PandoraPartyProject

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迷宮踏破ヘイムダル・リオン


 その湿った石壁には、手を触れないほうがいい。
 ダンジョンというものは、そこに何が仕掛けられているか知れたものではないからだ。
 この日イレギュラーズ達は、一つの依頼を受けていた。
 内容は『大迷宮ヘイムダリオン』の攻略である。

 さて。それを語る前に深緑(アルティオ=エルム)と妖精の話をしよう。
 深緑をはじめ、世界各地には古くから『妖精伝承』が伝わっている。
 妖精といっても『この無辜なる混沌』では、単に魔物のような物から、そこに居るサイズのように異世界から来訪したイレギュラーズ(仲間)まで多種多様である。
 そんな中で、深緑に伝わっていたおとぎ話の妖精は、時に伝承の中で、時に小さな村に伝わる詩の中で、あるいは老人達の話の中で、人々と交流があったと伝えられていた。
 だがそんな妖精達の都――アルヴィオンの存在は、あくまでおとぎ話だとも思われていたのである。
 妖精郷アルヴィオンは『今のところ』前人未踏であろうと思われる。
 それを知るための手がかり、伝承や詩歌は少なく、また内容も頼りないものばかりだったが――

 ――そんな話にイレギュラーズが関わった訳とは何か。発端は一つの事件であった。
 妖精郷から深緑への瞬間旅行(ショートカット)を可能とするゲート『おとぎ話の門(アーカンシェル)』が魔物に襲撃され、ストレリチアという妖精が深緑の迷宮森林警備隊に保護されたのである。
 類似の事件は頻発し、平時の警備や魔物退治等で忙しい迷宮森林警備隊は、この解決をローレットのイレギュラーズに依頼したのだ。
 いくつかの依頼を解決するうちに、事件はブルーベルという魔種と、これまた魔種であるタータリクスという錬金術師の差し金であろうことが分かり始めた。
 またタータリクスの魔物がイレギュラーズの血や髪等を採取するという不可解な事件も発生し――
 そんな時に、魔種達はゲートを強引に突破し、余波で機能停止してしまったのである。ある者はこの現象を『ブレーカーダウン』と呼称していたが。なるほどそんな所だったのであろう。
 ともかく故郷に戻ることが出来なくなった妖精達は口々にイレギュラーズへと助けを求め、ローレットもまた魔種絡みの事件(本業)とあらば乗らない訳にはいかない事態となった。
 魔種と戦い、世界破滅の野望を打ち砕くのが、イレギュラーズの使命なのだから。
 かくして妖精郷への正規ルート『大迷宮ヘイムダリオン』の踏破が開始された訳だ。
 大迷宮の内部はいずれも複雑かつ多様であり、時に荒唐無稽な空間すら広がっていた。
 そこは、あるいは『果ての迷宮』や『ライブノベル』にも似ており、イレギュラーズは何度も挑みながら階層を攻略していったのだった。
 海洋での冠位魔種や竜との決戦に、新天地カムイグラへの到達と東奔西走のイレギュラーズであったが、深緑での一連の事件もまた着実に進んでいたのである。
 目的地は妖精郷アルヴィオン。
 おとぎ話の国――常春の都である。

 一行は石造りの曲がりくねった回廊を慎重に進んでゆく。
 時折、天井から零れる水滴の音が、妙に鼓膜をひっかくように感じられた。
 一歩、また一歩。
 床に、壁に、天井に、あるいはその先に罠はないだろうか。
 あの曲がり角から突然魔物に襲われやしないだろうか。
 未知のダンジョンで冒険者が備えなければならないことは数多い。
「……こわいの。お背中にかくれていい?」
 小さな声を震わせた『花の妖精』ストレリチア(p3n000129)が、イレギュラーズをそっと掴む。
「早くローレットに帰っていっぱいやりたいの……」
「帰る場所はアルヴィオンだろ……」
「……!」
 この可愛らしい――飲んだくれの!――妖精もまた、一行に同行していた。
 元の一件でイレギュラーズが助けて以来、あちこちに姿を見せるようになったストレリチアは、一体どこで覚えたのか、酒場巡りにいそしんでいるらしい。
 妖精達は――彼女ほど酷くはないにせよ――どこか浮世離れした気質を持つ者が多い。
 どうにも危機感が薄い印象を受けるが、当人達は本当に困っているようだ。
 ともあれストレリチアのようなアルヴィオンの妖精達は、どうやらこの世界(無辜なる混沌)では精霊種(グリムアザース)として認知されているらしかった。
 中でもストレリチアはどうやら『風の精霊』のようだ。

 そうこうしながらも一行は迷宮攻略に向けて、順調に歩みを進めている。
「――これは」
 誰かが小さな声を零した。
 一行が使い魔を先行させて得た視界、その情報は曲がり角の先に光りがあることを伝えている。
 頷き合い、得物や盾を構えて慎重に進む。
 その光は次のフロアから零れているようだった。
 見えてきたのは、庭園だ。
 花が咲き誇る――さながら幻想貴族が好みそうな――庭園は、その中央に鳥かごを有していた。
「ここが件の目的地、妖精郷アルヴィオンだったり?」
「まさか……!」
 そう簡単に話が運ぶはずもないことは、誰もが承知している。謂わば軽いジョークという奴だ。
 高さ数メートルはあろうかという鳥かごには、一人の少女が座っている。
 白絹のような髪に、白磁のような肌、そして伏し目がちな瞳の色は赤。
 こんな迷宮に楚々としたワンピースを纏った、些か美しすぎる少女が居るならば――
 間違いなく、敵か仕掛けかの類いだ。

 ――ふふ。いらっしゃい、あそびましょう。

 気付かれた。
 いつから。
 今か、さっきか。
 あるいはこの階層に足を踏み入れた時からか。
 さもありなん。こんな迷宮では――何がおきても不思議ではない!
 果たして――即座に得物を構える一行に向けて、少女は微笑みながら小首を傾げて。
 突如、その髪が無数の蛇のように襲いかかってきたではないか。

 さあ。戦闘開始だ。

クエスト詳細

 こちらは妖精編のおさらいクエストです。
 今よりちょっとだけ前のお話ですね。
 既に大迷宮ヘイムダリオンに挑まれた方ももちろん。
 まだ物語に関わっていない方も、これを機会に是非挑戦してみて下さいませ。
 あなたは、そう。参加したのだ。実は!

 クエストの成功で称号が得られます。
 これは深緑から妖精郷へ転移する『アーカンシェル』という魔法装置の恒久チケットです。
 使用するには物語の都合上、『ヘイムダリオンに挑戦した』という資格を得る必要があるのです。
 システム的に所持していなくても今後の物語には自由に参加頂ける(なくても大丈夫!)のですが……。
 そこはフレーバーということで、持っているときっと想像が捗るかと思います!

・敵
『キマイラ・タイプメドゥーサ』×1
 視線による石化攻撃を行う厄介な敵です。

『キマイラ・ホワイトスネイク』×4
 髪からこぼれ落ちてきた蛇です。毒を持ちます。

『キマイラ・ブラッディローズ』×2
 とげつきの触手で攻撃してくる他、反を持ちます。

『同行NPC』
 ストレリチア(p3n000129)
 後衛タイプ。
・アクティブスキル  ブラックドッグ、エメスドライブ、ミリアドハーモニクス、マジックフラワー。

 担当GM『pipi

勝利時


「終わった、か」
「……こわかったの」
 とどめの一撃を受けたキマイラが、その形をぐずぐずと崩して消えていく。
 イレギュラーズは、鳥かごの中心に残された虹色の煌めきを手に取った。
 階層によってその大きさも形状も異なるようではあるが、このつるりとした玉が『虹の宝珠』というやつらしい。
 この大迷宮ヘイムダリオンは、この『虹の宝珠』を集めることで、次の階層が開かれるという。

 ――!?
 足元に感じた微かな衝撃と共に、奥の方で門が開いた。
 つまるところ、あの門が次の階層への入り口なのだろう。
 ともあれ今回の冒険はこれでおしまいだ。
 ローレットに戻り、報酬を受け取ろう。
「勝利の美酒に酔いしれるの!!」

 ああ。この妖精(ストレリチア)ときたら!

敗北時


 厳しいか。
 一行は満身創痍であった。
「――撤退しよう」
 誰かが言った。
 悔しいが、ここは退くしかない。
 再戦も踏破も、命あっての物種なのだから。
 だが、どうやって戻る。
 なにせここは迷宮だ。
 行きはよいよい帰りはこわい――と。
 帰り道にこそ悪辣な罠が仕掛けられている可能性すら考えられる。
 攻撃を凌ぎきりながら、一行はどうにか先程の通路へと戻ることが出来た。
 キマイラ共は、どうやら追ってこないらしい。

 さて。慎重に戻ろうか。
 もちろん、後ろにもよく気をつけて――
 再戦は。いずれかならず。近いうちに。
 誰もが胸にそう誓って。

引き分け時


 厳しいか。
 一行は満身創痍であった。
「――撤退しよう」
 誰かが言った。
 悔しいが、ここは退くしかない。
 再戦も踏破も、命あっての物種なのだから。
 だが、どうやって戻る。
 なにせここは迷宮だ。
 行きはよいよい帰りはこわい――と。
 帰り道にこそ悪辣な罠が仕掛けられている可能性すら考えられる。
 攻撃を凌ぎきりながら、一行はどうにか先程の通路へと戻ることが出来た。
 キマイラ共は、どうやら追ってこないらしい。

 さて。慎重に戻ろうか。
 もちろん、後ろにもよく気をつけて――
 再戦は。いずれかならず。近いうちに。
 誰もが胸にそう誓って。

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