PandoraPartyProject

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色欲/傲慢

 ――くすくす、くすくす。

 銀の鈴を鳴らすような美少女の声色が蠱惑的な忍び笑いを響かせている。
 必要以上に艶っぽく、同時に何もかもを軽侮するかのような意地の悪い調子である。
「ああ、愉快。本当に愉快!」
 憮然とした『気配』を小馬鹿にするように見た目だけの少女は――冠位七罪ルクレツィアは至極楽しそうに声を上げていた。
「まさか、貴方がそんな有様になるなんて!
 あれだけの豪語をしておいて、人間なんかに――特異運命座標なんかに一杯食わされてしまうだなんて!
 肉体の再生には目途は立っておりますの? まさか干渉力のないそのまま、観劇の風情でしょうか。
 これを笑わずにいられますか。ねぇ!?」

 ――予定外に予定外を重ねてしまった僕としてはね……
   返す言葉も無いガ。それは君の御兄弟、大魔種の金看板にも唾する行為だロウと思うのだがね!

「あら?」
 不本意そうな『やり返し』にも笑みを含んだままのルクレツィアは物ともしない。
「冠位七罪にありながら、無様に敗退した連中を庇う心算もありませんもの。
 アレ等は敗北し、私はしていない。ならば、これを同一とするのは暴論というものではなくて?」

 ――君の属性は『色欲』と思ったが。

「よして下さいましな。本家(ルスト)に比べれば、私なんて可愛らしいもの。
 まるで子猫のようなものですわよ!」
 自覚がないのか確信犯なのかは知れないが――
 気配はルクレツィアの戯言を鼻で笑い飛ばすまでだった。
 彼女は至極魔種らしい人格だ。然したる悪意もなく悪意にまみれた言動以外を取り得ない。
 七罪は産まれながらの魔種なれば、反転なるイヴェントを経てはいないのだから、それは要するに。

 ――先天的に最悪の性格って訳だ。知ってたケドね。

 もう一度笑い声を上げたルクレツィアは気配の言葉を『負け惜しみ』と受け止めたようである。
 言っても詮無い事は明らかだから、気配はそんな彼女に水を向けた。

 ――で、どうするんだい?

「どうするとは?」

 ――君はそうして馬鹿にするがね。『愛しのお兄様』の為にも幻想を無茶苦茶にするのは正道だロウ?
   本来は感謝して欲しい位なんだ。僕が遊んだのはたまたま利害が一致したからに過ぎないけれど。
   ……うん、やっぱり感謝して欲しい所だな。
   残念ながら僕が弄り回す事は難しいけれど、用意した次は十分に生きているじゃあないカ?

「感謝はしませんけれど、まぁ遊び甲斐があるのは事実ですわね。
 ……うふふ、こんな据え膳ならば幾らでもたいらげられそう。
 でもね、鴉。淑女(レディ)は慎み深いもの。そして恋は駆け引きでしてよ」

 ――はあああ?

「私が動くには尚早、と申し上げているのですわ。
 まぁ『何もしない』という訳ではありませんけど。
 ……お分かりにならなくて?」

 ――全く理解出来ないねェ!

「『イノリお兄様には誰が一番頼りになるのかを良く分かって頂かなければ』。
 二度ある事は三度ある、ならば三度ある事はもっとでしょう?
 頼りにならない兄弟がまたぞろ無様を晒したならば……
 ふふふ、お兄様は可愛い妹の献身をもっともっとお喜びになるでしょう!」
 まぁ、これは何たる言い草か。ルクレツィアは要するに「兄弟がもっと負けた後なら、自分が目立つ。本気を出すならそれからの方が良い」とのたもうている。

 ――うっわ……

「何? 文句でもありますの?」
 気配はもうこの女に何かを言う事を諦めた。
 元より説教してどうにかしてやるような間柄ではないのだ。
 彼女も自分を嫌っているが、自分も彼女の臭いはドブ川以下の代物だと確信している。
 ただ、一つだけは言ってやる。

 ――文句は無いが、君はやはり二重属性か何かだと僕は思うね!

 傲慢な色欲なんて、大凡付き合いたくない女の最上位の一角である事だけは間違いない!

 ※フィッツバルディ家のお家騒動が幻想を騒がせつつあるようです……
 ※ラサでは妙な宝石が出回っている様です……?
 ※<ジーフリト計画>が始動しました!

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