PandoraPartyProject
竜は相食む
本来ならば一番安定していなければならない場所だった。
幻想(レガド・イルシオン)なる大国の――それも王都。
大邸宅の並ぶ貴族街の一角で起きた『事件』はこの国の直面する最悪の事態を告げていた。
「……本当に最悪だな。爽やかな朝とは程遠い」
マサムネ・フィッツバルディは吐き捨てるようにそう言った。
集まった衛兵にその出自と権力で人払いをさせた彼の顔は明確過ぎる程に曇っていた。
そして浮かない顔は彼の傍らに立つ探偵――バーテン・ビヨッシー・フィッツバルディも同じである。
「これをどう思う?」
「推理するまでもない問題だろう?」
分かって問うたマサムネにバーテンは苦笑を見せた。
地面や壁に夥しく撒き散らされた血液はその持ち主が既にこの世に居ない事を告げている。
乾き変色したその血の跡は事件が今より何時間か前――恐らくは深夜の内に起きた事を示していた。
「争った形跡がある。死んだのは――或いは大怪我をしたのは一人じゃあないだろう。
その癖死体が出てこないんだから、これは『プロ』が互いにやり合ったって話だな」
「君の専門って訳だな」
「嬉しくねぇがな」とマサムネは頷いた。
この事件現場はフィッツバルディの複数の別邸を結ぶ進路上に存在した。イレギュラーズとの関わりもあって比較的安定した最近の幻想の政情を考えれば、事件を引き起こした可能性の高い人物の顔はすぐに浮かぶというものだった。
「……遂にここまで煮詰まってしまったか」
『この場所で激突が起きた事自体が何より事態を雄弁に物語っている』。・
暗殺者(プロ)を飛ばしたのは片側ではなく双方、或いはそれ以上。
最低でも二つ以上の勢力が自分がやられるより相手を害する事を選んだ事実は明白。
国元(フィッツバルディ領)や王都(メフ・メフィート)での小競り合い等、序章に過ぎなかったという事だ。
『白昼堂々目撃された傭兵同士の喧嘩等と、人目を嫌って放たれたプロの動きは全くステージの違うものだから』。
「犯人は分かるか?」
マサムネの問いにバーテンは薄笑いを浮かべて頷いた。
「分かるけど、意味はない」
マサムネはその言葉に溜息を吐き出した。
薄々分かってはいたがせめて縋って名探偵から希望的観測を聞きたかったのに――
――この事件の犯人は全員だ。
※『双竜宝冠』事件が新局面を迎えました!
※イレギュラーズ以外でも黒衣を纏っている者がいるようです……?
※豊穣に『神の国』の帳が降り始めました――!
※練達方面で遂行者の関与が疑われる事件が発生しています――!
※『双竜宝冠』事件が望まない形の進展を見せたようです。
各地でアベルト派、パトリス派、フェリクス派が武力衝突を開始し、市中にも被害が出ているようです……
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