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ギルドスレッド

銀嶺館

【図書室】天義について

銀嶺館のどこかにある図書室。

貴方が見聞きした『天義』についての情報を教えてください。
時にはTOP画面で伝えられる幕間劇や、参加した依頼、気になった依頼の他、自分が感じた事や思った事などを語り合ったりして、天義の謎に迫って行きましょう。

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<コンフィズリーの不正義>
 全てが暗転したのは突然の出来事だった。
 世の中は――多くの人達が知っているのと同じように――どうしようもなく理不尽なものであり、どうしようもなく儘ならないものであり、動き出した全ては誰にも止める事の出来ない『決定』に過ぎなかった。
 潔癖の祖国に当家が仕えて二百年以上にもなる。多くの戦争で武勲を上げた。神を信じ、敬い、理想的な天義貴族としての責を果たしてきた筈だ。恐れ多くも歴代の国王陛下より信を賜り、名門として遇された。
 そんなコンフィズリーの栄光が地に堕ちる事となったのは父の代である。
 余りにも突然に――当家は全てを失った。
 家名も、財も、領土も、地位も全て――
 邸宅を追われた自分は父、メルクリス・フォン・コンフィズリーが『不正義』を働いたのだと幼いながらに聞かされた。
 父は出仕したまま帰らず、美しい母は髪をかき乱し、見た事の無いような形相で何事かを喚いていた。
 つい昨日まで当家を持ち上げていた周囲の人間は潮を引くようにいなくなり――いや、居なくなっただけならばまだ良かった。
 顔も知らない親戚、したり顔の役人、信頼していた領民や部下に到るまで――まるで『ハゲタカ』か『ハイエナ』のように当家に残された残り僅かな旨味を喰らい尽くすかのような勢いだった事を覚えている。

 ――そも、当家がこれ程までに痛めつけられなければならかった『不正義』とはなにか。

 事これに到る経緯を俺は良く知らない。
 ……と、言うよりも大人になって改めて知ったのはこれが意図的に隠蔽されている事実であった。
 唯、仁君だった父は良くこんな事を口にしたのを覚えている。

 ――世の中には善悪の二種類以外も存在する。良くない善もあるし、悪くない悪もある。
   人の世の営みによるものならば、全てが白と黒だけでは片付かない話もあるだろう――
……聖教国ネメシスの教義からすれば父の考え方は異端だったに違いない。
 実際に引き金になった『不正義』の顛末が何だったのかは知れないが、父が周囲に疎まれていたのは察するに余りある。
 逆風の中、当代の俺が騎士としての身分を得る事が出来たのは、我が身の努力であると自惚れているが――没落した名門として騎士の末席に滑り込んだ時からそれは分かり切っていた。
 上役の侮蔑に満ちた視線は、僅かながらの恐れも孕む。
 接した何人かの貴族、高官はまるで探りを入れるような所があった。
 全く、彼らにとっては当家の『不正義』は探られたくない内容なのだろう。
 嗚呼、何という皮肉だろう。神の教えを口にし、正義と潔白に満ちている王宮が、態度で、言葉でその信頼を毀損する。
 少なからず俺に残っていた父への疑いが、雲散霧消したのは幸福なのか、その逆か。
 俺はそんな誰にもニッコリと笑って今日も心にもない言葉を口にするのだ。

 ――父の『不正義』を贖う為、私は忠勤に臨む所存です。それ以上の何がありましょうか。

 ネメシスは潔癖の国。
 ネメシスは純白の国。
『正義』に沿わぬ何をも許さず、神ならぬ人の驕慢を持ちて神の裁定ばかりを望む国。

 ――そんな、とてつもない、強欲の国。
<ネメシスの聖女>
 聖教国ネメシス――高潔にして潔癖なる正義と信仰の国。
 総ゆる悪を許さず、神の名の下に正しき秩序を求めんとする理想の遂行者。
 混沌世界におけるかの大国の名声――プラスのものだけではないが――と評価は概ね一致している。
 価値観の合う人間にとってみればそれは大層に素晴らしいものであり、そうでない人間にとっては行き過ぎた毒と捉えられがちだ。
 唯、重要なのは少なくともネメシスの人間の多くは『単に善良』なのである。
 生まれついた国の、育てられた親の、社会の望んだ『正しい姿』に疑いを持たず、過ぎた我欲を律し、教科書教本のような正義の振る舞いを心がけてさえいる。それが半ばネメシスを覆う空気感に強いられたものであったとしても、善き行いに、信仰を全うしようとする心に嘘も貴賤もあるまい。しない善よりする偽善が圧倒的に有意義なのはどんな世界でも同じ事なのだから。
 但し。
 ネメシスにおいて『単に善良なのは圧倒的な大多数だけに留まる』。
 裏を返せば、そこに在る少数は必ずしもネメシスの――神の求めた美徳の上には存在しない。
 G線の上で踊るアリアが美しき例外であるように、滅私の国にも何処までも我欲的な人間も存在する。
 そんな中の一人、
「――はぁ、退屈」
 白く美しい仮面を被った聖女は人気の無い大聖堂でお祈り代わりにそんな溜息を吐き出した。
 先に捕まえた『小鳥』はもうぐったりして動かなくなってしまった。
 折角の『異端』だったというのに、あんなに脆いなんて詐欺みたいなものだ。
「やっぱり、ベルナルドよねぇ」なんて呟いてみても、鳥籠を逃げ出した文鳥は今の所は帰ってくる心算はないようだ。彼がローレットなる面倒くさい組織に関わっていなければやりようなんて幾らでもあるのだが。
 ……流石に峻厳のライオンちゃんに睨みつけられるのはアネモネ・バードケージでもぞっとしない。
「……でも、退屈ですわあ」
 独白で繰り返された言葉は圧倒的な真実そのものであった。
 最も天義らしくない人物でありながら、天義で聖女の名を冠する彼女はその実、この国の国民性をハッキリ軽侮している。
 従順であり、素朴であり、禁欲的であり、良く出来た人形のようである。それ自体は話が簡単で良い場合もあるのだが、彼女に言わせればそれは全くもって余りにも人間らしさという部分に欠けるではないか――
『不正義』で断罪された何処ぞのオジ様の方が余程気骨も魅力も感じるというものだ。興奮する。
 どうにかして酷く持て余す時間を潤いのあるものに変えなければいけない。
 彼女は強くそう考え、柳眉を寄せて思案の表情を作り出す。

 ――質で駄目なら数かしら。
   やっぱりハレムがいいかしら。羽を毟って閉じ込めて。泣いて喚いて許しを請うて――

「とても素敵な考え方ですわね」
 そんな時、掛けられた一つの声が彼女を現実に引き戻した。
「――あら、こんな時間に何方かしら。懺悔にでも参られたのでしょうか」
 声の主に『聖女の顔』を向けたアネモネは通り一遍――そんな言葉を口にしたが、『拘束の聖女』たる彼女は警戒を全開にその魔力を全身に纏わせていた。夜の時間は彼女の時間。十重二十重に貼られた人避けの手段は只の客をこの場まで通す程甘くはない。
「生憎と懺悔の予定はございませんけれど、多少は興味を惹かれるご提案位は出来ましてよ」
 目を細めたアネモネは『自分の頭の中を覗いたような事を言う』黒衣の女に美しい聖女の顔を歪ませた。その変化は一瞬のものではあったが、彼女の傲慢さ――非常なプライドの高さと頭と勘の良さの両方を証明していると言える。
「この国は、何処か病的でしょう?」
「……」
「病的な程に白く、白く。人間に必要な――そう、重要なパーツ(よくぼう)が欠け落ちているかのよう。
 望む事は愚かかしら。求める事は罪かしら? 純白の中の異物は悪ですかしら?
 貴女のような『人間らしい方』はそれがつまらない。貴女は聖女だからここに『拘束』されていて、何処までも退屈と。
 当然の事ですわ。大人は人形遊びだけでは飽きてしまうものですから」
「……何の事だか、さっぱり。特に御用が無いようでしたらば、お話は明朝にでも」
 躱すアネモネに女はクスクスと笑う。黒いベールの向こうの美貌は仄暗く、二人は(少なくとも見た目は)全く対照的だった。
「ふふ、本来今夜はスカウトのようなものでしたのですが。
 貴女はやはり『我』が強い。まぁ、今は多くを語る必要はないのです。唯、そうですわね」
 黒衣の女はそこで言葉を止めてから、二拍を置いてその先を吐き出した。
「――もし、貴女が近く訪れる劇場を愉快と思ったなら。
 また――もう一度位は会う機会もあるかも知れませんわね?」
 当を得ない言葉が静やかなる大聖堂の空気に解け、瞬きをする間に女は忽然と姿を消している。
 残るのはまるで変わらない何時もの風景だけだ。
「……」
 幻覚? まさか――とアネモネは苦笑した。
 つい先程まで頭の中で喚いていた人外の声が幻覚(おんな)と無関係とは思えない。
 彼女は生まれてこの方、誰かを、何かを恐ろしいと思った事等無い。
 それは今も変わらず、この先も恐らく変わるまい。
 だが、彼女は気付いた。
 気付いてしまったのだ。
 こんな季節だというのに、自分の肌着がジットリとした嫌な汗に濡れている事に――
<三千世界は鴉を殺した?>
 夢を見ていた。少女が夜を呼ぶ夢だ。
 昼間の賑やかな大通りを、馬車と教会の鐘と焼いた小麦の香りを、その中を、黒衣の少女がまどろむように立ち止まる。
 少女がなにごとか呟いたその時に、空は眠るように夜色へ塗り変わり、風は夢見るように静まり、人々はとっくりとしかし整然に眠りへとついていく。
 町はまるで夢を見るように塗り変わっていった。
 お菓子の家に、遠い銀河に、虹かかる空の庭に、海底のダンスホールに、虚無の白に、スクランブル交差点の雑踏に、羊の大移動に、あがるキノコ雲に、春風歌う大草原に、次々と、まるで元の姿を忘れるように変わっていく。
 人々の姿は夢の中に塗りつぶされるように消え、空も家々も、なにもかもが消えていく。
 少女はその光景の中で唯一変わらず、ただ虚空の一点だけを見つめていた。
 いや。
 少女だけじゃない。
 少女は、『わたし』へ振り返った。
 少女は、眠そうに笑い。
 少女は、優しそうにまどろみ。
 知らぬ間に後ろに立っていた少女が、『わたし』の両目を手で塞いだ。
「誰でも知っていて、誰も気づいていないもの、なあんだ」
 『わたし』は気づいてしまった。
 これは現実だ。夢なんかじゃない。
 そしてもう一つ、気づいてしまった。
 ――現実なんて、もういらない。
 ――夢のような、夢のような、夢のような世界の中で遊べばいい。
 ――現実の肉体など、朽ち果ててしまえばいい。


※天義西部の町ムーンボギーが明けぬ夜の呪いに閉ざされました!
 この不吉に現場は混乱。イレギュラーズには事態の調査と解呪が求められています!
<常夜の呪い>夢現へようこそ
GM名:黒筆墨汁 種別:通常 難易度:NORMAL
予約開始日時:2019年02月25日 22時30分
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1497
強欲のリユニオン
 混沌世界で最も正しきを重視し、標榜する国である聖教国ネメシス。
 その中でも全く――他に類を見ない程に純白に染め抜かれた首都フォン・ルーベルグは何時も整然とした秩序に満ちていた。
 騒がしさとは無縁の大通り、ゴミ一つ散乱しない裏通り。
 街を行く人々は厳しく己を律し、『フォン・ルーベルグの市民としてどうあるべきか』を常に念頭に置いて行動している。
 ネメシスの正義と同様にこの街の姿は完璧であり、ある種酷く歪でもあった。
 見る人間が見れば、それを人間の社会性の完璧な姿であると讃えるだろう。
 また別の人間が見れば、これは唾棄すべき抑圧に過ぎないと断じるだろう。
 評価何れにせよ、フォン・ルーベルグにおいて見える光景は一つである。

 ――潔癖なる白亜の都。

 それ以上でも以下でもない現実はそこに住まう人間に幾ばくかの窮屈さと、それと同じだけの安寧を与えている。それは抑圧であると同時に大いなる救いであるのもまた確か。
 白亜はレガド・イルシオンの如き見える形での不正を認めない。
 白亜はゼシュテル鉄帝国のような過剰な弱肉強食を肯定しない。
 唯、神に対して、標榜する正義に対して敬虔であれば、人間の持つ『間違い』を律し、否定し続ける事さえ出来れば――歪な在り様さえ、一つの正解であるとも呼べるのだろう。
 正しきのみを肯定し、どんな悪をも許容しない。
 総ゆる個の欲望を否定し、調和を何よりも重視する――
「まぁ、それが最も度し難い。人間が人間なる根源が『原罪』なれば。
 欲望さえ否定する国は、街は人間の領域と言えるのかしら?」
 ――今日も何一つ間違いを侵さない白亜の街の姿を眺め、黒衣の女は冷笑する。
 彼女は人間を嫌わない。むしろ人間が人間であるが故に抱き得る、複雑怪奇にして高等なる総ゆる『欲望』を肯定さえしている。
「その琴線を弾き、押し込めた欲望を解き放ち、大きな舞台を描きましょう。
『正しき形』を忘れた人形達に思い出させてあげましょう。
 人は愛し、愛され、生きてやがて朽ちるのならば――演目はきっとこれがいい」
 女の口角が三日月に持ち上がり、白亜の街に暗雲がたちこめる。
 狂騒曲をあなたに。
 人は元来多くを望むものだ。
 聞こえぬ声、届かぬ声を拾うには――こんな荒療治も丁度いい。


※フォン・ルーベルグに奇妙な噂が流れているようです……
<不正義の騎士>
「リンツァトルテ殿、此方の警備は万全です」
「ああ……ご苦労様」
 この所、辺り一帯は『騒がしい』。
 恒例の夜の見回りをするリンツァトルテ・コンフィズリーに敬礼をしてみせた兵士の顔にも不安と疲れが見て取れた。
「しかし、一体これはどういう訳なんですかね」
「さて、ね。実際の所、真相はまるで見えないが――どうやら噂話で済むレベルの事態じゃないらしい」
 休憩がてら足を止め、そう応じたリンツァトルテに兵士は「やっぱり」という顔をした。
 初めは取るに足らない噂に過ぎなかった筈だ。
 しかして、まさに今フォン・ルーベルグを騒がせる事態の正体を中央が知らない筈が無い。
 よりにもよってこの聖都で、よりにもよって死者が黄泉帰る等と。
 冗句にも何もなりはしない――最悪の中の最悪は、しかし最悪であるからこそ誰もを嘲笑うかのようにそこにあった。
 恐らく――恐らくは、である。黄泉帰りを仮に一側面を捉えた類似の事実と認ずるならば――聖都においてはこういった冠言葉は処世術上、意見表明に必要不可欠である――何らかのからくりが存在するのは明白だ。
 死んだ生物は蘇らないし、何より。この聖都を中心に短期間で爆発的に広がった『事例』は余りにも特別性を欠いていた。
 惜しまれなくなった聖人のみならず、ペットや、幼い子供、年老いた両親、果ては酷い悪党まで――現実の指し示す圧倒的なまでの異常、異様に対してその選別は出鱈目であり、統一感というものが欠けていた。その癖、噂でもちきりになっているのは聖教国の中心をなすフォン・ルーベルグ一帯に限られているのだから、そこにある恣意性に気付かぬ人間等無い。
「此方も全力を尽くして事態の収拾は図っているのだが」
「ええ。それにあのローレットも手を貸してくれているようで」
「……ローレットか。うん、彼等ならば適任だろうからね」
 部下のイル・フロッタが上気した顔で彼等の話をしていた事を思い出し、リンツァトルテは頷いた。
 何故彼女の顔が上気しているか、単にイレギュラーズを気に入っているから、と思っている辺り彼は彼と言えるのだが。
「民心を惑わすのが幻術か、悪意の工作かは分からないが――俺達も一層努めなければならないな」
 しかし、普段は自身の後ろをついて離れないイルもここ暫くは少し様子がおかしかったのは事実である。
 リンツァトルテはその事情を知らなかったが、朴念仁の彼とてそれを心配する気持ちが無い訳ではない。

 ――在りし日に還る死者は、時計の針を逆に動かす存在である。
   現在は生ある者のみによって紡がれるもの。
   厳粛たる終わりを戻す事は神と死者そのものへの悪罵に他ならない――

 フェネスト六世の言葉は当然ながらネメシスの正対せねばならぬ深刻な事態を重く受け止めていた。
 規律正しく秩序をもって生活していた聖都の市民の『非協力』はこの国では類を見ない規模に膨れ上がっている。『本来ならば』率先して悪を告発し、間違いを正してきた市民達が今となっては聖騎士団の目を盗むように『戻ってきた何者か』を庇い立てている。
 これはネメシスの最も嫌う状況だ。
 中央の絶大な力はネメシス国民自身の支持によって成り立っている。つまる所、民心の混乱こそ最も危険な事態であり、『敵』がその民心自体であるが故に強権的な対処さえ難しい。
 完璧な統制に生まれた一分の隙は歪に膨れ上がり、何かの時を待っているかのようである。
 杞憂に済むならばどんなに良いか――リンツァトルテは考えたが、それを保証する者は何処にも無い。
「……どうした」
「いえ、その……」
 深く嘆息したリンツァトルテにふと、兵士が何かを言いたそうにした。
「言ってみろ。ここには俺以外誰も居ない」
 彼の言葉には小さな皮肉が混ざっているが、多少気心の知れた上官に促され兵士はおずおずと一つの問い掛けをした。
「――――」
 一瞬だけ面食らったリンツァトルテの表情が苦笑いの形になるに時間は掛からなかった。
「成る程、他の人間には言わない方がいい」
「恐縮です。愚かな事を問いました」
「いや」
 リンツァトルテは口元を歪めて兵士の問いに『答え』を返す。
「この目で事態の確認をする事は必要だ。肯定はせずとも、真相に興味が無いと言えば嘘になる。
『何より俺は天義騎士としてより正しくあるにはどうするべきかを何時も知りたいと思っている』」

 ――コンフィズリー殿は、仮にそれが叶うとしたら、誰かの、黄泉帰りを望みますか?

 知れた事だった。問いたい事等、山とある。
 例えばこの国に本当に正義はあるのか、とか――

 ――ねぇ、父上。


※フォン・ルーベルグを中心に多数の『黄泉帰り』が確認され、民心が乱れているようです……

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