PandoraPartyProject

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さらば豊かなりし我が祖国

 兵舎の一つで爆破がおき、窓ガラスが砕けて飛んでいく。
 壁際に身を伏せつつもガラス片を浴びた鳳圏兵士は、身を起こして銃剣を構えた。
「なんだあいつら、撃っても撃っても起き上がってきやがる!」
 彼の言うように銃弾を撃ち込んだ黒軍服の兵士は胸や腹を撃たれても平気そうに起き上がり、手にした銃剣での発砲を続けてくる。ピンッと手榴弾のピンを抜いた音を察知すると、鳳圏兵士は伏せろと叫んだ。
 窓をぬけて転がり込んだ手榴弾。兵士は目を見開き、そして……爆発が全てを払っていく。

 負傷者だらけの第二兵舎。空をとんでやってきた伝令兵が、黒い煙をあげながら墜落してきた。
 医療班が駆けつけるが、それを振り払って身体を起こす。
「チィ! 小鳥遊隊、応答ありません! 南隊、大原隊、赤柳隊も……くそっ! みんなやられた! 殺された!」
 傷付いた翼を庇って墜落した伝令兵が、地面を叩いて涙を流す。
「なんでだ! なんで、我が祖国の軍人が我等を殺すんだ! 俺たちが何をした!」
「ほう……やはり、黒き軍服をきた不死身の兵団であります、か」
 負傷者たちの中から起き上がり、ゆらりと現れたのはぼろけた着物を着た包帯だらけの男である。抜き身の刀には呪力がみなぎり、それこそが彼の身分と名を仲間へと知らしめた。
「あなたは……『斬奸無頼』木邑・夜叉丸!」
「国の暗部を司る『密葬』の剣士……実在していたのか」
 木邑と呼ばれた男は、自分を噂だけで知る男達をシニカルに笑った。
「フン、おれは榛名大佐の命令をただこなしていただけであります。勤勉こそが生きる道。女子供であろうとも、命令があれば斬り殺すのみ」
 刀を握り、表へと出る。
 こちらへ迫る一団が見えた。黒い軍服とガスマスクの集団だ。どれだけ銃弾を撃ち込んでも起き上がる不死身の兵士『屍兵』。
「おもしろいでありますなぁ」
 木邑は刀を握り彼らを次々に必殺剣によって効率的に斬り殺していく。不死身の兵士といえど、二度と起き上がれぬまでに。
 が、そんな彼へと黒い軍用犬が飛びかかり、腕へと食いついた。
 悲鳴のような声をあげ、押し倒される。犬とは思えぬ力と俊敏さだ。
「ギイエ!?」
「夜叉丸先輩!」
 兵士たちは彼を庇って回収し、牽制射撃をしながら建物のバリケードを閉じる。

 練達がドラゴンの襲来に揺れる一方、ゼシュテル鉄帝国南西部、鳳圏でのこと。
 国内に残存する兵士たちは皆、自国の兵器であるはずの屍兵(アンデッドソルジャー)たちによって抹殺されつつあった。

●鳳圏戦忌憚
 鳳圏という小さな土地があった。
 荒れた野原と小さな沼しかなく、酷く寒くて動物もろくに住み着かない土地だった。
 帝国の侵略によって周辺部族が次々と併呑されていく中、難民となった僅かな人間がその土地に住み着くことにした。
 木を切り野を刈り家を建て、芋を育てて沼魚をすくった。
 出身世界の貧しさと軍人としての教育からそんな方法を熟知していたウォーカーは、惜しげも無く技をつたえ、道具の作り方を教え、農作も漁も、船の仕組みもなにもかもを広めていった。
 『彼』への感謝から道具には彼の故郷を思わせる紋章がつけられ、服は彼に習った軍服姿を広めた。
 やがて難民達は集まり、集落となり、『彼』はリーダーとして慕われ続けた。
 だがそれも永遠ではなかった。彼は老いて、そして人らしく死んだのだ。
 彼の教えを受け継ぎこの集落に名を刻もう。構成まで受け継ぎ生きていこう。
 だがそんな考えは、一人の娘によって覆された。
 『彼』の孫にあたる少女。今や名を残さぬ少女。彼女は神の如き奇跡を集落へ次々にもたらした。
 一夜にして沼を豊かな湖に変え、芋しか育たぬ野に豊かな牧場と畑をもたらし、非現実的なまでの魔力を資源化し村をたちまち都市化していった。
 娘の周りにいた者たちはたちまち豊かになり、知らず知らず娘へと傾倒し、気付けば娘は『王』を名乗っていた。
 鳳圏は国を名乗り。周辺部族への侵攻を始めた。
 いち集落が持つにはあまりにも大きすぎる、過剰とも言える戦力は不死身の兵団を作り出し、かつて友好的であった周辺部族は食い殺されることを恐れ対抗し、国を名乗り武力をもった。
 枯渇するはずの魔力資源は無尽蔵に与えられ、鳳圏はいつまでも、いつまでも戦争を仕掛け続けた。
 不思議なことに隣国鬼楽もまた無尽蔵の兵力を生み出し、対抗をし続ける。
 『終わらない戦争』が、幕を開けたのである。
 長い長い歴史のなかで起きた、これは戦争の物語。
 ――<鳳圏戦忌憚>である。

※鳳圏戦忌憚最終幕、開幕!
 鳳王との最終決戦が始まります!

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