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シナリオ詳細

<グレート・カタストロフ>何度も守った平和だから

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●空に穴があいた日から
 世界の滅びまで、カウントダウンが始まったらしい。
 辺り構わずにバグホールが開き、終焉獣たちが世界中を跋扈し始める。
 そのあまりにも残酷な有様は、冠位傲慢によって滅ぼされかけた天義の地とて例外ではない。
「折角守った世界なんです。これ以上壊させはしません!」
 剣を抜き、走り出したのは星光教会聖騎士団に属する唯一の騎士、アンバー・キリードーン。
 三本足で歩く奇怪な星界獣の腕を切り裂くと、返す刀で相手の胴体を切り裂いた。
 星の瞬きを思わせるその一閃。大して別の星界獣が腕の先端を剣のように鋭くして斬りかかってくる。
 頭を正確に狙った斬撃はしかし、アンバーの咄嗟の転がりによって回避される。
 直後、ハーフボイルド探偵スモーキーが煙草の煙を吐き出した。
 煙はまるで意志を持ったかのように膨らみ、巨大な腕のようになって星界獣を掴みかかる。
 拘束された星界獣めがけ跳び蹴りを叩き込むスモーキー。
 直撃したことでバキャッと音を立てて星界獣の頭が割れた。
「ったく、アンバーの言うとおりだぜ。こちとら神殺しの直後なんだぞ。いきなり世界の崩壊に巻き込まれてたまるかってんだ。なあ、あんたもそう思うだろ異端審問官!」
 問いかけに対する最初の答えはズドンという衝撃音だった。
 巨大なハンマーを用いた大上段からの打ち下ろし。それによって叩き潰される星界獣。
 長いパープルカラーの髪を払って、黒衣のシスターは微笑みと共に振り返った。
「相手が何者であれ、この天義を穢す者は叩き潰すのみです」
 そう決然と言い切るのは異端審問官メディカ。彼女へと襲いかかった新たな星界獣をハンマーで振り払うと、そのまま吹き飛ばして壁に叩きつけた。
「けれど……少々数が多すぎるようですね。援護を要請しましょうか。お姉様たちに」
「仲の良いこって」
 からかうように言うスモーキーにメディカは糸目のまま微笑みを深くした。

●崩壊
 世界中を襲うバグホールとBad End 8による侵攻。それは天義の地でも例外ではない。
 アンバー、スモーキー、メディカはかつて天義を襲った未曾有の魔種災害への対応から知り合い、こうして同じ現場に顔を出すようになっていたらしい。とはいえそれぞれ所属は別々。任務も別なら目的も別だ。共通しているのは、世界の崩壊からこの世界を守るという一念のみである。
「皆さん、揃いましたね」
 メディカが集まったイレギュラーズたちを眺め、その顔ぶれに安堵したように頷いて見せる。
「今回は、天義の町を襲う星界獣の撃退を皆さんに依頼したいと思います。アンバーさん?」
 顔を向けると、騎士アンバーはこくりと頷いた。
「はい。今回襲われている町は私の騎士団が拠点としている町、ペネトスレイトです。
 この町の騎士団は過去の災害で多くの騎士を失い、今は私だけ……迎撃戦力がどうしても足りないのです」
「ってことで、顔なじみの俺らもヘルプに呼ばれたってわけだ」
 煙草をくわえながら手帳をぱらぱらと捲るスモーキー。
「だがそれでも戦力が足らねえ。手を貸してくれ、イレギュラーズ」

 今回町を襲撃しているのは天義の国にも降り注いだ星界獣の一団である。
 第一ウェーブとして迫ってくるのは三本足に剣のような腕をもった奇怪な星界獣の群れ。『三本足星界獣』と呼称しているこれらは知能は低いものの体力は高く、倒すのに一苦労しているらしい。
「手が足りねえのは三本足の群れのせいもあるが……一番問題にしてるのはこの後にやってくる星界獣だ」
 第二ウェーブとして攻め込んでくるのは三本足星界獣に加え、人型の星界獣だ。
 『大鷲のマキリマ』と呼ばれるこの個体は巨大な翼と怪力を持っており、村一つをたった一体で滅ぼしたという。
「こいつは高い機動力と魔術による多角的な攻撃を得意としていて、倒すにはどうしてもイレギュラーズの手が必要だ。あんたらを依頼した一番の理由でもある、な」
「私達も共に戦います。どうか、もう一度この国に力を貸してください」
 アンバーはそう言って、深々と頭を下げた。

GMコメント

●シチュエーション
 天義の町ペネトスレイトを防衛します。
 戦闘フィールドは市街地内。避難は既に済んでいるものとします。

●第一ウェーブ
・三本足星界獣×多数
 文字通り三本の足と剣のような腕を持った星界獣の群れです。
 攻撃は近接に限られ知能も低いですが、体力が高く群れを成す性質があるためそこが厄介です。

●第二ウェーブ
・『大鷲のマキリマ』+三本足星界獣複数
 村をたった一体で滅ぼしたという人型星界獣です。
 三本足をいくらか取り巻きとして従えてやってきます。
 マキリマは大きな翼と盾を持っており、高い機動力と多角的な魔法、そして盾による頑強さが特徴です。
 一応飛行可能ですが、高高度に逃げるということは無いと思われます。
 人語を解し、高い知能も持っています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <グレート・カタストロフ>何度も守った平和だから完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年01月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
冬越 弾正(p3p007105)
終音
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ニャンタル・ポルタ(p3p010190)
ナチュラルボーン食いしん坊!
ピリア(p3p010939)
欠けない月

リプレイ


 天義でも有名なジャルトヒッツェ通りは街並も美しく、普段なら微笑み交わす人通りも今やない。全くの無人だ。
 あるのは終焉獣の死骸たちと、それを倒したアンバーたちの姿だけである。
 そんな大通りの真ん中に陣取って、『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は腕まくりをしてみせる。
「異郷の地ではあるけれど、だからといって放っておくわけにもいきませんわよね
お任せ下さいまし! ちょっと大きいだけの終焉獣程度、ちぎってぽーいでございますわ!!!」
 気合い充分なヴァレーリヤの隣で、『砂漠に燈る智恵』ロゼット=テイ(p3p004150)は剣に手をかける。
「混沌の中に秩序があって自由と呼び秩序の中に混沌があって活気と呼ぶ。
 破滅は秩序の欠如で混沌の終わり、面白くもなんともない話。
 このもの、お行儀はよろしくないのでここは苦手だけどなくなったらつまらんなあ」
 ロゼットの天義に対する印象はそんなところであるらしかった。バグ・ホールによって穴あきチーズのようになった風景をみてよりそう思う。
 現実感が無くて、どうにもこうにも恐怖もついてこない。まあなんにせよ、やることも
できることも、一緒である……と。
 そんな一方で、『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は己の弓をとり、いつでも来いとばかりに矢を握りながら通りの向こうを睨んでいた。
「世界の何処に現れようとも、何処に何が現れようとも。
 私達が戦う限り、終わりのカウントダウンは必ずどこかで止まると信じているのだわ!」
 この世界はどうやら滅ぶらしい。けれどそれに抗う自分達がいる限り、きっとその未来は避けられる。そんなふうに、思うのだ。
 今までいくつもの危機を乗り越えてきた、そのように。

 メディカの頬をぷにっとつつく『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。
「んもう、最近お仕事あんまり入れないようにして花嫁修業してたのに――お姉ちゃんを頼るなんて、私の事大好きなんだからぁ」
 するとメディカは頬を膨らませ、アーリアをジト目で見た。
「お姉様?」
「嘘よぉ嘘、私もこう見えて今ものすごーく腹立ててるの、解るでしょ?」
 言って、アーリアは通りを見回した。
「私達が折角掴み取ったこの国の平和をあっさり壊して好き勝手に暴れて
 ……でも、何度だって私は護ってみせる
 この国を、この国の人達を、一人でも多く――傲慢かしら?」
「ええお姉様。けれどそのくらい傲慢な方が、似合っていますよ」
 その一方で、『終音』冬越 弾正(p3p007105)は気合いを入れて哭響悪鬼『古天明平蜘蛛』参式を起動させていた。
「たとえ世界が滅びに向かおうとも、俺は遂行者の願いを砕き、今の世を守ると誓った。
 この胸の内から溢れる歌は、今や幾多の想いを重ねた絶唱!
 滅びに便乗して現れた貴様らとは、音の重みが違うのだ!」
 想いを向ける先は終焉獣たち。その気持ちを汲み取ってか、スモーキーはぽんと肩を叩いてやる。
「気持ちは俺も同じだぜ。今の世を守っていこうじゃねえか」
 そんなスモーキーの隣に立つ『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)。
「スモーキー殿、久しぶり……という程久しくはないが、息災なようで何よりだ」
「おう、そっちもな。あの騒動以来だが、すぐに呼び出すことになって悪かったな」
「いや、構わない。『息災でいて欲しくない連中』には早急にお還り頂くとしようか、物理的に」
「ああ、そうするつもりだ」
 それぞれが武器を構える。
 そんな中で、『欠けない月』ピリア(p3p010939)とアンバーはにっこりと笑い合っていた。
「これいじょう、みんながあぶないの、ダメなのー!
 ピリア、まだまだいっぱい、がんばるよ! こわいのも、かなしいのも、みんないっしょならだいじょうぶだもん! ね、アンバーさん♪」
「はい、ピリアさん! 一緒に頑張りましょうね!」
 そうしていると、遠くからぞろぞろと足音が近づいてくる。
 『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)は額に手をかざしてその軍勢を眺めていた。
「うっひょ〜! 数が多いのう!
 さて、改めてお主等も宜しく頼む!」
 ふわりと浮かび上がり、両手に『うちゅうやばい』『うちゅうすごい弐式』を構える。
 終焉獣の第二派が近づいてくる。戦いが、始まろうとしている。


 押し寄せてくるのは三本足の星界獣。両腕を展開し、剣のような腕を伸ばし襲いかかってくる。
 常人が震え上がるような光景を前にして、しかし華蓮は冷静であった。
「大丈夫……大丈夫なのだわ。焦らずじっくり戦ってね」
 『祝詞』を唱えて自らの力を高めると、長期戦を意識して仲間たちに治癒の力を振りまいていく。
 その一方で、華蓮はあえて前に出ることで星界獣たちの注意を引いていた。
 繰り出される腕の剣を舞うように回避して、至近距離で反撃を繰り出す。
 翼を広げて宙へと飛び上がると、上下反転しながら星界獣の頭めがけて矢を放った。
「よくわかんないモンスター、生命進化の法則から足一本分はみ出したぐらいで何が違うんだか」
 ロゼットもまた前へ出て戦っていた。
 星界獣のずんぐりとした胴体から三本足が伸び、じゃかじゃかと動き回っては多方向から剣を突き出してくる。
 それを盾で受け流し、ロゼットは刀を繰り出して相手の腕を切り落とした。
(運命だの絶望だのはどうでも良いし。世界の責任取れるなんて、自惚れられる程「ご立派」ではないけど、知らないところで勝手に決められてもね、従う義理はないから)
 ロゼットは滅びの運命に対してそのように考えていた。そしてその姿勢は、戦いへも現れていく。
「二人とも、さがるのじゃ!」
 そこへ空中から一直線に飛び込んでいくニャンタル。
 『うちゅうやばい』による斬撃に続き、『うちゅうすごい弐式』による追撃。そこから二刀流による独楽回しの如きめまぐるしい回転斬りを繰り出し星界獣たちを切り裂いて行く。
 『芒に月』によって強化された力は星界獣の硬い外皮を容易く切裂き、そして謎の大爆発を起こして吹き飛ばしていく。
 そんなニャンタルを狙って星界獣が剣を繰り出せば、素早く割り込んだ華蓮とロゼットが攻撃を受け止める。
 自由でありながら、見事な連係プレイだ。
「――『主の御手は我が前にあり。煙は吹き払われ、蝋は炎の前に溶け落ちる』」
 聖句を唱え歩き出すヴァレーリヤ。
 メイスに手をかざした途端、メイスから炎が燃え上がり彼女の顔を茜色に照らす。
 放つプレッシャーは巨大な災害のそれである。
 ギュン、と赤い残光を引いて走るヴァレーリヤの動きは速く、星界獣は対応が遅れる。
 対応が遅れノーガードとなった星界獣の頭めがけ、強烈なメイスの一撃が叩き込まれた。
「どっせえーーい!!!」
 べきんと音を立てて破壊される星界獣の頭。
 その次の瞬間、ヴァレーリヤの横を暴風の如くメディカが駆け抜けて行った。
 巨大なハンマーが振り抜かれ、星界獣のボディへとめり込む。
「お姉様――!」
「ええ」
 『パルフェ・タムールの囁き』を発動させるアーリア。小指でそっと唇をなぞった彼女の囁きが魔術を帯び、星界獣たちを魅了していく。
「ほらほら、敵はこっちじゃないわよぉ」
 指をさし、くるりとまわす。
 するとまるで操られたかのように星界獣は自らの腕で仲間の身体へと剣を突き立て始めた。
 剣を突き立てられた星界獣もアーリアに魅了されてか腕の剣を振り回して味方へと斬りかかる。
「相変わらず、ひどい攻撃……ひとを手玉にとるのが上手ですね、お姉様?」
「いやだわ、人を悪女みたいに」
「そうですね。お姉様は『魔女』でした」
 すました顔でそんなことを言うメディカ。ちょっぴりスパイスの利いた皮肉にアーリアは小さく頬を膨らませる。
 そうしていると、スモーキーが口から煙を吐いて星界獣たちを拘束し始めた。
「弾正、アーマデル! 今だ!」
「ああ――!」
 平蜘蛛に接続したマイクを握りしめ、弾正は力強く歌をうたいはじめる。
 歌は仲間たちの反応速度を高め、同時に敵の注意を引きつけ始める。
 弾正の歌に魅了された星界獣たちが踊るように味方同士攻撃しあい、硬い外皮を破られ倒れていく。
 そうでない星界獣も弾正に攻撃しようと集まり、腕の剣を振りかざした。
 だが、振り下ろした剣は赤いフィールドによって阻まれる。
 何度も剣を振り下ろしてフィールドを破壊しようと試みる星界獣だが、そんなことをしている暇はどうやらなかったらしい。
 弾正に注意を引きつけられている間にアーマデルは死角へと回り込み、『蛇鞭剣ダナブトゥバン』を展開。蛇腹形態に変化させて払うと、まるで生きた蛇の如く星界獣たちを次々に貫いて走って行く。
「群れているなら丁度いい。ついでに言うと……三というのは安定を表し、成程、バランスがいい」
 アーマデルはいつも通りのペースで喋りながら星界獣たちの足を狙って攻撃していく。
 倒しきれなかった星界獣も【足止】を喰らってろくに動けない状態となったようだ。
 そこへ更なる攻撃を仕掛けるべく『蛇銃剣アルファルド』を突きつける。
 放った弾は散弾。コイン束状の弾が放たれたそばから拡散し、回転しながら星界獣たちの身体に突き刺さっていく。
 そんな中を駆け抜けるピリア。
「ワールドエンド・ルナティックなの! おめめぐーるぐる!」
 びしっと指を突きつけることで魔術を発動させるピリア。
 それによって【狂気】状態となった星界獣は訳も分からず自らの剣で自らの身体を攻撃。外皮を破って吹き上がる血に暴れ始める。
「ピリアさん、その調子です」
「これでみんなちょっと楽になるかな?」
「はい、そのまま攻撃を続けてください!」
 アンバーは剣を握りしめ、【狂気】状態の星界獣を次々に斬り付けていった。
 こうして第一派(厳密には第二派)の星界獣たちを瞬く間に制圧していくローレット・イレギュラーズたち。
 だが本当の苦難はここから始まるのだった。
「おっと、調子づいてるところ悪いが。同胞を殺すのはそこまでにしてもらおうか?」
 『大鷲のマキリマ』が翼を羽ばたかせ到着したのだった。


「こうげきなの! かちかち、どーん!」
 ピリアは両手を広げて飛び上がり、『アブソリュートゼロ』の魔術を発動させた。
 極寒の刃が作り出されマキリマへと飛んで行く。
 それを翼の羽ばたきで次々に回避するマキリマだが、最後の一発が命中し動きが鈍った。
「チッ――!」
 舌打ちし、魔術を発動させるマキリマ。無数の魔術体がマキリマから発射され、ホーミングミサイルの群れのようにピリアへと襲いかかった。
 それを剣で切り払って防御するアンバー。
「大丈夫ですか、ピリアさん!」
「ありがとうなの。怪我してない?」
「私も大丈夫……と言いたいですけど、かなり喰らってしまいました」
 マキリマの魔法はかなりの威力を持っているらしい。アンバーの身体のあちこちが焼けている。ならばと治癒の魔法をかけてやるピリア。
 その間にアーリアはマキリマめがけ『ケイオスタイド』の魔術を解き放った。
 胸元に小さく垂らした酒の小瓶。その香りが沸き立ったかと思うと魔術を形成し、マキリマへと無数の泥が飛んで行く。
 ジグザグに回避行動をとるマキリマだが、そこへ更に『メイヴ・ルージュ』の魔術を囁いた。
 かけられたBSによって重い呪殺効果が発動し、マキリマががくりと高度をさげる。
 と同時に、メディカは激しい跳躍をもってマキリマへと殴りかかった。
 巨大なハンマーによる一撃がマキリマへと直撃。吹き飛ばされるも空中で制動をかけて体制を整える。
「思ったよりも堅いですね。というより、盾は飾りですか?」
「挑発のつもりか?」
 治癒の魔術を唱え自らのBSを取り払うマキリマ。とそこへ、スモーキーの放つ煙が巨大な腕の形をとって掴みかかった。
 咄嗟に逃れようとしたマキリマだが足をとらえられ、その一瞬の隙を突いてアーマデルが蛇腹剣を解き放つ。
 がちりと巻き付いた蛇腹剣と煙によって逃げることを抑制されたマキリマが先ほどの魔術体ミサイルを解放。
 が、それを受けたのは割り込みをかけた弾正だった。
 激しい爆発の煙が晴れた中から、マイクを握った弾正が姿を見せる。
「その大翼は逃げる為の物か? 貴様が滅した村の人達は、逃げる事も出来なかったのだぞ!」
「元々逃がすつもりはなかったんでね。それと……まあいい」
 マキリマは弾正の挑発に乗る形で更なる魔術を発動。熱光線がマキリマの手から放たれるが、弾正はそれを赤いフィールドによって受け止めた。
(術の様子からして『マリシャスユアハート』はかわされたか……だが、挑発は効いている。攻撃にシフトしたほうが得だな)
 弾正はアーマデルに一瞬だけ視線を送ると、平蜘蛛を作動させて爆音で音楽を鳴らし始めた。
 音のプレッシャーがマキリマへとぶつかり、爆発を引き起こす。
 とその次の瞬間。屋根へよじ登り高度をえていたアーマデルが横合いから『蛇銃剣アルファルド』で射撃を開始。
 息ピッタリのコンビネーションによってマキリマを追い詰め始める。
 そんなマキリマはちらりとアーマデルに視線をやって光線を発射。
 だがその動きを読んでいたらしくアーマデルは建物の後ろへと飛び退いて攻撃を防いだ。
 建物の屋根へと命中した光線が屋根を破壊し、その向こうにいるアーマデルへと攻撃を届かせようとする――その瞬間。
 ロゼットの『ソニック・インベイジョン』が繰り出された。
 剣を払って放たれた衝撃がマキリマへと命中。
 咄嗟に盾を構えて防御姿勢をとったマキリマがロゼットを見ると、ロゼットは盾を構えたまま挑発的に呼びかけた。
「君ら何しに来たの、見た感じなんか神様気取りの下僕って感じだけど。
 信仰に価値があったとしても、お前らにはないよね。
 問答無用とか、知性もないモンスターと何が違うんだか。
 いや価値のあるなしでするもんでも、ないだろうけど、お祈りは」
「悪いがこっちは神じゃあないんだがね。まあどっちでも同じ事だ。世界を滅ぼし、すべてを喰らう。それだけさ」
「ならこっちも、倒すだけ」
 ロゼットが二度目の『ソニック・インベイジョン』を放つとマキリマは盾でそれを防御。その直後、背後へ回っていたニャンタルの剣がマキリマの翼めがけて繰り出された。
 大胆に切断され、謎の爆発を引き起こすニャンタルの斬撃。
「ぐお!?」
 思わず体勢を崩したマキリマめがけ、ニャンタルは第二の斬撃を大上段から振り下ろした。
 地面へと叩きつけられるマキリマ。反撃とばかりに放たれた無数の魔術ミサイルがニャンタルを覆い尽くし、大爆発を引き起こす。
「むむっ、こやつやるのう。じゃが、我を倒すにはあと一歩足りないのじゃ!」
 地面へと着地し、『雷切(真)』を解き放つニャンタル。
 繰り出した剣と盾が激突し、謎の爆発が背後で起こる。
 華蓮はそんなマキリマの身体を狙い、神弓『桜衣』を構えた。
 見る者を魅了するような美しい射型。弓弦を引く手はなめらかで、スウッと呼吸を整えたその一瞬後に、カァンという美しい弦音をたてて矢が放たれた。
 『レッド・クイーン・クエスターII』。華蓮の心を象り続ける赤棘の連弾だ。
 矢は無数に分裂しマキリマへと襲いかかり、咄嗟に回避した数発の後についに腹へと突き刺さる。
「あら、残念。焼き鳥にしてあげようと思っていたのだけれど……なんて」
 その瞬間を待っていたかのように、ヴァレーリヤがメイスから炎を吹き上げた。
「――『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え』」
 唱えた聖句に応じるように燃えさかる炎。大上段から振り下ろしたそれは巨大な剣の如くマキリマを襲い――そして。
「俺にも焼きが回ったか――」
 苦笑するマキリマを包み込み、そして焼き尽くしてしまった。


 後日談、ではない。
 『御礼も出ますわよね!?』とぴょんぴょんはねるヴァレーリヤに酒の小瓶を投げたアーリアは、ふとメディカへと振り返る。
「そうそうメディカ、今更だけど――」
 自らのすっぱりと切られた髪に触れてみせる。
「髪切った私、どう?」
「あら、本当に今更ですねお姉様」
 メディカはつんと顎をあげると、ほんの僅かに微笑んだ。
「よく似合っておいでですよ」
 こうしてまた、天義の平和は守られる。そしてこらからも守られていくのだろう。何度でも。何度でも。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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