PandoraPartyProject

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過ぎた恐怖

「ええっと……その、この度は領域(くに)に住まう巨大な竜がご迷惑を……」
「覇竜領域デザストルの使者が訪れるとは――……
 あれは人智を越えた存在。覇竜領域で最も巨大なる集落の姫君が謝罪することではありませんでしょう」
 静かな声音で告げる『探求の』カスパール・グシュナサフに『亜竜姫』珱・琉珂は恐縮した様子で肩を竦める。
 彼女曰く、練達より逃亡した『怪竜』ジャバーウォックは覇竜領域の上空を過ぎ去っていったのだという。
 イレギュラーズがジャバーウォックを退けたと言う奇跡。『可能性(パンドラ)』の蓄積が彼女達の未来を変じたのだろう。
 琉珂達亜竜種が其れを目にした刹那、その身に宿されたパンドラは特異運命座標(イレギュラーズ)となるべき未来を指し示したのだ。
 故に、彼女はローレットのイレギュラーズ達に『怪竜』が襲った地へと誘って欲しいと頼んだ。
「被害は、やっぱり大きいわよね。流石に竜種……それも七匹も。
 私達は覇竜領域で身を寄せ合って生きているけど、そうした事態に直面することはほぼ無いわ」
「と、仰ると?」
「『オジサマ』――私にとっての育ての親だわ――が仔竜を育て、フリアノンや集落には近寄らぬようにと竜種達へと伝える努力をなさっていたの。
 ああ、けれど、普通のヒトには出来ないわ。アレは『オジサマ』だけが出来た特殊な……。
 そう、竜種と問題も無く心を通わせることが出来るのはオジサマの強さがあるから……」
 そこまで呟いてから琉珂は「練達では、どのような情報を手に入れているのかしら」と震える声で呟いた。
「君が『オジサマ』と呼ぶ存在はコートを纏った亜竜種の如き紳士ではないかな? 亜竜の姫君(プリンセス)。
 我々は彼を観測したことがあるのさ。その異様さから、我らが母――マザー・クラリスはそれを人類の敵であると判断した。
 君や君の同胞である亜竜種にとって、それは心に傷を負うような恐ろしい真実であるかも知れない。それでもいいのかい?」
 問う『想像』の塔主、Dr.マッドハッターに琉珂は頷いた。
 同胞(なかま)はショックを受けるかも知れない。それでも、聞いて置かねばならないのだ。
「その人類の敵が魔種と呼ばれることも。その中でも特に強大なる存在が冠位と呼ばれることも。
 ローレットの一員になったからには耳にしたわ。私は亜竜集落の長……見習いだけど……知っておかねばならないの」
「君の決心は固いようだね! よろしい――操、説明してやってくれ給え!」
 マッドハッターに話題を振られた『実践の』佐伯 操は嘆息する。
「……ああ。彼は『冠位魔種』と呼ばれる強大な存在であろうと我々は推測している。
 琉珂、君が言う通り『竜種と心を通わせる強さ』を有した稀有な存在が『オジサマ』と呼んだ男なのだろう。
 彼の動向は君たちで掴めているのかね?」
「いいえ。いいえ……。寧ろ、オジサマは帰ってこなかった。
 だから、この件はオジサマが絡んでいると思うわ。それから、練達はもう竜には襲われない、とも」
「それはどうして?」
 操は『練達が襲われない』という言葉に身を乗り出した。琉珂は「推測だけど」と付け加える。
「オジサマ……ううん、竜は自らが知ったる『覇竜領域』ではなくて『練達』を狙ったのでしょう?
 それは今までに無かったこと。領域の竜はほぼ領域から出る事はなかった。なのに、飛び出したと言うことは何か思惑が絡んでいたのよ。
 例えば、此処が『大変な目に遭っていた』から襲われたとするでしょう? 復興を始めてしまえば、付けいる隙は無いの」
「確かに。ならばあの竜は何処に――」
「……ジャバーウォックは深緑か、魔の領域――終焉――に向かって飛び立って行くのを見たわ。
 私と里長代行は『暫くは西の地が騒がしくなる』と睨んでいるの。その間にも練達は復興の準備をした方が良い」
 付けいる隙をなくしましょう、と琉珂は提案した。
 其れは三人の塔主にだけではないローレットの一員でもあるあなた 達にも向けた言葉だ。
「恐ろしいときが過ぎたのならば、次に待っているのは幸福じゃないと辛くなるじゃない?
 だから、私は『楽しい時間』が過ごせるこの地をもう一度みたいと思う。だから……竜が過ぎ去った地での復興を手伝わせて欲しいの」
 それが新たに可能性と使命を帯びた亜竜種の在り方だと思うと琉珂は自信満々に微笑んだ。

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