シナリオ詳細
<ラケシスの紡ぎ糸>シルバーバレットと変容する獣
オープニング
●シルバーバレット、南へ
広い砂漠を走るパカダクラ。その背に乗っているのは、カウボーイハットを被った女性――パドラだった。
風景はみるみる動きやがてそれはオアシスに、そして小さな町の風景へと変わっていく。
「よう、あんたかい。マガキからきたっていう傭兵は!」
町に入ったことで足取りをゆっくりとしたものにかえたパドラに、ジャケットを羽織った男が声をかけてくる。
振り返り、パドラは頷いて見せた。
「そうだよ。ここがコンシレラ?」
男は大袈裟に手を広げ、肩をすくめて見せた。
「ああ、その通りだ。砂漠の果て。終焉を望む町へようこそ、お嬢さん」
南部砂漠コンシレラはラサの南部砂漠地帯をさす総称である。
この町は覇竜領域への交易路の存在にともなって僅かながら発展を始めている小さな宿場町だ。
丁度良くあるオアシスを中心としたこの町はしかし、安心と言えるような状況ではない。
「とりあえず酒場に入って話をしよう」
男はそう言うと、パカダクラを柱に繋いだパドラに手招きをした。男が歩いて行く先に見えるのはウェスタンドアだ。
中からは暖かな灯りが見える。
パドラは一応の警戒を解かぬまま、男のあとに続いて酒場のドアを開いた。
キィ――と音を立てて開いたウェスタンドア。その音を聞きつけたのだろう酒場内の男たちがちらりとこちらに視線をよこしてくる。
誰何の視線が大半で、一部は自分の利益になるかどうかを値踏みするような視線だ。
いちいち構っていてはきりがない。パドラはそうした視線の群れを一旦無視すると、バーカウンターへと小さくよりかかった。
こんな酒場でも冷えたビールは出るらしい。魔法の冷蔵庫から取り出された瓶をそのまま渡され、パドラはまずは男にちいさく掲げる。
男はそこでようやく自己紹介をした。
「俺はシーカー。まあちょっとした流れモンだが、『終焉の監視者』とも付き合いがあってな。たまに伝言役のバイトをするのさ。伝書鳩よりは役に立つと思うぜ」
「『終焉の監視者』……ね」
コンシレラは『終焉の監視者』――つまり終焉(ラスト・ラスト)を監視しその動きがあれば知らせる役割の集団である。あまり規模の大きな団体ではないが、此度の終焉獣の出現を察知したのは他ならぬ彼らだ。
そして終焉から終焉獣が這い出てきたということは、それはつまりこの世界に滅びが近づいていることを少なからず意味しているのだという。
「実際、終焉獣にはラサの商人もいくらかやられてるしね。これがエスカレートしていったら、確かに世界が滅ぶかも」
半分冗談のような口調で言うパドラだが、終焉獣と滅びの関係を信じていないわけではない。
以前に戦った終焉獣はまさに滅びのアークそのもの。滅びを身体に纏い、滅びで身体を作ったような、そんな存在だったからだ。
そしてその殆どが強く、その辺の兵士程度なら簡単にくびり殺されてしまう。
と、そこでまだ自己紹介をしていないことに気がついた。パドラはビール瓶を置いて言う。
「私はパドラ。マガキの傭兵……だけど、今回はローレットとの仲介役だよ。伝書鳩よりは役に立つはず」
●変容する終焉獣
男からの依頼は、つまるところこの町を襲う終焉獣の退治であった。
だが、ただの終焉獣退治で終わらない要素がある。
「終焉獣が変容してる……らしいんだよね」
ローレットのイレギュラーズたちを酒場に集め、パドラはそんな風に話を切り出した。
そしてスケッチを一枚取り出してテーブルに載せる。
身体の中身が透き通った、四足歩行の獣めいた存在だ。色は青白く、牙による噛みつきの他破壊の魔法を使ってくるという。
「確認されてるのは炎と雷の魔法。火炎系と電撃系の耐性があると戦う時に便利かもね。
で、変容ってはなしだけど……」
うーん、とパドラは半信半疑という様子で腕組みをする。
「伝え聞く話だと、終焉獣が姿を変えて言葉を話し始めたってハナシなんだよね。あの終焉獣がそんなに賢いことをするのかな……って思うんだけど、どうも嘘じゃないっぽい。今回もそのケースだと思ってあたったほうがいいと思う」
こちらの戦い方を学習し成長する敵、ということだろうか。
だとすれば厄介だ。
「勿論、今回は私も一緒に戦うよ。何かあったらちゃんと守るから、心配しないで。それじゃ、行こうか?」
- <ラケシスの紡ぎ糸>シルバーバレットと変容する獣完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年11月06日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●
「パドラ、元気だったかい?」
「シキ! 久しぶり……ってほどでもない?」
肩をすくめてみせるパドラ。サーブルヴァーグを倒して以来と言ったところか。
『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)とがしりと拳を打ち合わせ、互いに笑みを交わし合う。
「君に会えるって聞いてきちゃった。今回もよろしくね? 終わったら飲みに行こ!」
「うん、行こ。今から楽しみ」
そしてすぐに、パドラは『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)の方へも向き直った。
「久しぶり、アタシの鏡。今日も私を守ってくれる?」
「勿論っ」
鏡禍は笑みを浮かべて応えた。
「変わった相手のようですけど、どんな相手でもやることは変わりません、護るだけです
パドラさんが後ろにいるなら援護射撃も心強いですからね、背中お任せします」
「うん、任せて」
コイツでこなしてみせるから、と銀のリボルバーを翳してみせるパドラ。
そんなパドラの胸元をちらちら見ていた『一般人』三國・誠司(p3p008563)は、視線に気付かれてはならぬとばかりに依頼書にさっと目を落とした。
「とりあえず困りごとと聞いてきたけど…この終焉獣っていうのか。
随分と出回ってきてるな。
しかも進化までする……まずいなぁ。
話が本当だと後々で結構厄介な進化したやつと当たることになるかなぁ」
「遭遇した終焉獣は逃がさず討伐しているはず。
となると、やはり把握しきれなかった奴が学習を重ね進化しているか。
見晴らしはいい砂漠だが、壁があるわけではない。
数で押されれば遅かれ早かれこうなるか」
同じ依頼書を眺めていた『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)がはあと意気をついた。
「数的有利ってのは厄介だよね。遭遇すれば質で上回れるけどさ」
「遭遇できれば、だからな。こちらも全く網を張っていないわけではないはずなんだが……」
終焉獣の出所はあの終焉(ラスト・ラスト)。そこで増えて育ってをくり返していると考えると、なかなか攻めづらいものである。
「言葉を話せる、となるとかなりの知能だよな。
それだけ賢いってことは、戦法の学習ってのも結構レベルの高いものになりそうだ
注意して対処しないといけないな」
そう慎重そうに話すのは『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)。
「学習したものを持ち帰るとなると話はもっとややこしくなるわけだ」
「確かに……」
同意を示したのは『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)だった。
「学んで成長する終焉獣っスか、たしかに今までそんなのは見たこと無かったっスね。
つーかアイツらのどこに学ぶだけの頭があるんだって話だ。
でもどんなタイプがあってもおかしくねぇのも事実か。
成長すんのはアイツらだけじゃねぇのを見せてやるっスよ」
「学習し成長する、か。変容というか進化と言うべきか……?
練達で遊んだことがあるゲームで、罠を仕掛けて畑を荒らす害獣を追い返すというものがあったんだが。
跳ね飛ばし続ければ重くなり、穴に落とし続ければ軽くなり、と……。
なんとなく思い出した」
ぽつりと呟く『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)。
「変わったゲームがあるのね?」
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)が問いかけると、アーマデルはそう珍しくもないはずだと手を振る。
そうしている内に馬車は目的のエリアへとたどり着き、ヴァイスは馬車からすとんと降りる。
敵は豆粒のように小さく遠いが、確かにいた。
「ふむ……多いわね。それに、こちらをよく見ているみたいだし。
……ちょっと頑張って対処しましょうか。普段とは違う戦い方をしないといけなさそうねぇ……。
上手く戦えるかしら。私、別に戦闘はそこまで得意じゃないのだけれどね」
などと言いながら、歩き出す。
戦うために、歩き出す。
●
ギギッと声を上げ、こちらを睨むように振り返る終焉獣の群れ。
およそ知性のないように見えるその群衆が、獲物を見つけたとばかりに走ってくる。
野生の狼にも似たその体躯が、いずれどう変わるものか……。
シキは『ユ・ヴェーレン』の柄を握り込むと、鞘からその刀身および銃身を滑り出した。
牙をむき出しにして飛びかかってくる終焉獣をギリギリのところで回避すると、豪快な回転斬りでもって終焉獣を切り落とす。更にトリガーに指をかけると後方へ回り込もうとしていた終焉獣に射撃。そのままぐるぐると身体を動かしながら全方位に向けて攻撃をし続ける。
それならばと鏡禍も終焉獣の群れへとあえて飛び込み、妖力を込めた手刀でもって飛びかかってくる終焉獣の脳天ををたたき落とした。そこで更に両手へ妖力を纏わせると四方八方から取り囲んでは食らいついてくる終焉獣をたたき伏せていく。
「流石に数がありますね。おっと……!」
強化個体がシキたちをあえて無視して、パドラとラダめがけて炎と雷の魔術を放出。
槍のような形状をとって飛んだ魔術を、しかし鏡禍が間に割り込んでガード。展開した妖力障壁が相手の魔術を斜めにそらして飛ばす。
「ありがと、そのまま抑えておいて!」
パドラがぽんと鏡禍の肩を叩く。
と同時にラダは『KRONOS-I』のライフルを構え、フルオートモードで打ちまくり始めた。
「パドラ。特殊弾があるなら序盤は温存して、青白いのが出てきたら撃ち込んでくれ」
「了解。出し惜しみしていく作戦ってわけね」
パドラも負けじと銀のリボルバーで撃ちまくる。
二人の銃弾は終焉獣たちに次々と命中し、小型の個体を着実に殲滅していく。
ならばとサッカーボールを高く放り投げる葵。
「小型の連中を一気にかたづけるっス!」
オーバーヘッドキックから繰り出されたボールは紅蓮のオーラを纏い、まるで生きているかのように終焉獣たちへ命中、命中、また命中。次々とバウンドしながら終焉獣たちを翻弄していく。
もどってきたボールをトラップして再びシュートする葵のその一方で、アーマデルが蛇銃剣アルファルドにコイン束のような弾を装填。終焉獣の群れめがけてぶっ放す。
解き放たれたコインの群れは回転しながら終焉獣の群れへ拡散、次々と突き刺さり終焉獣を無力化していく。
「想像以上に小型の終焉獣が脆いな。どういうつもりだ?」
学習のための『エサ』にでもするつもりだというのだろうか?
不気味な気配にアーマデルは身震いを覚えるが、しかしこちらとて相手の『学習』を警戒して持ち玉は温存している。
やれるものならやってみろとばかりに、アーマデルは心の内で身構えた。
白き閃光が迸る。
ヴァイスが儀礼用短剣『トレーネ』で空を薙ぐように払ったその衝撃が、閃光となって放たれたのだ。
小型の終焉獣たちがそれを喰らって吹き飛ぶ一方。強化型は雷の魔術を展開しヴァイスへと放射。
ヴァイスは結界術『虹色庭園』を展開することで放射された電撃を防御した。
「そういうことなら、こっちも……」
ヴァイスは自然界からエネルギーを引き出すと、それを雷と暴風の塊に変えて放射した。
渦を巻いて放たれる暴風が終焉獣たちを纏めて吹き飛ばしていく。
味方の終焉獣を強化型が盾にして防御したところで、誠司が素早く交差ポイントへと走った。
「そこっ!」
御國式大筒『星堕』の砲身を伸ばし、魔術砲撃モードに対応させるとトリガーをひいた。
放たれた魔術砲撃が小型終焉獣たちを蹴散らしていき、強化型が盾にしてた終焉獣もまた消し飛んでいく。
怒りを覚えたのだろうか。強化型終焉獣が炎の槍を作り出して誠司へと投射。
回避が間に合わなかった誠司は腕に槍を喰らうが、それだけだ。すぐにライによる治癒がかけられ、誠司の腕の傷が治療される。
「ひゅー、危なかった。助かったよ」
「任せといてくれ。こちとらヒーラーだからな」
といいつつ、ヒーラーの片手間に攻撃も挟むのがライである。
額の宝石をカッと輝かせると、チェインライトニングの魔術を完成させ、放出。
先ほどの意趣返しとばかりに小型終焉獣たちの間に電撃が走る。
「っと、ちょっとまて! あいつなんかおかしいぞ!」
ライがそう叫んだのも無理はない。四足歩行をとっていたはずの強化型が、めきめきと前足をふりあげ、二足歩行状態へと変わり始めていた。
●
二足歩行形態へと変化した強化型終焉獣は、雷と炎の魔術を組み合わせ範囲攻撃魔法をぶっ放してきた。
「そりゃあこれだけ範囲攻撃をくり返してれば、相手も同じ事をしたがるよな」
ライはなるほどなと頷いて、そして額の宝石を美しく輝かせる。
「なら、こっちも纏めて回復するまでだ!」
砲撃をうけた仲間の中心へと飛び込み、サンクチュアリの治癒魔法を放つライ。
そんなライを邪魔に思ったのか、炎と雷をませた槍を構えライへと飛びかかる強化型終焉獣。
が、その身体にアーマデルの蛇鞭剣ダナブトゥバンが蛇腹剣状態になって巻き付く。
身体を拘束したかと思うと、アーマデル得意の四連コンボが叩き込まれた。
英霊残響:妄執、英霊残響:怨嗟、蛇巫女の後悔……そしてトドメのデッドリースカイ。
「これも学習されると厄介だ。個体ごとに集中攻撃で倒す」
百聞は一見にしかずというが、見るより受けるほうがよほど学習効率が良いとも言う。アーマデルはトドメのデッドリースカイでもって終焉獣の胸を剣で貫くと、その場に放り出すように投げ捨てる。
わずかに動きを見せる終焉獣だが――。
「させない」
パドラの放った銃弾が終焉獣の頭を吹き飛ばした。
そして、残る終焉獣たちに銃を向ける。
彼らはもはや二足歩行を通り越して人型だ。
ぱくぱくと口を動かして何事かを喋ろうとしている。
「なんで戦うの。なんでラサに溢れて出来たの」
問いかけへの答えは……あってないようなものだ。
「すべてを呑み込むため」
そうハッキリと口にした終焉獣は、両手に雷と炎の剣を作り出してパドラへと襲いかかった。
「させないよ」
間に割り込み、刀で相手の攻撃を弾くシキ。
二刀流相手に二刀流。幾度も繰り出される魔法の剣を、シキは己の剣で次々に撃ち払っていく。そのたびに激しい火花が散っては消えた。
「喰い散らかしてしまえ、私は勝ってお酒を飲む!」
至近距離。突きつけるユ・ヴェーレン。
ひいたトリガーから放たれるのは『黒顎魔王』。黒の大鎌を刀身から延長して作り出したシキは、相手の首を刈り取った。
ソレを見た終焉獣がザッと飛び退く姿勢を見せる。
――が、それをラダは許さない。
「逃がしはしない。勉強結果を披露する機会を与えるつもりはない」
ラダが投げたのは『バラクーダ』という毒ナイフ。ざくりと足に突き刺さったナイフによって激しい呪縛効果を受けた終焉獣は思わずその場によろめいた。
その隙を、逃すラダではない。
急速に距離を詰めたラダはライフルを零距離で突きつけ、フルオート射撃で相手の腹に叩き込む。
デスダンスを踊った終焉獣はそのまま仰向けに倒れ、動かなくなった。
それを見た終焉獣が炎と雷の魔法を練り上げて槍を作り出した――途端、葵が幻の如く一瞬で接近し相手の腹を蹴り飛ばした。
直撃を喰らって吹き飛ぶ終焉獣。
しかし終焉獣はしぶとくも槍を地面に突き立ててブレーキをかけ、そしてその槍を葵めがけて投擲する。
強力な一撃――だが、葵とて負けてはいない。
「そこっ!」
絶妙なタイミングで繰り出した『フロストバンカー』。つまりは氷の杭を蹴り飛ばすその必殺技が終焉獣の身体に氷の杭をぶっさすことに成功した。
そしてトドメとなる技は――『グラビティスマッシュ』。
足に纏わせた紫色の重力エネルギーがシュートしたボールへと込められ、通常ではありえない軌道で飛んだボールは終焉獣へと直撃。相手を爆散させた。
「……もう。眠ってなさいな」
ヴァイスはそこでやっと隠し持っていた白い暗器たちを解き放った。
ナイフが次々に飛んで行き終焉獣へと突き刺さる。
終焉獣も負けじと炎のナイフを作り出して投擲しようと試みるが、身体に染みついた技と今さっき学習した技とでは威力がまるで違うものだ。
ヴァイスのナイフが次々と終焉獣の側に刺さり、トドメとばかりに作り出した白い槍がヴァイスの手から放たれる。
防御――しようとした終焉獣の上半身が吹き飛んで消える。
「ここからは出し惜しみなし、ですね」
鏡禍は『ブレイズハート・ヒートソウル』を発動。
それまで自由に動き回っていた強化型終焉獣に【怒り】を付与すると、自分から相手に突っ込んでいく。
両手に魔術を纏わせ、紅く燃え上がる腕で襲いかかってくる終焉獣。
しかし鏡禍はその攻撃を受けたその瞬間――ばきんと鏡が割れて砕けた。
そう。終焉獣が殴ったのは巨大な鏡に過ぎなかった。ならば本物はどこだと首を廻らせたそのすぐ背後に、鏡禍は足っている。
ヒュン、と手刀を振る鏡禍。それだけで終焉獣の首が切り落とされて地面に落ちる。
「喋る、っていうのはいいや。情報取れるかもしれないし
ただ、流石に分かり合えるとは思っちゃいないさ。
だから、容赦はしない」
誠司は考える。獣が喋るのはなんのためか? 人と解り合うため? 愛し合うため? 平和のため? そうとは思えない。先ほど述べた『すべてを呑み込む』という言葉が確かなら――。
(リーディングで相手の考えを――)
「――ッ!」
ギラリ、と誠司を睨むように振り返る終焉獣。リーディングに意識を集中させた隙を突きにきたのだろう。が、誠司とて百戦錬磨。すぐに意識を切り替えて御國式大筒『星堕』を短く変形させる。そして至近距離から『特殊弾頭 トリモチ弾』を発射。直撃をくらった終焉獣がトリモチに足をとられながらも衝撃で吹き飛び、ころがっていく。
誠司はすかさず長く変形させたキャノンから魔力砲撃を発射。相手の身体を消し飛ばす。
「ふう、危なかった。戦闘中できる隙を狙ってくるとは……考えたなコイツ」
けど、勝利だ。
周りを見渡せば、もう立っている終焉獣はいなかった。
●
「やー、みんなお疲れさま! じゃあお待ちかねの宴会タイムってことで!」
「「乾杯!」」
ビール瓶をがちんと打ち合わせて笑い合うシキとパドラ。
「今日はワリカンにしよ」
「だめだめ、帰ったらドヤされちゃう。奢らせて。今度シキに奢って貰うってことでバランスとろうよ」
「ま、そういうことなら?」
といって互いに冷えたビールを喉に流し込む。
炭酸のシュワっとしたのどごしが身体に染み渡るようだ。
ラダがビール瓶を翳して小さく笑う。
「奢りと言うことなら、お言葉に甘えさせて貰おうか。
なぁパドラ、ハウザーの面白い話とかるかい?」
「お、聞いちゃう? ならとっておきの……」
ヴァイスはバーカウンターの端で、強めの酒をちびちびと飲んでいた。
酒は強い方がお好きらしい。
「……終焉獣の話とか。するなら、幾らかこれまで対峙したのの特徴を話してもいいかもしれないけれど。他愛のない話も聞きたいものね。恋バナとか、ね」
「突然恋バナを振られてもな……」
アーマデルが困った様子で肩をすくめる。
「なら、そうだな……たとえば」
「今後もあの学習型が出るのか気になるっスね。
ある意味最初から強いのより面倒っスよああいうタイプは」
テーブルに肘をつき、葵はため息交じりにそう語る。
「たしかに。いやこれで変に人型に進化されても困るんだけどね
巨乳美少女になんてなられたら銃口むけられないじゃん。ねぇ?」
誠司が笑い事のように言ってみたが、対する葵たちの表情は硬い。
このまま……そう、このまま進化をし続ければ、終焉獣はどうなってしまうのだろうか、と。
「何となくだが、ここで出てきただけで終わることはない気がするし
なんで急に学習とかできるようになったんだろうな?
自然に身に付けたにしては急に進歩しすぎだし、何か要因がありそうだが……」
そう語るライに、鏡禍が確かにと頷く。
「今はまだ学習した個体を倒せばいいだけですが、仮に逃がしたり、そうでなくても誰かが今回のような強化個体を離れたところから戦闘を観察させていたら、ちょっと怖いですね」
そんな未来はできれば来て欲しくないものだ……と嘆きを交えつつ、彼らは酒場でのまったりとした時間を過ごすのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●シチュエーション
南部砂漠コンシレラの一角にあるオアシス町。そこを襲う終焉獣の退治を依頼されました。
しかしどうやら終焉獣はこちらの戦いを学習し戦いの中で成長するというのです。充分に注意し、戦いを進めていく必要があるでしょう。
戦いは町外れの砂漠地帯で行われます。
●エネミーデータ
・終焉獣×多数
大量にいる小型タイプと、青白く透き通った強化個体複数が確認されています。
強化個体は炎と雷の魔法を操るとされ、耐性をつけていくと有利に戦うことができるでしょう。
また、強化個体は戦いの中で変容し言葉を喋るようになります。
そしてこちらの戦い方を学習しステータスの変化を起こしたりなど対応してくるようになるでしょう。
前半は大量にいる小型タイプを倒す事に集中し、後半はこちらに対応してきた強化個体への対処を考えましょう。
●お楽しみ
依頼を終えたらパドラの奢りで飲み明かしましょう。
終焉獣のことも気になるので、その件について話し合うのもいいでしょう。
●味方NPC
・パドラ
今回一緒に戦ってくれるNPCです。銀の大口径リボルバーによる高い攻撃力と命中力をもち、多くの状況に対応できます。
変容する終焉獣という話に半信半疑ですが、一応警戒はしているようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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