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シナリオ詳細

<英雄譚の始まり>異世界珍獣探し!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『境界<ロストシティ>』。
 この地は、混沌と密接にリンクしており、混沌のありえたかもしれない世界として分離した地。
 果ての迷宮第十層に位置する異空間……境界図書館の館長を務めるクレカの故郷であり、混沌世界からすれば随分と遠い昔の出来事であり、本来ならば終ってしまった物語の別の側面でもある。
 そこでは、魔王を倒し、『レガド・イルシオン』の建国の祖となった男『アイオン』とその仲間達が『勇者』と呼ばれることのなかった『IFの物語』が続いているという。
 クレカの誘いもあり、イレギュラーズはこの世界を知るべく探索することになる。

 今回、イレギュラーズは境界図書館から、美しい商店街へと至る。
 ここは異世界ということで、イレギュラーズもまた目新しさを感じていたようだ。
「異世界……ですか」
 『おチビの理解者』ヨハン=レーム(p3p001117)も興味を持って見回す。
 そこはこの世界……プーレルジールの中心、『プリエの回廊(ギャルリ・ド・プリエ)』と呼ばれる場所。
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)にとっても、初めて視認した場所らしく、いろいろメモを取っている。
「えっと、案内役が必要だそうですね」
 アクアベルはメンバーと話し、1体の人形を選ぶ。
 それは、金髪碧眼の少女を思わせるアンドロイドだった。
「D-011と申します。皆様をご案内いたします……」
 アンドロイドを思わせるその人形にガイドしてもらいながら、メンバーはプーレルジールを歩くことに。


 なんでも、『プリエの回廊』からしばらく行ったところにある村には、多数の猫が集まるらしい。
 それに興味を持ったイレギュラーズは、探索がてら向かうにことに。
 混沌においては、この近辺はレガド・イルシオン……幻想王国があるはずだが、この世界にはそれが影も形もない。
「幻想王国……そのようなデータはありません」
 D-011もプーレルジールについては色々と情報を与えられているが、混沌についてはほとんど知らないようだ。
「目的地セイケトルは小さな村です。遠方に向かう際、食料の補填などに立ち寄る人も多いそうです」
 混沌にもセイケトルという名前の街がある。
 街道沿いにあり、今は猫と共にある街として知られ、多くの猫好きが立ち寄っているという。
 共通するのは名前と猫くらいなものだが……。
「ご案内します」
 親しみやすい名前を付けたD-011と共に、一行はこの世界のセイケトルを目指す。

 歩いても、広がるのは平野ばかり。
 あちらこちらに木々が並ぶが、土が踏み固められた道が伸びているのみ。
 ここが貴族の多く住まう幻想と同じ場所かと考えると複雑である。
 自然の風を感じながら歩いていた一行の前に、巨大なリスを思わせるモンスターが。
「グランドスクゥです。ご注意を」
 この近辺で確認できるモンスターとのこと。
 警戒しつつそれらと対しようとする一行の前に、一人の女性の姿が。
「興味深いね」
 シフター服姿の女性……スズ=レームが楽しそうにそのリスの姿をしたモンスターを見回す。
 彼女は珍獣ハンターとして混沌のあちらこちらを飛び回っているのだが……。
「おかーさん!?」
 これには、ヨハンも驚きを隠せない。
 どうやら、この地へと混沌の住民が迷い込むこともあるようなのだ。
 本人は楽しんでいそうだが、状況は理解していないはず……。
 彼女を救援しようとした一行だが、そこに現れる黒い影。
 それは、現実でも確認されている終焉獣。
 遂行者ナーワルが連れていたこともある人体の一部を大きくしたような姿をした個体だ。
 ここに現れているのは、左右の腕を巨大化させたような姿をした終焉獣がそれぞれ1体、計2体だ。
 さすがに終焉獣相手では、数々の珍獣を相手にしてきたスズとはいえ、厳しい。
 そう判断した一行はすぐさまその場の敵を相手にし始めるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <英雄譚の始まり>のシナリオをお届けします。
 こちらは、ヨハン=レーム(p3p001117)さんの関係者依頼も兼ねております。
 境界……それは、混沌の外にある異世界。
 この世界で何が発見できるでしょうか。

●概要
 『プーレルジール』と呼ばれる場所が舞台です。
 ゼロ・クールを連れてこの地を探索し、セイケトルと呼ばれる村を目指してくださいませ。
 道中はのどかな平野の道をのんびり探索し、次の村を目指しますが、道中で敵の一団を遭遇、撃退を目指します。
 状況はOPの通り。
 スズさんがモンスターと交戦しているところに終焉獣が加わり、イレギュラーズの皆様が加わる形となります。

 事後、到着した村には猫らしき生物が多数住み着いており、住民と共存しているようです。
 もしかしたら、皆さんの気に入った猫がいるかもしれません。
 存分に満喫したらスズさんを連れて混沌に戻るとよいでしょう。

●敵
〇終焉獣:傲慢の腕×2体
 全長3m超。それぞれ、左腕、右腕のようです。
 二の腕から手までが地面をホバリングするように浮遊しています。
 拳で殴りつけたり、叩き潰したり、手で握り潰そうとしたり、エルボーを繰り出したりと多様な攻撃手段を持ちます。
 空間を殴りつけて穴を開け、浸食を進めることも。

〇モンスター:グランドスクゥ×3体
 魔王の配下とおぼしきモンスターですが、リスに似た愛くるしい外見をしています。
 全長は1mほどもあり、ジャンピングキックや噛みつきと外敵には容赦なく攻撃を仕掛けてくるようです。

●NPC
〇ゼロ・クール
 プーレルジールなる世界の案内役。
 とある魔法使いと呼ばれる職人によって作られた人形です。
 今回同行する人形はD-011という番号を与えられており、金髪碧眼の少女型アンドロイドを思わせます。
 知識と感情を有してはいますが、知識はほとんど持っていないようです。
 良ければ、名前を付けてあげてくださいませ。

 戦闘は近接では片手剣、遠距離では弓、ドローンを使って交戦します。
 それなりの戦闘力を与えられてはいるものの、戦闘経験があまりない為、無茶して攻撃することもある為、多少援護する必要があります。

〇スズ=レーム
 ヨハンさんの母親です。
 珍獣ハントに勤しみ、あちらこちらへと出かけている間に、この世界へと迷い込んでしまったようです。もっとも、それはそれで未知の生物との出会いを楽しんでいるようですが。
 戦いでは、近距離でツーハンドソード、遠距離でロングボウを使用できます。
 基本的には自分の考えで動きますが、要望があればそれに合わせて行動します。

〇アクアベル・カルローネ(p3n000045)
 まだ情報が少ないこの世界について知見を広くするべく参戦します。
 戦闘では水を使った術、回復術で皆様を支援します。
 ある程度自分で判断して動きますが、指示があればより効率的に動きます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <英雄譚の始まり>異世界珍獣探し!完了
  • 境界に住まう生物とは……
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC1人)参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ロレイン(p3p006293)
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

サポートNPC一覧(1人)

アクアベル・カルローネ(p3n000045)
穏やかな心

リプレイ


 境界図書館からイレギュラーズが至ったプリエの回廊。
「ロストシティ……ね」
 ロレイン(p3p006293)は混沌とよく似たこの異世界の名を呟く。
 『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)を始め、皆興味津々にこの異世界を見回す。
「混沌の過去をなぞっている……ある意味で過去の時間軸であり、イレギュラーズが介入出来るから異世界……」
「あり得たけど選ばれなかった可能性の世界というわけか。……本当に全くの別世界なのか?」
「異世界でも混沌ベースなら混沌の理で動けるようね?」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が見たところ混沌の枠組みからは逸脱してないと実感を語るとロレインが同意する。
 実際、『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)などは呼び出した精霊と交流していた。
「ROOでもなく、境界の書物世界ほど圧倒的じゃない……。混沌のルールで動けるようね?」
 細部が異なるデータ世界のROOとも違った世界に、疑問を抱くロレイン。
 それに、滅びかけという意味とは……。
「ともあれまずは、この世界を知るために探索してみよう」
「ご案内します」
 イズマに応じたD-011に案内され、仲間と共に目的の村を目指す。
「ゼロ・クールは名前がまだないのよね」
「D-011さん……名前も考えてあげたいね」
 そこで、オデットや『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が金髪碧眼の少女の見た目をしたゼロ・クールがそう提案する。
 きょとんとするD-011に、イレギュラーズは思い思いに名前を挙げて。
「D-011か、ゼロがオーにもなるから、ディオワン、とかどうかしら」
 男の子っぽい名前かと考え、オデットは難しいと考えを巡らす。
「D-011は自分の生みの親を知ってるのか?」
「はい」
 生みの親を差し置いて名づけるのに少し抵抗があるというイズマが問うと、ゼロ・クールはそういうのに無頓着な魔法使い(親)だという答えにこう返す。
「でも、そうだな……ドルチェさん、なんてどうだろう?」
 その後も、皆、良い名がないかと提案を続ける。
「『ディステル・アル』さん、とかどうかな」
 ヨゾラは、『Distel・all』……ドイツ語でアザミ、宇宙・万能・全てという意味を組み合わせた名前を口にした。
 本当はollにしたかったが、合う単語が思いつかなかったとのこと。
「D-011はドールとか、Dollが文字として似てるわね?」
 ロレインがその機体番号に着目すると、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)も同じことを考えていて。
「DOLLと当て字できるから、ビスク・ドール……ビスクって名前はどうだい?」
「ビスク……良い名です」
 西洋人形を思わせるような見た目もあって名付けたその名を、D-011……ビスクも気に入っていたようだ。
 彼女の名前も決まり、一行が目指すはセイケトルと呼ばれる村。
「……猫の街、こっちじゃ猫の村か。プーレルジールにもあるんだね、楽しみ!」
「そうですね……!」
「猫に似ている……覇竜のドラネコとか連想するわね」
 幻想の街道沿いに存在する街と同じ名の村がどういう場所かと期待を膨らませるヨゾラの叫びに、アクアベルが応じ、ロレインはこれまで出会った愛らしい生き物のことを思い出していた。
「猫さんの村、楽しみ……!」
 サポートに駆けつけた『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)もまた、どんな場所かと楽しみにしていたようだ。

 現場が近づくにつれ、メンバーが話すのはこの境界に迷い込んだ女性の話題に。
「私達は自分の意志で来たわけだけど、迷い込む人もいるのねぇ」
 この事態が後々面倒事を引き起こさなければいいけれどと、オデットが懸念を語る一方、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が何かを発見する。
「ヨハンさんのお母様がこんな所に……」
「ヨハンの母親はよくこんなとこまで来れたわね?」
 チチチチウチウ……。
 驚き、呆れるロレインの前には、大きなリスを思わせるグランドスクゥが3体。
 見た目こそ可愛らしいが、魔王の末端の配下と思われるモンスター。
 近づく者には容赦なく飛び蹴りを食らわせ、鋭い牙で仕留めようとしてくるから恐ろしい……が。
「興味深いね」
 笑顔を浮かべるその女性……スズ=レームは自身を囲むモンスターに笑顔すら見せる。
「いや珍獣ハントして異世界に来るってバイタリティ凄いですね!?」
 思わず突っ込むシフォリィだが、そこに迫りくる新たな脅威……2体の終焉獣だ。
 それらは巨大な両腕。
 左右で個別にそれぞれ意志を有しており、バラバラに動くこともできるようだ。
「モンスターに、終焉獣……!?」
「なんというか……随分特徴的な終焉獣もいたものだ」
 ヨゾラも『狂言回し』回言 世界(p3p007315)も、他とは違った終焉獣の姿に驚く。
「たしかに今まで見た事ない相手ですが……」
「どこかに両足と体があって、合体すると強くなるとかあったりしない? ……いや迷惑だからそんな事態は御免被るが」
 シフォリィも世界も少なからず異質なる存在に戸惑う。
 その間にも終焉獣は、そしてモンスターは迷い人に迫る。
「モンスターはともかく、滅びの終焉獣が我が物顔で跋扈してるのは許しておけないな」
 すでに動き出した仲間を含めて広域俯瞰で把握し、イズマもまた敵へと駆けだす。
「とにかく無事に切り抜けなくては! 加勢します!」
「ぶはははッ! 手ぇ貸すぜ青いののおっかさん!」
 シフォリィもゴリョウも知人の母を救出すべく距離を詰める。
 この女性を救出し、混沌に戻る。……その為に。
「まずは敵を倒しましょう!」
「邪魔する敵を殲滅しないとね」
「全部倒して皆無事に猫の村に行くんだ!」
 シフォリィ、祝音、ヨゾラの決起の声が広い野原にこだました。


 元いたモンスターと新手の終焉獣合わせて5体。
「共に戦い、敵を全部倒すよ」
「了解です」
「援護しますね」
 ヨゾラに応じ、D-011……ビスクとアクアベルも戦闘態勢をとる。
「スズ=レーム、終焉獣はこちらに任せて、あなたは魔王の魔物を」
 一方で、ロレインが敵に囲まれるスズに呼び掛け、そのままリスの魔物グランドスクゥを相手するよう願う。
「ああ、任せときな」
 笑顔を見せるスズはさすが、珍獣ハンターというところか。
 無論、スズだけに任せはせず、ゴリョウが前へと割り込んでいく。
「アクアベル、俺の回復を頼む」
「はい、支援しますね」
 快く応じるアクアベルが水の術を詠唱する暇に、ゴリョウは招惹誘導によってリスどもの意識を自身へと強制的に向ける。
「さぁ、存分に殴り合いな!」
 ゴリョウに煽られてか、いきり立ったリス達は彼に向けて蹴りかかり、あるいは噛みついたりして来ていた。
 そのゴリョウへと水の術で癒すアクアベル。
 スズも笑ってツーハンドソードを操ってリスを牽制する。

 メンバーの多くは明らかに危険な終焉獣へと向かう。
「とにかく、数は少なくとも怖そうな傲慢の腕を何とかしましょうか」
 タイミング的にはゴリョウよりも早く飛び出していたシフォリィは、こちらへと近づく終焉獣2体へと仕掛ける。
 予め全身に凍てつくような波動を纏っていたシフォリィは、左腕から花吹雪を舞わせていく。
 ……いや、それら一つ一つが極小の炎。
 無数の炎が空中に咲き乱れ、漆黒の腕を焼いていく。
 イズマもまた、攻撃を仕掛ける前に己を最適化した上で、一気に能力を向上させていて。
 まずは相手の動きを制したいと考えるイズマは、堕天の輝きで終焉獣を照らして呪いによって一時的に体のあちらこちらを石化させた。
「腕だけの魔物……正直気持ち悪いわ」
 冠位傲慢との関係も気になるロレインも仲間に続き、リス達から吹き飛ばすよう魔力の壁を展開して押し返す。
「こちらの聖遺物を使って混沌に異世界を召喚している……?」
 戦いながら、ロレインはそんな推論を巡らしていた。
 戦闘序盤、味方がさほど傷ついていないこともあり、回復役となる世界も攻撃に出る。
 まだ大きな動きを見せぬ終焉獣が異常を振りまく可能性は高い。
 それでも、初手は2体を纏めて捉え、世界は幻術で創造した武器に呪念を込め、一気に撃ち込む。
 初手から相手の体力を削ることができれば、それだけ倒しやすくなる。
 このまま仲間がうまく敵を攻められる状況なら、魔光で抵抗力を下げてより攻めやすくしたいところ。
 ともあれ、今は終焉獣の動きに警戒したい。
 空間を殴りつけて穴を空けるのは、実に恐ろしい。
「先に行きます」
 弓矢を放ち、支援してくれるビスク。
 ヨゾラが敵を注視しつつ詠唱して。
「呑み込め、泥よ……敵の腕達の運を削れ!」
 混沌ではない境界でも根源たる力は同じらしい。
 ヨゾラの言葉によって、その力は星空の泥となって終焉獣らへと浴びせかけられる。
 祝音も気糸の斬撃で敵を切り刻むのだが、その間に終焉獣はゆらりと剛腕を振り上げる。
 直接、殴り掛かってきた左腕はシフォリィ、ロレインへと殴り掛かる。
 保護結界を展開していたこともあり、やや出遅れた形となったオデットはすでに敵2種がある程度距離をとったこともあり、終焉獣へと迫る。
「早めに撃破したいとね」
 破滅の魔眼を開くオデットは仲間の攻撃する左腕から、魔力と光で生み出した小さな太陽を叩きつけていく。
 次なる攻撃をとドローンを飛ばすのが目に入ったオデットは、彼女にアドバイスしようと思い立つのだった。


「ぶはははッ!」
 平原にこだまするゴリョウの笑い。
 リス……グランドスクゥは大柄な彼に臆することもなく飛び掛かり続ける。
 ゴリョウは攻撃を受けつつ纏うエルフ鋼を活性化させる。
 アクアベルの治癒魔術を受けつつ、魔力障壁を張ればこちらのもの。
「あの腕をぶん殴ってる面子の邪魔をさせなきゃそれでいいのさ!」
 雄叫びを叩きつけるゴリョウも自分が倒しきることを考えてはいない。
 脳が揺らされて思考を奪われたリス達は程なく同士討ちを始める。
 そいつらへとスズが近距離から斬りかかり、苛烈に攻め立てていた。
 終焉獣攻略に多くのイレギュラーズが注力していたが、思った以上に苦戦を強いられる。
 動きを止めていたイレギュラーズだが、傲慢の腕は思った以上にすぐ態勢を立て直し、拳を振るう。
 保護結界がなければ、一撃で地面に亀裂を発生させる程の威力。
 その終焉獣の攻撃もあり、世界が己の自然の調和を癒しに転じて仲間に振りまくが、終焉獣は世界が面倒と判断して空間を薙ぎ払い、メンバーの行き場を狭める。
「ビスクさん、浸食された空間に入らないよう気を付けて」
「空間の侵食……了解です」
 イズマの声に応じ、ビスクも気を払って立ち回っていたようだ。
 世界はそんなビスクもそうだが、イレギュラーズでないスズやアクアベルを気に掛ける。
 ただ、その隙を終焉獣が逃さず、世界を叩き潰してしまう。
 世界がパンドラで踏みとどまる間に、イズマが動き回る終焉獣2体が射線に重なる瞬間を見定め……撃ち抜く。
 ついに、二の腕に風穴を穿たれた左腕。
(人と違って痛みを感じるかは知りませんが……)
 距離が開いていたこともあり、ロレインは長銃で撃ち抜いていく。
 クリーンヒットして吹っ飛ぶ左腕。だが、すでに体力がなくなっていたのか、虚空の中へと消え去っていった。
 もう1体もまた、力を振りかざしてイレギュラーズを追い込む。
 1体ずつ仕留めようとシフォリィは連続攻撃を仕掛け、小さな炎を多数舞わせながら破邪の結界で右腕を押さえつけようとする。
 とりわけ、その指先を狙って力を封じようとしたシフォリィ。
 ただ、メンバーの攻撃が続かず、勢いよくエルボーを叩きつけてきた右腕に、シフォリィはねじ伏せられてしまう。
 だが、シフォリィの闘志は失われていない。
 踏みとどまった彼女に、世界が調和の力で癒しを振りまき続ける。
 ヨゾラも傷つく2人を癒すべく、天より光輪を降らせてサポートしていた。
 そのヨゾラと行動していたビスクがドローンを使って機銃を掃射していたが、オデットがアドバイスして。
「狙うならこうして……」
「なるほど、勉強になります」
 仲間と息を合わせる重要性ぐらいは知っておいていい。
 そんなアドバイスもあり、ビスクはオデットと合わせて射撃を繰り返す。
 オデットもまた合わせて優しく暖かく太陽の光で漆黒の腕を照らす。
 ここまでメンバーの攻撃を集中して浴びていた終焉獣だ。
 その体からどす黒いものが零れ落ち、見る見るうちに動きが鈍る。
 後は、態勢を立て直したシフォリィが桜花を思わせる炎片で終焉獣の体を焼く。
 しばし焦げた臭いが漂っていたが、体を維持できなくなった終焉獣が消えたことで、それも徐々に収まっていった。

 ここまでくれば、リスを抑えていたゴリョウも息をつく。
 終焉獣を倒した仲間達が一気にリス達を圧倒し、オデットの放った陽光で煙を上げた1体が早くも崩れ落ちる。
 祝音の創造した魔力に切り裂かれた2体目のリスが距離をとろうとしたが、シフォリィが夜葬儀鳳花を舞わせてその体に火をつける。
「姿は愛らしいですがモンスターには変わりないので!」
 同意するイズマは、まだ修復していない浸食個所を避けて立ち回り、高威力の魔力砲を発射し、リス2体を撃ち抜いて片方を倒す。
 ただ、ここにきて残り一体がしぶとい。
 ロレインの放つ弾丸を受け、世界もフルルーンブラスターで追い込むが、そこは末端とはいえ魔王の配下。
 しぶとく戦場を飛び回るリスは飛び蹴りを食わせようとしてくる。
「骨のあるリスだね」
 笑顔で相手をし続けるスズの斬撃の直後、ビスクが弓でリスの足を撃ち抜いた。
 それによって、リスがビスクを敵視すれば、ヨゾラが庇うように前へと出て。
「死なせてたまるか……!」
 迫ってきたリスへとヨゾラが星空の極撃を叩きつければ、リスも地面をもんどりうって動かなくなったのだった。


 戦いの後、間近に迫った目的地までの間を、皆語らいながら歩く。
「伝えたい、混沌のことを。教えてほしいプーレルジールのことを」
「はい、お願いします」
 こことは似て非なる世界、無辜なる混沌。
 イズマはビスクにその成り立ちを語り、逆にこの世界の成り立ちを聞く。
 途中、見せてもらった地図は残念ながらプーレルジールの周囲、混沌で言うところの幻想国内。
 果たして、その外側はどうなっているのか……。

 戦闘を挟み、一行が辿り着いたのは、セイケトルと呼ばれる村。
 のどかな場所に暮らす住人達は農業に、牧畜に、狩りに、自身の生活の為に汗を流す。
「「うみゃん、みゃあお」」
 そんな彼らを、村に住み着いた多数の猫らしき生物達が疲れた人々が癒す。
「猫さんの街……猫さん沢山、可愛い……!」
 僕も猫さんを撫でたいと、祝音が近づくと、数匹の猫……便宜上猫と呼称するが……に囲まれ、そっと触れる。
「猫さん達、大好き。みゃー」
「可愛い猫が沢山……撫でるよじゃらすよ楽しむよー!」
 目的地に着いたとほっと一息ついていたヨゾラもまた、猫と一時を過ごす。
(……覇竜のドラネコとか連想するわね)
 ロレインがやはり猫に似ているとじっと見つめれば、相手は距離をとってこちらを見つめてくるところまでそっくりだと実感していた。
 オデットは動物疎通を試みていて。
『いっぱいきたニャ』
『おなかすいたニャー』
 思った以上に、混沌の猫と同じ印象を受け、オデットはゴリョウの作ったペースト状の食べ物を与えていた。
「仲良くなるための切欠にでも使ってくれ!」
 その食べ物はすでに全員が受け取っており、アクアベルも寄ってきた猫と戯れ、ご満悦である。
「やっぱり、にゃーにゃー鳴くんですね!」
 聞いたところだと、外からやってきたというこの生物、村では個別に名前をつけていても、総称としてはマオだの、ガットだの、キャットだのとバラバラらしい。
「猫でいいんじゃないのかい?」
 スズも混沌の猫となんとなく違いを感じながらも、素直に猫でいいじゃないかとメンバーに諭す。
村人もそれによって、猫という生物なのかと認知し、周知するようになっていたようだ。
「あまり、村との間で情報の繋がりはない感じなのですかね?」
 シフォリィのその推察は、イズマの疑問とも繋がる。
「旅人……と言うと、どこに向かう人が多いんだ?」
 そう問うと、村人は少し考えて。
 この世界がどこまで広がっているかを確かめに。
 あるいは、至ることができるかもしれない、外の世界に。
 外がどうなっているのか、村人もほとんど気にしたことはなかったようである。
 そこで、祝音は、ここが『いつかは飲み込まれる』世界であることを思い出す。
「お手伝い、頑張りたいな。みゃ」
 猫と戯れながら、彼はこのセイケトルやプーレルジール、そしてこの境界を救うべく尽力したいと考えていた。
「それにしても、混沌からこちらに迷い込むことがあるとはな」
 世界もまた、猫に餌を与えながら物思いに耽る。
 思ったより厄介な状況になっていると把握する世界。
 なにせ、何かの拍子に別の混沌の民がこちら側に来る可能性があるのだから。
「対策は必須だな」
 なんてことを考えているうちに、世界の体の上で昼寝を始める猫達。
「う、動けん……」
 スズを連れて混沌に戻るのはもう少し先になりそうだと、シフォリィは小さく嘆息するのだった。

成否

成功

MVP

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女

状態異常

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)[重傷]
炎の守護者
回言 世界(p3p007315)[重傷]
狂言回し

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは終焉獣に体を張って向かっていた貴方へ。
 D-011こと、ビスクをよろしくお願いいたします。
 今回はご参加ありがとうございました。

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