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シナリオ詳細

<グレート・カタストロフ>終焉きたりて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『神託』の観測した『決定付けられた未来』。
 絶対的破滅……通称『Case-D』の決定的な接近により、混沌各地に『バグホール』が出現を始めた。
 もはや、目に見える形で破滅が形をとり、混沌の滅亡が身近に迫っていることを実感させる。
 だが、まだ滅びは完全に確定したわけではない。
 直にレオンを含め、各国トップが何か対策を講じると思われるが、今は各地の混乱、被害の対処へと全力を尽くさねばならない。
「特異運命座標として、できることをやらないとね」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)も考えは同じで、各地の状況について調べるべく、あちらこちら奔走していたようだ。
 
 先日、海洋へと向かった際、オリヴィアは海の向こう、豊穣郷カムイグラの近況についても情報を得ていた。
 やはり、高天京を中心に各地でもバグホールが確認され始めているという。
「幸い、バグホールは生活に支障出るレベルじゃないようだが、終焉獣が気になるね……」
 終焉獣にとっては四神の結界など関係ないのだろうか。
 いや、結界すらも食らっている可能性すらあるが、そこは現状、確認されていない。
 ともあれ、高天京にも終焉獣が出現しているのは事実らしい。
 少しずつ街の中心へと攻めているという話もあり、今のうちに叩いておきたいところではある。
「アンタ達の力、終焉獣らに見せてやりな」 
 過去の資料などを提供しつつ、オリヴィアは現れる敵の掃討を願うのである。


 豊穣の地は政権を巻き込む大きな混乱が起きた後、復興の道を歩んでいた。
 全ての危機が去ったとは言い難く、妖怪、怨霊による事件、肉腫、呪詛から生まれた忌妖や呪獣などは今なお現れることもあるという。
 人々は見えぬ脅威にさらされながらも、日々を生きていた。
 そんな彼らに忍び寄る新たな脅威……それが、混沌の滅亡である。
 街中に突如として発生するバグホール。
 下手に触れると消滅するともいう話が海洋方面からも流れてきており、迂闊に触れることすらできずに放置している状況だ。
 そんな中、じわりじわりと終焉の足音が迫っていた。

 かつて、悪徳商人が建てたといわれる蔵。
 盗品や危険薬物などを保管していたという話もあったが、現在はその蔵の所有者はいない。
 そのせいか、一時は暗部が使用していたりもしたが、時折役人が巡回し、早い段階で悪の芽を潰していた。
 だが、今回ばかりは相手が悪かったというべきだろう。
「来たれ、終焉をもたらす徒よ」
 全身真っ黒な人影……クルエラ、チアウェイが小さく呟くと、虚空から現れる多数の終焉獣。
 その姿は様々。
 真っ黒な能面に骸骨、青白く透明なネズミ。
 それらは呪詛や呪獣を思わせる見た目をしており、通りがかりの近隣住民らに恐怖を与えかねない。
「な、なんだこいつらは……!」
 それを発見したのは、巡回の役人2人。
 チアウェイは逃げようとするそれらを見逃さない。
「行け、奴らに滅びを」
 蔵から出る不気味な終焉獣どもは役人へと一斉に襲い掛かる。
「「う、うわああああっ!!」」
 なすすべなく、襲撃を受けた役人達は瞬く間に終焉に呑まれてしまったのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <グレート・カタストロフ>のシナリオをお届けします。
 混沌全土に出現するバグホール。
 それは豊穣においても例外なく出現しているようです。

●概要
 豊穣、高天京。
 四神結界に守られるこの場所にも、バグホールが確認され、いずこからか入り込んだクルエラによって終焉獣が現れているようです。
 街に現れた終焉獣が暴れる前に、抑えていただきますよう願います。
 
 幸い、そこは京の端。
 夜であることに加え、以前事件のあった蔵とあって、人通りは少ない場所です。
 とはいえ、全くないわけではなく、終焉獣の姿にかつての呪詛などを思い出して怯え、最悪発狂すらしかねないので注意は必要です。
 なお、バグホールも視認はできますが、戦場となる蔵周辺にはなく、障害とはなりません。

●敵
〇終焉獣×4体
 滅びのアークそのもので作られた獣達。
 姿は様々ですが、漆黒の体躯をしたものが多いようです。

・愉悦の顔面×1体
 全長4mほど。全身真っ黒な顔面。
 能面を思わせるその見た目から気色悪い笑いでこちらの戦意を低下させ、異言を紡いで惑わしてきます。
 加えて、笑い声をあげて周囲を侵食してくるようです。

・傀儡の骸骨×3体
 全長2mほど。黒いスケルトンといった見た目の姿。
 関節部まで滑らかに動くその様は何かに操られているかのようにも感じさせます。
 直接殴り掛かったり、蹴りかかったりする他、眼光、奇怪な笑いでこちらに異常をもたらしてきます。
 また、直接噛みついて相手を侵食してくるようです

〇変容する獣×6体
 全長1mほど。
 大柄なネズミといった見た目をした体の中身が透き通っている蒼白い終焉獣。
 滅びのアークそのもので作られた存在で、徐々に進化することが分かっています。
 こちらも呪詛によって呪獣とされた事件が過去にありました。
 汚れた牙で噛みつき、汚れた爪で相手に異常をもたらすことがあります。

〇クルエラ:チアウェイ
 指揮官型終焉獣。全長2mほどの黒い人型。
 今回は姿だけ見せ、終焉獣の群れを置いて去ってしまいます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <グレート・カタストロフ>終焉きたりて完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年01月31日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC1人)参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
イロン=マ=イデン(p3p008964)
善行の囚人
メリーノ・アリテンシア(p3p010217)
狙われた想い
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

リプレイ


「ああもう、本当に何処にでも湧いてきますわね!」
 『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が思わず声を荒げるのも無理はない。
 イレギュラーズがやってきたのは、豊穣、高天原。
 はるばるこの地へとやってきたイレギュラーズだが、悠長にしてもいられず、急ぎ足で移動していた。
「ふむ、豊穣のここにまでバグホール……それに何者かによって配置された終焉獣」
「まさか四神結界の中にも出て来るとはな」
 『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)はこの地にも時折バグホールの姿を視認し、『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)も事前情報から結界の張られたこの地にまで終焉獣の手が伸びていることを実感する。
 幸い、現場は以前事件のあった場所らしく、メンバーは敵……終焉獣の姿を探しつつ現地へと急行していた。
 街の外れとなれば、明かりも少なくなっていく。
 ヴァレーリヤが錠剤を服用して視界を確保し、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は感覚を研ぎ澄ませ、ファミリアーと合わせて周囲の偵察を進める。
「……いるね」
 ヨゾラに同意するメンバーは気を引き締め、問題の蔵の手前に駆け込む。
 その蔵は半ば現在放棄されている状況だが、一度事件があった場所とあって役人らも巡回する対象として足を運んでいた。
 それ故に、彼らは犠牲となってしまったのだが……。
 遺体を目にした『無尽虎爪』ソア(p3p007025)は唇を噛み締める。
 ――絶対にここで仕留めなくちゃいけない。
「出たね、この先には行かせないよ」
 仲間と共に倒すべき敵を見据えたソア達の眼前には漆黒と青白い影が複数あった。
 それらを、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は自らが発光することで照らし出す。
「ゴリョウちゃん眩しいわぁ。明るい、嬉しい!」
 そこで、メリーノがその光に微笑む。
「ぶはははッ、また会うたぁ随分と悪縁が続くねぇ、チアウェイよぉ」
 豪快に笑う彼は、全身真っ黒な人型をした終焉獣の指揮官……クルエラを見やる。
 呼びかけられたそいつ……チアウェイはやや煩わしそうにイレギュラーズ達へと振り返る。
「チアウェイ、最近も見た気がするわぁ 本当にいろいろ、広がってるのね」
 『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)が終焉獣の活動領域の拡大を再認識する横で、マリエッタは終焉獣が指揮官という存在を有するほど知能をつけていることに厄介さを感じる。
「ですが、そう簡単に終わらぬのが世界であり私達でもある」
「邪魔をするか、特異運命座標」
 チアウェイは低い声でこちらへと呼びかけてくるが、ゴリョウは敢えて煽るように一層大声を上げて。
「こんな所まで出張らされるたぁ、下っ端はつらいねぇ!」
 幾度も人体型終焉獣と対しているゴリョウだ。
 妙に縁のある彼がここにもいるとアピールすれば、幾度も邪魔されている終焉獣にとっては嫌がらせに映ることだろう。
 ゴリョウは相手の出方……一挙手一投足を観察する。
 豊穣は距離もあり、他地域と比べれば本格的に動いているとは言い難い。
 ただ、巡回の役人に手をかけた地点で、『善行の囚人』イロン=マ=イデン(p3p008964)にとって悪行であり、許せない悪である。
「貴方にも、裁きの時は来るのです。それも、遠からぬうちに。悔い改め無いならば、その身を滅ぼす事でしょう」
「……それよりも先に、貴様らに滅びが訪れる」
 イロンの言葉を否定するチアウェイは従える獣らを前へと押し出し、自らは身を引く。
 敵だけを置いて帰ろうとするチアウェイに、ヨゾラも黙っていられず。
「チアウェイ……次に遭ったら全力でぶん殴らせてもらうからね!」
 ところが、ヴァレーリヤは言葉だけでは足りなかったようだ。
「貴方が親玉ですわよね。こんな真似をしておいて、無傷で帰れるとでもお思いですこと?」
 一発叩きこまねば気が済まぬとばかりに、彼女は魔術戦用メイスを構えて詠唱を始めるが、すでにチアウェイは闇の中へと姿を消していた。
「……今のワタシが裁きを下すべきではありません」
 思うことはあるが、今為すべきは終焉獣を退け、善き人々を護ることだとイロンは語る。
「チアウェイの行先を把握したいが、依頼成功と人々の無事を最優先だね」
 ただ、ヨゾラは手前の敵も決して油断ならぬ相手と認識する。
 まず、青白い大柄なネズミの姿をした滅びのアークより作られた変容する獣6体。
 巨大な顔面1体と骸骨3体、合わせて4体いる漆黒の終焉獣。
 放置するだけで、豊穣民に被害が拡大するのは必至だ。
 実際、被害は皆無とは言えぬ状況に、ヴァレーリヤも僅かに不快感を示して。
「さっさと片付けてしまいましょう!」
「さて、片づけて指揮官も追いかけていきましょうか」
 応じるマリエッタ……死血の魔女は決して獲物を逃がさないと豪語する。
 例え、滅びの獣であれ、必ず。
「いいわぁ、『世界を終わらせないための戦い』しましょうか」
「終焉なんてお呼びじゃないんだから、纏めてバグホールに送り返してやらんとな!」
 メリーノ、錬もまたそれらの獣を排除すべく、仲間と共に立ち向かうのである。


 始まる終焉獣の戦いと並行し、蔵の近場の道ではイレギュラーズの関係者複数が動く。
 まず、ヨゾラの頼みで駆けつけていた、ライゼンデ・C・エストレジャード。
「すまない……必要があって来ているのだろうが、今は通せないんだ」
 イレギュラーズの一員となっていたライゼンデは戦闘要員となるメンバーが戦いに集中できるよう、近辺の見張りや道を通行止めしていたのだ。
 さらに、ゴリョウの知り合いであるトリィヌの姿もある。
 飛行による機動力と犬としての嗅覚、割と生真面目な表情や言動による圧はこういう時の通行止め薬として最適だとゴリョウは太鼓判を押す。
「失礼な」
 そんなツッコミを返すトリィヌはゴリョウの光を見て、翼を羽ばたかせて通りがかる一般人をくまなくチェックする。
「悪いがここから先はトラブルが発生しててな。巻き込まれないよう通行を止めている」
 さらに、サポーターとして、『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)も自身にできることをと駆けつけていて。
 近辺に戦いの余波が及ばぬよう オルド・クロニクルを展開していた祝音。
 幸い、郊外とあって自然物も多い場所。その効力は大きく発揮してくれるはず。
「戦いはイレギュラーズ……神使の皆が担当するから、皆はこっちへ!」
 神使の名は豊穣においても広く知られるところ。
 祝音の人心掌握術による語り掛けもあり、人々は快く呼びかけに応じてくれる。
 避難誘導などの際、3人が気がけるのは、バグ・ホールの存在。
 加えて、どこに逃げたかわからぬチアウェイと遭遇せぬよう、細心の注意を払う。

 さて、蔵の前ではすでにイレギュラーズは終焉獣とぶつかっている。
 手早く立てたメンバーたちの作戦方針は3種いる敵のうち、2種を足止めし、残る1種に火力を集中して数を減らし、戦力を削いでいくというもの。
 ゴリョウが愉悦の顔面の前へと飛び出す傍らで、他メンバーは傀儡の骸骨や変容する獣を相手取る。
 メンバーの優先撃破順は獣が最優先ではあるが、錬は一旦骸骨へと近づき、世界樹の祈りと呪いと祝福を振りまく。
 相手がわらわらと自身によって来ようとするなら、錬の思惑通りだ。
 ゴリョウや錬ら抑え役の仲間が敵の攻撃を引き受けている間に。
 ソアは進化されたら厄介そうな変容する獣から先に狙う。
 纏う雷の因子を極大活性化せたソアは、間髪いれずに高く跳躍し、手近な獣を強襲する。
「…………!?!?」
 真上から繰り出されるソアの攻撃に戸惑いを隠せぬ獣。
 他の獣どももきょろきょろと辺りを見回しだしたところで、メリーノが正面から躍り込む。
 マリエッタは新手の出現も警戒しつつも、初手は攻撃準備。
 体内の血を高速で巡らせ、己を加速させたマリエッタは聖骸闘衣を纏い、状態異常をもたらす可能性の高い敵へと対策を講じていた。
(なるべく早く、確実に)
 ネズミの姿が下手に変化すれば、手に負えなくなりかねない。
 メリーノもそう考え、特殊支援によって自身を戦いに最適化させ、チートコードの利用で一時的に能力を限界突破させる。
「早く仕留めちゃいましょ」
 2人が戦闘準備を完璧にする間に、聖句を唱えてヴァレーリヤは炎の壁を展開し、早くも突撃する。
「逃したクルエラの分まで存分にお相手して差し上げますわ」
 チアウェイへと攻撃できなかった鬱憤を晴らそうと、ヴァレーリヤは改めてメイスを構えて聖句を唱える。
 メイスの先から噴き上がる炎を、ヴァレーリヤが振り下ろす。
 直後、その炎は濁流の如く敵へと押し寄せ、飲み込んでいく。
 敵陣が乱れたところへ、ヨゾラが追撃をかける。
 回復と合わせて攻撃を担当するヨゾラは、戦場全体をチェックしていたが、攻撃のタイミングは逃さない。
 一見すれば、ケイオスタイドにも思えるが、それはヨゾラが自分流へと変化させた星空の泥。
「飲み込め、泥よ。混沌揺蕩う星空の海よ」
 あちらこちらが輝く泥が敵陣へと押し寄せ、獣どもへと押し寄せる。
 敵はイレギュラーズの攻撃にも耐え、虎視眈々と瞳を輝かせて汚れた爪や牙を突き立てようとしていた。
「善き人々を一人でも多く護らねば、護らねば、護らねば……!」
 それがワタシの役目なのだからと強く意識するイロンは、罪なき人々が巻き込まれることなどあってはならぬと、その身を投げうつ覚悟で戦いに臨む。
 まずは言霊を思わせるような声を上げ、イロンは仲間達が万全に戦えるようにと強く支援する。
 距離をとっていたこともあり、前線にまでその効果を与えるのは厳しいと判断していたイロンだが、初手だけならゴリョウにもその効果は及んで。
「随分とダセぇ嗤い方だなぁ! 教えてやろうか? 笑顔ってのはこうやってやるんだよ! ぶはははッってなぁ!」
 その彼は豪快に笑うと、愉悦の顔面の表情がピクつく。
 さすがに、相手の態度には愉悦とはいかなかったらしい。
 
 実際、戦いの流れはイレギュラーズ側に分があったようだ。
 攻勢に出るマリエッタは気力の消耗がないという点を存分に生かし、強化状態での立ち回りを意識する。
 そして、マリエッタは神秘の一撃を刻み込み、早くも獣1体を消し飛ばしてしまう。
 マリエッタの横で、メリーノが邪道の連撃を浴びせかけ、ブルーフェイクを織り交ぜて別の1体を追い込む。
 苦し紛れにそいつが汚れた爪を薙ぎ払うが、虚空を仰いだのみ。
「あなた達の進化はここでお終い。えいっ!」
 ソアがさらに攻め入り、虎の爪による斬閃を青白い体へと食い込ませる。
「ふふん……次!」
 爪をソアが引き抜いた後、大きく口をパクパクさせた2体目の獣もまた光を失い、滅したのだった。


 時折、聞こえてくる声は、避難に当たるメンバーのものか。
 とはいえ、その頻度もさほど高くはない。
 やはり、イレギュラーズが直接呼びかけているのは大きく、豊穣民も素直に応じてくれたこともあり、大きな混乱はなかったようだ。
 
 再度、戦場である蔵の前。
 イレギュラーズは主に変容する獣の攻略を急ぐ。
「楽園追放……終焉獣は全部倒す!」
 仲間を支える合間に、ヨゾラは楽園追放――神聖秘奥の術式を展開する。
 敵だけを複数捉えたヨゾラのパラダイスロストに、終焉獣どもは苦しみ悶えるも耐えていたが、2体が果てて蒸発するようにその姿をなくしていた。
「もう一発、喰らって行きなさい!」
 まだまだ暴れたりないとばかりに、ヴァレーリヤが気合の咆哮を上げ、急所と思しき場所を殴りつける。
 奇怪に顔を歪めたそいつの体が刹那強い光を発して爆ぜ飛ぶ。
 残る獣は1体。
 だが、やはり前線を受け持つ仲間の戦況も気になるところ。
(なかなかの大仕事になりそうだな)
 序盤から敵を煽り、笑っていたゴリョウだが、相手はクルエラにこの場を任せられた個体。
 HIHIHIIHIHIHIHIIHIHIHIHIIHIHIHIIIII……!!
 耳障りな笑い声をあげた愉悦の顔面に対し、ゴリョウは金銀蓮花の炯眼で睨みつけつつ不敵に笑い返す。
 戦意を下げてくるのが面倒な相手だが、そこは数々の戦場でタンクをこなしてきたゴリョウだ。
「タイマン張った際の俺のしぶとさをお見せしよう!」
 燃費の良さには定評もあり、この場も凌ぐ自信満々の彼は多少の異常など跳ね除け、敵の正面に立ち塞がり続ける。
 そのゴリョウは自己回復で耐えており、しばらく自分一人で持たせる心づもりだ。
 イロンも事前にそう聞いており、自己回復が困難なメンバーから癒しに当たる。
 とはいえ、もう一人の抑え役、錬もまた自己回復の手段を持っており、骸骨どもを3体纏めて引き受ける。
(可動域を無視した攻撃をしかねないからな)
 相手の思わぬ攻撃を警戒し、錬は火行の呪符で敵の気を散らしつつ前線を持たせる。
 ならば、イロンも獣によって傷つく仲間から強烈に支援し、錬の傷を塞ぐ。
(顔面を抑えてくれている人たち、多分大丈夫だとは思うけれど)
 メリーノはそちらを気にはかけるが、きっと大丈夫と思い直す。
 この場にいるのは歴戦のイレギュラーズ。
 これしきの敵に遅れなどは取らないと、メリーノはここでもフェイクを織り交ぜて確殺自負の殺人剣を刻み込む。
 先ほどは僅かに浅かったが、今度は確実に仕留め、その獣を霧散させる。
 これで、変容する獣は姿を消し、メンバーの優先攻撃対象は傀儡の骸骨3体へと移る。
 カタカタと音を鳴らして動くそいつらはまさに動く漆黒のスケルトンともいうべき姿をしていた。
「黒い骸骨ねぇー」
 エネミーサーチによって、メリーノは異なる認識を得ていたようだが、それはさておき。
 イレギュラーズの勢いもあって、戦いが始まってここまで比較的テンポよく戦いは進んでいた。
 一方で、終焉獣は危機感を抱いていたのか、なりふり構わず攻撃してきている印象だ。
 細い腕や足から繰り出される攻撃はかなりの威力で、抑えていた練とて厳しい戦いを強いられてはいたが、獣を手早く処理したメンバーが駆け付け、彼をカバーする。
「終焉獣相手に、誰も倒れさせないよ……!」
 ヨゾラも一度は術式で骸骨を攻めていたが、攻撃の手を止めてしばらくは仲間を支えるべく無穢のアガペーで仲間を個別に支える。
 さらに、避難誘導をライゼンデやトリィヌに任せて切り上げた祝音も、戦いを支援して。
「これで大丈夫かな……奴等を倒すのはお願いね。みゃー!」
 振りまくのは、相手を愛し、慈しむアガペー。
 仲間達に支えられたイレギュラーズは一層攻撃を加速させる。
 自己回復と仲間の癒しを受け、持ち直した錬は自身から気の逸れた敵目掛けて世界樹へと籠められた物を叩き込む。
「ふふん……次!」
 乾いた音を立てて崩れ落ちる骸骨の横、順当に敵が減っていたことに気を良くするソアが苛烈に爪を浴びせかける。
 仲間達がさらなる攻撃を浴びせかける間に態勢を立て直す。
 だが、追い込まれてなお笑う骸骨に、ソアはやや腹を当てて。
「何を笑ってるのさ、失礼しちゃう!」
 大きく口を開いて噛みついてこようとしたそいつを、空は逆に噛みつき返す。
「ペッペッ、まっずい」
 ガラガラと崩れ落ちるその骸骨は予想以上に不味かったようだ。
 もう1体、マリエッタも得意とする『死血を奪う血の魔術』で無数の武装を放つ。
 すでに進化する獣の姿はない。
 全力でマリエッタは武装を操り、骸骨の体を蹂躙する。
 もはや見る影もなくバラバラになったそいつは、風に吹かれるようにして虚空へと消え去った。

 前線で圧倒的な存在感を示すゴリョウ。
 愉悦の顔面は能面のごとき見た目から異言を紡ぎ、笑い声をあげ、攻めてくるが、悉くゴリョウは受け流す。
 砕けぬ意志。滅びぬ覚悟。何者をも貫く刺突。
 彼の構えに、愉悦の顔面が刹那顔を引きつらせたかのように見えた。
「抑えておいてくれてありがとねぇ!」
「笑いも異言もお断り……その顔面、グーパンで殴らせてもらうよ!」
 そこへ、メリーノがゴリョウへと礼を告げ、続けてヨゾラが渾身の力で殴り掛かる。
 その身を投げ出すように攻撃する彼を、イロンやヴァレーリヤが気に掛ける。
 HIHIHIHIIHIHIHIHIIHIIIIIII……!!
 気味の悪い笑い声をあげる顔面。
 仲間の危険を察したヴァレーリヤが炎を纏ったメイスを叩きつけ、顔面を強く牽制する。
「危ないところでしたわね、大丈夫ですこと?」
 無論、これしきでヨゾラも問題はないが、イロンがサンクチュアリを展開し、顔面の笑いを耳にした仲間達へと癒しを届ける。
 同じタイミング、メンバー達は一気に顔面を攻め落とさんと攻撃を畳みかけていて。
 仲間の癒しを極力受けずにいたソアは、鋭い爪を顔面へと食い込ませる。
 復讐の力が籠った爪は黒い顔面に深々と食い込む。
「この顔面も黒いのねぇ……」
 光るゴリョウを意識しつつ、意味深に呟くメリーノもまた渾身の力で顔面を殴りつける。
 怯んだ顔面へと、錬がここぞと式符より五行相克の循環を象った斧を鍛造して。
「ここまでだな」
 錬が振り下ろした斧が敵の顔面を叩き割る。
 HIHI……HI……HI……。
 弱々しく笑った顔面は地面へと倒れていき、真っ二つになってから跡形もなく消えていったのだった。


 立ち塞がる終焉獣を倒したイレギュラーズ。
 顔面も骨もネズミも、跡形もなく消え去ったことを、メリーノは少し残念がる。
 もし、欠片でも回収できたなら、拾って持ち帰ってどこぞの神様にでも差し出せば何か聞けるかもしれないと彼女は考えたのだそうだ
 とりあえず、視認できる敵がいなくなったことでヨゾラは一息つき、傷つく仲間の手当てを始める。
「それにしても……敵だけ置いて去ったチアウェイ、何を企んでる……?」
 混沌各地で発生する終焉獣による破壊活動。
 何かかしらの意図があるとヨゾラは睨む。
「豊穣は、ゴリョウの領土がある場所。ということは、豊穣の危険を祓った御礼の大宴会が……」
 その傍らで、ヴァレーリヤが楽観的にこの後、祝勝会が開かれるだろうと考えていたようだったが。
 だが、そのゴリョウは発生したバグホールに一般人が入り込まないようにと、警邏と合わせて立ち入り禁止措置をとるべく手伝いに出るとのこと。
「は? 警邏と立入禁止のお手伝い? 私のお酒は何処に行きましたの!?」
 夜の豊穣に、ヴァレーリヤの叫びがこだまするのだった。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは笑いには笑いで応じて存在感を示した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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