PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

I got a "Human nature", but...

I got a "Human nature", but...

 魔種・タータリクスとブルーベルによる妖精郷の蹂躙は、妖精たちにとっても、深緑の幻想種達にとっても寝耳に水の事態であった。
 あまりに唐突かつ電撃的に行われた侵攻を止めるすべは彼らにはなく、ローレットが事態を察知した頃には妖精郷の門(アーカンシェル)は破壊され、妖精郷では女王・ファレプノシスが幽閉されたうえでエウィンの町が蹂躙されたのだ。
 ローレットは大迷宮・ヘイムダリオンを踏破し妖精郷へと進軍し、辛勝。ファレプノシスとエウィンの町を奪還。以て妖精郷の異変解決の第一段階をクリアしたと思われたが――不安要素は多々、存在した。
 ひとつ、魔種達は妖精城アヴァル=ケインへと撤退し、散発的にエウィンへと侵攻をかけていること。
 ふたつ、エルシア・クレンオータ(p3p008209)がとばりの森の攻防にて魔種・“忘却の母”の呼び声と忘却魔術の影響を受け、消息を断ったこと。
 みっつ、複数の戦場でアルベドが戦闘を放棄し、失踪したこと。
 戦局を鑑みれば決して無視できる要素ではない。イレギュラーズは、再度の戦いを想定し準備を整える必要に駆られるのだった。

 痛い、痛い、頭が、心が――。
 エルシアはわずかに焦げ跡の残った服をそのままに、とばりの森の中をさまよっていた。
 激戦にあって傷ひとつない肉体は仲間の助力あってこそ。が、思い出してしまった過去の残滓を振り払うことはできないでいる。
 炎と悲劇と狂気と絶望。魔種になる前、最後に見た母の顔が頭から離れない。仲間を蹂躙し、自らを襲ったあの女性が母親だとは思いたくない。だが、暴かれた記憶は誰より何より鮮明に、あれが母親であると突きつけてくる。
 喉を開き、声を出そうとした。助けを求めようとした。だが、喉はひゅうひゅうと乾いた音を鳴らすのみで、声を発することはなかった。
 何者か、何事かに祈りを捧げようにも、魔力は枯渇し、大地に満ちるそれは自らへの循環すらも拒否するようで。
 ……よもや自分は、魔種になってしまったのではないだろうか?
 何もかもを忘れたいという身勝手な願いが母を魔種に変えたなら、忘却を暴かれることは正しく呼び声への応答だったのではないか?
 恐怖が頭をもたげた時、彼女の心に溜まった澱は吐瀉物として吐き出された。
 最後に食事をしたのは何日前だっただろう。僅かな胃液のみがせりあがったそれを地に撒き散らし、エルシアは膝を付き、草の上に倒れ……ようとした時、その肩を抱く影があった。
「あなたもイレギュラーズなのね。……だったら、こんなところにいていいはずがないわ」
「…………」
 だれ、と聞こうとしたが声は出なかった。涙を流しながら、しかしとても優しい笑みを浮かべる彼女を、エルシアは知っている気がして。そこで、意識が途切れた。

「……何故お前はここにいる。イレギュラーズを助ける理由なんてないはずだ」
「あなただってそうでしょう。そして、“あなただってそうなんでしょう”? 私と同じ。イレギュラーズに会って、オリジナル(あなた)を見て、知らない自分を知りたくなった」
 とばりの森を抜け、アーカンシェルに至った白い影――アルベド・タイプ“ラヴ”は、同じタイプ“マルク”を見て涙を拭った。
 腕に抱いたエルシアに向けられた慈しむような視線は、造物主が企図したものではない。マルクのアルベドは訝しんだ。が、自分も似たようなものを抱えている。
「私は返したいものがあるの。ファルカウに向かうわ。……生き先は一緒でしょう? 行きましょう」
「……わかった」
 その夜、二人のアルベドが姿を消したことを造物主たるタータリクスは知らない。
 知っていたとて、造反者が排除されたとだけ聞いていただろう。

「……少々、信じがたいですね」
 大樹ファルカウ・アンテローゼ大聖堂。
 深緑の主リュミエ・フル・フォーレは、横になって寝息を立てるエルシアと、両腕を(便宜上)拘束されたアルベドとを交互に見て、深い息を吐く。
 ファルカウに2体のアルベドと動けなくなったエルシアが現れた時、ルドラは真っ先に二人のアルベドを射抜こうとした。しかし、タイプ“ラヴ”はエルシアの治療とタイプ“マルク”との交渉を条件に自らのコアを引き抜き自壊。フェアリーシードとなっていた妖精はかろうじて息を吹き返し、アルベドとなっていた間の――こと、オリジナルとの戦闘から離脱して今までのことをおぼろげながらに語ったのだった。
 此度の行動はコアである自分の意志ではなく、外殻である『アルベドの意志』であったこと。タイプ“マルク”は、感情を学習しようとしていること。
 にわかに信じがたい話ではあるが、保護対象たる妖精の言葉を無碍にもできない。
「胸に、『嫌で気持ち悪いもの』を持っていますか。それはあなたにとってなんだと考えますか? そんなもの、忘れてしまったほうがいいと、僕は考えるのですが、どう思われますか?」
「…………」
 妖精の言葉が終わるのを待って、“マルク”は堰を切ったように問いかけ、脱力し――今に至る。
 リュミエは『嫌で気持ち悪いもの』の正体を知っている。そして、それを説明するのはイレギュラーズが適任であることも。
 エルシアは救出された時、声を失っていたという。起きた時、万全の状態であるとはとても言えまい。肉体よりも心、それも重篤な問題が横たわっているのは間違いあるまい。
 それに……“マルク”がもたらした情報も気がかりだ。
 曰く、クオン=フユツキは、タータリクスの錬金術を『完成』させようと企んでいること。
 曰く、妖精郷はかつて『勇者王』と『妖精の英雄』によって『冬の王』が封印されたこと。
 曰く、クオン=フユツキは、冬の王の利用さえも目論んでいること。ブルーベルもまたクオンに協力する姿勢を見せていること。
 ファレプノシスが妖精郷から出られず、エウィンの町が散発的な襲撃を受けていることはリュミエも承知のうえだ。
 今、より多くの情報を引き出そうとするなら……イレギュラーズの助けを借りる他はない。
 アルベドに異変が起きるとしたら、それに付け入る隙はあり。
 魔種の侵攻が次のフェーズに移る前に、手を打つ必要もあり――。
 すべては、イレギュラーズ達が彼と会い、エルシアと会い、なにを思うかにかかっている。
 その心の動きを制御することは彼女には出来ない。『制御不能だからこそ、イレギュラーズは自由で強力』なのだ。

 さてそんな訳で。この日、イレギュラーズにはいくつかの依頼が舞い込んでいた。
 まずは深緑アンテローゼ大聖堂へ姿を見せた怪物アルベド・タイプ“マルク”との対話が一つ。
 所変わって、妖精郷アルヴィオンでは、奪還したエウィンを散発的な攻撃から防衛すること。
 ついでにちょっとした『祝勝会』への参加。
 それからエウィンを囲む『とばりの森』に魔種が残した痕跡の調査と、取り残された妖精の救助。
 そして魔種共――と混じるクオン=フユツキ――が目的としているらしい勇者王の軌跡を追うこと。
 こちらは強敵との交戦も予測される危険な依頼であるが――

 なにはともあれ、魔種が根城とする妖精城アヴァル=ケインへの最終進撃を前に、まずは課題を片付けようではないか。
 新天地カムイグラで夏祭り中に発生した事件といい、妖精郷での事件といい、あれやこれやと大変な所ではあるのだが――


 ※ネオフロンティア&カムイグラ合同サマーフェスティバル2020開催中です!
 ※水着・浴衣コンテストの投票は『7/25の0時』まで! じゃんじゃかハートクリック

 ※妖精郷アルヴィオンで『エウィンの町の奪還』に成功しました。
 ※奪還戦の結果を受け、いくつかの依頼<アイオーンの残夢>が発生しました。
 ※ストーリー関連クエスト<アイオーンの残夢>エウィン防衛戦が発生しました。
 
 ※シナリオ関連クエスト『迷宮踏破ヘイムダル・リオン』はそろそろ終了予定です。
 エルシア・クレンオータ(p3p008209)さんが発見されました、が……。

これまでの妖精郷アルヴィオン

 ※カムイグラ:新種族『ゼノポルタ』が追加されました!
 ※カムイグラ:期間限定クエスト『神威神楽・妖討滅』は終了しました! 名声報酬が以下の条件で付与されました!
 ・クエスト回数1以上:10
 ・クエスト回数10以上:20
 ・クエスト回数上位10~7位:30
 ・クエスト回数上位3~1位:40

これまでのカムイグラ

PAGETOPPAGEBOTTOM