＜廃滅の海色＞海といえば酒であるが故に

オープニング

●神の国にて
　『占い師』の女、ベアトリーチェ・ラ・レーテの残した傷痕は未だ癒えず。
　信じていた聖教会内部に不倶戴天の敵である魔種が存在したことによる国政への不信。
　そして天義の掲げ断行してきた正義への不満から生じた国そのものへの不満。
　そんな中で天義に降りた新たな神託は『主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ』という国内を揺るがすものでであった。
　箝口令が敷かれていようと、シェアキムや騎士団を偽の預言者や歴史を歪めた悪魔であると糾弾するそれは大きな波紋を呼んでいた。
　少し前に発生していた――鉄帝国との国境沿いである『殉教者の森』に姿を見せた『ベアトリーチェ・ラ・レーテ』の暗黒の海と汚泥の兵達。致命者と呼ばれた人々。
　其れ等は歴史修復のための進軍であったと告げるかのようだった。
　加えてエル・トゥルルにおける聖遺物の汚染。
　天義の巨大都市テセラ・ニバスを侵食した『リンバス・シティ』の顕現。
　様々な暗躍はしかし――イレギュラーズの協力により、深刻な事態は避けられていた。
　そして、今……リンバス・シティの調査は、その果てに一つの新たなる領域を見つけ出した。
　それが『神の国』と呼ばれる、ルスト陣営が広げている空間の事だった。
　この地は天義の国に『帳』として降ろされ定着されているリンバス・シティ……とは異なり、まだ『現実に定着していない領域』であるという。
　聖遺物を核としているこの領域は、言うなればリンバス・シティの前準備の空間。
　時間をかけて定着する事によって――いずれは第二・第三のリンバス・シティも出来上がる事だろう。
　故に。イレギュラーズには新たにこの地の調査・核となり得るモノの破壊依頼が舞い込んだのだ。
　そして、今。天義を中心に広がっていたその動きは、新たな局面を見せつつある。
　幻想で……そして今度は、海洋で。
　その恐るべき企みは今この瞬間も進行中だったのだ。
　だった、のだが。
「我等が聖拳よ」
「なんだ？」
「この光景は、一体……」
　建物の屋根の上から町を見下ろす２人のうち、少年がそう困惑した声をあげる。
　そう、この場所は海洋王国の１つの港町に見える……が、今は神の国である。
「見ての通りだ」
「どんちゃん騒ぎをしているように見えます」
　そう、酒を飲んでどんちゃん騒ぎをする光景がそこにはあった。
　少年が困惑している理由は１つ。此処には廃滅病が蔓延しているはずなのだ。
　廃滅病。現実ではすでに解決したはずの、あの恐るべき病だ。
　それが、この場所には存在している。だというのに、この光景は何なのだろうか？
「難しい話ではない。酒に逃避することで、明日への不安を忘れる。ただそれだけの光景だ」
　明るさと、その裏に潜む無数の不安。ただ単純にそれだけの話だ。
「つまり、救われているわけではない……」
「救いは正しき時に行われる。それまでは逃避も良い選択ということだ」
　そうだろうか。それは分からない。
　しかし、単純に逃避とも言い切れないのではないだろうか？
　明日は良い日であれと望むのは、そこに人の根源があり……あるいは酒とは、そこに至る為の手段であるかもしれないのだから。

●飲むことが救いになる
「というわけでまあ、信じられねえことに飲んで解決する神の国が出たです」
「海洋でしたか。今回の海洋の神の国に関しては、どのような……？」
　スーツ姿でキリッと言う『ファンドマネージャ』新田 寛治（p3p005073）に、【旅するグルメ辞典】チーサ・ナコック (p3n000201）は「まあ、表面上ですがめっちゃ明るいです」と答える。
　神の国。リンバス・シティの前準備の空間と呼ばれる場所。
　リンバス・シティと比べると『神の国』は地への定着率が低く、現時点では存在しているが、梯（道）がなければ至る事の出来ない領域で、聖遺物などを梯にしてようやく移動できる地であるのだという。
　言ってみれば、今のうちにどうにかしておかなければならない場所……ということだ。
　しかしその神の国だが、テセラ・ニバスの帳（異言都市（リンバス・シティ））の内部に存在していた『アリスティーデ大聖堂』より『神の国』の各地へと移動できるようになったのだ。
　簡便に言えば空中神殿でのワープのような役割を果たしているようだが……まあ、要は便利になったということだ。
　そしてそんな中に、今回の神の国「港町サケカース」はあった。
　現実の海洋の町と似てはいるが、かの廃滅病が蔓延しているという点では大きく違っていた。
　いた、のだが。どうにも町の人間が全員飲んだくれ、明るい表情で酒盛りをしているのだ。
　どうもこの町は酒が名産ということになっているらしく、浴びるほどに酒がある。
　酒を飲み、歌って踊って不安を吹き飛ばすことで明るい雰囲気が保たれているようだ。
「今回の聖遺物ですが……『聖デアブロの酒樽』です」
　また酒樽である。天義の聖遺物はどうなっているのだろうか？
「どうも由来に海洋も関わっているらしく、そのせいもあるかもですが……この酒樽は、常に１００年モノの赤ワインを湛えているという聖遺物らしいです」
「それを壊す方法、とは」
「飲むです。明らかに１樽以上湧き出てくるワインを飲み干すです。それと町の性質上、辛気臭え顔は禁止です。つまり……」
　その言葉を待っていたとばかりに寛治がスーツを脱ぐと、その下からアロハが現れる。
「お任せください。この新田寛治。そういうのは少しばかり得意です」
「少し……？」
「ヒャッフー！　さあ、仲間を集めますよ！　選ばれし酒の戦士たちを！　あ、つまみの領収書はローレット宛ですかね!?」
　まあ、そういうことらしい……！

参加者 : 8 人

冒険が終了しました！　リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧（8人）

リプレイ

●酒を飲め
　酒とは、人間の本能に根差したものだ……と言った奴がいるらしい。
　その是非はさておき酒とは時として神聖なものとして扱われる。
　つまり「神の国」において酒が出てくるのも自然なことであり……海洋という酒と密接な関係のある場所にそうした場所が出来るのもまた、当たり前とも言えるのだろう。
「では、乾杯（はじ）めましょうか。これは、世界を取り戻す飲み会（たたかい）です。普段の酒クズ面子なら、開幕からイッキに飛ばすのですが……今回はこの手の依頼が初の方も多い。あまり飛ばしすぎるとパーティが分裂しかねません。まずは彼らに場に慣れていただけるよう、ゆっくりとスタートしましょうか」
　『ファンドマネージャ』新田 寛治（p3p005073）がそんなことを言っていたのかえーと、何時間前だっただろうか？
「酒が飲めるぞ！　ラムないの？　船乗りといえばラムっしょ。赤ワインだけなんてそんなお上品なことでやってられるか、こちとら喉にガッと来るようなのがほしいんだよ！」
　おっと、早速『若木』寒櫻院・史之（p3p002233）が仕事を忘れている。まあ、結果的に聖遺物を壊せれば問題なしといったところだろうか？　赤ワインをグイグイやりつつラムも飲んでいる辺り、仕事は覚えているようだ。
「ラムといえばどっかの国では、とある提督の死体を保存のために樽へ漬けてたんだって。でもみんなが盗み飲みしちゃって、樽、空になっちゃったんだってさ。俺も妻さんへ血をあげてはいるけど死体のエキスでた酒とかよく飲めんな。まあ偉大なる提督へあやかりたかったのかな？　よくわかんないけど」
　いや、だが雑学を語り始めている。やっぱりダメそうだ。
「赤ワインも赤ワインで神の血とか呼ばれてんだっけ。食を通して上位のものと同一化するって世界中に類型が見られるし人類的に不変なのかな？　よくわかんないけど」
「まあ、そんな話は分からんが！　史之に誘われて豊穣から出てきたら、こりゃまたなんつー天国だ！　飲むぜ飲むぜー！　酒樽空になるまで飲むぜー！」
　御饌津神と史之がカンパーイ、とやっているが……うん、完璧に出来上がっている。
　さておき『波濤の盾』エイヴァン＝フルブス＝グラキオール（p3p000072）も、ガンガン飲んでいた。
「神の国や聖遺物ってのは便利なもんだな。いやまぁ、もちろん褒められたもんじゃないのはわかっているが……仕事にかこつけて飲む酒がまずいわけがない。とりあえず、つまみは経費で落とす！」
　仕事で飲んでるんだから仕方ないね。領収書はローレット行きである。
「さて、とりあえず赤ワインを飲み干せばいいわけだが……なんか、ラム酒の匂いもしているのは気のせいか？　気のせいじゃないなこれ。いや、のめること自体は別に構わんし、赤ワインも飲んでしまえるなら問題はないが、多分大丈夫……でもなさそうだな？」
　言いながらエイヴァンは周囲の仲間たちを見る。具体的には寛治を見る。
「チェイサーもご用意いただけるとは。悪酔い対策は完璧ですね」
　普通に見える。いや、違う。寛治の眼鏡が光り始めている。
「……いけない。こんなゆっくりまったりとしたペースでは、全ての樽を飲み干すまで何日かかるか分からない。ここは私がペースメーカーとなり、徐々に速度と酒クズ度合いを上げて行きましょう。まず住人や影の天使は地元のダチコーになってもらいます。はい乾杯！！　はい乾杯！！　何で彼らを呼ぶのかって？宴席は人が多い方が楽しいですし。それに敵ならいくらでもアルハラし放題ですから（酒で無力化できるなら効率的で安全ですから）！　おっと本音と建前が逆に。いやどっちも本音ですねこれ」
「良し止まれ」
「新田殿の新田殿（眼鏡）が!?」
　エイヴァンのチョップで飛んだ眼鏡が『疾風迅狼』日車・迅（p3p007500）に装着される。
「えーと……どうも、新田寛治（日車迅）です」
「何を言ってるんだ……」
　そんな一発芸が披露されている間にも寛治は復活している。
　ジョッキのサイズをメガジョッキにしたり、水や氷や割材の量を減らしたりと、会場全体のアルコール度数を上げていくのはなんかこう、その手を他で使っていないだろうな貴様という鮮やかさである。
「私、余所者でございますが、海洋をリスペクトして！　船乗り流でラム酒飲ませていただきます！　水は貴重品！　船乗りらしくラムを飲むならストレートで！　イッキに！　さあさあ、エンジンが掛かってキましたよ。さあ、ここからが本番だ！」
　なんか凄いことになっているが、まあ大丈夫……だろうか？
「いや、明らかに飲みすぎてるやつもいるだろこれ。俺はまぁラムは経費でいつものんでるんで、今は少しだけにしておこうか」
　言いかけて、エイヴァンは手元のジョッキを見ながら考える。
「まぁ……でももうちょっとだけ飲んでも、呑まれることはないな。ラムも後10杯ぐらいはいけるか？　赤ワインなんてジュースみたいな物だしな！　飲めばラムも適度に薄まるってもんよ！」
　おっと、すでにダメになってきている。そんなダメ人間の一杯集まったこの場所には未成年もいる。勿論未成年は酒など飲まない。
　そのまま良い大人になってほしいが……具体的には『苦い』カトルカール（p3p010944）である。
「かんぱーい……って、おいーっ！　何かもう既に酔っ払ってる！　ていうか。こ、この大人達……聖遺物は赤ワイン（の入った樽）って言ってるのにラム酒飲んでる……だと……！？　ちゃんぽんする気満々だ……！？　くっ、正直なんで上司が未成年の僕にこの依頼を渡してきたか全くわからないが、飲めない以上は仕方ない！　こうなったらこの酔っ払いの大人達をサポートして僕の分までしっかり飲んでもらうからな！　覚悟しろよ！！」
「素晴らしい！」
「よっ、一人前だな！」
「う、うるせー！」
　ダメな大人たちから上がる歓声にそうカトルカールは返すが、こういう時に1人だけお酒を飲めない年というのは不運である。
　とにかくやるべきことは何か？
「真っ先に思い浮かぶのは料理でつまみを作ることだな。困った時のゴリョウ印の食材。さあ僕は酒に詳しくないから赤ワインには肉とチーズが合うってことしか知らないぞ！　しっかりオーダーしろよな！」
　エイヴァンが「有難いな」と笑っているが、もう結構ダメな目をしている。
「おつまみはステーキね。カトルカールくん、料理よろしく！　あ、ミディアムレアがいいな、俺。塩胡椒でザッと下味つけてガーッと焼いてガーリックチップスもたっぷりね。付け合せはほどほどでいいよ。今日の俺はなんだかとにかく肉が食いたい。赤身の！　やーらかいやつ！　歯ごたえしっかりでもいいよ！　とにかく、肉ね！」
　史之などは、早速オーダーしている。
「なんていうの？　マリアージュ？ そんなものはよくわかんないけど俺の胃が求めているんだ酒と肉をな！　なんかもうそれだけでお腹いっぱいになりたい感じだよ。楽しみだね」
「ええと、ステーキ（ミディアムレア）と肉とチーズ大盛りだな。ラム肉、なんかランプステーキとか人気だよな」
「ところでお酒もですがこのチーズ美味しいですね！」
「うわあもう食べてる！」
　盛ったチーズを迅がモグモグしているが、あると食べちゃうのは酒飲みの悪いところである。
「えーと、気を取り直して。赤身の刺身のたたき……カンパチで大丈夫か？　枝豆もそろそろ時期だよなー。トマトと魚がいいのか？　じゃあ白ワインで蒸してアクアパッツァにするか……」
「なんだ肴に迷ってるのか？　それなら今から適当に釣りをしに行ってだな……あ゛～、でも竿がねぇか……なら、あのイカって食えるのか？　流石に廃滅病にかかったイカを食うのはまずいか？　でも、火を通せばいけんじゃねぇか？　いや、そもそも元々は人間だよなあれ……」
「依頼の情報が酒ですっぽ抜けてる……！　ほら、水沢山あるからジャンジャン飲め！　潰れないために！　ちゃんと！　いっぱい飲めよな！　水！！」
「チェイサーもご用意いただけるとは。悪酔い対策は完璧ですね」
「カトルカール殿が水飲めって言ってましたからね。万全ですよウェヘヘヘ」
　酒瓶を抱えている寛治とラム酒を水とライムで割っている迅が何か言っているが、もう駄目であるこの男ども。
「あーいい気分になってきました。いえ最初からいい気分ですけど。何て言うか今が最高の気分ですよ。え？　いいえ、まだやれますよ。まだまだこんなものじゃないですよ。常に過去の自分を越えて行け。一秒前でも過去は過去です。お肉美味しい」
「エンジンが掛かってキましたよ。さあ、ここからが本番だ！　はい、一発芸！　眼鏡割り樽イッキやります！」
　寛治もエンジンがかかって……２段エンジンか３段エンジンかもしれないがテンションが高くなってきている。
「樽に眼鏡を入れてワインの眼鏡割り！　その樽を抱えてイッキ！（※特殊な訓練を受けています）　そう、酒クズと言えどアルコール耐性は無限ではない。しかし！　我々はパンドラによる強制復活ができる！　つまり、この樽を飲み干して討ち死にしても、パンドラ復活してもう一樽行けるという事！」　
　もう駄目であるこの男ども（２度目）。

●それでも酒を飲め
「大号令をっすか……豊穣の民としても、かの偉業を否定なんてさせな……ちょっともっかい依頼の資料読み返すっすね」
　寛治とエイヴァンが協力宴会芸・大回転寛治独楽をやっているのを余所に『歪角ノ夜叉』八重 慧（p3p008813）はキリッと真面目な顔で依頼書を読んでいた。
「飲酒とはいえ仕事じゃ。しっかりと仕事……んぇ？　か、寛治が……!?　どうなっとるんじゃアレ!?」
「え、どうなってるっすかアレ。え、輝いて……曼荼羅!?」
　『海淵の祭司』クレマァダ＝コン＝モスカ（p3p008547）の声に振り向いて何か非常に凄まじい光景を見つつも、慧は何とか依頼書の読み直しを追える。
「……酒は飲めますが強くなくて泥酔する前に止めちゃうんすよ、でもこれ泥酔不可避……」
「やったー！　かんぱーーーい！　酒を呑むぞ酒を呑むぞ酒を呑んで酒樽を空にするぞー！　いぇーい！　もういっちょかんぱーーーーい！！　酒を呑むぞ酒を呑むぞたまにつまみ食べて酒を呑むぞいぇーい。酒おいしいおつまみおいしいやったー！」
「かんぱーい！　あれ新田君、イメチェンした？」
「ヨゾラさん！　新田寛治はこちらですよー！」
「バカな……新田さん、いつから樽に……！」
「ダメな大人が増えていく……！　なんで僕がこんな目に……！」
　史之に絡んで樽にも絡むヨゾラをカトルカールが引きずっていく。
「カトルカールさんの作るおつまみおいしいなぁ。よーし僕も頑張って飲むー、合間に水も飲むー！」
「もっと水飲め、水！」
「宴会芸……宴会芸かぁ。ゲーミング魔術紋ー！　眼鏡割り……って僕の伊達眼鏡は大切なものだしパンドラだし代わりに樽に頭から顔突っ込んで一気飲みしまーす」
　そうしてぶくぶくと樽に突っ込んでいたヨゾラは、近くを通っていく住民に声をかける。
「ひっく。ねぇねぇ赤ワインがめっちゃ溢れまくってる酒樽知らない？」
「アンタからたっぷり垂れてるな」
「確かに！」
　一通り笑うと、ヨゾラは楽しいのかそのまま歌い始める。
「おーさけーおさけー赤ワインー！　普段なら香りや味わいを楽しむんだけど量呑まなきゃいけないからとにかくのむのむいぇーい」
　その様子を見て、慧も覚悟を決める。
「もおお！　恥投げ捨てりゃいいんすね！　唸れ防御技術（タンク）！吠えろ特殊抵抗（かんぞう）！　は？俺が盾役（タンク）だからって容量も多いわけがない？　うるせえ胃壁が頑丈なんすよ多分！」
　そう覚悟を決めると、クレマァダと飲み始めるのだが。
　実はクレマァダ、お酒飲み１年生。
　大人どもがやんややんやと吞んでいた液体は思いのほか性に合っていたので、色々知りたいお年頃である。
「ワインを飲めば良いのじゃな。それにしても全くお主等はすぐ脱線するのう！　今この時にも世界が浸食されてうんぬん力ある者の自覚をヒック」
「俺飲むの日本酒多いんすけどラムやワインも良いっすね、任務とは言えお酒美味し……海といえば魚と思ってたんで、タタキもめっちゃ美味いですありがとうございます、うめぇ……赤ワインといや肉らしいっすが、赤身魚は合うって聞いて気になってたんすよ。楽しくなってきたっすね～」
　なんか結構すぐに駄目になってきた２人を見てカトルカールが「あ、ダメだな」というあきらめの表情になる。
「あっ盛り上げるのに芸やるっす？　まぁそれっぽくイッキすればいいのでは！？　棘と書いて絡み酒と読む！　敵にも飲ませりゃ世界は平和樽を干せえ！　それが無理なら醤油ひっ被ってツマミになれ！　あとは明日の俺（二日酔い）に任せるっすよぉ！」
「それは何じゃ？　らむ？　ひつじさん？　違う？　気になるのじゃ。飲んでもよいのかの？　美味しいのじゃ……これは幸せなのじゃ。甘くしよう、もっと甘くすると美味しいと見たぞこれ」
　おっと、慧は早々にダメになって迅と踊っているが、クレマァダもダメになってきたようだ。
「我、もっとのんでみたいのじゃ。勉強……あれじゃ、そう、お酒の知識が～、その。美味しくなるのじゃ。これは美味しいのじゃ」
　なお慧と迅は情熱的なタンゴを踊り始めている……リズムは適当だがアレはタンゴだ。情熱が見える。
「……はっ、一発芸が求められておる？えっとじゃな。寛治の眼鏡をこのグラスに……いや、おさけと寛治に対して失礼じゃ。よくない（えらい）」
「はい、眼鏡割り！」
「ずるい！」
「えっ、どうしました!?」
　そんなことがありながらも、クレマァダは飲み続ける。
「世知辛いのじゃ……こういうのはあれじゃ……世界の……ええと、歪みとかそういうアレの……お酒が……お酒がおいしいのじゃ……おつまみもおいしいのう。作った子はよい子じゃのう。ほめてあげよう。なでなで」
「それは樽だなあ……」
「樽は偉いのう……はあ～～～もうこのまま寝てよいかの？　ひんやりしてきもちいいのじゃあ。ぐう」
　そんなクレマァダをカトルカールが回収するということもありつつも。
　なんだかんだで聖遺物は飲み干して破壊できたらしい。
　あ、それとダメな大人たちは後でちゃんとカトルカールにごめんねできたらしい。
　めでたしめでたしである。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

カトルカールとダメな大人たち。
ご参加ありがとうございました！