滅気竜は亜竜が変異した存在の為、ある意味では亜竜の存在そのものではある。
 一方で、変容する獣は蒼白く透明な体を持っており、亜竜の姿へと進化した存在とみられる。
 なればと、アルフィオーネは何か思い立ったようで。
「あとで、美味しいもの食べさせてあげるから、ちょっと手伝ってもらえる?」
 後光を発する彼女は覇竜轟雷拳の面々にそう告げてから、敵陣へと仕掛ける。
 素早く動くアルフィオーネだ。
 乱戦になる前にと、彼女は全力の火力ブレスを吐きかける。
 敵は大小様々だが、かなりの数を巻き込んで炎上させた。
 覇竜轟雷拳は宇航が門下生へと指示を出し、隊列を組むがその間も竜種3名が滅気竜を相手すべく向かう。
 ティフォンは真っ先に氷の体を持つフロストワイバーン2体を相手する。
 氷の刃を舞わせ、凍てつく吹雪を吹き付けてくる竜。
 明らかに亜竜の時と比べて強力な力を得ていたその氷亜竜を、ティフォンは斧と化した腕で牽制し、嵐を巻き起こして攻め立てる。
 少し距離をとって、デルピュネー2体がアルディへと蛇の尻尾を絡め、水の術を叩きつける。
 だが、アルディも体内に有する強力な毒を噴きつけ、蛇女竜を自由に立ち回らせない。
 そして、ラードンは竜虎1体を相手取る。
 相手の噴きつける炎を浴びながらも尻尾を叩きつけ、大きく牙を突き立てていく。
 竜種と滅気竜がぶつかる度に、破裂するような衝撃音が周囲へとこだまする。
 それを耳にしながら、イレギュラーズも攻勢に出る。
 まずは数の多い変容する獣をある程度減らすまで掃討を進める作戦。
 ユーフォニーは世界にさざめく色をその身に宿す。
 携帯してきた護符『ライプニッツ・オーダー』も使用し、ユーフォニーは敵陣に向けて詠唱する。
 程なく展開したのは、彩波揺籃の万華鏡。
 色とりどりの光が敵陣で煌めき、変容する獣達を灼く。
 じたばた暴れる地虫竜ラウンドウォームに電鰻竜ランドイール。
 ただでさえ巨躯の相手。
 暴れるだけでも大きな振動を引き起こし、こちらの攻勢を削いでくるのがなんともいやらしい。
「数は多いけれど、対処は可能でしょう」
 マリエッタはこの状況でも、多くの仲間達がいれば大丈夫と考える。
 まずは携帯品『エルメリアの妄執』の力を借り、マリエッタは周囲に呼びかける。
「滅びに抗う者達よ、奮起せよ!」
 鼓舞の意味も込め、マリエッタは周囲の仲間、友軍を鼓舞する。
 それを耳にするヨゾラは自身……を励起する。
「魔術紋よ光輝け。望みを叶える為、星空に手を伸ばす願望器であれ」
 言葉一つ一つが魔術紋を少しずつ輝かせ、効率よく魔力を循環させる。
 そうして、ヨゾラは腕を伸ばした方向に星空の泥を巻き起こす。
 一見すればケイオスタイドであるが、彼の術はその名の通り、星空を思わせる光景が広がり、そこに敵を呑み込む。
 巻き込まれた混沌蛇アビススネークや鉱亜竜ミネライドンがアップアップしながらその中から脱しようとしていたが、もがく敵へと徐・宇航師範が飛び込んで。
「ハアアッ!」
 翼を羽ばたかせて頭上から強襲し、敵の体躯を足場として回し蹴りを叩き込む。
 門下生らも続き、それらの変容する獣を攻め崩し始めていた。
 仲間や友軍へと強襲せぬよう、沙耶は手近な相手に『怪盗リンネの予告状』を投げつける。
 突き刺さった双頭翼蛇ウイングヒュドラは目の色を変え、沙耶へと毒の牙で噛みついてくる。
 それを、シェインがすぐさま癒し、カレルが真下から剣を切り上げる。
 変容する獣はオリジナルの亜竜よりはやや劣る印象。
 沙耶は手近な敵を抑えつつ、タンク役となる仲間の状況にも気を払っていた。
(タンク役……ウルズさん、スティアさん……)
 リスェンは敵の猛攻に晒される仲間達を支援に当たる。
 まずは、聖女の心を強く意識して力を高めたリスェンは、タンク役2人を中心に多くの仲間を捉えられる位置につく。
 後は状況を見て支援するが、今は攻撃もと終焉の帳を降ろし、腕翼魚アームドウイングや翼蛇ワイアームに不吉と終わりをもたらさんとする。
 涼花も回復支援に動き、初手で竜声を響かせた。
 咆哮は檄となり、耳にした仲間達へと祝福を与える。
 これから、仲間達は数え切れないほどの攻撃にさらされるはず。
 少しでもその負担を減らすことができればと、涼花は一旦支援を続ける。

 そんな中で、強敵へと挑むメンバー達。
 タンク役となっていたウルズは先に宣言していた通り、竜虎を相手していた。
 滅びのアークの影響で滅気竜となっていた竜虎は竜種でも全力で相手する程の力を有している。
 身軽な動きで躍りかかるそいつの食らいつきは並の生物なら抵抗すらできずに餌と化す。
 それでも、ウルズは名乗りを上げ、竜虎を自分に釘付けにしようとする。
 ウルズもイレギュラーズとして相当な手練れであるのは間違いない。
 加えてイクリプスの姿となった彼女は並外れた力を発揮してはいた……しかし、一人だけで相手していたなら数分と持たなかったかもしれない。
 だが、この場には頼もしい仲間がいる。
「邪魔するぞ」
 もう1体の竜虎を相手していたラードンの尻尾がこちらに届く。
 そうした牽制もあり、ウルズは戦線を持たせていた。
 さらにヴェルーリアが支援に当たり、戦いが最適化する特殊支援の遂行術式を施す。
 その術式『SS』は彼女がこの世界でいつも頼りとしてきたもの。
 今回もまた、ヴェルーリアはその術で仲間達の助けに動き、合わせてユーフォニーの状況にも気を配っていたようだ。
 そして、スティア。
 彼女もまた強敵……この場の指揮官である魔種セネリィを抑える。
(時間を稼ぐのは得意だからね)
 まだ戦いは始まったばかり。
 戦線が安定するまではとスティアは強い意志を魔力と成し、セネリィへとぶつけていく。
「もう終わりなの、全て、皆、何もかも……!」
 飛翔したセネリィは地面に向けて凍てつく冷気を叩きつける。
 刹那地面すらも凍り付く状況の中、スティアは他の敵を相手する仲間や友軍を巻き込まぬよう、少し引き離すことも考えていた。


 薄暗い影の領域での戦い。
 多くは蒼白く光る亜竜を模した変容する獣達。
 覇竜に生育するように進化を遂げた個体なのだろうか。
 岩亜竜クラッグザースの姿をとる者などは、並の亜竜でも十分太刀打ちできる力があり、実際生き抜くことも可能だろう。
 ただ、模倣した種に比べると、やはり力は数段落ちる。
 それゆえに、万全な状態であれば、支援に駆け付けた亜竜種達でも十分相手できたかもしれない
 マリエッタは敵のみを捉えられるタイミングと見るや、ケイオスタイドを浴びせかけて変容する獣達を満足に行動させない。
 それもあって味方陣営が優位に立ち回れるようになっているはず……なのだが……。
 この影の領域という場所は滅びのアークの気配が蔓延しており、思った以上の負担をイレギュラーズ陣営に与える。
 イレギュラーズは多くがイクリプス化し、己のパンドラを使いつつも堪える。
 そうでないスティアなどは厳しい状況の中でも魔種を抑え、現状はなんとか堪える。
 思い付きの戦法で攻め立てることで相手を惑わすスティア。
 それでも、広範囲に放たれる衝撃波など相手の力技で傷も少しずつ増えている。
 近場で交戦するカレルと背合わせに立っていたシェインから癒しを受けつつ、スティア自身も結界を展開するなどして体力の維持に努めていた。
 竜種、ティフォン、アルディ、ラードンはほぼそうした負荷を感じさせずに立ち回る感があったが、亜竜種達はそうもいかない。
「くう……」
 気丈に振る舞おうとする覇竜轟雷拳の門下生の中には、早くも膝をつく者も出始めている。
「そこは危険っす、一度後退するっすよ!」
 ウルズ自身も竜虎の相手をするのに手一杯。
 その場は呼びかけを行うと、ヨゾラや涼花らが救援へと向かう。
 ヨゾラはその場でも星空の泥を展開して変容する獣を牽制する。
 すでに倒れる門下生の姿もあったが、そこは身内同士で助け合う様子も確認できた。
 そうした消耗の大きい友軍に、涼花が聖体頌歌や幻想楽曲を響かせた。
 できる限り効率的な支援を。
 涼花は極力後手での動きを意識して回復支援に注力する。
「楽園追放……変容する獣の数を減らせ!」
 少しでも状況が持ち直せば、ヨゾラの神聖秘奥の術式が敵を灼き、ラウンドウォーム幼体やアビススネークが地に落ち、消えていく。
 その状況の中で、アルフィオーネはランドイールの姿をした相手を狙う。
 討伐後、うなぎ料理にできればと彼女は考えていたのだ。
「ふふん。そんな程度の電撃じゃぁ、肩こりも治せやしないわよ?」
 放電してきても、アルフィオーネにはまるで効かず、笑って受け止めすらしてみせる。
 お返しとばかりに召喚したのは、ミニペリオンの群れ。
 数で攻め立ててランドイールを撃破したと喜んだアルフィオーネだが、光と共にその体躯は完全に消えてしまう。
「う、うなぎ……」
 思わぬ事態に彼女は一時がっくりとうな垂れてしまった。

 少しずつではあるが、イレギュラーズ陣営が変容する獣を攻め崩す。
 亜竜種達も厳しい状況ではあったが、覇竜轟雷拳の面々も意地を見せて。
「後は我々に任せて、首魁を……!」
 宇航師範に、師範代らの手練れとなる者達はまだ戦えると笑顔を見せる。
 この場は彼らに預け、メンバーも滅気竜の相手へと乗り出す。
 相手すべきは竜虎。
 沙耶は想いの力を破壊力とし、若草色の輝きとしてそいつへと撃ち込み、仲間と共にその周囲を囲む。
 依然、ウルズが竜虎を抑える状況が続くが、傍に位置取ったリスェンが覇竜轟雷拳等も含め、天上のエンテレケイアで癒しをもたらす。
 しばらくはヴェルーリアも疲れを見せる仲間を支えるべく、希望の喊声を響かせる。
 そうした仲間達の支えあってこそ、アタッカーとなるメンバーも全力で攻撃することができる。
(できるなら、セネリィごと……)
 ユーフォニーはそう考えるが、抑えるスティアが敵の範囲攻撃がこちらを巻き込むことを懸念し、距離が開いている。
 彼女はここでも彩波揺籃の万華鏡を浴びせるが、ラードンの相手する竜虎にもしっかり巻き込み、その全身を照らす。
 ヴェルーリアはそのユーフォニーへと支援の『SS』を施せば、すぐにウルズにも同じ術式を付与する。
「竜虎を倒して、セネリィと戦う先輩たちにいち早く合流するっす!」
 スティアの負担も相当なもののはず。
 炎を使って素早く襲撃してくる竜虎を迎え撃つウルズは、拳に纏わらせた雷撃を直接敵の体へと打ち込む。
 グガアアアアアア!
 一際大きな咆哮を発した竜虎の体から炎が消え、つんのめるように地面へと激突し、完全に動きを止めた。

 魔種を抑えるスティアの方には、沙耶がアシストへと入っていた。
 亜竜種少女ペアの支援を受け、スティアがしばらく回復するまでの時間稼ぎ……だったが、セネリィの猛攻は想像を絶した。
「無駄、無駄なの……!」
 赤く目を光らせるセネリィの魔力を受け、沙耶は意識が飛びかけてしまう。
 彼女がパンドラを砕くのを見て、アルフィオーネがすかさず救援に向かう
 一方で、アタッカーの矛先はもう1体の竜虎へと向く。
 すでにラードンが交戦していたのだが、メンバーはこいつを倒せば、残りは竜種だけでも対応できると踏んだのだ。
 炎を吐き出す竜虎のサイドからヨゾラが星の破撃を叩き込むと、涼花も仲間の回復支援が十分と踏み、火力となる精神力の弾丸を浴びせかけた。
 ラードンの食らいつきを受け、動きが鈍ったそいつへとマリエッタが血の魔術を展開して確実な死を滅気竜へともたらす。
「我だけでも十分ではあったが……」
 尊大な態度を崩さぬヒルの姿をした竜種。
 だが、ここは己のプライドよりも、格上の2人を援護すべきと残る滅気竜へとラードンは吶喊していくのだった。


 強者を攻め崩すイレギュラーズ陣営だが、変容する獣はまだ数を残している。
 覇竜轟雷拳の面々が踏ん張って相手してくれているが、彼らは慣れぬ地での交戦もあり、激しく息ついている。
 門下生の一人が大勢を崩したところで、リスェンが危機を察して飛び込み、庇いに当たる。
 クラッグザースの熱線に撃ち抜かれ、リスェンもパンドラの助けを得る形となったが、門下生を助け出せたことに安堵していた。
「せえええい!!」
 そこに宇航師範のかかと落としが炸裂し、クラッグザースが消し飛ぶ。
 リスェンも己の回復と合わせ、しばらくは彼らの手当てに動くことになりそうだ。

 魔種セネリィは、これほどまでに抵抗するイレギュラーズ陣営に、驚きを隠さない。
「意味が分からない」
 もう、滅びはすぐそこまで。
 そうすれば、皆、全てがなくなる。
 亜竜も、モンスターも、亜竜種も、ステラも、あたしも、世界も、皆、皆。
 膨大な魔力がセネリィの周囲にいた者全てを呑み込む。
 ここまで踏ん張っていたスティアもついに地へと伏しかけ、パンドラをつかみ取ることで両手で体を支え、身を起こす。
 すぐさま強化の秘術『天地神明』を己に付与する辺り、スティアの戦意はまだ砕けてはいない。
 とはいえ、すでに満身創痍な状態であり、シェインが癒しの光をスティアへと灯す。
 カレルは相方の守りに徹する構えだ。
 アルフィオーネも今度はスティアに宝冠を降らせ、万全に戦えるよう支援に尽力していた。

 イレギュラーズ陣営の被害は小さくはない。
 だが、竜種3人の奮戦もあり、その余波を受けた変容する獣が幾体も消し飛んでいる。
 ラードンが加わったことで、ティフォンはフロストワイバーンを1体仕留め、アルディもまたデルピュネーを1体倒していた。
 現状は3人で2体を相手にする状況とあり、こちらはもうイレギュラーズが手を出す必要もないだろう。
 そんな強者達ですら終焉に立ち向かおうとしている姿を横目に、沙耶はセネリィへと呼びかける。
「これだけ希望を持つ竜もいるのに、君達はなんで滅びを望む……」
「混沌の終焉は絶対なの」
 そうした考えすらも、滅びのアークの力なのかと沙耶は推察する。
 それなら、セネリィもまたある種の被害者なのかもしれない。
 沙耶は一度、『Ys-G・L・B』を撃ち込み、さらに続ける。
「ステラは本当は滅びを望んでいないのかもしれないぞ? 少なくとも私はそう信じたいんだ」
「そんなこと……ない……!」
 セネリィはステラの見守る滅びこそ自分達の求めるものと疑わない。
 一時、タンクを請け負っていたヴェルーリアだが、周囲へと放つ衝撃波に体を裂かれそうになり、気合で踏ん張る。
「魔種を自由にはさせない!」
 守りを固めながらも、ヴェルーリアは希望の喊声を響かせる。
 やることは多いが、彼女は加護によって並々ならぬ行動力を発揮する。
 他の仲間が回復に動いていたこともあってか、ヴェルーリアは自身を三頭身にした姿をした軍勢を召喚し、一斉に襲い掛からせてもいた。
 回復役に動いていた1人、涼花はここぞとヒーラーとしての信念を抱いて仲間を癒す。
「ボクの前では誰も倒れさせないし、ガス欠もさせない」
 星々の瞬き、天より降る光輪。
 回復が間に合ってないと判断すれば、涼花は携帯品『フイユモールの刻』の力を借りて癒しの対象を増やして対処する。
 だが、魔種の力はイレギュラーズの想定を超える。
「もう、いいの……終わらせるの……!」
 血の輝きを持つ大鎌を全力で叩き込んできたマリエッタへ、セネリィは渾身の魔力を叩き込む。
 もろに受けてしまったマリエッタはすぐに飛び起きる。
 ところが、マリエッタも数秒意識は途切れていたようで、パンドラが少し零れ落ちていたことを自覚する。
 『戦神の詩』を歌い、前線にいたウルズも相手の気を引きつつ竜撃の一手を叩き込み、セネリィの守りを打ち崩す。
 そこで、ヨゾラが飛び込んで。
「何もかも、無駄なんかじゃない! 僕等は全員生きて勝つんだ!」
 自身、魔術紋を強化していたヨゾラは敵の懐へと潜り込み、神秘の極撃を見舞う。
 それでも、魔種となった少女はこちらを睨みつけて。
「無駄、無駄なの……!」
 それは、亜竜に襲われて全てを無くし、絶望した少女の胸の内。
 仲間達が繰り出す攻撃の間隙を縫うように。
 心を染めゆく凪色万華。光彩変華。そして、導きだした勝利の為の手順を着実になぞり、ユーフォニーは攻め続ける。
「……セネリィさん、反転前に助けられなくてごめんなさい」
 ユーフォニーはそんな彼女に、謝らずにはいられなかった。
 彼女のような犠牲が無い世界にしたい。
 それが綺麗事と分かっていながらも、ユーフォニーは歯を食いしばる。
「でも世界は譲れないからこそ考え続けます。世界もあなたも、無駄ではない!」
 巡り、廻り、無限に続く万華鏡。
 それが眩いとセネリィが感じた時、彼女に終わりは訪れる。
「……そんな、ステラ、ごめんな、さい……」
 魔種の少女は零した涙と共に、その体を崩していったのだった。


 魔種セネリィを撃破しても、しばらく交戦は続く。
 竜種達も激しい攻防の末、フロストワイバーンやデルピュネーを撃破したようだ。
 変容する獣達も、少しずつその数を減らす。
 友軍もさすがに無事とはいかず、倒れる者も出始める。
 イレギュラーズや亜竜種少女ペアの支援も続くが、倒れたままとなった覇竜轟雷拳門下生も……。
 それでも、指揮官、滅気竜がいなくなったことで、変容する獣も勢いがなくなって。
 しばらくし、それらの掃討も完了する。
 ヨゾラを中心に皆が手当てを行い、安堵の息をつくが、アルフィオーネは溜息をついていて。
「他の亜竜みたく、死骸が残ってればね……」
 変容する獣の素材を当てにしていた彼女。
 滅気竜の死骸は目に見える形で残っていたが、変容する獣は全て討伐後に消え去っている。
 特にランドイールが残っていれば、うな丼、う巻き、白焼き、肝吸いetc……、うなぎ料理フルコースを振る舞いたいとアルフィオーネは考えていたのだが。
「この後、本物のランドイールを倒しに行こうかしら」
 さすがに、これだけの戦いの後。
 覇竜轟雷拳の面々も意識不明者も出ていることから、ささやかな形での打ち上げをと誰かかしらから提案が出る。
「フリアノンまで戻れば……」
「ランドイールの食材はあるかも」
 亜竜種少女ペアに促され、アルフィオーネもこの場は納得し、友軍らと共に撤収を決めたようだ。
「……我らはここまでだ」
「まだ覇竜の地に終焉に堕ちた竜が暴れているからな」
 竜種3名はそのまま先にワームホールを抜け、覇竜へと戻っていく。
 彼らはなおも新たな戦いに身を置くのだろう。
 同じく、さらなる戦いへと向かうイレギュラーズがいる一方で、疲弊も大きい友軍らを労うべく数名が提案通りにフリアノンへと向かうことに。
 この場は解散する中、ヨゾラは魔種が消えた場所を見つめて。
(セネリィ……君の事も、反転するより前に助けられれば良かった。ごめんね)
 一言、消えた少女へと謝罪したヨゾラは最後にその丘を後にしていったのだった。

成否

成功

MVP

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女

状態異常

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)[重傷]
天義の聖女
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)[重傷]
死血の魔女

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは終始魔種の抑えに当たった貴方へ。
 魔種を撃破した貴方にも称号を付与しております。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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