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シナリオ詳細

タヌキの面汚しである仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)よ! 今こそお前にタヌキの誇りを教えてやろう!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●今回のお話
 気づいたら、あなた達は謎のダンジョンに連れ込まれていた――!
「どうなっとるんだ!?」
 と、タヌキ……いや、仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)が頭を抱える。気づけば、入り口は封鎖されていた。つまり、閉じ込められた形となる。
「確か、普通にダンジョン探索の依頼でしたわよね?」
 んー、とヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)が小首をかしげる。
 そう、一行が受けたのは、「深緑に存在するダンジョン探索」の依頼であった。
 普通のダンジョンに、普通に行って、普通に攻略してほしい――そう、これは実にノーマルな依頼であったはず、だ。
「ただ、依頼人が怪しかったわよね」
 と、そう言うのはゼファー (p3p007625)である。
 確かに、依頼人は怪しかった。狸のようなアライグマのような。なお、TOP画像はちょうどいいタヌキの画像がなかったので、アライグマの画像を流用している。ああいう感じのタヌキが居たのだと思ってもらえれば間違いない。画面左のタヌキはタヌキである。
「くくく……だまされましたね、我らがタヌキ一族の面汚しよ……」
 と、そんな声が響いた。
 タヌキの声である!
「タヌキ!? 御主ら、依頼主のタヌキか!」
 ふしゃー、と汰磨羈が威嚇の声を上げる。だが、タヌキの姿は見えない。
「今我々は、特殊な魔術を使い、直接! あなた達の心に言葉を伝えています。
 タヌキよ。そしてタヌキの友よ。貴方たちは堕落したのです」
「堕落?」
 訝し気に、ヴァレーリヤが眉をひそめた。
「私のどこに堕落が?」
 そうだね! ヴァリューシャは堕落してないよ! と、どこからか声が聞こえたがさておき、ゼファーは胡乱な表情で、
「実は自覚してなかった?」
 とか言ってみる。
「確かに、そこの修道女は堕落極まっています。が、我々タヌキ的には、酒飲んで歌うのはOKです」
「OKなんだ」
 ゼファーが意外そうな顔をした。
「確かに、信楽焼(しがらきやき)のたぬきってそういうイメージかも」
「つまり、ヴァレーリヤもタヌキ……ってコト!?」
 汰磨羈がおちょくるように言うのへ、しかしタヌキは厳かにうなづくように声を上げた。
「いかにも。ヴァレーリヤさんはタヌキではないのにタヌキの心を持つ名誉タヌキ……。
 それに引き換え、あなたは何なのですか、仙狸厄狩 汰磨羈よ」
「私か?」
 嫌そうに汰磨羈が言った。
「私は猫だが……?」
「それです。そういう所だよ?」
 タヌキが少しイラっとした感じで言う。
「あなたはタヌキです……それも、千年に一度、生まれるかというレベルのタヌキ……。
 たぬ大美タヌキコンテストに出場すれば間違いなく優勝をかっさらえるレベルのタヌキ……ちなみに、前年度優勝者はこういうタヌキです……」
 ひらり、と、天井から写真が落ちてきた。
 信楽焼のタヌキの画像だった。
「御主らには、私がこういうふうに見えてるの?」
 汰磨羈がこめかみをとんとんしながら言った。
「いずれにしても、汰磨羈よ……我々は、あなたに怒っているのです。
 完璧で究極のタヌキでありながら、猫を自称するあなたは……タヌキのプライドを汚したのです……!」
「なるほど」
 ゼファーが、ふむ、と顎に手をやった。
「いつものやつだわこれ」
「そうです、ゼファーさん。これはいつものやつです」
 と、タヌキの声が言う。
「そこで我々は、汰磨羈さんにタヌキという自覚を植え付けるため、この迷宮に、偽りの依頼で誘い込んだのです……!」
「偽りの依頼だと!? そんなものをローレットが許すはずがないだろう!?」
 汰磨羈が叫ぶのへ、タヌキは答えた。
「なんか面白そうだからいいよ、って……」
「ローレットーーーーーーーーッ!!!」
 汰磨羈が地団駄を踏む。
「悔しいでしょう……すべてはあなたが、タヌキであることを認めぬが故……。
 我々は怒っている。或いは、リアル・タヌキ・アングリー……」
「そろそろ怒られそうね、洗井落雲」
 ゼファーがのんびりとした様子で言う。
「それはいいんだが、つまり私たちはどうすればいいんだ?」
 汰磨羈が言うのへ、ヴァレーリヤが頷く。
「ええ。どうせトンチキダンジョンをクリアして、汰磨羈を指さしながら「たーぬき!」って言う感じの依頼なのでしょうけど」
「だいたいヴァレーリヤさんの言う通りです……」
 そうタヌキが言うと、一行の行き先に、一筋の光が差し込んだ。どうやら、奥へと進む扉が開いたらしい。
「この先にある、いくつものタヌキトラップを突破し……見事、最奥へと到達できた時……貴方をタヌキと認めましょう……」
「別に認められたくないが?」
「参加しないと外に出さないもん……」
「悪質ですわね……」
 ヴァレーリヤがごくり、とつばを飲み込んだ。
「なんにしても、もう始まるので……さっさと先に進んでください……それじゃ、よーいスタート……」
 ぱん、と手を叩くと、タヌキの声は途絶えた。
 いずれにしても、一行はこの先に進まなければならない。
 さぁ、イレギュラーズ達よ! 困難な任務を突破し、汰磨羈をタヌキに仕立て上げるのだ!

GMコメント

 お世話になっております。狸井狸雲です。
 これはリクエストシナリオなので、ぼくはわるくないぽんぽこ。

●成功条件
 下記の内、いずれか一つを達成する。
  1.汰磨羈をタヌキに仕立て上げる。
  2.汰磨羈の猫としての尊厳を保つ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はT(TANUKI)です。
 皆には狸になってもらう。

●状況
 タヌキに騙され、ダンジョンに連れ込まれた皆さん。
 どうやら、汰磨羈さんが狸なのに猫と言い張るのが気に入らないらしく、あの手この手で汰磨羈をタヌキに仕立て上げたい様子……。
 ならば、これに乗っかるのがローレットイレギュラーズというものです!
 皆さんは、『汰磨羈は猫だよ派』と『汰磨羈は狸だよ派』に分かれて、汰磨羈さんをこう、猫なのか狸なのかはっきりさせてください!
 ダンジョンには、以下のようなトラップがあります。猫だよ派は、攻略を。狸だよ派は、妨害を企て、何とかして汰磨羈さんをどっちかにしてください!

 1.狸式睡眠エステ
  タヌキといえばそう、狸寝入りです。
  此処では、猫だよ派の皆さんに睡眠エステを受けてもらいます。
  猫だよ派の皆さんは、何とかして眠らないように頑張ってください。寝たら狸です。
  狸だよ派の皆さんは、何とかして猫だよ派の皆さんを眠らせてください。寝たら狸です。
  ちなみに、今回のシナリオの判定は、うちの猫にダイスを転がさせて決めますので、気軽にプレイングをかいてください。

 2.狸だから酒盛りするよトラップ
  狸といえば酒盛りです。
  猫派の皆さんはお酒に耐えて(未成年の方はなぜか酔っぱらっちゃう不思議なノンアルコール狸ドリンクを飲んで)ください。酔っぱらって気持ちよくなったら狸です。
  狸派の皆さんは、猫派の皆さんを一生懸命接待して、気持ちよく酔っぱらわせてください。酔っぱらって気持ちよくなったら狸です。

 3.立派な信楽焼作成トラップ
  信楽焼のタヌキを作りましょう。
  猫派の皆さんは、頑張って信楽焼の猫を作ってください。狸を作ったら狸です。
  狸派のみなさんは、猫派の皆さんにタヌキを作らせてください。狸を作ったら狸です。

 4.バーリトゥード・狸
  上記以外で「罠にはめてぇ……」と思った狸派の皆さんは、自由なトラップを作って猫派の皆さんと遊んでください。耐えられなくなったら狸です。

 以上の中から、皆さんで相談し、やってみたいトラップを選んでプレイングに書きましょう。やりたいことは絞った方が、描写が濃くなると思います。

 それでは、皆様のスペシャルタヌキトラップを楽しみにしています。


あなたは何派?
『汰磨羈は猫だよ派』と『汰磨羈は狸だよ派』に分かれてください!

【1】汰磨羈は猫だよ派
汰磨羈は猫だと思う。

【2】汰磨羈は狸だよ派
汰磨羈は狸だと思う。

  • タヌキの面汚しである仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)よ! 今こそお前にタヌキの誇りを教えてやろう!完了
  • もしくは、ダンジョンRTA(リアル・タヌキ・アングリー)……。
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年08月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
天下無双のくノ一
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
※参加確定済み※
Lily Aileen Lane(p3p002187)
100点満点
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
※参加確定済み※
那須 与一(p3p003103)
紫苑忠狼
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
※参加確定済み※
エミリー ヴァージニア(p3p010622)
熱き血潮

リプレイ

●エンディングだぞ、泣けよ
 『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)。
 『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。
 『ささやかな祈り』Lily Aileen Lane(p3p002187)。
 『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)。
 『紫苑忠狼』那須 与一(p3p003103)。
 『真打』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)。
 『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)。
 『熱き血潮』エミリー ヴァージニア(p3p010622)。
 以上八名の目の前で――。
 狸ダンジョンが燃えていた。

「ヴァレーリヤッッッ!」
 紫電が声を上げた。
 ヴァレーリヤが、たぬき警察にひもで縛られて、連行されていた。
「な、なんで……!」
 紫電が声を上げた。ゼファーは思い出していた。
『揚げたての天かすとお酒の匂いの合わせ技! たんたん狸のハッピーセットでしてよ〜〜!
 この匂いを嗅いだが最後、ヨダレを垂らして駆け寄ってくるに違いございませんわ!!(お酒の瓶を開けて、その横で天かすを揚げ始める
 あっ、火が付いてしまいましたわ! ……よいしょ(うまく消火できなかったので、燃え盛る天ぷら鍋をその辺の部屋に放り込む』
 とプレイングに書いていた、ヴァレーリヤの姿を。
「まあ、今日もいつものお約束ですからね。
 敢えて言いましょう。
 暫く娑婆に戻るんじゃないわよ、ヴァレーリヤ」
 ゼファーが穏やかに笑った。たぬきパトカーに放り込まれたヴァレーリヤが、「私は! 無実! ですわ!」などと叫びながら、ドップラー効果を残して去っていく。
 こうして森の平和は乱されたあと守られたのだ。

 完。

●どうしてこうなったかといえば上記の通りなのだが、それはそれとして、それまでのイレギュラーズたちの奮闘を見ていただこう。
「あ~……全く何てことだ、私ともあろう者が騙されてしまうとは……」
 くっ、と拳を握って悔し気にそういうのは、エミリーである。イレギュラーズたちは騙されていた。ちゃんとした依頼かと思ったら、たぬき依頼だったのだ。
「だが……たぬき、か。たぬき。成程……ふふ。
 いや、東方の国では犬や猫のように生息しているとは聞いているが私の住む国では希少でな。
 凄くワクワクしているよ」
 存外にこにこと笑みながら、エミリーがあたりを見回す。
「さぁ、出ておいでたぬき! 私がもふもふ……あ、いや、撫でてあげよう!」
「狸です」
 そう言って出てきたのは、洗井落雲だった。
「……いや、まて。これは狸じゃないだろう。ゴミパンダだろう。
 私が想像しているのはあんなラ○カルみたいな顔じゃないし丼っぽいものが書かれたシャツ何て着て無いのだが?」
「えっと……たぬきの立ち絵がなかったので、たぬきという事で……」
「そんな……」
 エミリーがしゅん、となった。可哀そう。何時かちゃんとしたたぬきに会えるといいね……。
「そんなことよりだ! 御主ら視たか!? 事前調査アンケートを!」
 汰磨羈が胸を張って言う。
「たぬき3:ねこ5だぞ?
 これは既に買ったも同然!!
 私は! 猫だ!! ฅ•ω•ฅ」
 興奮のあまり誤字しつつ、高笑いをする。実際の所、改めて派閥を図ってみたところほんとに3:5だった。え、良いの皆?
「いいですか!?
 たまきちは猫なんですよ!
 あの二又に分かれた尻尾、ぴょこんとした三角耳!
 とてもかわいらしいじゃないですか!
 猫吸いしたくなります!」
 与一がハァハァいいながらそういう。生粋の猫派がここにいた。
「それはちょっと怖いのだが……」
 汰磨羈がちょっと引く。
「なんにしても、これで私は猫だという事が証明されたわけだ!
 じゃあ、もうこんなリプレイ書かなくてもいいだろう!?
 私は猫! Q.E.D.! 終わり! 解散! 以下リザルト!!!!」
「そう言うわけにはいかない!!」
 紫電が、ばあーーーっ、って手を広げながら言った。
「ふふふ……どうやら《令和猫狸合戦にゃんぽこ》の決着をつける時が来たようだな、たまき……いや、たぬきちぃー!
 オレのマッサージ術でごろごろさせて猫から狸にしてやるぜぇー!!」
 ぶわぁーっと千手観音めいた残像を見せながら手をわしわしさせる紫電。今、たぬきとねこの果てしないバトルが始まろうとしている!!!
「私には人間のように見えますが、ご本人がねこというのならねこなのでしょう」
 ふむん、と瑠璃が嘆息する。瑠璃は冷静である。この状況にまだ飲まれてはいなかった。まぁ、もうすぐ飲まれて滅茶苦茶になるよ。
「いささか風紀を乱しがちな服装ではありますが。不思議や神秘の殆どない現代日本風世界から転移してもうじき6年、混沌ならそういう事もあるものだと随分慣れました。
 ところで、一般的に猫と狸は間違えないものですが、人に化けている前提だと区別がつきにくいものなんでしょうか」
「そうだよ!? 普通間違えないよ!? なのになんで私たぬき扱いされてるの!?」
「そもそも仙狸って意味でややこしくなっているのが悪いのです」
 ぎゃおーん、と吠える汰磨羈へ、Lilyがうんうんとうなづく。
「せん……せんたぬき……」
「せんり、な!? ヤマネコの妖怪だぞ!? 皆覚えて帰ってくれ!!」
「え!? ヤマネコの妖怪!? それって狸より高く売れまして!?」
 ヴァレーリヤが死んだ魚みたいな目で言った。
「たぬきだったら、珍しいから高く売れますわ!
 妖怪だったら、多分珍しいから高く売れますわ!
 つまりどう転んでも高く売れますわね!」
「白い狸なんてまあレア中のレアでしょうからね。
 そりゃ高く売れるでしょうけどぉ」
 ゼファーが胡乱気な表情でヴァレーリヤへと視線を送った。こいつ絶対問題を起こすぞ、という瞳だった。実際問題を起こしたのは、上記のとおりであるのだが、今はさておき。
「つまり……たまきは、しろいたぬき?」
「洗脳されているぞLily!!」
 汰磨羈が、ぎゃー、と悲鳴を上げた。今回割とテンションが高い。
「まぁ、私たちで決めるのはさておいて。
 なんにしても、ダンジョンを攻略しないと出られないのよね? こっちのたぬきさん?」
 ゼファーがそういうのへ、たぬきが頷いた。
「はい。絶対出さないもん」
「というわけだから、さっさと次に進みましょ?
 まぁ、たまきちはたぬきち派としては、いろいろ遊ばせてもらうけれど」
 ゼファーが悪戯っぽく笑ってみせるのへ、汰磨羈ががるる、と唸った。
 そんなわけで、狸ダンジョンへのエントリーである!

●たぬきとねこの試練
 此処は狸式睡眠エステゾーンです……。
「今のお前達は特異運命座標ではない。
 治療(あんみん)が必要な狸(かんじゃ)なのだ!(ギュッ)(めちゃくちゃいい顔)(イケボ)」
 紫電が濃い顔をしながらギュッってやった。スーパーエステティシャンSHIDENとなった紫電の手にかかれば、猫派と言えど、今は安眠できる時代になったのだ!
「エステ? ハハーン、練達で高級エステを受けている私に、そんなものが通用するとでも?
 こんなモノ、猫にとっては朝飯前。だよなぁ、ダイス役の猫チャンッ!!!」
 ダイスを振る役の洗井落雲の家の猫に語り掛ける汰磨羈。うちの猫はオァーみたいな声を出しながら液体おやつを食べています。ご期待ください。
「いくら完璧で究極のネッコーだと主張しようが、眠ってしまえばたぬきちは最強で無敵のタッヌーなのだ……!」
 わしゃわしゃといった感じで主張する紫電。とはいえ、聞きかじりの医療技術と医療知識により、紫電は眠りのツボを学んだ。学んだとプレイングに書いたからには学んだのだ! そうなれば、汰磨羈を眠りに落とすことなど、容易!
「おっと、させませんよズサーーッ!!」
 と、飛び込んできたのは与一だ!
「この拙者、エステなんてものは受けたことありませんが、エステごときではねませんよ! さぁこい紫電殿! 拙者は肩を揉まれただけでふわぁ~ってなるぞっ!」
「よかろう! 最先端の治療で癒し殺されるがよい!!」
 紫電の手が一子相伝の暗殺拳みたいにあたたたたっ、となる! 次々と的確な力加減で押されるツボ! 程よい力加減でほぐされる肩! それから耳元でふーっ、ってやられるASMR! すべてが紫電が各地で学んだエステの力だ!
「な、なんという……! こ、これがエステの力ですか!? 信じられませんぐーっ……いや、今のは寝ていません!
 寝て居ませんったらすやぁ……」
 うとうととし始める与一! これは紫電の一本勝ちか!?
「こ、こうなったら、突然ここにある自爆スイッチを!」
 耐え切れなくなった与一が、自爆スイッチを押下した! 途端! 強烈なたぬき爆発が巻き起こり、エリア中が煙に包まれた! そして、なんやかんやとうやむやになったのである……ダイス振るまでもないな!

 さて、ちょっと先取りして、ここで信楽焼を焼く部屋を覗いてみましょう。
「ふむ……猫。知っているぞ、うん」
 得意げに、むふー、と胸を張るのはエミリーである。手で粘土をこねこねしながら、
「まかせてくれ、たまき殿。貴公の猫としてのプライド、私が守って見せよう。
 私がこれより作るのは、私の世界の東方で有名だったネコ型ロボットの信楽焼だ!
 まるかいて」
「ストーーーップッ!!!」
 汰磨羈が突っ込んできた。
「それは! たぶん狸判定になるから、ノウ!」
「いや、でも、この青い猫」
「だめ!」
「駄目か……そっか……」
 しゅん、となるエミリー。何時か青いタヌキの信楽焼をちゃんと作れるといいね。
 一方、Lilyは一生懸命、信楽焼の招き猫を作ろうとしていた。
「しろうとはだまっとれ……」
 ぷい、と表情をきめつつ、ぐにぐにと粘土をこねる。そこへ、つつつ、とゼファーがにじり寄ってきた。
「あら、良いわね。招き猫?」
「うん。いいでしょう?」
「そうねー。
 あ、とりあえず今は夏でバカ暑いですし?
 麦わら帽子とか被せて季節感出してもいいと思うのよね。
 なんなら三度笠ってヤツでもOKよ」
「なるほど……やってみますね」
 こねこね。
「あー、そういい感じいい感じ。
 それからね、置物にも愛嬌って大事じゃない?
 ってことで目は大きく、くりっとした感じにして、
 首も傾けて、なんかきょとんと見上げてる様な感じにしたら可愛いわよね?」
「確かに、上目遣いな感じってかわいいのです……やってみますね」
 こねこね。
「おっ、よくなってきたわ、よくなってきたわ~!
 そうそう。此のテの動物はお腹のむっちり感大事よね?
 ちょっと盛り過ぎなぐらいでも柔らかそうでいいと思うわ。
 あとそうね、毛色は黒とかブラウンとかにして。お腹は白のツートンとか気分だわ」
「うん、でぶねこ、かわいいですよね……できました!」
 とん、と、Lilyが完成した招き猫を、台の上に置いた。
 信楽焼のタヌキだった。

●幕間
 ヴァレーリヤが天かすをあげていた。
「この揚げたての天かすとお酒の匂いで、たぬきどもを一網打尽!
 まとめて鉄帝の動物園に売り払って、酒代の足しにしますわ~~~!」
 すごいよヴァリューシャ! 商才があるね! って聞こえたような気がした。さておき、ヴァレーリヤは天かすの入って炎上した油を、その辺の部屋に放り投げる(フラグ)。
そのまま、ダンジョンにいた適当なたぬきに声をかけた。
「ねーえ、そこの狸さん。ちょっと如何ですこと?
 なんと今なら、メイラード反応たっぷりの美味しい天かすが食べ放題ですのよ」
 黒こげどころか炎上している天かすを見せつけながら、ヴァレーリヤが精いっぱいの甘い声を上げる。こ、こんなえっちなヴァリューシャ見ちゃだめだよ! って聞こえた気がした。
「いえ……自分今ダイエットで油物は避けてるので……」
 丁重に狸が断ろうとするのへ、ヴァレーリヤが縋り付いた。
「そんな……ちょ、ちょっと待ってくださいまし! せめて、そう、毛皮! 毛皮とか売ってみませんこと!? いいお金になると思いますわ~~!」
 ヴァレーリヤが、たぬきに縋り付きながらずるずると引きずられていく。そうなると、当然のごとく、炎上した天ぷらと天ぷら油が残ることとなったのである(フラグ)。

●最終決戦! ねことたぬき!
 というわけで、ここは宴会場である。宴会場とは宴会場であって、宴会をする場所である。ここで酒に酔っぱらっていい感じになると、たぬき認定をされるのだ!!!
「酔ってはいけない……のですね。
 私はアルコールには酔わない体質なので、ちょうどよいかと」
 ふむ、と瑠璃が、いつの間にかセッティングされた居酒屋みたいな部屋の椅子に腰かける。テーブルの上には、アルコールが置かれていた。それと、おしながき。注文したら持ってきてくれるらしい。
「ふむ……これは楽しめそうですね。意外と……料理の種類も多い。
 そう、こういうのでいいのですよ、こういうので。ふふ」
 焼き鳥を注文して、ひとくちかじる。意外と本格的なそれのあまじょっぱいたれの味が、口中に広がった。
 周りを見てみれば、皆ぎゃあぎゃあと騒ぎながらも、なんだかんだで楽しそうに宴会を楽しんでいるようだ。
「それにしても、皆さん随分楽しくお酒を楽しまれるのですねえ。
 普段は旅先の食事も一人で済ませますので、このように多人数で騒ぎながらの食事はなかなか機会がありませんでした。
 私も有名な居酒屋がもう少し近くにあれば、色々楽しく飲食したり飯テロ画像配信できたりしたのでしょうか……」
 つ、と日本酒を飲みながら、そんなことを考える。なんとなくaPhoneを取り出して、料理の写真を撮ってみた。楽しい、と、なんとなく思ってしまう。注文した焼き魚の身をほぐしながら、二杯目の日本酒を口に含む。よく冷えたそれが、日ごろの疲れをとってくれるかのような気持ちだった。
「そう言えば、他の皆は……」
 視線を向けてみれば、汰磨羈が居酒屋の真ん中で、だんっ、とグラスを飲み干したところである。
「いくぞ! 猫だってなぁ、飲めるんだよ! 酒を!
 んでなぁ、前ッから言いたかった事をぉ、言わせて貰うとだな!?」
 つまみに頼んだほっけ、そのほねをぴーっとはがして、ほくほくの身をはしで取り出す。ぱくり、とかじれば、口中に香ばしい魚の味が広がるものだ。
「タヌキはぁ、カワイイ!! 確かにカワイイ!! モフモフ!! 冬毛の時なんか特に最高ッ!!
 んでな、私は可愛い。可愛いぞぉ? だからな、可愛いつながりでタヌキ扱いしたい気持ちもよっっっく分かる!」
 程よく油としょっぱさに慣れてきた舌を、冷えた米酒で、きゅっ、と洗い流す。そうすれば、またすぐに次のつまみと、酒が、頼みたくなってくる。
「だがな? 私はぁ、ねこなのだよ。立派なねこ!
 んー、残念無念! タヌキにはぁ、なれないんだコレが!」
 じゅわあぁ、と油の滴る焼き鳥に七味をパラパラと振りかけて、一気に齧る。
「最高か……?」
 満面の笑みで汰磨羈が声を上げた。これは酒に酔ってるのではないだろうか。酔ってる気がする。
「私も、一応お酒は飲めるのですよ」
 ゆっくりとLilyがグラスを傾ける。今日も一日大変だった。信楽焼も作ったし、信楽焼も作った。
「……ゆっくりしてもいいですよね……」
 サラダなどをつまみながら、のんびりと。アレ、これこういうイベシナだったっけ……?
「では、志屍 瑠璃、一曲歌わせていただきます」
 と、カラオケ設備の前でマイクなんぞを握りながら、気づけば瑠璃がカラオケを熱唱していた。なお、あくまで酒には酔っていないので、顔はポーカーフェイスである。場の雰囲気にはバリバリに酔っていたが。酔いすぎて何曲目の歌かなんて忘れていたが。けっこうたぬきたちが盛り上げてくれるので、最終的にポーカーフェイスが崩れてにこにこだったが。
「……あれ? 何か焦げ臭いですね?」
 瑠璃が小首をかしげる。Lilyが頷いた。
「きっと、信楽焼の火なのです」
「あー、そう言えば焼いていたな。というか、隣の部屋が凄い高火力だな。ここに放り込んでおけば焼けるだろう。ぽおい」
 ぐでんぐでんに酔っぱらった汰磨羈が、信楽焼のたぬきを隣の部屋に放り投げた。投げた。そのまま、さぁ、と顔が青ざめた。
「火事だーーーーーッ!!」
 たまらず叫ぶ! そう! 火事である!
「火事!? まぁ、なんてことですの!?」
 ヴァレーリヤが白々しく叫ぶ!
「こうなってはいけませんわ! さぁ、たぬきの皆さん! 脱出ですわよ!」
 こうなっては、もはやてんやわんやである。たぬきの試練どころではない。たぬき、そしてイレギュラーズたちは、必死に洞窟から脱出したのであった――。

●そして冒頭に戻り、話は終わる。
「……で」
 と、連行されていったヴァレーリヤの後姿を見ながら、瑠璃が言った。
「結局、汰磨羈さんは、ねこなのですか? たぬきなのですか?」
 その言葉に、答えられるものはいない。ぐだぐだで、うやむやになってしまったからだ。
 でも、それでいいのかもしれない。ねこかたぬきか。それは見るものによって変わるのだ。シュレディンガーのたまきちなのだ。
「……次は、ちゃんとしたたぬきに会いたいものだな……」
 エミリーが、青い信楽焼の猫を抱きながら、そう言った。
 いつか会えるといいね……。
 終わり。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 あれ? うやむやになったなら、このシナリオ失敗判定になるんじゃ……?

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