PandoraPartyProject
地底のゲルギャ
「寒い、寒いぞエリス! ゆたんぼはどこだ! ぽんぽんが冷えるぞ!」
「オリオン。冬の王たる身である事を自覚してください――
このゆたんぽはダメです。私がイレギュラーズちゃんから貰ったものです。めっ」
鉄帝を襲う大寒波は銀の森にも到来していた。
かつて勇者王の時代に在ったとされる『フローズヴィニトル』とも呼ばれる大寒波だ。辺り一面雪景色。暖かなゆたんぽを奪い合うのはオリオン(p3n000257)にエリス・マスカレイド(p3n000293)か……
冬と言えばオリオンの事が思い浮かぶ者もいるかもしれない。
彼はかつて『冬』という概念の化身の大精霊であったのだから。
――しかし彼はフローズヴィニトルではない。
単純に言えば彼は鉄帝を襲った大寒波に関しては無関係という事だ。オリオン本人自体も――
『余は全地凍結、大氷河の精! 余こそが冬である!
だがな、イレギュラーズちゃんよ。安心するがいい。
たぶん余とはあんまり関係ないマンだからだ!』
と自信満々に断言してくれた。おぉ冬の王……
まぁ。オリオンは冬という『概念』を司る者だが。
フローズヴィニトルは言うなれば概念というよりも『天災』の類である。
別種なのだ。その身に内包せし理が。
故にこれは。
「……やはり、地の底に眠るフローズヴィニトルそのものなのでしょうかね」
「むむっ。やはり実在する、という事か?」
「はい。大地の深くに封じられたと聞いていますが……何かの影響で封印が緩んでいる、という可能性はあり得ます……イレギュラーズちゃん達の中には『鉄帝国の地底』へ続く道を発見した、という方もいらっしゃるようですし」
氷の妖精女王たるエリスはゆたんぽと一緒に自らの見解を述べるものだ。
かつて強大な力を持っていて不凍港さえ凍らせ、ラサの砂漠すら凍土に変えたともされる――フローズヴィニトル。地の底に封じられれば最早出てはこれまいとされていたが……しかし。どうにも地下へ通じる道というのが発見されているそうだ。
鉄道都市ボーデクトン、ゲヴィド・ウェスタン、帝都中央駅ブランデン=グラード。
それぞれで見つかった地下道(地下鉄)。各派閥は新皇帝派の跋扈する危険な地上ルートを使わずに、別に勢力が使う事の出来るルートを開拓できるかもしれないという期待もあって、イレギュラーズに調査を依頼している……が。
道によってはもしかすれば伝説の、フローズヴィニトル封印の深部にまで近付くのもあるかもしれない。
それは逆に言えば新皇帝派も地下を使えれば接近しうる可能性はあるという事でもあるが。
「悪意ある者が近付いたとすれば――もしかしたら――」
「危険かもしれんな。ふっ、だがイレギュラーズちゃん達が調べているのであろう? ならば問題あるまい!」
笑みと共に述べるオリオンの顔に、不安の色は浮かびもしない。
それほどまでにイレギュラーズちゃん達を信用しているという事か――まぁ実際、各地で地下を発見した帝政派、南部戦線、ラド・バウ独立区においては既に調査を始めている所もある、と聞く。大寒波に対して既に彼らも動いているのだ――
この大寒波が本当にフローズヴィニトルによるものなのか否かも、その内分かるかもしれない。
「……信じましょうかね。イレギュラーズちゃん達を」
エリスは見る。ゆたんぽを奪わんとするオリオンの手をめっ、しながら。
――空からはまた、雪が降り始めていた。
純白なる世界。ただ美しいだけであってほしいと――氷の妖精女王は、願うものだ。
※派閥勢力パラメータを使用できる『アイアン・ドクトリン』が制定されました!
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