PandoraPartyProject

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神異

 これは『現実』と『虚構』からの同時侵略である――

 片や、希望ヶ浜では佐伯製作所が安定的な電気供給やライフライン維持を行えず停電が続いている。
 澄原病院では夜妖憑き達の患者を一時取り止め『神異』について対策を講じる事となった。
 院長の澄原 晴陽はと言えば、弟・龍成の現状を心配しR.O.Oへと参加するイレギュラーズに助けを求めたいのが本音であろうが『彼の帰ってくる居場所の維持』が為にも希望ヶ浜と言う『楽園』を死守せねばならない。

 片や、Rapid Origin Onlineでは『ログアウト不可』という状況に陥ったイレギュラーズが存在している。
 彼らに『どのような影響』が及んでいるかを知るのは姿を現したジェーン・ドゥ達の特殊イベントで探る他なさそうだが、イベント告知の報酬欄を見れば一時の帰還は叶う可能性もある。
 佐伯操に言わせれば「ログアウト不可という『バグ』がデータに何を及ぼすかは分からない」との事だ。
 ログアウト不可の状況が解かれたとて『ログアウトが不可能』であった事実は変わらず、何らかのデータ採取が行われた痕跡も存在している。
 だが、其方ばかりに構っていられないのが実情だった。

 Rapid Origin Online 3.0 新規イベント開催のお知らせ――帝都星読キネマ譚<神異>開催決定!

 文字列を眺めるだけなら楽しげだ。だが、これは『ゲームの内部だけ』の話では終わらない。
 再現性と称された架空都市である希望ヶ浜に真性怪異が侵食してきたのだ。ゲームの内部で力を蓄え、外部にリンクし染み出してくる。
 現時点で真性怪異『神異』は異世界に本来ならば神咒曙光に存在しているはずの『高天大社』が姿を顕したのだ。

「澄原先生、ご覧になりましたか? どうやら新規イベント『帝都星読キネマ譚<神異>』では、成功度でイレギュラーズの奪還が叶う可能性がある」
『ええ。解放を急ぎ叶えたいですね。龍成も……いえ、彼のことは皆さんに任せて、今は皆さんの奪還ですか。
 ……ログアウト不能状態で、どのような影響が出るのかは佐伯先生は解析が完了しているのでしょうか?』
「いいえ……実践の君は『バグ』がデータに侵食し、そのデータが何らかの活動を起こすのではと推察していましたが。
 現時点で確かな事はいえません。ですが、『ネクスト』の出方を見ると多くのイレギュラーズのデータを欲しているのではないかと」
 ビデオ会議で希望ヶ浜との作戦会議を行っている月ヶ瀬 庚は頭を抱えた。
 澄原 晴陽は医療知識を生かしてログアウト不可となっているイレギュラーズの肉体の管理を行いに希望ヶ浜と実践の塔を行き来している。
 練達側は出来る限りのバックアップを約束しているが――それでもイベントクリアには彼らの力添えが必要不可欠だ。
『……イレギュラーズに協力の要請を行いましょう。希望ヶ浜も、R.O.Oもどちらも練達だけではクリアできません。
 このまま真性怪異を放逐している訳にはいきません。私達希望ヶ浜にとってはこれは都市存続の為に必要不可欠です。
 全力を持って解決に尽力し……その結果、イレギュラーズを苛む状況の打開に力を添えることをお約束します』
「神使も喜んでくれる事でしょう。カムイグラの動乱を救った彼らの戦いを間近で見られる事に聊か興奮を禁じえないのは確かです。
 ですが、見知ったかんばせが見知らぬ神に侵食されている様はなんとも許せない。
 ……神使に協力を仰ぎ、直ぐにでも解決へと導きましょう。『真性怪異』などの好きにはさせませぬ」

 ディスプレイの中で躍る文字が我々を嘲笑う。
 ――『<神異>』のクリアを行わねば、平穏など何処にも存在しないとでも言いたげにイベント開始を告げながら。

これまでの再現性東京 / R.O.O

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