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シナリオ詳細

<烈日の焦土>カルネと鉄帝ウォークライ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「やあ、君も来てたんだね」
 鉄帝国の小さな酒場。ローレットのイレギュラーズがよく集まるというこの場所に、見目麗しい少年が入ってきた。酒場にいるには似つかわしくない童顔だが、きっちりと成人である。
 彼の名はカルネ。ともすれば女性と見まがうような、お人形めいたその顔立ちと立ち振る舞いはやはり印象に残りやすい。
 彼はあなたの向かいのテーブルに座ると、依頼料となるコイン袋と一緒に一通の封筒をテーブルに置いたのだった。
「君に依頼したいことがあるんだ。話、聞いてもらえるかな」

 ブランディーヌ・シャノワール、という人物がいる。
 彼女はカルネの母親だが、色々な確執があっていまではあまり連絡をとっていないらしい。
 カルネはそれを子離れだよと説明するが、いつも悲しげな微笑みがついてくる。そのくらいには、微妙な間柄なのである。
 先ほどテーブルに置いた封筒は、そんなブランディーヌからの手紙であるようだ。
 カルネは慣れたような手付きで封筒を開くと、畳まれていた便箋を広げる。
「『0075分隊が命令違反。幻想王国に向けて進発す。暴走の危険あり』」
 どうやら内容を読み上げたようだ。便箋一枚に書き記すにしてはあまりに簡潔な文章で、母が子に送る手紙にしてはあまりに不格好だ。カルネもそれは分かっているようで、眉を寄せて苦笑する。
「母さんらしくない文章なんだよね。手紙を出すときは、もっと細かいことをくどくど書いてくるのに。母さんも、やっと僕から離れようとしてくれたってことなのかな」
 ま、それは別にいいんだ。とカルネは便箋をテーブルに置いて文章を指さした。
「それでも送ってきたってことは、重要だってことだよね。この0075分隊についてちょっと調べてみたんだけど、南部戦線で活躍していた部隊だったよ。幻想側の部隊が牽制ばかりして戦いに持ち込んでこないから、こちら側もそれに乗る形で『平和的な戦争状態』を維持してた部隊なんだって。
 要は、敵国同士ではあるけど殺し合うのはやめて、形だけにらみ合っていようねってこと。
 そんな部隊が突然幻想側に向けて部隊を動かした。これってやっぱり変だよね。どこかのクリスマスパーティーでもあるまいし、さ」

 0075分隊はゲルヒャート大尉によって指揮された鉄帝国の部隊である。
 ゲルヒャートは理性的な人物で、幻想王国が牽制だけを行うならと平和的な戦争を行ってきた。とはいえ部隊の戦力は本物で、いざ戦うとなれば戦車や大砲とぶつかり合うことになるだろう。
「調べを進めてみたら、『聖ロマスの遺言』っていう聖遺物が関係してることがわかった。
 これはいわゆる『呼び声』の拡散装置でね、人々を狂気に陥れ暴走させる力があるみたい。
 おそらくコレの効果でゲルヒャート大尉たちは幻想王国への攻撃っていう暴挙に出てしまっているんだ」
 次いで、カルネは一枚の地図をテーブルに置いた。
「進発した部隊を迎え撃てるように、幻想側のミルチヒ男爵領には話を通してある。僕たちでゲルヒャート大尉の0075分隊を迎え撃って、この暴走を止めよう」
 急ぎのことで部隊の装備や戦力の詳しいところまではわかっていないが、戦車が投入されていることや大砲の存在は確認できている。なかなかにアーミーな集団であることだろう。
「彼らだって本当は殺し合いなんて望んでないんだ。僕たちの手で、正気に戻してあげなくちゃ。一緒に、やってくれる?」

GMコメント

●シチュエーション
 ゲルヒャート大尉の部隊が聖遺物の力によって暴走し、幻想王国へ侵攻しようとしています。
 彼らを迎え撃ち、その暴走を止めましょう。

●エネミー
・ゲルヒャート大尉
 0075分隊の指揮官にしてエース。高周波ブレード二刀流を主とした近接戦闘に優れたアタッカーとして知られる。
 非常に機敏で素早く、こちらの攻撃をかわして鋭い一撃をいれるという戦い方をしてくるだろうと思われる。

・0075分隊
 戦力不明の部隊。戦車や大砲が投入されているとのことで、結構な火力が予想される。
 こちらもそれに対抗できるだけの防御や回復、そして攻撃力を備えていこう。

●正気に戻すには
 彼らはかなりタフな戦士なので、『トドメを刺さない』限りは殺さずに捕らえることが可能です。
 殺さずに捕らえ、持たされている聖遺物を破壊することで彼らを正気に戻すことが出来ます。
 もし不安なら不殺攻撃を備えていくと安心安全でしょう。
(厳密には聖遺物を破壊することで呼び声を止め、捕らえて色々することで長期的に狂気を治療する流れになります)

●味方NPC
・カルネ
 この戦いにはカルネが同行してくれます。
 不殺攻撃の他、連鎖行動を備えています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <烈日の焦土>カルネと鉄帝ウォークライ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年07月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
三國・誠司(p3p008563)
一般人
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

サポートNPC一覧(1人)

カルネ(p3n000010)
自由な冒険

リプレイ


 古戦場、であると言われている。
 倒れた石の柱や崩れた壁や、乱立する障害物。
 中には横転した軍車両などもあり、真新しい戦闘のにおいを感じさる場所だった。
 そんな場所で、倒れた車両に背を預けるようにしてカルネは懐から一枚の封筒を取り出し、眺めていた。
 依頼を説明する際に出していた、母からの手紙だろう。
「ブランディーヌさんか、久々に名前を聞いたな。元気にしてる……のかな?」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)の問いかけに、カルネは苦笑をした。
「わからないや。あえて連絡をとってないし、ね。けど元気じゃ無くなる姿は想像しづらいかな」
「けどそういう連絡をしてきたってことはさ」
 石の柱に腰掛けていた『一般人』三國・誠司(p3p008563)が、水筒に入ったコーヒーを飲み干してからそれを鞄にしまう。
「カルネくんもお義母さんも、不器用ながらも前に進もうとしてる。
 あの時のカルネくんの頑張りは無駄じゃなかったってことかな」
「どうだろう。けど、そうだね」
 曖昧に頷くカルネ。親子とは切りようのない縁だ。あの、迷子の子犬みたいだったカルネがはっきりと『苦笑』できるようになったのだから、きっとこれは成長なのだろう。
 その一方で、石壁に寄りかかっていた『駈ける一歩』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)が何か考えるように口元に手を当てた。
「カルネくん。今回の戦いはブランディーヌ殿が報せてくださったんだよね。
 カルネくんも頑張ってくれたんだもの。絶対にみんな正気に戻そうね」
「うん、それは勿論――」
 と続けつつ、本題が別にあることをカルネは察しているようだった。
「…あのさ、おせっかいなのは承知しているんだけど、お母さん、もしもちょっと変だなって思ったら。様子を見に行くのも、いいのかも」
 リュカシスのいわんとすることはよくわかる。
 あれだけ情緒の安定しない女性だ、『聖ロマスの遺言』など効果てきめんだろう。
 カルネはすこしだけ考えた後で、静かに『うん』と呟いた。
「この戦いが終わったら、手紙を出してみるよ」

 カルネと母の話題があがる一方で、『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)たちはやはり今回の主題。つまり0075分隊とゲルヒャート大尉について考えていた。
 刀の柄をトントンと指で叩きながら、ラムダは青い空を遠く見つめる。
「やれやれ……南部戦線で同じ轡を並べていた身としては今回の暴挙見過ごすわけにはいかないね?」
「依頼じゃないければ、鹵獲して調べたい所だけど、軍人達を放置するわけにはいかなしね……」
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)がひとこと物騒なことを言ったが、ラムダはスルーして話を続ける。
「話し合いで解決はできると思う?」
「無理でしょう。それができるなら、派遣されてるのは『私達』じゃない」
「かも」
 そこまで暴力装置なつもりはないが、少なくとも依頼内容が戦闘し撃滅せよにはならないだろう。
「けどこれって、どういう扱いになるんだろ。悪人退治じゃないよね」
「暴走による本意でない戦闘を止めるってのは、私的分類だと……救助かな」
 そう答えたのは『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)だった。
「とりあえず行動不能にすればって辺りは人道的な依頼よね。
 あの戦線の城塞で会ったかもだし、丁寧にやっていきましょ!」
 バルナバスと戦った今、南部戦線はすっかり戦友だ。
 そんな彼らが望まず暴走しているというなら、確かにそれは救助のたぐいと言えるだろう。
 そんな一方で『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)はというと。
「まーた聖遺物絡みかぁ。
 その分隊の人達もきっと、自分の心を誰かにいいようにされちゃってるんだよね。
 ……そういうのボク大っ嫌いだからさぁ。
 絶対その人達助けて、絶対聖遺物ぶっ壊してさぁ。
 絶対いつか黒幕ぶっ殺してやりたいよ!!」
 いつもの調子で暴力的な衝動を隠すこと無く、今すぐにでも暴れたいといった様子で剣と盾を既に掴んで離さない。
 小さく息をつく、『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)。
「この世界を前にして、人の心は時に脆い物なのだわ。
 この世界には、人の心を乱して狂気に貶める物が多すぎる」
 思えば幻想に狂気のサーカスがやってきた時からそうだった。
 尊い人々の生活を、人生を、歪めて壊してしまうものばかりだ。
「だから戦う力が欲しいのだわ。
 本当は戦う前から戦いを無くせるだけの力が欲しいけれども。
 今はまず、死なせずに戦いを制圧できるだけの戦う力が」
 平和な世界を手に入れるためには、まずは戦わなくてはならない。
 華蓮は弓をケースから取り出すと、つるをはって荒ぶりそうな精神を鎮めるのだった。


 華蓮が飛ばしたファミリアーからの観測情報によれば、接近している0075分隊は教科外骨格(パワーアーマー)を装着した一個分隊であるらしい。主力として魔導装甲で覆われた戦車が配備され、伸びる大砲と機関銃が鈍く黒い光を放っている。
 特に手強そうなのが、戦車の上に仁王立ちしてこちらを威嚇するように睨んでいる二刀流の男。おそらくあれがゲルヒャート大尉だろう。
 ゲルヒャートがふわりと戦車から浮きあがる。飛行機動装置。それも低空飛行を常とするタイプのものだろう。
 宙空を滑るように走るその様は堂々として、それでていて――。
「指揮官が真っ先に向かってくる!?」
 情報を聞いていたカルネが驚きに声を上げる。
 次郎丸を控えの目として呼び出していた美咲は、鋭い声でヒィロを呼んだ。
「お願い、抑えて!」
「まっかせて!」
 ゲルヒャートめがけ突っ込み、盾を構える。
 回転し繰り出された二刀の剣が盾を斜めに削っていくが、ヒィロはそれを達人的技量によって受け流した。
「その身のこなし、ただものではないな。首を落とせるきがせん」
「今ので分かったの?」
「ならばこれでどうだ!」
 ゲルヒャートは腰からワイヤーアンカーを射出。ヒィロの肩にアンカーを引っかけると無理矢理自分の方向へと引き寄せた。回避不能。必中の技だ。
 ヒィロのような『初見殺し』を相手に即座に必中戦法に切り替える手際といい、その用意の良さといい、とんでもないエースに違いない。
 ヒィロは覚悟を決めて剣を繰り出し、ゲルヒャートの斬撃を無理矢理半減させた。
 今回のチームは治癒の手段が限られる。ヒィロのことを誰よりも理解している美咲は、イズマへ振り返ってハンドサインを出した。
「了解!」
 サインの内容は『抑えの治癒に回れ』である。
 細剣メロディア・コンダクターを手に周囲の敵の掃討に当たろうとしていたイズマは方針を早速変更。飛んできたワイバーン『リオン』に飛び乗り騎乗状態となると、ヒィロたちの上をとって『治癒爆撃』を行った。
 要するに治癒の力を固まりに変え、今まさに激烈にぶつかっている二人に叩きつけ味方だけを治療するという作戦である。
 敵も敵で必中作戦をとってきているだけあってダメージ量もそこまで大きくないはずだ。これでなんとかしのげるだろう。
 と、そんな中、戦車が激しい轟音と共に魔導砲弾を発射してきた。
 激突した石壁が爆発したように吹き飛び、その後ろに身を隠していたカルネたちがまとめて吹き飛ばされる。
「うううっ!?」
 地面を転がり、思い出したように小石や砂が雨のように降る。
「皆、大丈夫!?」
「大丈夫は大丈夫だけど、あれはヤバイね」
 誠司が立ち上がり、御國式大筒『星堕』を構えた。
「大砲にはこだわりのある方だけど、ちょっと威力に振りすぎてない!? すぐにでも潰したいんだけど――」
 と言い出した途端、随伴していた歩兵たちが肩に担いでいた大砲を構えた。
 『いい!?』と顔を引きつらせる誠司。
 砲撃と砲撃が交差し、爆発と爆発がそれぞれにおこる。
「ちょっと歩兵が邪魔すぎるんだけど!」
「仕方ない。露払いを担ってあげようかな?」
 アイリスがべこべこになった廃棄車両の影から身を躍らせると、匠の隠密機動装甲『是空』白銀にエネルギーをみなぎらせる。隠密浸透能力に重きを置いた外骨格だが、かといって直接戦闘能力に秀でていないというわけではない。むしろ、充分過ぎるほど優れている。
「今から引き返すならば良し。それ以上前へ進むのなら、ちょーっと痛い目にあってもらうよ?」
 ダンッ、と踏み込んだ足がまるで撃鉄が銃弾を叩いた瞬間のような音を響かせ、歩兵との距離を一気に詰める。
「まぁ、聞いちゃあいないよねぇ。警告はしたよ?」
 歩兵が近接戦闘のために剣を抜いたか抜かないかというその瞬間に、アイリスは既に相手の側面に立っていた。
 身を振らせるほどの暇は与えない。
 強化外骨格の脚部パーツを刀によって切断し、その場に派手に転倒させた。
「兵站部にどやされそうだけど仕方がないよね必要経費ということで泣いてもらうとしよう」
「なるほど、足か! カルネくん、行くよ!」
 誠司はキャノンを構え砲撃。放った弾はトリモチ弾だ。
 それが歩兵の脚部に命中し、無理矢理に足止め。
 銃を構えたカルネはそんな歩兵めがけて銃撃をしかけまくった。
「リュカシス!」
「任せて、暴れるよ!」
 リュカシスは専用カスタムパーツ『鉄鋼千軍万馬』を起動。ギュウインと独特の音を響かせたかと思うと、背負っていた機械の固まりが腕を通して展開。巨大なグローブ状になって拳を覆った。
「――ッ!」
 あまりの迫力に半歩さがりそうになる歩兵。その胸部めがけて思い切りパンチが叩き込まれ、歩兵は戦車の後ろへと吹き飛んでいった。
 それが幾度もくり返される。
「今のうちに戦車を抑えるのだわ!」
 華蓮は自らの強化と仲間の強化を同時に行いながら『神罰の一矢』を発射。
 魔導装甲に守られた戦車に突き刺さった矢は、その装甲をばきりと破壊する。
 装甲バリバリの戦車と木で出来た弓が互角に戦うのがこの世界のルールだ。そして力は力として正しく機能する。
 戦車は次の砲弾を放とうと砲身を向けるが、内側でなにかがあったようで次の弾が発射されない。
「どこの世界でも戦車ってのは背面、上面装甲は薄いものでしょう!たぶん」
 駆け寄り、上部から撃ち込むように『神幸~腐~』を放つイナリ。
 瞬間的に戦車の上に移動して立つと、『稲荷式九式短機関銃-改』を構えた。
 真上から思い切り撃ちまくる。
「良い調子ね」
 美咲の計算では戦車や大砲を抑えるのに必要な人数は3~4人といったところ。歩兵をなぎ払うのにアイリスやリュカシスたちが活動してくれているので、自分の役目は戦車の殲滅といったところだろう。
 鞄から取り出したのは、包丁。
「流石に正面から戦車斬りは無茶だけど、良く視て狙えば、止めるくらいはね」
 それこそ現代日本人が目を疑うような状況だが、彼女は戦車相手に出刃包丁一本で立ち向かおうというのである。
 そしてそれは、正しい。
「切断線――そこ」
 美咲の『目』によって見ることの出来た切断可能なライン。それに正確にそうようにして放たれた包丁が、戦車の砲身をすぱんと切断してしまった。
 続けて華蓮やイナリの射撃が撃ち込まれ、戦車がボンッと音を立てて破裂する。
 それまできゅらきゅらと動いていた履帯も外れ、戦車はもはや大きいだけの障害物と化してしまった。
「さて、次は……っと」

「南部戦線のエース級か……実力は高いだろね。
 此れは手を抜けないね さて、本気で征くよ?」
 アイリスが強烈に踏み込む。ダッシュ、というより地面と水平な跳躍だ。
 元南部戦線傭兵が一人……ラムダ・アイリス推して参る。なんてね?」
 魔導機刀『八葉蓮華』の魔力収斂圧縮加速機構によって繰り出された超高速の居合い斬りが、しかしゲルヒャートの剣によって止められる。
 いや、とめきれていない。
 衝撃が殺しきれず、ゲルヒャートは大きく吹き飛んだ。
 イズマはワイバーンから飛び降りて着地すると、『響奏撃・創』を繰り出した。
「目を覚ませ! 0075部隊は秩序なく進軍するような部隊じゃないだろう!?
 戦いの中にあっても踏み留まる選択をした事を思い出すんだ!」
 イズマの繰り出す正確無比な連撃が空を越えて切り裂き、ゲルヒャートがそれを二刀の剣でギリギリ弾く。
 弾ききれないダメージが飛行機動装置を破壊し、ゲルヒャートは地面を転がった。
 華蓮がここぞとばかりに弓を構える。
「躱せるものならやってみて!奇跡<クリティカル>でも起こせるならね!」
 ゲルヒャートがヒィロに対して行ったように、ゲルヒャートに対しても有効な戦術がある。それが必中戦術だ。
 華蓮の放つ矢は『願い』違わずゲルヒャートの腕に突き刺さった。
「まずいな。相手が精鋭すぎる。だが……越えてみせる!」
 機動装置をパージし、走り出すゲルヒャート。その時点での速度はアイリスが見せたような弾丸めいた速度だった――が、それを受け止めたのがヒィロであった。
「エースって言われるくらい強い人と真正面からやり合うのって……案外悪くないかも。アハッ」
 ゲルヒャートの剣が、ヒィロの剣と盾によってがっちりと止められる。
 このまま押し切ることは不可能だと、ゲルヒャートの勘が言っていた。どんな知識や経験よりも、それは役に立つ。
 ならばと飛び退こうとしたゲルヒャートに、追撃が走る。イナリによる『神幸~攻~』の瞬間移動攻撃だ。
 ゲルヒャートの眼前に突如として移動したイナリは蹴りを繰り出す。距離が近すぎたせいか剣でうけきれず、ゲルヒャートは両腕を交差させることで防御。
 思い切り蹴り飛ばされ転がったが、ゲルヒャートはすぐに起き上がった。
「ここまでやるとは……ハハッ、楽しいな。南攻めをした甲斐があったというもの!」
「待って。それは本当に望んだこと?」
 美咲が駆け寄り、ヒィロとの絶妙なコンビネーションをみせながらゲルヒャートに斬りかかる。
 連続攻撃が重ねられ、さしものゲルヒャートもそれらの攻撃を受けきれなくなっていった。
「当然、私は命令を受けて――」
 そこまで言って、ゲルヒャートは顔をしかめた。
「命令? 誰にだ? なぜだ、復唱できない。私はなぜ戦っている!?」
「そこまでくれば上出来!」
 ヒィロと美咲の斬撃が同時に放たれ、それを剣でギリギリうけたゲルヒャートは飛び退く。
 が、それ以上さがることは許さなかった。
 後方に回り込んでいたリュカシスのグローブが展開。手のひらめいたインパクトドライバーへ変形すると、ゲルヒャートめがけて叩きつけた。
「ぐおっ!?」
 接触直後、衝撃が走る。
 まるで映画にうつる中国拳法のごとく放たれたそれは、ゲルヒャートを今度こそ吹き飛ばした。
 走り出す誠司。
「カルネくん! 一緒にいこう!」
「うん! ……うん!?」
 一瞬『僕を盾にするつもりじゃないよね?』と思いながら頷くカルネ。
 が、二人は倒れたゲルヒャートを押さえ込むと、その懐に入っていた聖遺物を引っ張り出した。
「誠司!」
 カルネがそれを勢いよく空に放り投げる、大砲を構えた誠司は、宙を飛ぶ聖遺物にキャノンをぶっ放したのだった。


「よもや……我々が暴走し南攻めをおこそうとしていたとは……」
 正気に戻ったゲルヒャートが額を抑え、唸る。
 分隊の面々は気絶したまま起き上がらない。正気に戻すにも時間がかかるのだろうが……ゲルヒャートはさすがというべきか、既に意識がはっきりしているようだった。気の持ちようからして訓練しているのだろう。どんな時でも一瞬で正しき任務をこなせる精神状態になれるように。
「君たちには感謝してもしきれんな。何かあれば、力を貸そう。ひとまず今は、彼らを回収して引き上げねば」
 始末書もたんまりと書くことになるだろうなと苦笑して、ゲルヒャートは通信用の鳩を飛ばすのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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