PandoraPartyProject
そうして僕らは西を目指した
東に困る人が居れば、真っ先に飛んでいく、なんて事は無く。
北に攻め入る蛮族がいれば、その調停をする、なんて事は無く。
南の海を渡る為に新たなる冒険を始める、なんて事も無かった。
それがこのプーレルジールに棲まうアイオンという青年だ。
生まれも平凡、剣の腕もまだまだ未熟な冒険者見習いといった風情である。
無辜なる混沌に置いては過去の英雄、建国の王としてその名を知られた男は平凡な儘で終っていくはずだったのだ。
だが――
「これも何かの縁だってやっぱり思ったよ」
彼を『勇者』と知るイレギュラーズと出会った事でその未来は変化した。
青年は冒険者として旅に出た。旅路は最初から平穏無事に運ぶわけも無く、魔王軍の襲来にも見舞われた。
それでも、だ。戦いが終ってみれば『良い経験だ』と笑える程度に彼は強かだった。
ある意味で勇者となるべき器を有していると言うべきか。『無辜なる混沌』の彼とその辺りは違いないのだろう。
プーレルジールで育った彼は悪ガキだ。穏やかで「僕はこう思った」と嫋やかに伝える事は無く、取りあえず一発殴って考えようという豪胆ささえ持っていた。
「『俺』は皆の知っている歴史? ……の勇者でもないし、凄腕の冒険者でもない。
ただ、ちょっとばかし運が良いのは確かなんだ。ほら、冒険を始めて早々に四天王と出会える辺りとか」
それが『幼馴染み』の体を借りていたのは何とも物語めいているのだが。
アイオンはサーシャ・クラウディウスというクラウディウス氏族の娘との出会いを思い出してから、イレギュラーズに向き合った。
正直、この世界が滅びること何て誰もが知っている。諦めの境地でもある。
誰もが抗えない滅びに面した世界は暴動が起これば人を鎮めるためにゼロ・クールが投入されて戦争が起こることだって合った。
人間同士がいがみ合うことが少なかったのは世界の情勢によるものだったのだろうか。
産まれた頃から世界が滅ぶと言われ続けたアイオンにとって、それに抗うことは非日常で、平穏から遠い『馬鹿な行ない』にも近しかった。
それでも、希望があると認識出来たのはイレギュラーズという存在を目の当たりにしたからだ。
「このまま、プーレルジールが滅びる前に、四天王とか、魔王が、君達の世界に移動してしまう可能性があるんだろ?
それは絶対に防ぎたいことなんだと思う。あいつらは人じゃ無くて滅びそのものだった。だから、移動したら君達の世界が更に急激に滅びに近付く筈だし」
アイオンはうんうんと頷きながら言う。
「それで、さ……まあ、君に提案なんだ。
この世界を救う手立てってのが少しだけ可能性として見えたとして……『死せる星のエイドス』っていうアイテムを偶然にも渡してくれる不思議な女の子と出会ったとして」
指折り数える、青年はあなたを見ていた。
「それが廃棄されなくちゃならないゼロ・クールを救ったり、この世界に溢れた滅びをちょっとばかしでも遠ざける可能性があるとして。
それに俺が協力したくて、君も混沌世界って言う、君が本当に生きる場所――なのか、分からないけど、俺からするとそうだからさ――の滅びを遠ざける可能性があったなら、さ」
アイオンは真っ直ぐにあなただけを見ていた。
誰が、どうして、混沌世界とプーレルジールの繋がりを発見したのかも分からない。
ゼロ・クールに寄生する『終焉獣』達だって、滅びの象徴そのものだ。それをギャルリ・ド・プリエで救うだけの簡単なことなら冒険に出る必要は無い。
ただ、それは防戦一方。何も変わらない。
「勇者っていうのは冒険に出るらしいよ」
アイオンはあっけらかんと笑ってから世界地図を取り出した。誰かが歩いて回った手書きの地図。ちぐはぐで、無辜なる混沌と照らし合わせてやっとのものだ。
「冒険の先は決まって魔王の場所だという。そういうものなんだって。
イレギュラーズは、滅びを退けたい。それから、俺は君達と冒険の旅をしたい。なら答えは決まっているだろう?」
目指すのは魔王の居所だ。
伝承と大きく違って、その居所は浮遊する天空の島サハイェルではない。
サハイェルは地に落ちて、ラサの砂漠地帯を更に広くしたという。迷宮森林や覇竜領域の岩山の規模も混沌世界とはやや違って見えるのだ。
サハイェル砂漠と名付けられたその地は西へ、西へと向かう度に昏く変化していく。
まるで闇が落ちるように、とっぷりと夜に変われば足元には水が満ちてくることだろう。
それこそが、沈島地帯――元サハイェルが落ちたことにより出来た澱みの領域。滅びのアークが混ざり合い、水の如く変化した『影海』と呼ばれた死の領域。
プーレルジールに生きる者が触れれば滅びに浸食されて変化することが多い。
突飛なことにアイオンにはその耐性があって、それは魔法使いのマナセや大いなる翼ハイペリオンたちだってそうだろう。
ならば、行ける。
その地の奥に魔王城が見える。そこに宿命の敵が居る。
だからこそ――
「行こう。西へ」
※星の少女ステラによって、『死せる星のエイドス』が顕現しました!
※魔王城への進撃が開始されました!
※奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!
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