PandoraPartyProject
黄昏を眺めて
――くすくす。
くすくすくすくす――
聞くからに甘やかで、聞く程に性が悪い少女の愉悦が闇の中に揺蕩っていた。
眺める『演目』に対して何処までも場違いな、鈴鳴る声を響かせている。
これより幕を上げる血腥く禄でもない舞台を歓迎するかのように。
「……ああ、これが笑わずにいられますか!?」
少女は――冠位魔種は。『色欲』を司るルクレツィアは嗜虐的な興奮をまるで隠してはいなかった。
「肝心要の! 仕掛けた貴方がそんなざまなのに! 話はこんなにも面白く転がっている!」
――本当に性格が悪い女だねェ!
揶揄された『貴方』はここには居ない。しかしながらここに『在る』。
魂だか概念だか。魔術を知らぬ者が語られても理解は出来ず、魔術を知る者が聞いたなら信じる事は出来はしない。
そんな奇跡を平然と成り立たせる『男』の名前はパウル・エーリヒ・ヨアヒム・フォン・アーベントロート。
「貴方にだけは言われる筋合いは無くてよ?
それに……言われて仕方ない無様だとは思わなくて?」
ルクレツィアの言う通り一敗地に塗れた――
先のParadise Lost事件でイレギュラーズによってその肉体を討滅された『敗北者』その人である。
「こうなる事を期待して、あの子(アベルト)をああしたのでしょう?」
――まぁ、玩具は一つじゃ足りないからねェ。少なくともその予定だったからねェ!
予定は未定で果たされず、肉体を消失した結果、今の所はどうしようもない位に『関与』出来ないパウルが自棄気味にそう漏らした。
ルクレツィアと彼は旧知の間柄であり、互いを蛇蝎のように嫌っている。
見ての通り煽り合う存在だが、互いに面倒だから敵対はしていなかっただけの話だ。
『先に』パウルが遊び、失敗して敗けた事からここの所の互いのやり取りはルクレツィアに分がある状態と言えた。
「何処から『仕掛け』ましたの? 老竜の黄昏も貴方の所為かしら?」
――とんでもない。僕はそもそも幻想を滅ぼそうなんて思っちゃあ居ないんだ。
自殺願望に突き動かされる破滅主義者の君達と一緒にして貰っちゃ困る。
肩を竦めたルクレツィアにパウルは続ける。
――美学の足りない性悪には理解出来ないと思うがネ。
幻想は僕と旧友達の思い出の砂場なんだよ。
僕は僕の係累たるリーゼロッテを『大切に愛でた』ケド、この国はまた別の意味を持っている。
レイガルテ君はそれに必要不可欠な存在だった。この僕がどうにかするものかよ?
……それに分からないか? ルクレツィア。
『一から十まで仕込んだ遊び何てものは何一つ面白くないんだよ』。
予定調和に支配されないドラマこそ、僕を愉しませる時間なんだから!
鴉殿の憮然とした顔を思い浮かべ、ルクレツィアはまた鈴鳴る笑い声を響かせた。
「はいはい、分かりましたとも。
ですが、貴方が仕掛けた遊びだけれど、貴方は今何も出来ない。ならばこれはもう私の舞台で宜しくて?」
――不本意だがネ。君が何をする心算かは知らないガ。
「私が直接、というには少し早いかも知れませんけれど。
案の定、脳筋(バルナバス)も居なくなった今、そろそろお兄様にアピールをするのも良い頃合いと思いますから――」
ルクレツィアの美貌は毒を纏い、毒を香る。
幼気でありながら成熟した――否、熟しすぎて腐り落ちた果実のような『女』さえをも思わせる。
「――少し。少しだけはね。貴方の予定調和を補強して差し上げようかと」
そう言った彼女は、成る程。悪食な鴉さえも避けて食べる『最悪』を隠しては居なかった――
※幻想でフィッツバルディ派の対立構造が急激な悪化の兆しを見せています!
※ラサに存在する『月の王国』にて大規模な儀式が行なわれています。反撃し侵攻しましょう――!
※天義騎士団が『黒衣』を纏い、神の代理人として活動を開始するようです――!
(特設ページ内で騎士団制服が公開されました。イレギュラーズも『黒衣』を着用してみましょう!)
※覇竜では『ラドンの罪域』攻略作戦が行なわれています――!