PandoraPartyProject
Omnia vincit Amor.
「人間と言うのは度し難い存在でね、どうなったっていとしいひとには生きていて欲しいものなのさ。
未練がましくって、盲目で、莫迦な方が丁度良い。そうであればひとは余分な事なんてなんら考えずに生きていけるのだから。
だからね、ぼくは盲目で莫迦な犬のように振舞って、あの人の寵愛を求め続けたんだ」
そう語った『魔種』アタナシアはこれまで敵対していたとは思えぬほどに朗らかに微笑んでいた。
まるで友人ぶった口ぶりと武装を解除した彼女の纏う雰囲気は『硝子の棺』に冠位色欲ルクレツィアを入れて連れ歩いているとは思えぬもので。
「やっぱりその棺、狭くないです? 死が二人を別つことないように二人で入りたいですよね?」
「硝子の棺(ベッド)で眠るぼくとルクレツィアさまが美しすぎて卒倒してしまうよ、ルル家ちゃん」
夢見 ルル家(p3p000016)の表情は雄弁だ。何を言って居るのだか、と呆れた空気を醸し出す。
アタナシアという魔種は独善的で、魔種らしい魔種であるともヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は認識していた。
『冠位色欲』ルクレツィア――彼女の振る舞いはエゴの塊であり、我儘で、面倒くさい『女の子』として君臨していた――の強烈な信者である。そう言葉にすればよくある事ではあるが、アタナシアはその信仰理由が恋情というのが救えやしない。色欲らしいと言えばそうだが、らしすぎるのも問題だ。
どの様な言葉をヨゾラが尽くそうとも「ルクレツィアさまがそう言った」の一言で彼女は全てを一蹴するのだろう。
それはイレギュラーズ誰に対してもだ。ただ、僅かな隙があるとするならば、彼女は色欲だ。腐っても『色欲』の分類は正常だったのだ。
アタナシアという魔種は絶対的な自己愛(ナルシズム)を抱いている。己に向けられる罵倒は照れ隠し、己へと向けた殺意は愛の裏返しとして認識している。
彼女はそれを浮気とは言葉にせずに「ぼくの様に美しくも素晴らしい存在に愛されることを喜ぶべきだ」とさえも口に乗せるのだ。
「……それにしたって、実に愉快な『性格』をしているのだね」
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)はそんなアタナシアに肩を竦めた。マリアベルの配下に当たる軍勢を影の城で撃破する際にそうした性質を利用したのは確かな事。
アタナシアが敵に回れば2:1の布陣となる。マリアベルとアタナシアは敵同士ではあるが、イレギュラーズもまた然り。斃しやすい方を選ぶのは当たり前のことだった。
――ぼくはね、ただ、マリアベルを殺せばそれで良いんだ
女は雄弁だ。それ故に目的意識がはっきりしていたのは利用しやすいとも言えた。
マリアベルの元に無事にアタナシアを『送り届ける』為に一先ずは休戦協定を結ぶ事を選んだのだ。
(しっかし、うまく行くモンだな――『……邪魔をしてくれるな、イレギュラーズ』か。
それだけこの女の愛情というのは深く、純愛と呼ぶに相応しかったって事か? 魔種の感情は一概には語れないが……)
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)はじらりとアタナシアを見た。彼女は嘘が下手だ。何故か。自分が正しく自分を愛しているからだ。
バクルドの視線にだって「ぼくの魅力に気付いてしまったのかい」だなんて楽しげな言葉を弾ませるのだ。
「それにしたって、きみがぼくをあの女の元へ行くことを許すとは思って居なかったよ、マリカ。
きみはぼくが嫌いだろう。ツレない態度と、自己嫌悪と同族嫌悪の合わせ技。まあ、ぼくは美しいから唯一無二なのだろうけど」
「……どうしたって似ているとは認めないでしょう?」
マリカ・ハウ(p3p009233)は片眉を釣り上げてからアタナシアを見た。
銀の髪、エメラルドの瞳、騎士を気取った服装に美しく微笑んだ青年を思わせた『美女』
それが『享楽』のアタナシアだ。その名前が不滅を意味し、アーティやアーシャと柔らかな声音で呼ばれること望む盲目な女。
彼女の死体繰りと罪悪感のなさ、楽しげな姿は如何したってマリカの心を刺激した、けれど。
「いいわ。今はね」
「今は?」
「今は、休戦、でしょう」
マリカがちらと見遣れば物部 支佐手(p3p009422)が緩やかに頷いた。
「主が為の仇討ちとならば、否定など必要ありゃあしません。わしとて主君が為ならば――おんしの為に刃を振るう事もやむを得ない。
忠義の為の仇討ちをどう止めようと言いましょうか。わしらと同じ目標があると言うならば」
「利用価値がある?」
「皆まで言いますまい?」
支佐手の軽い声音にアタナシアが「利用する価値があるほどにぼくを愛したといっても構わないけれど」とそっと支佐手へと近付いた。
そのおとがいに指先を添えようとするアタナシアに対して支佐手はぴくりとも動かない。
「凄いね、ぼくは魔種なのに。君を傷付けるとは一つたりとも誰も疑っちゃいないんだ」
「ええ、だって、無駄な戦いなど望まないでしょう? マリアベルだって貴女にとってはただの摘まみ食いなのですよ、アーティ?」
楚楚として雪村 沙月(p3p007273)は微笑んだ。己との二人のダンスはお預けだ。
ダンスホールになりもしない、こんな薄暗く鬱蒼とした場所で初めてのワルツを踊るなど願い下げではないか。荘厳優美な王城でドレスでも纏って、ワルツでも嗜んでいた方が一層に『思い出』にもなろうもの。
アタナシアは「踊ってくれるかい?」と支佐手から離れて沙月の手を取って傅いた。
「『全てが終わったならば』」
「ああ」
アタナシアがその手の甲に口付ける。ゆっくりと立ち上がってから「ぼくは恵まれていたようだね」と振り返った。
「……アーティ、あなたの『硝子の領域』はいつまで保ちますか?」
「保たなくともイレギュラーズと言う選ばれし人はあの女がぼくに裂く時間すらも奪うだろう」
チェレンチィ(p3p008318)は彼女から与えられる多分な称賛にも何とも言えぬ顔をした。
ああ、だって。彼女は征く事を決めたのだ。
――マリアベルという女の元に。最悪のパウンドケーキに災厄をデコレーションして、終末でラッピングした女の元へ。
「アーティ」
「きみの瞳は美しくてぼくだけを映していて欲しくなるけれど、それもお預けだろう」
「ええ。お預け、です」
彼女が魔種ではなかったならば、良い友人になれただろうか?
さて、それはどうかは分からない。少なくとも『嫌い』だと大喧嘩くらいは出来ただろうか。
星穹(p3p008330)は「アーティ」と呼んだ。彼女は己を「ぼくの盾」と呼び笑うのだ。
「星穹、きみだけを見ていれば良かっただろうね」
「ええ、それはいつだって叶わぬ夢なのでしょうけれど」
「そうかな。ぼくは誰よりも素晴らしい存在だけれども」
「よく言う」
星穹が揶揄うように笑えば、アタナシアは何かに気付いたように顔を上げた。
「アタナシア」
殺してやると、その名を呼んだのはあの日だった。――今は『戦友』のように、シラス(p3p004421)は呼び掛ける。
「次だ」
次に会ったならば殺してやると、この場の誰もが誓いのように、別れの挨拶のように告げた。
シラスという青年はよく理解している。
この女に、こんなに前のめりで盲目で、当たり前の様にルクレツィアの為ならば命だってかなぐり捨てられるような女に、未来(さき)なんてあるものか。
「次に会ったら、分かって居るな?」
「勿論。それまでに死なないでおくれよ、シラス」
「どっちの言葉だ、か――」
言い切る前に目の前から彼女の姿が消えていた。
彼女は向かうのだろう。マリアベル。その女を殺す為に。
――アーティ。アーティ。アタナシア。聞こえているでしょう。
ええ、ルクレツィアさま。ぼくの月、愛おしきあなた。慈愛の月、天上の調べ。
あなたの声音は甘露のよう。天上の囁きのよう。全ては雫となって落ちてくる。
あなたにとってとるにも足らない塵芥であったぼくの名を呼んでくれたその日から全てが始まったのです。
――アタナシア。分かっておりますわね?
莫迦な女と罵ってくれたって構わない。ええ、ええ、ルクレツィアさま。
ぼくはね、あなたの為ならば道化にだってなれてしまうのですから。
だから、待っていてください。「おまえは本当に駄目な子」と笑ってくださるのならば。
ぼくは何だって出来てしまうのだから。
※魔種アタナシアとの間に一時的な『休戦』が実現しました
※最終決戦が進行中です!
※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!
※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。
これまでの天義編|プーレルジール(境界編)|Bad End 8(終焉編)
トピックス
- Re:version第二作『Lost Arcadia』
アーリーデイズ、スタート! - 【ラサ】烙印後遺症についてはこちら
- 【天義】シビュラの託宣
特設ページにて黒衣(騎士制服)が公開されています。 - シリーズシナリオ(特設)一覧ページ
トピックス
……それにしても静かだな、ここ最近は。いつまでこの状況が続くのやら。
飲ませてるのか浴びせてるのかは謎。
『<終焉のクロニクル>』リプレイ返却日延期につきまして ※2024/04/08 23:47追記
以下のシナリオの返却につきまして、決戦ラリー進行都合上の理由につき、リプレイ返却日を延長させて頂きます。
・<終焉のクロニクル>Tacere qui nescit, nescit loqui.
・<終焉のクロニクル>Vivere Est Militare. (※2024/04/06 20:07追記)
・<終焉のクロニクル>壊世の焔(※2024/04/08 23:47追記)
ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。公開まで今暫くお待ちいただけますと幸いです。
レベルキャップ開放につきまして
本日、レベルキャップを解放し、獲得経験値増加を行いました。
・レベルキャップを120→125に上昇しました。
・闘技場レベルアップ可能レベルを117→121に上昇しました。
・基礎獲得経験値を9100→15000に上昇しました。
・R.O.Oには変更はありません。
以上、宜しくお願いいたします。
レベルキャップ開放につきまして
本日、レベルキャップを解放し、獲得経験値増加を行いました。
・レベルキャップを115→120に上昇しました。
・闘技場レベルアップ可能レベルを112→117に上昇しました。
・基礎獲得経験値を8100→9100に上昇しました。
・R.O.Oには変更はありません。
以上、宜しくお願いいたします。
納品イラストの返金措置実施につきまして
お世話になっております。合同会社Re:versionです。
先日告知しておりました『MUGI』イラストレーターの納品イラストの公開停止・返金措置につきまして、本日実施を執り行いました。
本件の経緯・詳細につきましては下記お知らせをご覧ください。
該当のお客様には個別にイラストの公開停止と、RC返金をご連絡申し上げております。
なおクリスマスピンナップに添付されていたSSにつきましては、別途SSのみの納品を行う予定です。暫くお待ちください。
以上、この度はお客様に大変なご迷惑をかけた事を心よりお詫びいたします。
レベルキャップ開放につきまして
本日、レベルキャップを解放し、獲得経験値増加を行いました。
・レベルキャップを110→115に上昇しました。
・闘技場レベルアップ可能レベルを107→112に上昇しました。
・基礎獲得経験値を7400→8100に上昇しました。
・R.O.Oには変更はありません。
以上、宜しくお願いいたします。
『<美徳の不幸/悪徳の栄え>』リプレイ返却日延期につきまして
以下のシナリオの返却につきまして、運営都合上の理由につき、リプレイ返却日を延長させて頂きます。
・<美徳の不幸/悪徳の栄え>コールタール・ラヴァーズ
・<美徳の不幸/悪徳の栄え>交差するアメトリン
ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。公開まで今暫くお待ちいただけますと幸いです。
納品イラストの返金措置につきまして
お世話になっております。合同会社Re:versionです。
弊社は本日、先日業務委託契約を解除したMUGIイラストレーターがSNS上で「今までの全ての私の作品においてトレスでないものは無いと言ったら嘘になります。」(原文ママ)という旨の発信を行った事実を確認しております。
トレース(他者作品への著作権利侵害による違反行為)を行った具体的な納品物は指定・公開されておりませんが、弊社ではMUGIイラストレーターの弊社納品108点※及び登録販売物(背景)11点について問題や疑義をクリアする事は非常に難しいものと結論付けております。また、途上ではございましたが弊社での調査でも納品イラストの一部に他者の製作物と線が重なるもの等、疑義を生じるものが複数存在する事は把握しており、現時点で具体的なトレース元、不法行為の確認出来ていない納品についても上記発言を鑑みる限り、お客様への安全を担保出来ないとの結論を得ました。
従いましてMUGIイラストレーターの納品した弊社納品物108件につきましては全件を『公開停止及びRCでの全額返金措置』といたします。返金のタイミングについては実作業上の問題があります為、少々お時間を頂戴したく存じます。追って返金作業終了時点で正式な告知のリリースをさせて頂きます。
又、該当事例・件数等につきましては下記資料をご確認下さい。
PBWの特性上、RCでの返却措置となってしまい、心苦しくはございますが、この点ばかりは利用規約上の問題もあり、ご寛恕いただければと存じます。
弊社は他者権利物の侵害を弊社納品物で行う事を絶対に是認しません。
MUGIイラストレーターにつきましては今後実損の請求と、対応次第では然るべき措置を検討いたします。
以上、お客様に大変なご迷惑をかけた事を心よりお詫びいたします。
※複数ピンナップを1としての計算となります。又納品件数には運営発注を含みます。周年景品のピンナップについては返金分を200RCと定義させて頂きます。
ボイスレター、ボイスレターロングの「非公開」オプションにつきまして
本日、ボイスレター、ボイスレターロングに以下の変更が行われました。
・完全非公開でのリクエストでしたが、非公開にするかはリクエスト時のオプションで選べるように変更。
伴って、現在までに納品されているボイスレター、ボイスレターロングは、詳細画面から公開状態へと一度限り変更する事も可能な様に修正されました。
以上、よろしくお願いします。
規約違反、問題行為が疑われるクリエイターの業務委託契約解除につきまして
本日、MUGIイラストレーターに業務委託契約解除を通告した事をお知らせいたします。
理由といたしましては以下となります。
・業務規約に違反している事
・同業他社の納品及びイラスト・物品販売サービスにおける商品提供等につき、他者の著作権利等に対する著しい侵害が認められた事
・該当事例において不明瞭かつ不十分な説明、二転三転する不誠実な対応に終始している事
・これまで、現状の言行等から弊社が今後該当クリエイターに業務委託を行うに十分な信頼を持てない事
・またお客様に対して十分かつ誠実なサービスの提供の運営担保をお約束する事が難しい事
現時点において弊社納品物に関しまして、確実な問題は確認しておりませんが、現在弊社ではこれまでの納品物等に関してチェックを行い、調査を進めております。
こういった調査等で確実な問題を認めた場合は然るべき対応を行わせて頂きます。(但し調査及び結果に関わる白黒の判定等につきましては運営の専権事項とさせて頂きます)
お客様にお騒がせし、ご迷惑をおかけしている事をお詫びいたします。
以上、宜しくお願いいたします。