PandoraPartyProject

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月はそこにある

 砂漠に戦いの音が響き、やがて止んでいく。
 月の王宮と、その周辺で繰り広げられた様々な戦いを、月だけが見ている。
「エーニュは」
 と、アト・サイン(p3p001394)は静かに言った。傍らには、意識を失い、烙印の衝動にうなされながらも、しかし人であることをやめなかったリッセという名の女性がいた。
「もう終わりだろう。上級幹部は全滅。生き残った者たちも投降した。
 これでようやく、終わったんだ。ザントマン事件から続く、因縁が」
 ラサと、深緑を結んでいた、悲しい因縁は、長い時を経て、ようやく決着の時を見たのだ。恐怖と、憎悪を、忘れられずにいた人たちは、悪徳に操られるがままにその暴力を発露させ、多くを傷つけた。その果てが、こんな砂漠の、月だけが見ているような場所でのひそやかな終焉というのは、なんとももの悲しい感じもした。
「そっちはどうだったんだい?」
「アストラ・アスターの部隊の方も」
 応えたのは、猪市 きゐこ(p3p010262)だ。
「意地を通した、と言う感じかしら。今は、作戦に参加した仲間で、生存者の応急手当とか搬送で大忙し。
 お互い、あとは烙印が解除されれば万事解決、といったところかしら?」
 きゐこの言葉通り、烙印の問題はまだ残っていた。リッセ、そしてアストラたちは、生存してはいこそすれ、烙印の影響下にいることは変わりない。結局、大元が立たれなければ、めでたしめでたしとはいかないのが実情といえた。
「エーニュっていうのは結局なんだったのかしら」
 きゐこが言った。アトが嘆息する。
「あれは……」
 なんと言うべきか。ただ一言で言うならば、
「悲しいほどに、人間の集まりだった、ということなのだろうね」
 そういう。それだけが、エーニュという組織を『観光』した男の、感想だった。

 一方、別所での戦いも、また結末を迎えていた。
 こちらでは、パンダフードを被った女、葛城春泥は軽妙な笑みで「やあやあ」と手を振る。
「みんなのママ葛城春泥だよ! 今回はうちの子が世話になったね」
 月の王宮前の砂漠で我が子である恋屍・愛無(p3p007296))が、仇のルルフ・マルスとの決着をつけたようだと春泥は語った。
「ヨハネはレイチェルを連れて何処かへ去ったようだね。あ、このレイチェルってのは妹の方で。皆が知ってる方は姉のヨハンナなんだよ。双子だからよく似ているけどね」
 うんうんと振り返った春泥は「白い悪魔の子は……」と瞳を伏せる。
「幸せそうな笑顔で旅立ったよ」
 チック達の子守歌に見送られて、散った花弁は彼の願いを受け取った綾姫の手で小さな剣になり、ディーンと共にあるのだと春泥は告げる。
「ネイトは……君達にありがとうと、言っていたよ」
 良かったねと春泥は切なげな笑みを浮かべた。

 そして月の王国内部で待ち構えていた吸血鬼らとの戦いも、収束を迎えていた――
 ただ、その地での戦いは……無念ながら撤退する形にはなってしまったのだが。
「ガルトフリート……せめて烙印の蝕みが無ければ、な」
「まぁ、だけど惨敗した訳でもない。吸血鬼の方は……倒し切る事が出来たし、な。
 防衛網は維持できない筈だ」
 言うはラダ・ジグリ(p3p000271)ファニー(p3p010255)である。あと一歩であったのだが、惜しくも魔種にして『宵の狼』の一員であったガルトフリートを倒す事は出来なかった――ただ、吸血鬼としてイレギュラーズに抗した者は打ち倒す事に成功した。敵の被害も甚大であり、決戦となっている場に増援として赴く事は出来ないだろう。
「――自由になれよ。兄貴」
 であればルナ・ファ・ディール(p3p009526)は言を零す。
 吸血鬼とは、彼の兄して一族の長だった……ソル・ファ・ディールという者であったのだ。
 ソルが倒れた今。ファ・ディールの全ては――俺が背負う。
 ルナは思考する。天に浮かぶ月を……見据えながら。

 いずれにしても、戦いはまだ続いている。月の女王との戦い。ラサの悪徳との決着。そして『博士』との因縁の終着。三つの戦場は、未だ激しい戦いを繰り広げているはずだ。
 我々は空を見る。戦いに傷つき、疲れ果てたその体で。
 戦いの決着を、砂漠の平穏を祈りながら。
 そんな我々を、ただ月だけが見つめていた。


 ※<月だけが見ている>の戦況報告が届いています――!


 ※海洋王国方面にも『帳』が降り始めたようです! 神の国に渡り対抗しましょう――!
 ※天義騎士団が『黒衣』を纏い、神の代理人として活動を開始するようです――!
 (特設ページ内で騎士団制服が公開されました。イレギュラーズも『黒衣』を着用してみましょう!)

これまでの覇竜編ラサ(紅血晶)編シビュラの託宣(天義編)

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