PandoraPartyProject

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道化師の閉幕

 ――崩れる。
 ピエロの戦線が。終焉獣ベヒーモスの到来を待っていたピエロの、戦線が……
「――じゃあな『俺』よ。散々しつこかったぜ、マジでな」
 パラディーゾ・ダリウスは援軍勢本陣突入の最中にダリウス本人らに撃破され。
「辛いかもしれないわよね、自分で選ぶのって。何も見えない所に飛び込んでいくような感じ……でも――生きるって、そんな選択の連続なの。その選択を自分で選び続ける事が――『生きている』って事なの」
「ええそうです。悩み、悔やみ、それでも進んでいくのが……生きている証ですよ」
「だからイデっち――またね」
 パラディーゾ・イデアはエイル、タイム、イデアの言に感化され――離脱した。
 その結果として軍勢の動きは大きく鈍り、ピエロもまた……

「ぬ、ぉ……ぐぅぅぅう!!」

 遂にその身が倒れる時が――やってきた。
「残念だったな道化野郎、前を向いた人間の強さを知らなかったお前の負けだよ」
「バンビール……アンタらの公演もそろそろ閉幕にしよう。
 俺はよ……アンタの楽しいサーカスが見たかったぜ。
 ステージの上で道化をやるアンタの姿をな……」
 Dr.Sの治癒が戦線を支え、天川の一撃がピエロの身へと深く刺さり。
 バグNPC特有の異常なステータスを持つピエロと言えど――耐えきれなかったのだ。
「敗因は、滅びたくは無いと。滅ぼすわけにはいかないと。
 世界が抗い続けた結果だな――そして――
 これがお前さんの愛した世界という事だ、とは思わんかね?」
 更には流雨の言うように各地の戦況変化から援軍が集り、ピエロの軍勢を抑える事が出来たことも大きい。
 伝承や翡翠、正義からの援軍が終焉獣や大樹の嘆きを攻撃すれば、戦線に隙が出来る。
 ……そして何よりイレギュラーズがその隙を見逃さなかった。
 ピエロの下へと至った多くの者達がいたからこそ――遂に刃が届いたのである。
「何かに作られたからなんだっていうんだ。
 君は君だし、大切な人は大切な人だろ。生きてるだろ。
 『同じ立場の人達や君の大切な人達ごと』世界壊そうとするのか馬鹿!
 分からず屋の……大馬鹿野郎――――ッ!!」
 ピエロはただ、自分の存在をどこまでも残し続けたかった。それは分からないでもない。しかし、全てを巻き込んでの自殺紛いの事など――ナハトスターは絶対に認めがたい事であれば、叫ぶものだ。
 ピエロは、大馬鹿者だと。
 ――しかしそれを、心のどこかで分かりながらも。
「――喧しいッ!! 私は……最早ねぇ、私は止まれんのだ!!
 『知ってしまった』のなら最後まで突き進む! どこまでも――どこまでも!!」
 ピエロは止まれなかった。
 知ってしまったのなら……この世界がゲームであると……
 創造主の気分一つで電源が落とされてしまう世界であると。
 それは外の世界もそうではないという保証などどこにもないと述べる者達も無論いた――
 きっとそれが正しいのだ。
 けれど……最早バグにより狂ったピエロには最後まで突き進むより他はなく……
「どんな理由や心境があろうとよ、やっちまったもんは二度と取り返せねぇ。
 ……どうせ、俺の行き先もアンタの行き先も地獄だろうしなァ。
 てめぇは先に行ってろ。俺は――まだやる事があるンでな」
 故に、ヨハンナがピエロの身へと――最期の一撃を紡ぐ。
 最早止めてやる事しか出来ないのだと……そう思いながら。
「ぁ、ぁあ――これで、終わりですか。ああ、無念だ――
 現実に爪痕を――私達が生きていた証を――どうしても――」
「……ばいばいぴえぴえ。もしもう一度。来世ってものがあったなら……」
 その時は、友達になろうね。
 本物のきうりんは紡ぐ。
 羽交い絞めしてでもこの世に縛り付けてやりたかった、道化師の事を……

「……カーテンコールだよぉ、バンビール」

 さすればエイラは見送る。道化師の終わりを。
 公演の終わりを。
 ――彼の続きが無い事を惜しみながら。それでも。
 最後は沢山の沢山のヒト達に見送られて。
 道化の生は終演を迎えるのであった……

 ※<ダブルフォルト・エンバーミング>le voeu du clown……が決着を迎えたようです……!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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