PandoraPartyProject

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終わりなき戦い

 静謐なる白石の聖堂に固い足音が響く。硬質な音を鳴らしゆっくりと男は歩いていた。
 白銀の髪を頂き、青き眼を細めた男パーセヴァル・ド・グランヴィルは聖堂の真ん中で足を止める。
 大きな窓から降り注ぐ陽の光を浴びて、長い睫毛を落すパーセヴァル。
 あたたかな日差しが肌に染みこんでいくようだ。
「やはり、ここは落ち着くな」
 落ち着いた声が静かな聖堂の中に響いた。アーデルハイト神学校の第二聖堂だ。

 天義国の聖都にあるアーデルハイト神学校は、他の名門と比べ比較的自由な校風である。
 他国からも留学生を受入れて聖職者や神聖魔術に長けた者を送り出す。
 歴代の留学生の中で最も有名なのは幻想中央教会の大司教イレーヌ・アルエだろう。

「メレイアはまだ来ていないか……もうすぐ昼休みが終わってしまうよ」
 この第二聖堂は人が少なく、パーセヴァルはよく此処へ入り浸っていた。
 幼馴染みのメレイアとの食事は、肩の力を抜ける唯一の時間だったのだが。
 パーセヴァルは口に出して、妙な違和感を感じた。
 頭の中に靄がかかったような感覚に襲われる。頭を手で押さえたパーセヴァルは緩く振った。

「次の講義はリゴール先生だったか、いやレプロブス先生か……?」
 厳格なリゴールは真面目で堅物であったが生徒のことをよく見てくれていた。
 レプロブスは膨大な知識から出てくるユーモアが面白くて魅力的だった。
 聖職者という忙しい身の上で、合間を縫って教鞭を執ってくれる二人のことが好きだった。
「……っ!」
 頭の中に掛かる靄がノイズのように広がり、頭痛がパーセヴァルを苛む。
 一歩、よろけ聖堂の柱に手を付いた。
 ガンガンと頭を叩くような頭痛に吐き気がこみ上がってくる。
 苦しげに柱へと額を押しつけるパーセヴァル。

「学校? 違う……俺は学生ではない
 ……私は、騎士で――――『冠位魔種』と戦わねば」

 そうだ、自分は聖都の騎士団グランヴィル小隊を率いる隊長であった。
 一筋縄ではいかないような癖のある隊員ばかりだがパーセヴァルは彼らのことを愛していた。
 優秀な才を持つライアンは、それでもまだ若いから導いてやらねばならないし。
 お転婆なニコラには手を焼くが、彼女の笑顔は隊の士気を上げる。元気になるのだ。
 反対に冷静なジュリアは優しく人当たりも良いが内に溜め込んでしまうからこれも心配だった。
 ケルルは戦場に出たあとは落ち込んでしまう。彼女の意志に関わらず暴走してしまうのだ。
 他にも沢山の隊員の顔が浮かんでは消えて行く。

 戦いはまだ続いている、何をしているのだと心の奥底で声がした。
「この聖都を守らねばならない……」
 ぐっと拳を握りこんだパーセヴァルは青い瞳を上げる。
「まだ……私は……負ける訳にはいかない、んだ」
 弟のセオドリックは心配性で小言も多いが頼りになる男だ。けれどやはり弟を守ってやらねばならない。
 こんな所で膝を折ってはグランヴィル家に仕えてくれているフェネリージャレッドグレイビーや他の家臣に申し訳が立たない。彼らの献身に報いなければならないのだ。

 何より、愛すべき家族を守らねばならない。
 の未来に暗い影が差さぬように。無邪気に笑う姿を何としても守ってやらねばならない。
 戦いはまだ続いている。このような所で立ち止まってはいられない。

 ――メレイア、ティナリス。


 ※天義国の方で動きが見えているようです――?


 ※パンドラパーティープロジェクト6周年ありがとうございます!
 『六周年記念ローレットトレーニング』開催中!
 


 ※『冠位暴食』との戦いが終結しました――
 ※覇竜領域では祝勝会が行なわれているようです。

これまでの覇竜編シビュラの託宣(天義編)

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