PandoraPartyProject

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イベント『帝都星読キネマ譚』

 ――エンドロールが流れて行く。

 モニターを眺めながら陽田 遥(p3n000155)は「はああ」と大きく息を吐いた。
 現実サイドにも侵食を見せたこのイベントでは希望ヶ浜を巻込んで未曾有の事態となった。
「何とか生き延びましたねぇ」
 椅子の背もたれへともたれ掛かった遥に頷いたのは希望ヶ浜に拠点を置く澄原病院の院長、澄原 晴陽(p3n000216)であった。
「R.O.Oからの干渉に於けるマザーを見ていれば練達の状況は変わらずですが、
 一先ずは『怪異(モンスター)』騒ぎからは難を逃れたと言うべきでしょう。
 これもローレットのお陰ですね。
 ……我々、希望ヶ浜からすれば彼らは『受け入れざる異質な存在』であったのに」 
 そう呟いた晴陽に遥は「まあ」と呟いた。
 希望ヶ浜は楽園だ。異世界召喚などと銘打てば聞こえは良いが、突如として訪れた強制召喚によって自身の常識全てが塗り変わった事に耐えられなかった人々の安寧の地。
 ファンタジーといった要素を全て排除して、仮初めの日常を取り戻すが為に作られた再現性都市。
 2010年の東京をイメージし、その文化は『現代』を追い求めるように進化する。
 ローレットのように多種の人種を許容し、冒険者を輩出する場所は希望ヶ浜にとっては異質だったのだ。
「でも、随分と馴染んだでしょう? センセ」
「そうですね。彼らがいなくては、私たちは生き残っていない。
 戦う術を持たない我々は、死にゆくだけでしたから……彼らに感謝しなくてはなりませんね」
 晴陽はモニターに映し出された『終』の文字を見つめて切なそうに嘆息した。
 どうやら、このイベントでは彼女の弟は見つけられていない。同時に進行している『Closed Emerald』で弟・龍成の姿が見られたというのだから現時点では情報待ちだ。
「あ、切り替わった」
 遥がモニターをいじれば、其処にはR.O.O内のイレギュラーズの姿があった。
「お疲れ様~。イベントクリアの文字がこっちで観測できたけど、そっちではどうかな?」
「ああ、此方でも確認出来たぜ。しかし……大規模な戦だったなァ。現実側は侵食の具合はどうなんだ?」
 問いかけるヨハンナ(p3x000394)に晴陽は「問題ありません。『練達の影響』を除けば元の通りです」と返した。
「練達の影響、か……。一先ずは、豊底比売の奴を倒せただけでも良しとするか」
「そうだね。こちらも玄武を止めることが出来て良かったよ。ヒイズルには神霊の力が必要なはずだ。
 ゲームと言えど、あの世界は続いていくから……これから復興も行われるみたいだよ」
 マーク(p3x001309)は市街地の様子を思い返す。戦の舞台となったこともあり戦乱の傷跡は生々しく残されていた。
「そういえば、『イベント』をクリアした際に頂戴したチケットがあるのですが――」
 星羅(p3x008330)がモニターに示したのは『イベントクリア:トロフィーゲット』と書かれたR.O.O内のメッセージであった。

 ――おめでとうございます!
 イベント『帝都星読キネマ譚』をコンプリートしたためトロフィーを獲得しました!

 この世界がゲームである事を厭と言うほどに思わせる。星羅は不可解なそのメッセージを読み上げて首を傾いだ。
「私からも見えるよ。トロフィーかあ……うん、私が権利を貰っておくね。
 これを使用すれば今、ログアウト出来ないでいるイレギュラーズを解放できるかも!」
「本当ですか!?」
 星羅はほっと胸を撫で下ろす。複数のイレギュラーズが閉じ込められている現状で、此は嬉しい知らせだ。
「あれ、でも続きが――」

 ――『 翡翠 では もっと お友達を増やしたいわ? ねえ、ピエロ』
 ――『 そうね そうね そうだわ アリス! もっと もっと もぉ~~~っとね!』

「……問題はまだまだ山積みのようですね」
「そう、だね。引き続き私はモニターの監視をしてるよ。鋼鉄に、翡翠に、正義に……。
 活発な動きを見せているR.O.Oだけど、もうそろそろ何かあっても可笑しくない。
 愉快犯なピエロとアリスは足取りを掴みやすいけど彼女たちが前線で遊んでいると言うことは、その裏で何かが起ってる可能性だってある」
 遥の言葉に誰もが不安を覚えずには居られない。

「でも、今回の勝利は皆のお陰だね。希望ヶ浜を護ってくれてありがとう。
 それからゲームの中だって諦めないでくれてありがとう。この『エンディング』は皆の尽力のお陰だよ」

 ※<神異>の結果により、クエスト達成トロフィーとして、後程デスカウントが少ないログアウト不能者数名に解放権利が付与されます!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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