店内に入ると古木でできている古めかしいカウンターに天鵞絨の円椅子がいくつか並べられている。ほの暗い照明が揺れて幻想的な雰囲気を醸し出している。
カウンターの奥の棚には世界中から取り寄せたであろう様々な酒がところせましと並んでいる。メニュー表はなく、店主に聞いて注文をとる形のようだ。

カウンター席の後ろ側にはびっしりと本が詰まっている。読書をしながらゆっくりできるようだ。

カウンター席の奥には小さいながらもステージが用意されている。何かショーでもするのかもしれない。

パーティで御座いますか。それは楽しそうで御座いますね。どんなパーティなのですか？ 是非伺ってみたいもので御座います。

なんだっけ、ユリーカ君が企画した奴……あれで組んだんだ、ヨタカと。

(ゆっくりカルパッチョから食べて)ムーさん、美味しい。

ああ、ユリーカ様のお誕生日記念のアレで御座いますね。僕はレオン様と鬼ごっこする予定で御座います。

……美味しいと言って頂いて嬉しいですメェ……。

レオンさんと鬼ごっこだなんて、君は意外にお転婆さんだねえ。

僕の故郷だと魚は生で食べるのが主流だしね
とても美味しい。さすが。

ちょっとレオン様とは因縁が御座いますので（苦笑しながら

……生の魚を食べるのが主流なのですメェ……？
……それはよほど新鮮な魚がとれるところなのですメェ……。……どんなところか気になりますメェ……。

ふうん？レオンさんとは、ちゃんと話したら事がないな。

日本という国は海に囲まれた島国で、新鮮なまま魚とかを送る技術が発達していたのさ。

レオン様とは僕もあまりお話はしたことはないのですけれど、家族がちょっと……レオン様に入れ込んでおりまして、見ておれず、つい口を挟んでしまう形です。

……新鮮な魚がいつでも手に入るなんて、羨ましいですメェ……。……それはどんな魔法なんですメェ……。……私が持っている氷結の石と同じようなものですメェ……？

ああ……なるほど。彼、モテるのだねえ。

魔法では無いんだ、科学技術というもので私も詳しくは。
密封する箱に耐久性を付ける為、大体は厚さがある……という印象しか。
でも地域によっては海が近く、採れる魚に違いが出てたのも確かだ。

ええ、誘うような真似をしながら、女性を一人と決めないところも、本当に困った方で御座います（カウンターに肘をつき、頭を抱えるように振って

……科学技術ですメェ……。……練逹のようなところですメェ……？
……なるほど、厚みをつけるんですメェ……。……私の氷結の石の箱も工夫してみますメェ……。
……どんな魚が採れるんですメェ……？……食べてみたいもので御座いますメェ……。

ああー……、それは口を出したくなる………。
身内なら心配だし、辞めとけって思うものね。

恐らくは。
どんな……私が住んでた地域だとそこまで大きな魚はいなかったはず？

ええ、もう心配で心臓に悪いったら。

お魚は大体これぐらいですか？（手を肩幅ぐらいに広げて）

顔、体格、実績の全部があって女性に後腐れなく。それでいて口が回るからね。
同じ男としてはまあその……、うン…………。

魚は種類によるけれど、マグロで大人の男性と同じくらいとかいた。

まぁ！　男の方としては、ああいう方に憧れるんですか？

大人の男性ほどで御座いますか
なかなか大きな魚ですね。

……それは捌き甲斐がありそうな魚ですメェ……。
……刺身にして、モツ煮にして、ステーキもいいかもですメェ……（まだブツブツ呟いている

いや全然。嫌いな方(ハッキリと)
まあ僕の恋愛観と合わないってだけなのだが

マグロ、という魚でそれくらい大きいと七億とかする。
食べた事があるのは、刺身と寿司と、ステーキに煮たもの、あと唐揚げ。
頭だけ甘辛煮したのも食べたな
目玉回りがプルプルで美味しいのだよ。

よかったです（心の底からほっとした顔で）。斉賀様はそういう方じゃありませんよね！

7億ゴールドで御座いますか！
大変高価なものなので御座いますね。

……なるほどですメェ……。……色々調理し甲斐がありそうですメェ……。
……目玉のプルプルはこちらにもありますが、実食してみたいものでございますメェ……。

思わせ振りなのがちょっと好きになれないのだよね。
思わせ振りな態度だから振り向いてくれるのではと期待するわけだらう？
そういうの、無さそうなのに。
ハッキリと遊びだよと示してやれば、回りの人達も付き合いやすいだらうに……。

結構命懸けの漁らしく大きく上等なものは高いのだとか
僕も高いのは接待の席で食べた程度。

本当に仰る通りで御座います。どれだけ周りの方を振り回してばかりですね。止めて頂きたいのですが（額に手をあてて

命がけの漁で御座いますか……（ちらっとムーのほうを見て
そういうところに行ってしまう方もいるのですよね（ため息を漏らして

……命がけの漁でも、新しい魚を食べられるなら考えてしまいますメェ……。
……料理人なら仕方ないですメェ……（幻をじっと見て

ギルドマスターとしては優秀なのに
随分と敵が多いのだから

大丈夫なのか、それ……
さすがに漁師も漁業関係者の知り合いもいないぞ

本当に困ったもので御座います。

ムー様はこういう時、本当に無茶をなさいますよね……（呆れた顔で

……漁業関係者様とはお友達になればいいですメェ……。
……料理で釣れば一発ですメェ……。

ねー……

ムーさんあなた、結構過激だな？？？

……過激ですメェ……？　料理人ならば、なんとしても新しい食材に出会う為の努力は惜しむものでは御座いませんメェ……。

なんか、職人気質というか……

……料理人になって、59年ですメェ……。
……一生を料理に捧げてきましたからメェ……。

なるほど長い
ムーさん真摯で優しいから男女問わず、お声は多かったろうに
一番の恋人は料理だったのだねえ。

……そんな私などに声をかける物好きなど殆どいなかったですメェ……。

……ただ、一人を除いては……メェ……（極めて小さく囁くように）

(囁きに、目を伏せて微笑んだ。哀しげな、喪う痛みを知る者の笑み)

（視線を見て察する。自分と同じ痛みを知るものだと。スーズ・ギムレットを差し出す。カクテル言葉は『悲しみに寄り添う』）

(あまりにも多くを喪い、置いてかれた男。今もその悲しみの中で時間を止めて生きている)
……いただくよ

……どうぞですメェ……。
（そっとネックレスを取り出す。ロケットになっている、それをじっと見つめる）

……ね、秋になったら珈琲のテイクアウトをお願い出来るかな？

ありがとう。じゃあ、秋に。そろそろ帰るよ(代金を置いて。今日はありがとうと出口へ)

ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております（出口を開けて

（少し重たいお店の扉を引く。こじんまりとした懐かしさを感じる店内に、少しだけ安心し）
……お邪魔します。えっと。（店内を見渡し、店員を探す）

いらっしゃいませ！　ようこそ、Bar Phantomへ。
どうぞお席へとお座り下さい（カウンター席へと誘う

わ！ ……う、うん（端のカウンター席を選んで、腰かけて）
いっぱいある（物珍しそうにお酒の入った瓶を見ている）

……いらっしゃいませメェ……。
……これはウェルカムドリンクですメェ……（あなたの目の前には、何故かあなたの好物の飲み物が置かれている）

……羊さん？ あ、ありがとう
（目の前にはあまり飲んだことのないオレンジジュースが置かれた）（目をぱちくり動かした後、きらきらと輝いて）
オレンジジュースだ！ 飲んでいいんだよね…？

……ムー・シュルフといいますメェ……。……ムーと呼んで下さいですメェ……（柔らかく微笑んで
……どうぞ、お飲み下さいメェ……。庭に生えてるオレンジからとってきた新鮮なオレンジジュースから絞ったものですメェ……。……美味しいと思いますメェ……。

ムーさん、よろしく。ボクはレオだよ。
ここら辺でもオレンジって実るんだ。すごい。……いただきます（オレンジジュースを味わうように飲み込む）
！　おいし、い。こんなおいしい飲み物、初めてかも。

……それはよかったですメェ……（少し口角を上げて嬉しそうに微笑んで）。

ムー様の作るものは絶品ばかりですからね。舌がとろけるようで御座いましょう？（ぺろっと出した舌が溶けて消えていく）

ふふ、これはちょっとした奇術で御座いますが（ミステリアスに微笑んで）