PandoraPartyProject

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知られざる騎士

 ――幻想で帳が降りた。
 ――海洋で帳が降りた。
 練達で、豊穣で。あらゆる国で『奴ら』の手が伸びている。
 なんたる事態だ。なんたる傲慢だ。
 世界を己の儘に覆わんとするなど――決して許されぬ大罪である。
 故に黒衣の者は彼らと戦わねばならぬ。
 聖戦の意を示す為に。我らに正義ありと示す為に。
 彼らの暴虐を――阻む為に。

「……」
「ネロ。連中が現れた、次は豊穣の此岸ノ辺とやらで……」
「知っている」

 天義東部、崩れ果てた教会サンピエス。
 人気無きその地にて二つの人影が言を交わせていた。
 その内、ネロと呼ばれた白髪の男は鋭い視線と共に話を聞いている……その身に纏いしはイレギュラーズ達にも解放されている『黒衣』であったか。神の意に従い剣を振るう証。だが、見た事のない顔だ。少なくともイレギュラーズである様には見えぬ。
 であれば聖騎士団に属する者か――? しかし。
「もう我々の手には負えない。ネロ、我々はイレギュラーズと協力すべきだ。
 彼らにも黒衣が解放された――教皇様に認められているんだ」
「必要ない」
「無理だ。もう我々の動ける戦力は限られている。
 我々だけではもう戦えない。遂行者の戦力は想像以上だ。
 強欲冠位の時はまだ我々は影から支援も出来たろう。しかし――」
「必要ない」
 その口から語られる言の葉の数々は、どこか妙である。
 まるで彼らはどこにも属していないような。イレギュラーズにも、聖騎士団にも……
 遂行者を敵としているのは間違いなさそうだ、が。
「滅びるまで戦うつもりか……!? 死は恐れるべきものではないが、無謀な特攻など何も成せぬまま終わるだけだぞ……! よく考えろ。聖女を名乗るルルを始めとしてアドレ、サマエル、エクス、オルタンシア、アルヴァエル、サク、リーベ、ヘンデル、そしてマスティマ――どれ程の遂行者が未だいると思っているんだ」
「全て噛み殺す。何をしてでもな。聖なる国に仇名す者は――何をしてでも殺す。
 忘れるな。我々は天義本国に合流せぬ者。影に生き、影に死ぬ。
 誰も我々の事は知らず。誰も我々の事は覚えていなくていい」
 何故か単独で戦おうとしているように見える。
 ……月光にその身が照らされれば気付くだろうか。黒衣がやけに薄汚れている事に。
 その黒衣はつい最近に彼の手に渡ったものではないのだ。
 その黒衣を纏いて活動しているのは、ずっとずっと前からなのだろう。
 途方もない程の昔から――黒衣の騎士はいた、という事だろうか?
 ネロが何者なのか、正確な所はまだ分からないが……
「お前は視野が狭い」
「知っている」
「――街に出ろ。イレギュラーズを見ろ。我々ではもう希望は紡げない。
 だが彼らなら……きっとこの国に。いや世界に……よりよい明日を齎してくれる」
「……機会があればな」
 その鋭き瞳に悪たる心は――宿っていないように見えた。
「……いずれにせよ練達や豊穣は我々の領分ではない。
 彼らに任せておけばいい。それにかの国らへと移動するには、大きな問題もある」
「ああ。まぁ、随分と距離があるからな。一度行ったら中々戻れぬだろうし」
「いや」
 と。ネロは一息。練達や豊穣に行くに大きな問題とは戻れぬ事ではない、と?
 それでは一体何か。ネロは眉を顰め、非常に、非常に険しい表情を纏えば――
 重苦しく、口を開いた。

「……船は苦手なんだ」


 ※イレギュラーズ以外でも黒衣を纏っている者がいるようです……?
 ※豊穣に『神の国』の帳が降り始めました――!
 ※練達方面で遂行者の関与が疑われる事件が発生しています――!


『双竜宝冠』事件が望まない形の進展を見せたようです。
 各地でアベルト派、パトリス派、フェリクス派が武力衝突を開始し、市中にも被害が出ているようです……

これまでの覇竜編シビュラの託宣(天義編)

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