PandoraPartyProject

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<仏魔殿領域・常世穢国>

 深い森。
 他を拒絶する様な久遠なる森にも魔物……いやカムイグラ風に言えば『妖怪』はいる。
 いやむしろこの様に深き森だからこそ、とも言えるだろうか。
 彼らは森に迷い込んだ者達を襲わんとする。
 領域を侵す者への――攻撃が如く。
「……やれやれ。ここ最近、森へ入る者が増えて困ったものだ」
「『困ったもの』? ふっ、よくもまぁそんな事を言う――
 むしろ森に入る者が増えてお前や『彼女』は喜びに打ち震えているのではないか?」
 その、一角にて。
 二つの人影が言を交わせていた――一人は緑髪の老人。一人は軍服の様な衣を纏った男。
 ……玄武の言っていた妖しき人影達であろうか。
 両者は危険な森の中にいるというのに心を乱している様子は一切見られない。いつ妖怪達の牙が剥くとも知れぬのに――
 だが、妖怪らが彼らを襲う気配はない。
 むしろ……妖怪達は彼らの近くに鎮座し周囲を警戒している様子だ。これではまるで……
「どうかな――事が大きくなればやがては『今代の帝』の耳にも届こう。
 ……或いは瑞の耳にもな。事を知れば瑞は悲しむやもしれぬ。中々本意ではない所だ」
「『そんな事』はとうの昔から分かっていた事ではないかね。今更に、感傷と言った所か?」
「そうではないがな……それよりも、そちらはどうか?」
「あぁ。妖を退け、尚に威勢と勇気を持って立ち向かって来た輩は私が幾人か捕らえた。
 今頃は『彼女』の下でその魂に触れられている所であろう」
 まるで――彼らを護る様に布陣している様な――
 その渦中にて二人は悠々と言の葉を紡ぎ続ける。
 老人は柔和な表情を保ちながらも、どこか悲し気な感情の色を目の端に滲ませ。覇気ありし男の方はこれからも侵入者が増える様な事態を心待ちしているかの様に――口の端を吊り上げるものだ。
「まぁ全て捕らえる事が出来た訳ではないがね。
 中々に面白い者らもいたよ。
 陰陽に連なる術士符術を用いる三つ目者『空』なる若人……
 互いに手の内の限りを尽くす死戦ではなかったが、皆実に配下に加えたい者ばかりだった」
「――逃がした者がいるのか?」
「人聞きの悪い事を言わないでほしいものだ。また相まみえる約束をしただけの事」
 ククッ、と含み笑いをする男――があらば、老人の方は額を手で押さえる仕草。
 どうやら久遠なる森へと訪れる予定があるのは神使達だけでは無い様だ。
 巴の様に玄武以外のどこぞから依頼を受けたか――それとも偶然か――
 この森の踏破を目指して至った者達がいたらしい。
 ……そして。
「それよりも。我らが此処にて淀んでいる内に外は随分と面白おかしい事があった様だぞ。
 西の大海が踏破。鬼とヤオヨロズ。巫女姫。新しき豊穣の世……
 新生なる風がやってくる。実に、実に――面白いではないか」
「そんなに楽しいかね?」
「ああ『旧き我ら』の下へどのような者達が送り込まれてくる事か。
 『今代の帝』の治世の下で如何な人材が芽吹き、育ち、今を紡いでいるのか。
 彼女も――偲雪の君も、きっと楽しみにしている事であろうよ」

 ※豊穣の地で行方不明者の調査依頼が発生しました――

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