PandoraPartyProject

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最悪の再観測

「――なんたる事だ。まさか、そんな事があり得るのかね?」
 珍しく――と言っていいか知れないが。
 『Dr.』マッドハッター(p3n000088)の声色には『驚愕』の色が混じっている気がした。
 彼の口端から零れる言は独特にして突拍子がない事が多いのだ、が。
「残念ながら事実だと言わざるを得ない。
 既に観測コード『Jabberwock』は再びセフィロトの観測下にある。
 ……ただしセフィロトへとまっすぐに向かってきている存在として、だが
 『実践の』佐伯 操(p3n000225)の紡いだ情報はそれほどのモノであったのだ。

 ――観測コード『Jabberwock』

 それはある『竜種』の事を指している。
 練達は『Jabberwock』を危険視し、常に観測を行っていた……
 その存在がどこに留まっているか。どこに行こうとしているか――
 練達の貴重なリソースの一部を注ぎ込んででも『Jabberwock』は危険だと。
 ……しかし先日、その反応はロストしていた。
 理由としてはR.O.Oにおける騒動だ。あの一件でマザーが反転しかけた事もあり『Jabberwock』の観測どころではなくなったのである。結局R.O.Oの件自体はイレギュラーズの活躍により解決を迎えた訳で、こうして各種機能が少しずつ取り戻されている……その矢先に判明した事。

 『Jabberwock』はセフィロトへとまっすぐに進撃してきている。

 誤情報ではない。何度も、何度も確認したが間違いないのだ。
 混沌世界最強種族の竜が――向かってきている。
 穏やかな日差しが天より降り注ぎ、緩やかな風が頬を撫でる――落ち着いた昼下がりの時間に齎された情報の、なんと宜しくない事か。
 紅茶を飲むマッドハッターの手が止まる。思わず口元に指を合わせて。
「ふむ。理由は……なんだと思うかね?」
「さて――今まで観測中に『Jabberwock』がこうも明確に動いた事はなかった。偶々練達が異常事態に陥った時に偶々何かあって、偶々こちらに向かってきている……という可能性がない訳でもないが」
 しかしあまりにもタイミングが悪すぎると――マッドハッターの問いに操は答えるものだ。
 観測がいつも通りであったのならばもっと早く『Jabberwock』の接近には気付けた。
 練達がいつも通りであったのならばもっと早く『Jabberwock』の対応策が取れた。
 或いは奴が動くのがもう少し後であれば再び奴を観測下に置く事が出来ていただろうし。
 或いは奴が動くのがもう少し後であれば練達の爪痕も癒えていたかもしれない。
 けれど『そう』はならなかった。
 最悪のタイミングで最悪の存在が襲来する。
 ……あまりにも、練達という国そのものにとっての危機が過ぎる。
 それにはたして『何らかの意思』が介在している可能性がないとは……
「――だが最早何を言っても始まらん」
「ああそうだね――マザーは如何に?」
「既に情報は彼女と、彼女の兄にも伝わっている。防衛線の構築が急ピッチで進むぞ」
 だがもう思考に時間を割いている暇もないのだと。
 観測された情報によれば『Jabberwock』は周囲に亜竜――つまり竜とは異なるが姿は竜に近しい……例えばワイバーン――などの存在を多量に引き連れ進軍してきているらしい。『Jabberwock』一体を止めれば良いという事態ではないのであれば不調なれど練達を統括するマザーの協力が必要不可欠だ。
 ……いやそもそも仮に『Jabberwock』一体だけだったとしても竜種の能力は想像を絶するモノがある。絶望の青で出逢った滅海竜リヴァイアサンはその中でも別格の存在だとしても、だ。
 そも、どうとでも対処できる存在なら練達が常に観測下に置いていたりなどしない。
「期限は?」
「約数日。正直、ダブルフォルト・エンバーミングの被害は未だ残っている。
 ……どれ程満足な防衛線を構築できるかは分からんな」
「なら――そうだね。やはり今回も愛しのアリス達に頼らせてもらうと……しようか」
 至る存在。それは災厄か?
 危機を乗り越えた筈の練達に、再び隕石が如き脅威が――襲来せんとしている。
 故にと、マッドハッターは紡ぐものだ。
 愛しのアリス達――

 かのR.O.Oの事件をも解決した特異運命座標達と共に、この大災を乗り切らんと……

 ※緊急事態です! 練達に『Jabberwock』なる存在が向かってきています!!
 ※覇竜領域デザストルの世界観が更新されました!

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