PandoraPartyProject

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蘇る聖夜

 ある日、ある時、ある瞬間を――
 人生をやり直せるなら同じ結末に到っただろうかと考える。
『不可逆』を認めたその時をやり直せるならば現在は違ったのだろうかと考える。
 必ずしも等しからずとも、誰にも訪れる『運命』を人は常に変わらず選び得るものなのだろうか?
「……まぁ、『幻想』よね」
 有り得ない仮定自体が詮無い幻想である。
 仮定上の問いかけ等、現実(リアル)を伴わないシミュレートに過ぎないのだから意味は無い。
『今日という日に現在のマリアベルがどう決意していたとしても、遠い時間の彼方、当時のマリアベルは同じ気持ちを有しないのだから当然だ』。
 理屈上、マリアベルが到った結論は。

 ――愚かな私は何度何回だって繰り返す。
   滲んだ時間の彼方、遠くて寒い『聖夜』に何度だって戦争は止まるのだろう。
   終わらない戦争はその日を限りに終焉し、私は幾星霜の眠りに落ち。

「――それから頼りにならない親友の『ミス』で、目を覚ます」
 混沌を取り巻く情勢は更に加速的に次の幕を望もうとしていた。
(……昔の人達よりずっと強い。
 ……………と、言うよりそれが『可能性の獣』の所以なのでしょうね?)
 イレギュラーズは往々にして有り得ない未来を見据えてきた。
 暗中模索所か、存在さえしない『正解』を『答え』を掴み取る――
 原初の七罪を冠した大魔種も既に三角が落とされ、神託回避の『人類圏』は成果を上げ続けている。
 しかしながら、実を言えば重要なのは『戦況』でない事も確かである。
(卵が先か……それとも鶏の方が先だったのかしら?)
 ベアトリーチェ・ラ・レーテが滅ぼうと。
 アルバニアが、カロンが滅びようと。
 ……まさか無いとは思うが、あの『最強(バルナバス)』が敗れようとも。
 魔種にとって、個別の勝敗等、最大の関心時ではない。
 滅びの神託の成就を望む魔種の在り様は緩慢な自殺であるからだ。
 七罪の何角が滅ぼされようと、原罪やマリアベル自身が滅びようとも、結論から言えば世界が滅びるならば何の問題も無い。
 Case-Dの顕現の後には混沌も人類も魔種も残らないのだから当然だ。
『魔種勢力が最大に為すべきは、審判の日まで彼等に決定的な解決手段を見出させない事である』。
 上位魔種の役割は滅びのアークを高める事。空繰パンドラによる阻害をその魔手を以って止められれば『善し』なのだ。
「とは、言え――」
 そこまで考えたマリアベルは深い溜息を吐き出した。
 目前に横たわる圧倒的な理不尽と絶望をかつての人類は超える事が出来なかった。
 自身が堕ちた聖女に零落しているのはまさにその証明であり、納得出来ても苦笑い自体は禁じ得ない。
「――やきもち、を妬いてしまいますねぇ」
 自分達が出来なかった事を、後輩達が実現しているのを見るのは嬉しいようであり、口惜しくもあり。
 しかし、魔種と混ざり合ったマリアベルは自身が本当に望む形をとうの昔に喪失している。
 唯、唯。一つだけ、一つだけ。どうしても。未練の残滓が、幼い『マリア』が思うのだ。

 ――もし、あの選択をやり直せたら。
   違う。あの頃の人類(わたしたち)がローレットの人達みたいに強くて。
  『もし、私がイノリにお願いをしないで済んだなら』。

 永遠に孤独で、永遠に満たされない。
 誰より人間らしく、誰より神の意志を嫌う。
 誰より人間を愛しながら、誰よりその人間性を忌み嫌っている――
(私はイノリが、――だったから)
 ――あの『友人』を止める事も出来たのでは無かっただろうか?

 ――君には敵わないなあ。何時も酷いぜ、マリアベル!

 他ならぬ私は彼の特別な『マリアベル』だった筈だから。
 せめても寄り添って――違う結末を眺める事は出来たのでは無かったのではなかろうか?
「幻想、だわ」
 二度目の言葉は自身の想いを強く、強く否定した。
 時間を戻せたとしても、聖夜にはきっと雪が降る。
 しんしんしんしんと降り積もり、世界を圧倒的に白く、白く染めるのだ。
 マリアベルはそれが嬉しくて……同時に少し悲しかった。
「輝かんばかりのこの夜に。世界が平和でありますように」
 聖夜は何度でも蘇る。その癖、もしかしたら今年が『最後』なのかも知れなかった――

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