PandoraPartyProject

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<貪る蛇とフォークロア>侵略するは烈火の如く

●クラスノグラードの悲劇
 クラスノグラード――
 それは鉄帝の北、ヴィーザル地方からやや鉄帝国の内陸部よりに存在する城塞都市の一つ。
 かつて東から来る敵の軍勢に対抗するための前線の一つとして築かれた城塞であり、赤色の城壁が美しい観光名所でもある。
 そんな城も、現在はノーザンキングスの建国によって前線の支援を行なう第二拠点の1つとして再利用されている。

「伝令! 伝令! ノーザンキングス軍によって、前線の砦が突破されました!」
「なに!? 前線の軍は何をしている!?」
 声を荒げたクラスノグラードの守将を務める男の顔は、驚愕に揺れている。
「分かりません! 現在、状況を確認していますが、恐らくは捕虜になったか、逃亡したか……」
 伝令の答えに、歯ぎしりする中で、扉を開けてまた1人の伝令が姿を見せる。
「伝令! 東方より軍勢の姿を確認!」
「良かった、無事か――」
「いえ! 相手は見たこともない旗を掲げています――敵襲です!」
「なっ! ……速すぎる……行軍を止めてないのか!?」
 信じられないことを聞いたと腰を抜かしそうになっているその時だった。

 ――――ドォォン――――

 重い、何かが吹き飛ぶ音が部屋の中に響き渡る。
 咄嗟に音の聞こえた方角を見れば、窓の向こう、城門の方角が土埃を上げている。
 仰天する男の眼でも、しっかりと把握できたのは、堅牢であるはずの城門を粉砕した敵がこちらに雪崩れ込む様だった。

●風雲急を告げる
 その日、ゼシュテル鉄帝国が帝都『スチールグラード』に存在するローレットの支部は、慌ただしくイレギュラーズの招集を始めていた。
 ――奇しくも、とも言えようか。
 練達において行われている『R.O.O』の内側における鉄帝国を模した国――鋼鉄にザーバ軍閥とヴィーザルの連合軍が牙を剥いたのとほぼ同時期。
 現実世界においても、同じようなことが起きていた。
 鉄帝国の北東部、対ヴィーザル戦線の城塞群をノーザン・キングスの手のものと思しき軍勢が蹂躙した。
 慢心していた鉄帝軍は、抜群の連携を見せた敵を前に瞬く間に2つの砦と3つの城塞を攻め取られた。
 その軍勢のうち一部は南に進んで鉄帝側の町を攻撃し、もう片方はそのまま西に向かって、先史文明時代の遺跡を掘り起こしているという。
 自らを傭兵連盟『ニーズヘッグ』と名乗った彼らは『稼ぎ場所を求めてラサからノーザンキングスへ流れた傭兵』と、『ハイエスタ、シルヴァンスの一部』が手を組んだ組織であるという。

 慌ただしさの中、1人だけ落ち着いた様子を見せる女性が君達の方に視線を向ける。
「こんばんは。初めましての人も多そうだから先に自己紹介をしようかな。
 僕はラサで傭兵をしてるイルザ。『ニーズヘッグ』を組織した傭兵を追ってきたんだ。よろしく。
 生まれ故郷に第二の故郷ともいえるラサの厄介者どもに荒らされるのは流石に見過ごせない。
 ってことで、ラサと鉄帝のパイプ役を買って出たんだ」
 これから少しの間、君達とよく顔を合わせることになる――とイルザは自己紹介を終わらせて。
 ここからが本題、とばかりに切り替えたイルザは、鉄帝北部の地図を広げて、駒を配置して、駒を動かし。
 直線の駒が通り過ぎた場所に×印を記していく。
 やがて駒は二手に別れ、向かう先はそれぞれ1つのマル印。
「鉄帝軍の前線を突破したニーズヘッグの軍勢は堂々と西に進み、今は古代遺跡のチェルノムス遺跡と、ベロリェフスコエを探ってるみたいなんだ。
 多分、なにか良からぬものがあるんじゃないかな?」

「今、鉄帝軍は軍備を再編して反撃のための準備を進めてるけど、それを待ってる間に敵がいま進めてることは終わってしまうはず。
 ふざけたこと始めた傭兵崩れを一緒に倒してほしい。
 だから、今回のお仕事は、鉄帝と――あとそれからラサからの、皆への正式な依頼ってことになる」
 緩やかに彼女は一旦締めくくると、小さくため息を吐いて。
「まあでも、全くもって道理だとは思うんだけどね。
 連合を組んだところで、どうせ仲が悪くて一枚岩になることすら敵わない。
 だったらいっそ自分達の長所を生かして、各々の動きを適切にこなすだけの方が良いっていうのは。
 今回の敵は、それが出来るようになった連合軍だ。気を引き締めていかないと拙いだろうね。
 ヴィーザル戦線はたしかに泡沫戦線ではあったけど、『南部戦線よりも苛烈に戦争が継続している最前線』だから……
 こっちとの戦を知ってる相手が『ちゃんと手を組んだら』強いのは当然。
 これまでの泡沫戦線らしい『適当にやってもなんとかなる』が通じなくなったって考えていいと思うよ」
 最後にそう、イルザは告げた。
「……まあ、それでも。幻想王国に迷惑かけたと思ったら、今度は鉄帝国に迷惑かけることになるとは。
 同じ国に住まう者として、流石にちょっと恐れ入るよ」
 呆れた様子でイルザは再び溜め息を吐いた。

 ※鉄帝国の北東部にて、事件が発生しました。

これまでの再現性東京 / R.O.O

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