PandoraPartyProject

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幕が閉じる前に

 夜明けと共に、星読キネマの幕は閉じていく。
 優しい朝の光が昇る寸前。
 ほんの一時、渾天儀【星読幻灯機】が映し出す未来の欠片。


 ――『伽羅太夫』
 大戦後も柊遊郭で最高級花魁として、また情報屋としてあり続けた。



 ――『小金井正純』
 天香家に仕える巫女として、長胤や蛍、そしてその嫡子の成長を見守った。



 ――『楠安奈』
 夫、忠継に託された天香に仕え、生涯守り続けたという。



 ――『アーマデル』
 蛇巫女はクロウ・クルァクと白鋼斬影を連れて、燈堂に身を寄せた。
 故郷との交流も続いているらしい。



 ――『ヴェルグリーズとMuguet』
 霞帝の元で静かに時を重ねている。
 ヴェルグリーズのひび割れた刀身をMuguetは案じている。



 ――『鬼灯と章』
 変わらず御庭番衆『暦』として日々、任をこなしている。
 護衛の流星と共に穏やかに過ごすのが章の楽しみであるそうだ。



 ――『滝倉 織』
 滝倉の巫女として神霊の声を聞きながら帝都の復興に尽力している。



 ――『火乃宮明瑠、火乃宮恵瑠』
 織の側仕えとし、帝都の復興に尽力している。
『二人で一つ』と宣言し、二度とは別たれぬ事を誓った。



 ――『黄泉津瑞神と白薬叉大将』
 黄泉津に加護を与えながらのんびりと過ごす日々。
 今日もキュウリは美味しいですね! 瑞さま!



 ――『遮那と天香瑠々』
 霞帝の温情でセイラーに身を寄せる事となった遮那を瑠々は時々訪ねてた。
 ただの遮那となってしまったけれど、兄である事に変わりは無い。
 瑠々は世界を旅しながら知見を広げているらしい。



 ――『遮那と朝顔』
 夫婦となった遮那と朝顔は幸せに暮らしていた。
 天香に居た頃よりも、随分と小さな家に住み、市井の民と同じように働いて。
 朝顔の美味しいご飯を食べるのが何よりの幸せだと遮那は語った。


 ――『三年後』
 遮那は祈っていた。
 闇を纏うと覚悟を決めた自分が神に祈る事があるとは思っていなかった。
 されど、そんな些細な事はどうでもいい。
 どうかどうか無事にと祈り続けていた。
 聞こえてきた『産声』に遮那は顔を上げる。
 その時の安堵と嬉しさは言葉に出来ぬ程のものだった。

「朝顔――!」
「遮那さん……ふふ、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」
 やつれた朝顔の頬を撫でれば、無事に生きていてくれた事に涙が溢れる。
 彼女の腕の中には布にくるまれた赤子が元気に泣いていた。
「大儀であったな朝顔。元気な子だ」
「本当に……生まれてきてくれてありがとう」
 我が子を慈しむように抱きしめる朝顔が聖母のように美しく見える。

「名前は何が良いかの……」
「それは、もう決めてあるんです」

 天色の瞳を細め、嬉しそうに微笑んだ朝顔が紡ぐ名。
 遮那と朝顔の絆の証。

「昼顔と――」

 


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