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シナリオ詳細

<黄昏崩壊>悪天劈和

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<黄昏崩壊>悪天劈和
 覇竜領域デザストル。
 竜種達の生きる地であると友に、外界との交流も限られた、そんな地。
 イレギュラーズ達の来訪によりて、竜種と人々の間の絆が紡がれる中……亜竜集落『フリアノン』において里おじさまとして活動していた彼が『冠位暴食』ベルゼーであると判明。
 彼は深い森が拡がる『ピュニシオンの森』の先にある、『ヘスペリデス』の地へと退く。
 それを追跡したフリアノン里町『珱・琉珂』ら、イレギュラーズ達は悪毒渦巻く『ラドンの罪域』の地を乗り越え、『ヘスペリデス』の地へと辿り着く。
 新たなる地に辿り着いたイレギュラーズ達は、その地を探索すると共に、女神の欠片を確保する事で、少しでもベルゼーに近づこうと活動を行う。
 幾つもの女神の欠片を確保し、あともう少し……と思われた、その時。
 今迄空に拡がってい綺麗なた晴天の空は、突如として雷鳴が轟く。
 更には、どんよりと黒く澱んだ空が覆い隠し、『ヘスペリデス』の地は薄暗く沈んでしまう。
 突然の事態の急変に驚くイレギュラーズ達、そんな彼らの下に。
『……今すぐ、立ち去れ。お前達は、この地に居てはならぬ」
 地に響くが如く咆哮と、最大限の威嚇が込められた言霊が鳴り響く。
『何故? ……今迄、一緒に里おじさまを助ける為に頑張ってきたのに!』
 そう琉珂が訴えかけるが……竜種達は。
『再度言おう……この地を立ち去れ……大切な者を傷つけさせたくは無いのだから』
 琉珂の言葉に、再度の警鐘を鳴らすのであった。


「……ごめんね。このような状態になってしまって」
 一旦、安全な所まで避難した琉珂は、イレギュラーズ達を前に、頭を下げる。
 空の急変と共に、イレギュラーズ達に強い警鐘を鳴らしてきた竜種達。
 あともう少しで、里おじさまを救えると感じていた琉珂。
 彼女にとっては……女神の欠片を集める事で、ベルゼーに逢えるかもしれない、と思って居ただろう。
 だが、琉珂を否定するかの様に、竜が告げた言葉。
 その言葉を胸の中で、何度も何度も繰り返しながら。
「あの竜が言って居た……大切な者を傷つけさせたくない、って言葉。きっと……彼らは里おじさまの下に向かうでしょう。ならば、竜種の皆さんを追いかければ、里おじさまの下に辿り着くかもしれない。勿論、竜種の方々の妨害は避けられないと思うの」
「彼らの忠告に大人しく従えば、私達に危害を加えて来る事は無いのかもしれない。でも、きっと……そうなれば里おじさまともう会えなくなるような、そんな気がするの。だから……みんな、力を貸して欲しいの。彼らの向かう先へ……ついてきて欲しい」
 覚悟を決めた表情の琉珂……そしてイレギュラーズ達は、荒れ狂う『ヘスペリデス』の空の下、竜種達の向かう方向へと向かうのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 突如の天変変異、イレギュラーズ達に牙を剥く竜種達……果たしてヘスペリデスはどうなってしまうのでしょうか。

 ●成功条件
  『ヘスペリデス』にて、竜種の妨害を乗り越えて、ベルゼーの下に近づく事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   ヘスペリデスは、突如として雷鳴とどろき、空は黒い澱みに侵略されて薄暗い状態となっています。
   幸い、暗視が必要……という程度ではありませんが、とは言え一変した光景ですから想定外の事態が起こる可能性もありますので、準備は念には念を入れる様にして下さい。
   竜種達の動きは、地をとどろかせながら行動している為、その向かう方向は分かるでしょう。
   とは言え彼らも勘が鋭く、イレギュラーズの皆様が近づいてくればすぐに反応し、これ以上は通さない……とばかりに牙を剥いてきます。
   当然彼らは空を縦横無尽に飛び回る事が可能故、彼らをパスして先に進むなんて事は出来ません。必ず彼らと相まみえる必要が有ります。

 ●討伐目標
 ・ベルゼー様を護る為に立ち塞がりし竜種
   『チブレアース』に連なる者、と名乗りし竜種です。
   先へ進むイレギュラーズ達を妨害(迎撃)する事が目的ですので、皆様が撤退すれば追いかけて殺す……という様な事は有りません。
   しかしながら竜種ですので、その体力、攻撃力、防御力全てが秀でている強敵です。
   様々な属性(バッドステータスを与える)ブレスを吐き付ける系統の攻撃と、その爪で切り裂いたり、翼をはためかせて強風を吹き付けさせる行動は1刻の内に同時に行います。
   ブレスは広範囲に麻痺を与える『雷』、継続ダメージを与える『炎』、氷付けにして行動を一旦停止させる『氷』の三属性。
   一方で爪攻撃は『毒』効果を与える単体高攻撃力な一撃、『翼』をはためかせるのは皆様を吹き飛ばし、全体的に敵とのレンジを1広げさせるという行動を行いますので、両者の攻撃にご注意下さい。
 
 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <黄昏崩壊>悪天劈和完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年06月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
幻夢桜・獅門(p3p009000)
竜驤劍鬼
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

リプレイ

●雷鳴轟下
 雷鳴がとどろき、まるで地獄絵図かの様な風景を描く覇竜の地、ヘスペリデス。
 かつては色とりどりの花々が咲き、澄んだ湖が目を楽しませてくれていたというのに……今や見る影も無い。
「……全く。一気に変わりすぎだな。まぁ天義で慣れてはいるが……」
 肩を竦め、苦笑を浮かべるのは『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)。
 イレギュラーズとして、今迄にも幾つもの緊急事態に直面してきた。
 今回も、この覇竜にとっての緊急事態であるのは間違い無いだろう……その根本となるのは、冠位暴食の名を持つ『ベルゼー』。
「ベルゼー……か」
 雷鳴とどろく空を見上げながら、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)の呟く言葉。
 その言葉に『堕ちた死神』天之空・ミーナ(p3p005003)も。
「そうだな……ベルゼーからすれば、例え魔種であったとしても、この覇竜に居る者達を守りたい……という事なのだろうな」
 顎に手を当てて深く思慮する。
 勿論ベルゼーが魔種であるのを知らずに対峙していた時には、彼が魔種であるだなんて思わなかった事だろう……。
「それにしても、ベルゼーおにーさんの愛情は、暴食の性質ゆえのものなのでしょうかね? それとも、元々持ち合わせて居た生まれながらの気性なのでしょうか……?」
 と『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)が小首を傾げると、それに『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)からは。
「総じて人の内面ってのは、表には出てこないもんだ。内にこの空の様な思いを抱きつつも、外面は人当たり優しい、とかな……? ま、魔種であるから故に、一度その力が溢れ出たが故に、この様な結果になってしまった……ってな事が言えるかもしれんがな」
「そうなのね……でも、反転を元に戻す手段は研究されてるわ。冠位である彼らを魔種として無力化する事が出来ないなどと、どうして決めつけるのでしょうね? 私は、好きですよ。ベルゼーおにーさんも、他の冠位も。あ、色欲のだけはちょっと鳴かせたい所ですが」
 くすりと笑うフルールに対し、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は。
「うん……ベルゼーが拒否しているからこそ、あの空を飛ぶ竜種達が彼を守ろうとしているんだろうさ。でも……それでも僕らはベルゼーの所に行くしかないんだ。取り返しがつかなくなる前に、間に合わないといけない。だからこそ、立ちはだかる竜種に恨みは無いけど……何としても押し通るんだ!」
 ぐっと拳を握りしめるヨゾラ、それに『威風戦柱』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)も。
「ああ……私は別にベルゼーに興味があるという訳では無いが……クリスタラードに借りを返さないといけないんだ。この程度……と言えば不遜極まるだろうが、今ここで止まる訳には行かんのだよ」
 真摯な口調の中には、不退転の覚悟が見え隠れする。
 ヘスペリデスにとどろく雷鳴をこのまま放置すれば、覇竜の国にも自ずと何らかの影響が出る可能性は十二分にある。
 故に厳しい戦いが予測されていたとしても……強敵である竜種らが待ち構えているとしても、イレギュラーズ達は退く訳にはいかない。
「ま、此処はあくまで竜達の領域だ。私達が侵入者である事に違いは無い……彼らも全力で挑んでくるのは間違い無いよ。勿論無様に負けようだなんて思って居ない。さぁ……覚悟を決めて行くとしよう」
 『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)の言葉に皆も頷き、そしてイレギュラーズ達は雷鳴鳴り止まぬ『ヘスペリデス』の先へと進んでいくのであった。

●劈く雷鳴
 かくしてイレギュラーズ達は、ヘスペリデスの地を進む。
 雷鳴と共に、竜の咆哮が鳴り響く方角へと歩を進めるイレギュラーズ……さすれば彼らの視界に入るのは当然のこと。
『来るな……! これより先、立ち入ること叶わぬ……それでも足を踏み入れるのならば、死を迎えるのみ……!』
 怒りを孕んだ竜種の宣告が、イレギュラーズに響きわたる。
 当然その声を聞けば、本能的に危機感を覚える者も居るであろう……だが、易々と去る訳にはいかない。
 毅然とした態度でエーレンとルーキスと皆よりも一歩前に進み出ると。
「……断る。イレギュラーズはこの先に進む。そして、ベルゼー氏と相対するとも」
「『帰れ』、って言われて、『はいそうですか』で片付くなら苦労しないんだよねぇ……キミ達も、そろそろ学習するがいいさ」
 自信満々な態度の二人の言葉に、空から声を降り注がせた竜は……その大きな翼をはためかせ、強い風を吹き荒れさせながら、地上へ着陸。
 ギロリと情報から睨み据えると共に。
『もう一度言おう……去れ!』
 短い言葉の中に、彼の纏いし全霊の怒号……その心の中に、僅かながらも恐怖を抱く。
 だが、それをおくびにも出さず、獅門とフルールが。
「おうおう、お気遣いありがとうよ。だが……俺達もこう見えて、結構しぶとくてな。お前達が心配している通りにはならねぇさ。そりゃあ少しは怪我をするかもしれねぇが、あんた達も似たようなもんだろう?」
「ええ……竜は本当に雄々しく、猛々しい種ですね。惚れ惚れするほどに。私達には無い、個としての強さは本当に尊敬します」
 と、敢えて竜を褒め称える。
 だがしかし、竜は低く唸り声を上げて威嚇……それに。
「まぁ……簡単に諦めるような物分かりのいい生き物ならば、こんな場所まで足を運んだりしないのさ。イレギュラーズの諦めの悪さは鉄壁だよ? あ、これは褒め言葉だからね」
「確かにな……結局、ここのところは意地の張り合いなんだけど。そう……ベルゼーは、あんた達にも、私達にも生きていて欲しかったから、原罪なのに皆を愛して慈しんだんでしょう? それなのに、暴走するベルゼーを止めないで……何が御身の為なんだか」
「そう……ミライは、わからない。ベルゼーを救えないかもしれない。けれど、まだ終わっていない。ベルゼーは貴方達を喰らいたくない。けれど、もう何百年も前に一人を喰らったのでしょう? それを嘆いた彼に、このままだとあと何回、繰り返させるつもり?」
「ああ。無銘の竜よ、その警告がベルゼーを心から難じてのことなのは、痛い程分かる。だが……その気遣いは、本当に彼が望んだものか? 彼は自分が愛したものを喰らうことを望んでいるのか?」
 ルーキス、ミーナ、イーリン、エーレンが次々に言葉を紡ぐと、獅門からも。
「そうだ。俺達は死なねぇし、ベルゼーの旦那を止める。だから先に進ませてもらうぜ。信じられねぇって言うなら、今ここで、どんだけしぶといかを証明してやるぜ!」
 ニヤリと笑みを浮かべる獅門……しかし頑なに道を譲ろうとせず、立ち塞がり続ける竜の巨躯。
 そんな竜の頑固さに、くすりと笑うルーキス。
「まぁ……そういう訳だよ。私はこんな特異点の足掻きを遠目に観劇している方が性に合ってるんだけど、こうして働けって引っ張り出されたんだから仕方ないよね。手伝うくらいはしますとも」
『あいわかった……ならば、お前達を死に至りしめるがのみ……!』
 雷鳴と共に地を振るわす咆哮、大きく口を開き……その喉元から炎が渦巻き、その場に焔を撒き散らす。
 咄嗟にその攻撃を回避するが、彼は更にそらの雷鳴をとどろかせて、戦場に降り注がせる。
 二つの混合攻撃、流石に交わしきれずに体力が削られる……でも、すぐさまメーヴィンが手を結び、ヨゾラが星の祝歌で、仲間達に癒しを届ける。
「味方の回復の時間を作れれば御の字……さぁ、早めに倒してくれ賜えよ?」
 メーヴィンの言葉に頷き、そして。
「『連なる者』よ。私は貴方に名をつけたりしない。そのあり方が、貴方を示しているのだから。敬意を、そして、私たちはより良い未来を得るために、貴方に挑む。私達の未来を、信じてほしい……『神がそれを望まれる』のだから」
「そうだね。教えて上げるよ。時には喧嘩する事も愛の一つだってね?」
「はい。ここは押し通らせて貰います。あなた達竜種のためにも……あなた達が愛するベルゼーおにーさんのためにも」
「ああ……俺達にも正しい道は分からん。だから俺達は先へと進む。進まなければ、確かめられないからな! さぁ……鳴神抜刀竜、霧江詠蓮だ……押し通る!」
 イーリン、ミーナ、フルール、エーレンが其れ其れの思いを口にし、竜と対峙。
『ならば、お前等に力を以て、理解させてやろうではないか……!』
 牙を剥き、目を見開いた彼の口元に、紅蓮の焔がとぐろを巻く。
「炎のブレス、来るよ!」
 と、ヨゾラが咄嗟に注意喚起を叫び、各々が一旦近接距離から離脱……その場所に炎が吹き疲れ、地面に生える草木は瞬く間に焼け焦げていく。
「中々に攻撃力は高めの様だな……だが、だからといってこっちも引き下がる訳には行かないからな……」
「うん。君に恨みなんてないけれど、邪魔をするなら……押し通る!」
 エーレンの言葉にヨゾラは頷き、仲間達よりも一足早くエーレンが地を蹴り斬り込む。
 当然のことながら、竜は巨体故に避ける事は出来ない。
 しかしながらその巨躯の誇る体力は人並み外れており、普通にやっても、その体力を削る事は難しいだろう。
 でも。
「俺が一番素早いんだ。真っ先に痺れさせてやる」
 エーレンはダメージを与える事よりも、その動きを制限するべく、雷神の一閃を叩きつける。
 彼に続き、前線のイーリン、メーヴィン、ヨゾラが連れ立ち行動。
「取りあえずあの翼から来る吹き飛ばしには注意ね。となると、ラインを取って攻撃しましょ」
「ああ、了解だ」
「よーし! それじゃ行くよ!!」
 三者其れ其れ、直線上に並ぶと共に、次々と行動。
 イーリンは弟子のマニエラにアイコンタクトすると行動を遅らせ、仲間達に発破を掛ける。
 そしてヨゾラ、ミーナに続け、獅門も行動を重ねて攻撃を開始。
 先ずはミーナが切り込んでの一閃で血色のを降り注がせつつも、即座にヒットアンドアウェイで間合いを取る。
 その開いた所へ続く獅門が竜撃の一刀で斬りかかり、同時にヨゾラもその拳に星を纏わせての、渾身の一殴を叩きつけていく。
 三人の攻撃を喰らいし竜は、少しは効いている様に見えるが……まだその足取りはしっかりとしている。
 いや、むしろイレギュラーズの攻撃を待ち構えていたかの如く、周囲に雷撃のブレスを吹き付けて麻痺の効果を纏めて付与してくる。
 動きを封じられると共に、更に続けて絶対零度の氷のブレスを吹き付け、足元を凍り付かせてその場に縛り付けようと。
 やはりそこは、流石の竜種達だと言える威力で、三人はかなりのダメージに晒されることに。
 でも、それを見越していたのは、イーリンとメーヴィン。
 敢えて行動を遅らせる事で敵の攻撃を見定めた上で。
「まぁ、ナインはともあれだ。私は戦えない故ね。加減は無しで行ってくれ。弾ならこちらで用意しよう」
「そうね。皆の背後は私達に任せなさい」
 そう二人は仲間達を激励し、削られた体力を可能な限り、そして速やかに回復する。
 そのおかげもあり、戦線を下げる事はなく維持。
 そして仲間達の行動の最後にルーキスは。
「さぁて、この世界の竜に挨拶と行こうか! 私の眷属達!」
 声を張り上げ、眷属を召喚すると共に、歪みし銀鍵から作り出した雷陣を叩きつけ、彼の抵抗力を大きく削ぐ。
 更にフルールも、その攻撃に重ねるように紅の棘を張り巡らせてからの蒼き静かな炎で彼の身を燃やす。
 燃え上がりし炎に体力はジリジリと削られ、その翼の先も炎が燻る。
 ……でも、それでも決して退く事は無く、苦しみの声を上げながらも翼を大きくはためかせて炎を消失させる。
『許さぬ……赦されぬ……! お前達を、この先へと向かわせる訳には……ならぬ……!』
 竜の紡ぐ言葉は重厚ながらも、決して譲れぬ線が見え隠れしている。
 それ程までに、何故にベルゼーを守ろうとしているのだろうか……とも思うのだが。
「何故、そこまでして守ろうとしているのだ?」
『お前達には、関係の無い話……!』
 ミーナの言葉に取り付く島も無し、攻撃に傾注。
 ……その熾烈な攻撃に、幾度となく膝を折ってしまう者も少なくはない。
 だが。
「僕らはベルゼーの所に行かなきゃいけないんだ! 誰一人として倒れさせてたまるかよ!」
「そうだ。大切な者を傷付けさせたくねぇって言うけどよ、あんた達の事もベルゼーの旦那は大切だろう。あんた達は良くてお嬢はダメなのか? 頑丈さならこの通りだぜ!」
 とヨゾラは仲間達を鼓舞し、獅門は竜に挑発をかわしつつ、竜の攻撃を惹きつけ、イーリン、メーヴィンの回復の時間を稼ぐ。
 そして……再び立ち上がると共に。
「私は誰かを想うあなた達を否定しない。あなたのその感情を愛しく想います。だから、私も喰らいます……あなたのすべてを、その命の焔を。真火で呑み込んで、ね?」
「そうだ。窮鼠は猫を噛み殺す。いかに存在強度の高い竜とはいえ、人に負けることを覚えておくといい」
 フルールの焔と、メーヴィンの呪鎖が絡みついて、敵を縛り付けようとする。
 流石にその巨躯を完全に縛り付けることは叶わないが……足止めには効果を発揮し、多重攻撃の幾つかは妨げられる羽目になる。
 ……そして、十数刻の末にその身から幾つもの血を流し始めた彼。
『はぁ……はぁ……この……不届き者共めが……!』
 睨み据える竜の、怒りの咆哮が地をとどろかせる。
 だが……怯みはしない。
「神でも悪魔でもない。望むことをされるのは、この世界に生きる皆だ」
「その通り。さぁ……そろそろ頃合いかなっと」
 ミーナの言葉に頷き、ルーキスは不敵に頬身、高破壊力の魔力を彼の身に直撃させる。
 ルーキスの渾身の一撃を流石に堪えるのは難しいが……倒れる事はない。
『仕方ない……覚えていろ、お前達……!!』
 よろめく身を踏みとどまりなつつ、その翼を大きくはためかせ、強風を戦場に巻き起こす。
 抵抗するが、ジリ、ジリと押し返されるイレギュラーズ……その間に大空に飛翔し、その場から離するのであった。

●晴れなる道程
 そして……。
「……終わったみたいね」
 深く息を吐き、空を見上げるイーリン。
 咆哮を上げて飛び去りしかの竜。
 その咆哮は、彼らの心を恐慌へと誘い、足止めの中に踵を返す。
 踵返した竜が向かうのは、一つの方向……恐らくその方向に『ベルゼー』は居るのであろう。
 勿論、すぐい追いかける事は容易い事。
 しかし、傷だらけのイレギュラーズ達が深追いしようものなら、死する事は充分に有りうる。
「ふぅ……やれやれ。そこまでベルゼーに心を砕いて、どうするんだか。幾ら何でも過保護すぎじゃないかなぁ?」
 とルーキスが肩を竦める。
 それにフルールは。
「確かにそうね……彼は私達に『チブレアース』に連なる者とはいってくれたけれど、己が名を教えてくれはしなかった。恐らく『チブレアース』が、ベルゼーに連なる眷属の一派なのは間違い無いでしょう。己が名を口にすること無く、盾となるべく竜の一体として……」
 何度か問うも、頑なに名を口にしようとしなかった彼の心の強さは、チブレアースと、ベルゼーに対する深い忠義の現れなのであろう。
 ともあれ、己が身の傷を急ぎ癒し、程なくして。
「……それじゃみんな、もう傷の具合は大丈夫かしら?」
 とイーリンが言うと、メーヴィンはこくりと頷き。
「ああ……問題無い。ここで立ち止まっている訳には行かないしな」
「そうね……それじゃみんな、行きましょう。彼の望む未来を探すとしましょう。私たちは、それに連なるのならば」
「そうだね……僕らの諦めの悪さを舐めるなっての。ベルゼーと会うまで、絶対に僕らは諦めはしないんだから……!」
 イーリンの言葉には拳を振るわせて、雷鳴とどろく空に向けて叫ぶ。
 その声に気付いた竜の群れ……だが、それに構う事無く、同じ方向に向けて飛翔。
「良し……皆、いいな?」
「ああ……! 気合い十分、それじゃ行こう!」
 ミーナに獄門が頷き、そしてイレギュラーズ達は竜の集まりし奥地に向けて歩を進めて行くのであった。

成否

成功

MVP

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。
ベルゼーの為に行動を取る彼らの本心は、一体何だったのでしょうかね……。
何にせよ、彼らを撃退し、ベルゼーの下に一歩近付いた事は間違いないでしょう……頑張って下さい。

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