PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

アクシデンタル・リカバリィ

「一体これはどういう事ですの!?」
 憤りを隠さない『冠位色欲』ルクレツィアの形の良い眉は声色以上に吊り上がっていた。
「『煉獄』完成の為のパーツをこんなに簡単に失うなんて!
 マエストロ、これは一体どういう不手際なのかしら!?」
 刺々しいヒステリーを隠さないルクレツィアの言葉に一方のダンテは溜息を吐くしかない。
「どうもこうも。遊楽伯爵は風月氏に連れ去られたという事。
 ……風月氏を紹介してきたのは他ならぬスポンサー殿では無かったかね?」
「……っ……それにしても、私がつけた兵共だって……」
「その兵共が頼りにもならず、氏に駆逐されたからこうなっているいう話。
 まさかスポンサー殿はまさに一世一代のフルスコアを書き上げんとしている……
 至極の芸術に身を浸すこの私自身に見張りをしろという心算だったか。
 ……で、あらば確かにそれはこの私の失敗だ。大変申し訳ない事をした」
「~~~~~!!!」
 自称・淑女のルクレツィアは地団駄でも踏みたい気分だったに違いない。
「協力出来る事がある」と申し出た風月は、成る程「迷惑にならない」とも言っていない。
 彼が何故協力を申し出た上で、逆の行動を取ったのかルクレツィアにはまるで理解が出来なかったが……
 首尾良く『煉獄の器』を確保出来たまでは良かったが、その完成に向けたとっておきを奪われたのは上手くない話だった。
「……ともあれ! 『冥王公演』に遅延は許されない事は御存知よね?」
「それは無論。『煉獄』完成は我が悲願。
 最愛の妻を見限り、愛しい娘を贄にして奏でる至上の音楽に澱み等あってはならない話だ」
「ならば、リカバリーが要る」
 責任所在を突き詰めれば不利が否めない事を察したルクレツィアは幾分か冷静を取り戻していた。
 ガブリエル・ロウ・バルツァーレクはそれ自体が大きな意味を持っている訳ではない。
 あくまで彼は『煉獄の器』になるリア・クォーツ(p3p004937)の心を、謂わば抵抗力を塗り潰す為に必要な材料に過ぎなかったのだから他にもやりようはあるという事だ。
「マエストロ。貴方はフルスコアの準備にまだ時間が必要でしょう。
 遊楽伯を手元から失った以上は、『煉獄』の準備は別角度からも進める必要がある。違いまして?」
「その通りだ、スポンサー殿。私のアベリアの魂はしなやかで強い。
 煉獄のクオリアに侵されて、ベアトリクスを失っても――まだ本質的な完成には到っていない」
「もっと、もっと強い絶望が要る。悲劇が要る。
 地獄の業火に灼かれながら、それでも天国を夢見る――夢見がちな女を泣き喚かせるだけの『何か』が」
「然り。まさにスポンサー殿の得意分野という訳だ」
 勘のいいダンテの言葉にようやくルクレツィアは破顔した。
 幻想は元々彼女の『担当』だったのだ。
 特に目を掛けていた何人かのイレギュラーズの弱味は良く、良く知っている。
 ましてや『煉獄』と『冥王公演』の中心人物であったリアの事は言うまでも無い。
『煉獄の器』の完成が『リア・クォーツの喪失』であるとするならば、彼女の泣き所等分かっている。
 ベアトリクスを失い、勿論ダンテを失っている。
 忌々しいイレギュラーズの『友人』は後のお楽しみとして、ファミリーコンプレックスが異様に拘泥するのはやはり『家族』に他なるまい!
「宜しい。マエストロ。アクシデントのリカバリー……準備は私の方で差配しましょう。
 私が貴方に求めるのは完璧にして無欠の『公演』。分かっておりますわね?」
「無論」
「ならば、結構。この上つまらない茶番等催されたら、私きっと貴方を殺してしまいますからね――」


 ※『プルートの黄金劇場』事件に大きな変化があった模様です……
 ※天義にて、遂行者たちの動きが活発化しているようです……。


 ※シーズンテーマノベル『蒼雪の舞う空へ』が開催されました。
 ※プーレルジールの諸氏族連合軍が、魔王軍主力部隊と激突を始めました。
 ※イレギュラーズは『魔王城サハイェル』攻略戦にて、敵特記戦力を撃破してください。


 ※ハロウィン2023の入賞が発表されています!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM