PandoraPartyProject
お花見ボイスリプレイⅡ
電脳世界。あるいは仮想世界と言うべきだろうか。ROOの中に作られたお花見会場にて。
「「お花見の時間だよー!
何だか人めっちゃいっぱいで良く分からないけど、とりあえず騒いで楽しめばいいんじゃない!
ほらほら、そこにいる君もこっちに混ざって一緒に楽しもうじゃないか!ご飯に飲み物持ってきて―!」
目一杯に大はしゃぎするメネロー (p3x010430)。
その一方でシフルハンマ (p3x000319)はぼんやりと桜を眺めていた。
「例え春が来ても……俺にとっての冬はまだ終わっていない……早く春を招きたいのに……
なんとかして、この世界の俺とメープルに桜を見せてやりたいものだな……ROOの妖精郷と一緒に……
……よし、頑張って、出来る事をしよう」
いま『表の世界』で起きている問題を思い出し、静かに決意を固めるかのようにため息をついた。
一方その頃、幻想王国のお花見会場では無名偲・無意式 (p3n000170)と金枝 繁茂 (p3p008917)がカツンと木のカップで乾杯をしていた。
「当たり前のように桜が咲いて、当たり前のようにみんなが集まり笑い合う。そんな当たり前が私は嬉しい。
いつか私に明日が来なくなっても、せんせいと過ごした今日があるなら、私はみんなの当たり前を守っていけます」
酒にくちをつけ、しんみりと呟く繁茂。無名偲校長はそんな横顔を見ることもなく、ただはらはらと落ちる桜の花びらを見ていた。
「人は常識と共に産まれてこない。当たり前のことも、信じられる明日も、作ったのは間違いなく先人達だ。そしてこの場合……繁茂、先人とはお前のことだ。
たとえ俺やお前が死んでも、俺たちの明日は来るのかも知れないぞ」
「死した者たちの明日……ですか」
落ちた桜は、落ちた桜だ。ある意味それは死んだと言って良い。けれどこのあとも、あるいは来年も、もしかしたらずっと先の未来でも、そのことを思い出すかもしれない。
そんな『明日』を、『当たり前』を繁茂たちは確かに作っている。それを、どこかの誰かが謳歌しているのだ。
フッと笑い、二人は再び酒に口をつけた。
そんな後ろで、カメラに向かってピースピースしまくる天閖 紫紡 (p3p009821)がいた。
「あ、はい、お花見最高ですぅ~
昼間からお酒のんでまぁ~す
将来の不安も何も感じなくなる、
これ飲んでるときが一番幸せなんでひゅよ~」
バチバチにできあがっていた。
バチバチにできあがっていたし着ているTシャツには『ちくわアザラシ』って書いてあった。ちくわの穴から子アザラシの顔がにゅって出てるシュールな絵と共に。
こういうとき、止める者とスルーする者がいるものだが、いっそ乗じてしまう者までいるのがお花見会場というものである。
「もぐもぐ……ッカーー! うめえ! 綺麗な桜を見上げて食う団子は最高だな!
ほんと綺麗で……
……見せてやりたかったなあ。あいつにも」
新道 風牙 (p3p005012)は一緒になって飲み食いし(ちくわアザラシのシャツも着て)騒いでいたが、ふとしんみりした顔になって散りゆく桜を見上げた。
が、すぐに思い直したようでぷるぷると首を振る。
「な、うまいよな! 団子! 花より団子ってな!」
話をふられたのはニル (p3p009185)である。
ニルはこくこくと頷いて三色団子を翳した。
「ニルは、お花見大好きです
三色団子、桜餅……桜のお酒もあるのですよね
え? 花より団子……ですか?
ニルは、お花もお団子も好きですけど
みなさまと一緒にいられるのが、とってもとっても大好きです」
にこりと笑って言うニル。風牙は『だよなー!』とちょっとだけ大袈裟に叫んでニルの背を叩く。
その横では、ソア (p3p007025)が両手にお団子を握ってパクついていた。
「もぐもぐ……ごくん……ごちそーさまっ
ああ、美味しかったー
うーん、お腹いっぱいになったら眠たくなってきちゃった
むにゃ……食べて直ぐに寝ると牛になるって?
そんなの、ボクは虎だから、へーきへーき
ふぁーぁ……それじゃあおやすみなさい
すー……すー……」
食べるだけ食べたら眠くなったようで、シートの上でごろんと転がって眠り始める。
昼からできあがった酔っ払い。眠る虎(やがて牛になる)。ステレオタイプとすら思えるほど良い具合にお花見会場らしくなってきた所で、囲 飛呂 (p3p010030)はゴホンと咳払いをしてユリーカ・ユリカ (p3n000003)の前へとやってきた。
「ンンッ。‥‥ゆ、ユリーカさん、お花見の準備してくれてありがとうな。さすが情報屋。楽しませてもらうよ。‥‥その‥‥ゆ、ユリーカさんが一緒なのも、俺はすげー嬉しいからな!」
きっと何十回と頭の中で(ともすれば口にすら出して)練習したであろう台詞を言ってみると、飲み物やなにかの補充をしていたユリーカがぱちくりとしながら飛呂の顔を見た。
見つめ合うこと、コンマ五秒。すぐにユリーカの顔はぱっと明るくなり、そして胸も張った。(それでも平らだった)
「ふふーん、そうでしょうそうでしょう!
何と言っても、ボクはユリーカ。『天才情報屋』のユリーカですから!
飛呂さんも、どうぞ楽しんでいってくださいなのですよ!」
大召喚から四年。天才情報屋を自称していた新米情報屋は、自他共に認めるベテランとなっている。見た目にも変化があったようで、以前よりも髪が伸びまたすこしだけ『母』に近づいていた。
シャーラッシュ=ホー (p3p009832)とレーツェル=フィンスターニス (p3p010268)が並び、はらはらと散っていく桜を眺めている。
「……ふむ、やはりヒトの欲求はまだまだ解らんな。碌に動かん花より周りの奴らを眺めている方がずっと面白いだろうに。
……ともかく、改めて感謝するぞ、ホーよ。貴様の提案のお陰で中々楽しい日になりそうだ」
「どういたしまして、レーツェル殿。
お気に召していただけたようでなによりです。
人の一生は短いですからね。
故に彼らは花のような儚いものに共感を覚えるのかもしれません。
私にはその感覚は分かりかねますが」
二人の表情はまるで変わらない。が、レーツェルの目だけが動きシャーラッシュの横顔を見た。ややあってから、シャーラッシュの首が動きレーツェルを見る。
「そういうものか」
「ええ。そういうものらしいでのです。毎年、あらゆる詩人が桜を題してそう歌いますから」
わざと皮肉っぽく言い直したが、どうやらレーツェルはそのまま受け取ったらしい。
「動物よりもその標的を見よ……か。なるほど」
そこへ、ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン (p3p000916)がたかたかと会場入りする。
仲間達と分けるためのサンドイッチが入ったらしいバスケットを抱えているが……それだけではない。
「やったー着いた、公園広場!
お寿司に料理にお酒にジュース! 色々楽しむよー!
皆の話も聞いてみたいし、僕も話してみたい。
何より…猫いるかな? 猫ー! ファミリアーで召喚!
可愛い猫を愛でられる花見っていいよね!」
バスケットからスッと取り出したのは猫用の缶詰である。カキャッという缶詰を開ける音を聞きつけたのか、馴染みの猫がすごいダッシュで現れる。ファミリアーで召喚したのか猫缶で召喚したのか分からない速度である。
よーしよしと言いながら頭をなでまわすヨゾラであった。
静かな並木道。アーマデル・アル・アマル (p3p008599)と冬越 弾正 (p3p007105)が並んでベンチに座って居た。
「花見か……賑やかだな。
……弁当は持ち寄りだったな、ちゃんと用意してきたぞ、弾正。
作ったのは店長だから安心してくれ。人類の食べ物だ。
俺は彩りを考えて詰めて……光った?!
何故……あいつは手を出してない筈なのに…」
バスケットを開くと突如16万色に光り始めた中身。鳴り響く謎のBGM。首を回す近くのインコ。
弾正は眉間に指を当て、一度空を見上げる。
「イシュミル殿の息吹を感じる弁当だな。きっとアーマデルの成長を案じてなのだろう。
主役の桜を喰う勢いで16万色に光る弁当というのは驚きだが、ありがたく戴こうか
まずはこのゲーミング唐揚げはどうだ? ほら、あーん」
だが、このくらいは日常茶飯事だ。弾正はフッと笑い、付属のフォークで唐揚げ(16万色)をとると、アーマデルの口元に翳した。
僅かに頬を赤らめるアーマデル。
彼は苦笑し、そして口を開いた。