PandoraPartyProject

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幻想伏魔殿

 鉄帝国での死闘が終わり、特異運命座標が人心地をついた時、『その瞬間』は訪れた。
 ローレットの周りが覇竜の情勢で騒がしくなりつつある頃、眠っていたもう一匹の竜が目を覚ましたのだ。
 それは永年の宿敵であるゼシュテルの顛末を見届けたからだったかも知れない。
 単純に高まり続けた緊張感が限界を迎え、はち切れたからだったかも知れない。
 総ゆる歪を孕み、悪徳を呑み続けてきた幻想という国体は元よりこうなる運命だったのかも知れない。
 何れにせよ――何の前触れも無く『限界』は訪れるものに違いなかった。
「……最悪ですわね」
「はい。文字通りの最悪です」
 吐き捨てるようにそう言ったリーゼロッテ・アーベントロート(p3n000039)の言葉に同様に苦虫を噛み潰したガブリエル・ロウ・バルツァーレク(p3n000077)が頷いた。幻想という国に所謂『三大貴族』として君臨する二角は政治的にはそう芳しくない仲である。緩衝材(イレギュラーズ)の存在もあり、往時より随分と穏やかになった『暗殺令嬢』や、駄目男改善系シスターに尻を蹴られた事から幾分か覇気を増した『遊楽伯爵』の現状はあるにはあるが、派閥の手前というものもある。当然ながら北の軍閥アーベントロートの領袖たるリーゼロッテと民政家にして穏健派の代表であるガブリエルは気安く歓談するような間柄ではないのだから緊急の会合の意味は重い。
「……三角の一つ、と言えど。『今回』のは桁が違いますわよ」
「まったく。彼の不在でこうまで幻想が『止まる』とは……
 家格やパワーバランスを考えても、『公』はレベルが違い過ぎましたね」
「我が身の不徳を恥じるばかりですが」と続けたガブリエルにリーゼロッテは鼻を鳴らした。
「忌々しい。しかし、否定し難いから余計に腹が立ちますわね」
 憮然としたリーゼロッテの表情は不愉快だが認めざるを得ないといった風か。
 彼女の率いるアーベントロート家もつい先日『有り難くない父の帰還』により大層な混乱と打撃を受けたものだったが、ローレットの活躍もあり、その影響は幻想の屋台骨を揺るがす程にはならなかった。否、仮にリーゼロッテ当人が処刑の憂き目にあっていたとしても『Paradise Lost』はそこまでだ。レイガルテ・フォン・フィッツバルディはかのパウル・エーリヒ・ヨアヒム・フォン・アーベントロートとさえ結局はと上手くやる事を選んだに違いない。そしてそれは可能であったに違いないと思わされる。『黄金双竜(レイガルテ)』の在る限り、幻想に致命的な状況が起きたとは中々考え難いと考えられるのはその絶大な重しとしての力が故である。
 しかし、それは裏を返せばその重鎮を失えば幻想は非常に危険な状態に陥りかねないという罠でもあった。

 ――レイガルテ・フォン・フィッツバルディが倒れた。

 そのニュースは幻想という国をこの上なく大きく揺るがした。
 先の動乱で後継者候補と見做されていたアベルト・フィッツバルディが重傷を負った事もあり、政情は一気に不安定化。レイガルテの子供達はそれぞれ自身が後継者の名乗りを上げ――その内の一人、ミロシュ・コルビク・フィッツバルディが暗殺された事から事態は最悪の局面を迎えたという訳だった。
「一応、お尋ねしておきますが」
 前置きをしたガブリエルが問う。
「ミロシュ氏の件にはアーベントロートは関与していませんよね?」
「殺しますわよ」
「安心しました」
 剣呑なやり取りにもガブリエルは怯まない。
「子供達がそれぞれ私兵を集め、戦争準備を始めている一方で……それを一喝し得る公の容態は良くないようです。
 ……相変わらずかなり重大な情報統制が行われていますが、商人達のネットワークでも殆ど状況が掴めない以上、相当な大事である事は間違いないでしょう」
「此方も退屈な報告しか。『父』が滅茶苦茶をしなければもう少し薔薇十字機関も使えたのでしょうけど」
 リーゼロッテの苦笑いにガブリエルは同じ表情を浮かべていた。
 アーベントロート動乱は麾下の戦力を真っ二つに割る大事だった。
 多少状況は落ち着いたとはいえ、彼女が失ったものがかなり大きいのは言うまでもない。
 そして薔薇十字機関こそがこの国の諜報や暗部を司る最大戦力である事は言うまでもない事だろう。
 幻想の最大勢力による内戦の勃発は最早不可避の領域に近付きつつある。
 彼等は宿敵のゼシュテルが動き難いと見れば、いよいよその動きを開始するかも知れない。
 フィッツバルディ同士の争いは公爵家だけの問題に留まらない。
 彼等にぶら下がる多数の門閥貴族達はそれぞれの意図で後継候補に『肩入れ』しよう。
 まさにこの争いは国を幾つにも割る大乱となり、危機となると断定出来る。
 一方で本来ならばそれを止め得る双璧の軍閥アーベントロートは前述の通り著しい弱体化を果たしている。そして、元々大した武力を持っていないバルツァーレクでは役者不足が過ぎようというものだ。
「……どうしますか」
「どうもこうも」
 リーゼロッテは深い溜息を吐き出した。
 アーベントロートやバルツァーレクという『勢力』が下手に藪を突けば内乱の規模は上がるだけである。
 こんな時はどうするか。どうするべきなのか。
「一体幾つの借りを作れば良いのだか……
 私、そろそろ誰かに求婚されても断れない立場かも知れませんわ」
 リーゼロッテの珍しい冗句にガブリエルは「私も。まぁ、私は自分からしますけど」と似たような応酬を見せる。
 分かってはいるが、頼りになるのは彼等だけ。
 しかしワイルドカードに頼り過ぎているのは否めず、二人は何とも言えない顔をしていた――

 幻想でフィッツバルディ派の対立構造が急激な悪化の兆しを見せています!
 ※ラサに存在する『月の王国』にて大規模な儀式が行なわれています。反撃し侵攻しましょう――!


 ※天義騎士団が『黒衣』を纏い、神の代理人として活動を開始するようです――!
 (特設ページ内で騎士団制服が公開されました。イレギュラーズも『黒衣』を着用してみましょう!)


 ※覇竜では『ラドンの罪域』攻略作戦が行なわれています――!

これまでの覇竜編ラサ(紅血晶)編シビュラの託宣(天義編)

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