PandoraPartyProject
渦巻く因果
勇者がいるから、魔王がいる。
人はそれを『運命』と呼ぶのだろうか。アイオンが居るから、イルドゼギアが存在して居る。
物語では何時だって勇者が魔王を打ち倒し、世界に平和が訪れるのだ。
「マナセ」
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はごろりと転がっていた少女に声を掛ける。幼い魔法使いはギャルリ・ド・プリエに戻る道すがらにそんな本を読んでいた。
「悪い王様がいれば、英雄が立ち上がるし。悪い魔物がいれば、英雄が立ち上がるし。
恐ろしい魔法使いがいれば、良い魔法使いがいる。不幸があれば幸福があるのね。なんだか、世界が均衡をとっているみたいだわ」
馬車の荷台にごろりと転がってからマナセは呟いた。「へーんなの」と。
齢にして10歳。混沌に伝わるマナセよりも幾つか幼い少女は、子供らしい感性と思考を有していた。
素直で、猪突猛進。好奇心は旺盛で天真爛漫に振る舞う娘。魔法使いとして並外れた素質を有し、それを誰にも認めて貰えなかった彼女。
本来であれば『勇者』アイオンが彼女を村から連れ出すはずだった。プーレルジールでは勝手に飛び出した家で娘をイレギュラーズが保護し、その目的に付き合っている。
「マナセは家に帰らなくって良いの?」
ジェック・アーロン(p3p004755)の問い掛けにマナセは「いいの!」と力強く頷いた。
「魔女ファルカウに聞きたいことがあるのだもの。
ちゃんと、森を……というより、この世界を守らなくっちゃ! 魔王イルドゼギアなんてワンパンよ! ぱんちぱんち!」
拳をしゅっしゅと突き出したマナセにポメ太郎は『危ないですよ』と言う様に吠えた。
「あ、ごめんね。あたってない?
ダメよ、ポメ太郎。わたしの間合いに入ったら塵になるわ!
あ、これは言い過ぎたかも。危険って何かしら。怖い事って何かしら。滅びって何かしら」
マナセはぎゅっとポメ太郎を抱き締めて言った。
――魔王って何かしら?
ヒュウ――と何処からか風が吹いた。顔を上げた『冒険者』アイオンにメイメイ・ルー(p3p004460)は「どうかしました、か」と問うた。
「いや……。何だか嫌な風だと思って」
「確かに。けれど、雨の気配ではないね。それでも重苦しい風だ。何かあるのかも」
眉を顰めたマルク・シリング(p3p001309)にアイオンは頷く。
ギャルリ・ド・プリエの周辺には嫌な気配が立ちこめている。
「戦の気配ですね」とココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は言った。
アトリエ・コンフィーを後にしてアイオンの『お手伝い』のサポートを行って居たココロは『地上』を目指す。らせん状になったギャルリ・ド・プリエの中央に設置された人工太陽にも僅かな陰りが見えたのだ。
プーレルジールの野へと立ったアイオンは「ごめんね」とクレカ(p3n000118)を振り返る。
「君の友達に似ている人を探す目的だったのに」
「……ううん、それに、こっちの方が気になる」
だよんね、とクレカは回言 世界(p3p007315)の袖を引いた。世界は「まあ」と言葉を濁す。
彼自身はクレカのルーツについて探っていた。家族が此方に居る可能性を認識したクレカの為に家族を探していたのだ。
クレカの家族。つまりはクレカの創造主である『おとうさん』だ。彼女がそう言っているからには男性なのだろうと狙いを付けたが今のところ有益な情報は得られていない。
クレカを連れてアトリエ・コンフィーを見て回っていた世界に、クレカはグリーフ・ロス(p3p008615)に良く似た人を見かけたと言ったのだ。
「見間違えかも、しれないし。ね、グリーフ」
「はい。少し気には掛かりますが……」
秘宝種であるからにはもしかすればこのプーレルジールで作られたゼロ・クールであった可能性もある。
何処か『そうであって欲しい』という気持ちと『そうでなければいいのに』という気持ちが鬩ぎ合いながらもグリーフは頷いた。
周囲一帯に暗雲が立ちこめる。
アイオンは得物を構えてから眼前を見た。
『獣王』ル=アディン。『闇の申し子』ヴェルギュラ。
『骸騎将』ダルギーズ。『魂の監視者』セァハ。
(ついでに言えば――『最弱の』シュナルヒェンだ)
そう名乗る者達がプーレルジールに姿を見せる。全員ではない。
だが、それらが滅びの気配を有した『終焉』の使徒であることは確かなのだろう。
「この世界は滅びに面している……というのは誰もが知っている話だろう?
だからこそ、それに抗い生き延びたい。こんな事で滅びて堪るモノか……力を貸してくれないか」
アイオンはゆっくりと振り返った。
此処では只の冒険者だ。彼はイレギュラーズが居ればその滅びを回避できると、信じている。
剣を構えた一行の上に『声』が響いた。
――我々はこの世界を滅ぼし、混沌世界へと渡航する事に決めた。
選ばれた世界の住民達しか『混沌世界』に渡ることが出来ないのだ。滅びに抗えるお前達を捕え混沌に渡る手助けをして貰おうか。
「……混沌を、知っている……? イレギュラーズについても理解しているのか」
マルクが呟けば、メイメイは「まさ、か……『混沌』で何か……」と唇を震わせた。
混沌世界が滅ぶことを指を咥えて見て等居られない。故郷も、それから大切な人達だっている。
「手助けなど致しません。此処で一度お帰り頂きましょう」
ココロは真っ直ぐに、その声がした方向を見据え言い放った。
「――魔王『イルドゼギア』」
※プーレルジールにおいて魔王の軍勢が行動を開始した様です――!!
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