PandoraPartyProject

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祈りを込めて

 ――星々を視るのは久しい事だった。

 ファルベライズ遺跡。その奥より現れた少女、イヴは清き空気を喉の奥へと運んでいた。
 彼女はかつて存在した大精霊――ファルベリヒトの遺したモノを護る一族。
 ……その、最後の者だ。
 ファルベリヒトの力が『色宝』として分散した折、かの精霊に関わっていた者は、一部はイヴの様に守護者としての道を歩み。また一部はパサジール・ルメスとして世界各地へと旅立っていった。
 結果として永い時の果てに――守護者の一族は段々と数を減らしたのだ。
 ファルベライズ遺跡が、人に知られぬ事に成る程砂に埋もれた頃から……
 それでもイヴは地下遺跡の扉の奥にて大精霊の残滓たるこの地を見守り続けた。
 それが一族の使命でもあったから。しかし。
「……『博士』が来てから変わってしまった」
 口端より零すはかつての折を思っての事。
 博士――かつて妖精郷を陥れたタータリクスとも関わりのある人物だ。無論、それは地下に籠っていたイヴにとっては知らぬ事情であるが……『博士』はアカデミアなる集まりに密接に関係している者であり、彼によって人生を狂わされた者もいる。
 危険な人物だ。そして実際『博士』がファルベライズ遺跡の中枢部を見つけてから、流れは変わりだした。
 錬金術によるモンスターが溢れ始め、古代より存在していたゴーレム達は『ホルスの子供達』という存在になり、紛い物の死者蘇生が如き事象をその身に携えている。
 醜悪。
 こんな者達が跋扈する世界はファルベリヒトの望む様なものではない。
 あの方が生きておられたのなら、もしかしたら憤怒が如き感情を抱いていたかもしれぬ。
 少なくとも、この地を守護する者として彼の行いは許しがたいものだった――が『博士』はいずこへ消えたのか、行方は一切知れなかった。先述した様に歪なる存在の増えた遺跡にはもう安寧はなく……その脅威は、己一人ではもはやどうしようも出来なかった。
 だが。
「イレギュラーズ達が、神に選ばれし者達が訪れるとは……」
 これは天啓なのだろうか。
 地上の者達がここを発見し、遺跡には新たな風が舞い込んで。
 遺跡最奥に到達するべく歩みを進めている者達もいる――

「……ファルベリヒト様」

 故にイヴは天へ祈るのだ。大精霊へと届く様に。
 『色宝』はファルベリヒトの遺した力の残滓。
 かつて愛すべきこの地を襲った、恐怖の象徴たる魔物を撃退した際に砕けた――彼の全て。
 それを悪用しようという者もいるが。
 『博士』や盗賊団の目論見を砕くべく活動している者もいるのだ。
 だからどうか健やかにお眠り下さいとイヴは祈る。
 ――星々の輝きの下で。
 かつて大精霊の愛した大地に――祈りを捧げながら。


 <アアルの野>の探索が始まっています――

*混沌世界に新たな敵性存在『怪王種』が世界中で発見、報告されました。

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