シナリオ詳細
<天使の梯子>飲め飲み干せ、盃を掲げ樽を空にせよ
オープニング
●顕現する神の国
『占い師』の女、ベアトリーチェ・ラ・レーテの残した傷痕は未だ癒えず。
信じていた聖教会内部に不倶戴天の敵である魔種が存在したことによる国政への不信。
そして天義の掲げ断行してきた正義への不満から生じた国そのものへの不満。
そんな中で天義に降りた新たな神託は『主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ』という国内を揺るがすものでであった。
箝口令が敷かれていようと、シェアキムや騎士団を偽の預言者や歴史を歪めた悪魔であると糾弾するそれは大きな波紋を呼んでいた。
少し前に発生していた――鉄帝国との国境沿いである『殉教者の森』に姿を見せた『ベアトリーチェ・ラ・レーテ』の暗黒の海と汚泥の兵達。致命者と呼ばれた人々。
其れ等は歴史修復のための進軍であったと告げるかのようだった。
加えてエル・トゥルルにおける聖遺物の汚染。
天義の巨大都市テセラ・ニバスを侵食した『リンバス・シティ』の顕現。
様々な暗躍はしかし――イレギュラーズの協力により、深刻な事態は避けられていた。
そして、今……リンバス・シティの調査は、その果てに一つの新たなる領域を見つけ出した。
それが『神の国』と呼ばれる、ルスト陣営が広げている空間の事だった。
この地は天義の国に『帳』として降ろされ定着されているリンバス・シティ……とは異なり、まだ『現実に定着していない領域』であるという。
聖遺物を核としているこの領域は、言うなればリンバス・シティの前準備の空間。
時間をかけて定着する事によって――いずれは第二・第三のリンバス・シティも出来上がる事だろう。
故に。イレギュラーズには新たにこの地の調査・核となり得るモノの破壊依頼が舞い込んだのだ。
すでに始まったその動きに、遂行者たちもすでに気付いている。
だからこそ、酒の香りが空気にまでしみ込んでいそうなこの「神の国」で……2人の人物がその風景を見下ろしていた。
以前切除された酒精都市と似たような性質を持ち、しかし明らかに違う場所だ。
「美しい光景です。そうでしょう?」
「まあ、そうだな。酒にありがちな騒動もない。これも美しい光景の一部ではある」
言いながら「しかし」とそれは続ける。
「此処にも連中は来るだろう。残念ながら、俺は別の任務に出向かなければならないが」
「お任せください『遂行者』たるエクス、我等が聖拳よ。この地は俺が守護しましょう」
エクスと呼ばれたソレは、街区の中央のオブジェのような場所の上から街区を見下ろしていた。
全身鎧の騎士にも、あるいは機械や鉄騎種のようにも見えるその姿では、表情はあまりよく分からない。
「いいや。今回の任務には貴様も来てもらう」
「しかし、それでは……」
「懸念は理解する。しかし影の天使もいる。そして……此処をどうにかするのは人間技ではない」
「……まあ、それは確かに」
「強さでは此処は切除できん。そういう意味では、安定度の高い場所と言えるだろう」
●酒の町へ
「神の国の件についてはもう聞いていると思うです」
【旅するグルメ辞典】チーサ・ナコック (p3n000201)は集まった面々にそう切り出した。
神の国。リンバス・シティの前準備の空間と呼ばれる場所。
リンバス・シティと比べると『神の国』は地への定着率が低く、現時点では存在しているが、梯(道)がなければ至る事の出来ない領域で、聖遺物などを梯にしてようやく移動できる地であるのだという。
言ってみれば、今のうちにどうにかしておかなければならない場所……ということだ。
「今回の目標となる『神の国』も、どうにも酒くせぇ場所みたいです」
そう、その名も酒池都市。
以前切除した酒精都市同様「酒」に関する場所だが、古来より聖なりしものは酒と密接な関係にあることが多く、酒そのものも幸福の象徴とされたりすることを思えば酒に関する『神の国』が複数存在するのも頷ける話だ。
そして酒池都市は町のあちこちに「酒樽を持つ労働者の像」が据え付けられており、コンコンと酒が湧き出ているという。
その「酒樽」は本物であり、合計7個。
どうにも聖遺物『聖エールの酒樽』と呼ばれるものだと思われるが……恐らく6個は機能を模した分身だ。
「聖エールの酒樽は酒の試練とかいう試練を人に与えるとされているです」
すなわち、酒を飲み干すことである。
酒樽を像から外し、こんこんと湧き出る酒を全て飲み干す。
総合量でいえばたった1個でも酒豪を酔い潰すほどとされているが……7個全てを飲み干すことで、聖遺物は試練を終え自ら自壊するという。
「お話は分かりました。つまりアーリアさんのような飲兵衛を最低でも7人集めろということですね!」
「ちょっと、なんで自分を抜いてるの?」
「2人とも行ってこいです」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)と『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が何かやり合っているが……まあ、そういうことであるらしい。今回は飲兵衛が飲兵衛で世界を救う戦いだ……!
- <天使の梯子>飲め飲み干せ、盃を掲げ樽を空にせよ完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年05月19日 21時30分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●酒を飲め:前編
「私が生まれ育って、一度は捨てた国。その国が今こうして、再び危機に襲われている――それを救えるのが、私達なら」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)がシリアスな表情で酒精都市に降り立つ。
なお、アーリアが今日真面目なのは此処までなのでご承知おきください。
「さて、今回の仕事は聖遺物『聖エールの樽』を破壊する事だ。まあ、中の酒を全部飲み干せば破壊できるようだが、これとおんなじ見た目のコピーが6樽、本物合わせて7樽もあるんだとよ。しかも周りは誰もが勝るとも劣らぬ酒豪揃いだ。……無事に済めばいいがな」
「連中の設置した聖遺物の破壊というお仕事でしたからもう少し剣呑なものかと思っていましたが血の流れない仕事はいい仕事だと思います、ええ。それはそれとして、8人で最大樽7つ乾せというのはいささかおかしくないですか???」
「……まあ、血が流れねえ分酒が流れるのは……妥当、いや……妥当だな」
『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)が自分を騙しているのを『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は身ながら、今日やるべきことを考えていく。まあ、結局酒を飲めばいいのだ。
「最後まで流血沙汰にならないよう、黒の天使へは周辺施設も含めこちらから攻撃しないよう注意します。無論、彼らが市民や我々を攻撃するならその限りではありませんが。酔って暴れたケースは、攻撃扱いされませんよね?」
おっと、すでに不穏だが……瑠璃の手にはコップがある。もう飲み始めているようだ。
「お酒は静かに嗜むのが好みではありますが、こういうどんちゃん騒ぎのようなのもたまには良いでしょう。ゴリョウさんの料理を食べ放題というのも、こちらが申し訳なくなりそうです。天麩羅とかリクエストしただけにたくさん頂きたいところですが、先に樽のエールを胃に収めなければならないのが残念です。タッパに入れて持ち帰っちゃダメでしょうか?」
「ぶはははッ、確かにまずはこいつを空ける心配からだな!」
そんな瑠璃に『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)も笑う。
「呑んで料理作って作った端からツマミにして飲んでが出来るたぁ良い依頼だねぇ! キッチンこそが酒飲みにとって最強のツマミが出る場ってのを教えてやるぜぇ! あ、とりあえず『保護結界』張っときますね。万が一でもその辺の施設壊して「敵」認定されても困るしな」
妙なところで冷静なゴリョウだが、その視線の先にはゴリョウがギフト「棒を針に」を使ったような姿の男がいたりする。神の国ならではの光景と言えるだろう。
「あと今回は助っ人としていとこ(!?)のノエルも呼んでるぜ。タダ飯タダ酒と聞いて喜んで来た相変わらず残念エルフだぜぇ。あ、見た目は小っちゃいし若いが28歳なんで酒もいけます」
安心である。瑠璃も「もしも調理の手が足りなければ、温度視覚で火加減や温度管理のできる料理助手を務めようかと思っていましたが、助手さんお連れになってましたので無用な気遣いだったようです」と頷いている。
「てなわけで今宵の俺はキッチンドランカー! 喉も料理の腕も鳴るぜ! とはいえ大事なのは飲むことなんで、作るモンは基本あくまでツマミだ。まぁ手は抜かねぇけどな!」
そんなゴリョウの宣言に歓声が響くが、すでにノリは酒場か何かである。あんまり間違っていない。
「魚としてはこの時期ならやっぱ初鰹だよなぁ! ぶははッ、用意してるぜ! 俺が個人的に作ってる稲藁も持ってきてるんで、ここは鰹のタタキだな! 藁で表面を焙り、冷やしてスライス。藁の香ばしさとさっぱりとした赤身の旨味で酒も進むだろう。葉大蒜と味噌、酢、砂糖を混ぜたペーストこと『ぬた』を付けて食べてみな! それと今が旬なら山菜もいいな! 天ぷらにして塩や天つゆと一緒に食めば春の味だ。蓮根やさつま芋といった根菜の天ぷらも食感が良いしな。折角揚げるならチーズをワンタンの皮で包んで揚げても良いかもしれねぇな……あと今も必死で働いてる肝臓さんのことを考えると、ここは低糖質でビタミンB群が豊富な食材……豚肉か。豚肉かぁ……おいやめろ酔っ払いども、俺の腹を見るな」
再確認しよう。今ゴリョウたちは神の国をどうにかするために頑張っている。いいね?
「また酒樽かよ、マジで欲望開放の国じゃねえか。いやまぁ酒は良い。仕事で思う存分飲んで良いとか最高かよ。後はギャンブルと綺麗なお姉ちゃんと遊ぶ国も来い。わかったな?」
『流浪鬼』桐生 雄(p3p010750)の台詞にゴリョウが「竜宮の話か?」と言っているがさておいて。飲み会である。
間違えた。戦いである。
●酒を飲め:後編
「リンバス・シティを模したと言われる『神の国』。その被象(レイヤー)は定着するにつれて徐々に世界を書き換える帳です。これを阻止するには、発生源となる聖遺物を破却する事が必要である……ここまでが、我々ローレットがこれまでの戦いで得た知見です」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)が真面目な表情でそう語る。ジョッキを手に。
「そして、この街を神の国たらしめている聖遺物は『聖エールの樽』。つまり! 飲み干せ! 正義のために! 専属料理人と巡る7つの樽巡り、作戦名「天使の梯子酒」、状況開始の乾杯です! 今日3度目? 4度目? そんな感じですが!」
おおっと、すでに寛治はダメな感じである。まあ、すでに結構飲んでいるので仕方ないかもしれない。
「諸君! これは正義のための乾杯である! はい乾杯とは杯を干すと書く! イッキ! イッキ! 7つもあるならペースを上げていかないと! ほらイッキ!」
自分も飲みながら人に勧めているので、色々問題はない。
「だんだんグラスに継ぐのも面倒になって来ましたね。はいアーンしてくださーい! 絵面的にはアーリアさんとかブレンダさんとか瑠璃が望ましいです。ほら、こいつが欲しかったんでしょう? さ、口を開けて……」
「おう」
「ぶはははッ」
「ぎゃー! 絵面が濃いっ!」
樽を持ち上げ直接義弘とゴリョウの口に酒を流し込む寛治だが、絵面が濃すぎて眼鏡が発射されアーリアにスチャッと装着された。なおアーリアは眼鏡を捨てた。
「こうやって高いところから注ぐと、酒が空気を含んで香りが立ち上がる、というわけです! 大丈夫、皆さんの肝臓は文句一つ言わずにお酒を分解してくれています! ゴリョウさん(の料理)でビタミンBを補充すれば、我々はまだまだ戦えますよ。義弘さんも飲みが足りないんじゃないですか? 任侠なら五分の盃でしょう。私と同じ量だけ飲んでくださいね!」
「まずお前が任侠じゃないんだよなあ……」
「はい、一発芸は聖なる眼鏡割り! 先にジョッキに眼鏡を入れてから、聖遺物の酒を注いて混ぜればセイクリッド眼鏡割、完成です!」
酔っ払いに理屈は通じないので仕方ない。さておいて。
「タダで酒を飲んでればいいだけ……最高だな! 今回はゴリョウ殿もいるから肴の心配もしなくていい。飲んで飲んで飲みまくるだけの時間というわけだ。なっ、ゴリョウ殿!」
「そいつは仕込み中のチャーシューだな! えぇい、新玉ねぎと豚しゃぶのマリネでも食ってろ! チャーシューは仕込みにちとかかるわい!」
チャーシューに話しかける『猛る麗風』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)はすでに出来上がっているが、実は色々と事前に危機管理が出来ている。
川に落ちて水死体になりたくはないからと鎧を脱ぎ、武装を最低限に私服を着ているのだ。
途中で脱ぐような気がしなくもないが多少汚れてもいい服にしておこう、とか酔っていないうちから言っていたしここの川は酒なので溺死したらブレンダ酒になるのかもしれないが、そうならないようにしてほしいものである。
「うーむむむ、ツマミはどうする? アーリア殿。ゴリョウ殿が言っていたが肝臓には豚肉がいいらしいぞ? やはりまずはトンテキか……その後は豚トロ、豚足……」
「俺を見るんじゃねえ!」
さておきジョッキが常に乾かないような状態でブレンダは飲み続けている。
「酒三昧豚三昧でアーリア殿と女子会だ。男性陣の一発芸もあるしな!!! しかしこの樽一家に一個欲しいんだが持って帰れない? だめか……まあいい。1樽枯らせば次の樽へ。そう、今回の作戦名は天使の梯子酒。皆で仲良く(吐いても)飲み続けるのだ!!!」
悪い飲み方である。良い大人は真似してはいけない。
「ところで新田殿が増えてるのはなんでだ? しかもなんか片方はずっとポージングしてるし……これが例の新田像!!! 丁度いいから一発芸に使わせてもらうか。それではフランケンシュタイナーいっきまーす!」
「あー! お客様! おやめくださいお客様! こちらは労働者の像ではございません! 新田です! 新田でございます! え、新田の本体は眼鏡じゃないかって? いや眼鏡もここにあります顔に掛かってます! あーお客様! 川に眼鏡を投げ込んではいけません! いや本体は私ですが眼鏡を投げ込むのもダメです! あー! いけませんお客様! 労働者の像も眼鏡も新田も川に投げ込んではいけません! あー! いけませんお客様眼鏡―――!」
「あっ」
寛治とブレンダが仲良く酒の川に落ちているが大丈夫だろうか?
「本体の眼鏡も川に落ちてるし本物の方を巻き込んだ気もするが問題ないな、ヨシ! へっくち!」
問題ないらしい。めでたしである。
「ゴリョウの飯はどれもうまいが、今回は酒を飲み干さなきゃならねえからよ、腹にたまりすぎない程度にいただくとするか」
一方、比較的正しい飲み方をしているのは義弘だ。もうかなり飲んでいるはずなのだが、結構正気だ。
「……これが完遂しなきゃならねえ仕事じゃなけりゃ、関係無しに食えるから少し残念な気もするがよ。後は酒量に気を付けつつ、ウコンや料理やらと酒を楽しみながら本物の樽を飲み干す事を目標に頑張るとするか。間違っても、持って帰ろうとする奴はいねえよな?」
まあ、ほっといても飲み干すメンバーばっかりなので義弘もそこはあんまり心配していないのだが。
「E-Aは酒飲めないもんなぁ、悪いなあ。という訳で高性能AIっぷり見せつけてちょっとここの皆のバイタル管理しといてもらえんか? 7つも樽開けていくのは大変だからなあ、全部吞み潰したいだろ? な? 伝説になりたいだろ? あやしい酒樽探してくる? まあまあ、ここは清く正しく罠を踏み抜いて進んでのイレギュラーズ(げふぅ)、自力で探すから……まあどうしてもというなら教えてくれ、後回しにするから……」
『Elegantiae arbiter』E-Aと話しながら飲んでいるのは『最後のナンバー』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)だが、こっちもすでに出来上がっている。
「そろそろエールがうまくなる時期だからな。飲んでりゃ世界を救えるなんてあまりにも素晴らしすぎて涙が出る。そして集まった面々が頼もしすぎておじさんもうすでにほろ酔いモードだ。ツマミはゴリョウが沢山作るだろうからってサラミ、ナッツ、チーズの乾きものがあるわけだが」
セレクトがバーのおつまみな辺り、本当におじさんである。さておいて。
「さいきん旨いのはフエだな。白カビのサラミだ。脂がいい感じにカマンベールな濃厚な味わいになっていて旨い。後アーカーシュ特産の魚も持ってきたぞ。エリザベスアンガス何某。天ぷらにすると美味いんだこれが。つうわけでまだまだ飲むぞ! 労働の後のエールは旨いが、労働中のエールは更に旨い! あ、皆でまとまって移動してはぐれないように。一人酒は悲しいからな。皆チェイサーは持ったか! 長丁場だ! BSは詩人の心意気で回復しながら行くぞ!」
酒樽のようなゴンドラに乗っているヤツェクだが、川から上がってきたブレンダと寛治が乗って酒盛りしている。
「でな。悪いエールの飲み方があってな。ここに再現性新大久保から持ってきたマッコリのでっかいボトルがあるだろ? それをエールと半々で次ぐ。マイルド&クリーミーな酒の酒割りが出来るって寸法だ」
ちなみにモッコリというらしい。酒の席じゃなきゃフランケンシュタイナーをくらいそうな名前である。
「スッキリから移行するコク! 甘みと苦み&麦と米のデュエット! こうなると肉も食べたいな。じゅうじゅうの炭火焼肉食べたい。味噌だれに卵黄混ぜてとろとろのモツをさらにとろとろにしたい。酒の席で会った焼肉奉行曰く「焼肉はタレが命」らしい。ゴリョウ、豚肉くれ」
「俺の腹を見るな」
さておき雄も楽しく飲んでいる。
「さぁて楽しく飲んだくれるとすっか。酒樽7つ飲みつぶせば良いんだろ、楽勝楽勝。なんたってやべぇレベルの飲兵衛が揃ってんからな! えーと、あと幾つだっけ?」
この樽が最後である。最後に立ち塞がるのが寛治そっくりの像であるあたり、ドラマチックな感じがしないだろうか。しない? そっかあ。
「という訳で飲む。ひたすら飲む。ゴリョウとその知り合いの作るツマミと、甘味にベッツィータルトを食べつつ希望への道筋を胸に!」
ちなみに雄の飲み方だが、気持ちよく歌って飲むタイプである。よく練達のスナックとかにいるやつだ。
「くぅ~五臓六腑に染み渡るたぁこの事だぁ。肝臓?泣かせとけ!こちとらパンドラがあるんだ、死んでも蘇らぁうおぼろろろろ……ホラな!」
何が「ホラな」かは分からないが、虹は綺麗に処理されたので安心である。
「飲み直し飲み直し。ん? そういやさっき、なんか川に落っこちなかったか? まぁ良いか。そういう気分な時もあんだろ。そりゃ世の中辛い事も悲しい事もあるけどなぁ? 酒は全て忘れさせてくれるんだからよ。そしたら思わず飛び込みたくなったりもするって。なあ寛治!」
「それは新田さんの本体(眼鏡)よ!」
アーリアが真実か分からないツッコミを入れているが、まあ酔っ払いなのでこんなもんである。
「おうおう兄ちゃん、難しい顔してんなぁテメェも一発やってみるかー? とりゃー!」
「新田さんー!?」
寛治の眼鏡が川に投げられて、丁度登ってきた寛治にスチャッと装着される。
「やるじゃない新田さん、褒めてつかわすわ――新田さん、新田さん!? し、死んでる……違ったこれは労働者の像ね、なんなのよこの金曜日の夕方に部下に仕事を振って「急がないから。まぁ月曜朝一くらいにできてればいいから」って言って定時前に帰って月曜に領収書回してきそうな顔!!」
「とりゃー!」
寛治像……違った、労働者像を雄が川に投げ込むと、アーリアがジョッキを掲げる。
「とりあえず新田像はその辺の川に放り込んだしかんぱーーーい!! 料理作ったりまともなこと言ってるのがオークとヤクザってなんなのかしらね。もしかして二人共お酒が足りてないのかも」
心配そうなアーリア(酔っ払い)が慈悲深い顔でゴリョウと義弘に近づいていく。
「これも世界を救う為よ、ほら飲みなさい。新田! ブレンダ! ひっとらえなさい!!」
「お覚悟を!」
「観念しろ!」
なおサキイカを口に突っ込んだら大人しくなったらしいが、アーリアも欲しかったので貰った。
「あ、その辺に「※出演者は特殊な訓練を受けているのでマネしないでください」って入れておくわ。コンプラってやつよ」
必要あるかは不明だが、時代かもしれない。そうして乙女ぶったアーリアとブレンダとかいう幻がありつつも、酒は進んでいく。
「いつも思うけど義弘さんの腹筋って高層マンションよね。何LDK? あとなんか……なんか記憶がないけどブレンダちゃんと新田さんとその他大勢が川に流れていった気もするけどまぁよしとするわ。死なないわ、多分、きっと」
「流れるようにとんでもねえ台詞と幻覚を口にするな……新田ならほら、そこに」
「それは本体(眼鏡)よ!」
そんなこんなで飲み会も進み、アーリアのダメな部分も存分に開帳されていく。今更かもしれない。
「……ほら、身体にはいいし豚肉を食べてーエッッショタがいるわ!! ねえ!! ここが神の国ね! うるさいわね本編シリアス時空とかそんなの例外があってもいいでしょ君お名前は? ノエルくん? ふぅん、ちょっとおねえさんにふとももとおなかを触らせてくれな――アッ」
「あっ」
ノエルに絡もうとしたアーリアが瓶に躓いて、川に落ちる。
「――次回、聖なる七つの樽を揃えたアーリア達の前に立ちはだかる酒龍! え、こない?」
「どうだろうなあ」
ゴンドラに乗っていたヤツェクが締めの音を鳴らすが……結局酒を飲み尽くし、聖遺物は自壊したのでめでたしめでたしである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
こいつはひでぇや(誉め言葉)
GMコメント
神の国『酒精都市』に潜入し、聖遺物を探してぶっ壊しましょう。
飲兵衛アドベンチャーとなりますが、存分に楽しんでください。
誤字じゃないよ、お酒呑む話だよ。
●酒池都市
神の国。一日中酒呑んでる人しかいない町です。
町には酒の川が流れ、酒樽みたいな船で人々が移動するダメなベネチアみたいな町です。
勿論普通に道もあるので、そこも歩けます。
町のあちこちに「酒樽を持つ労働者の像」が据え付けられており、コンコンと酒が湧き出ています。
酒樽を外すと試練の始まりです。湧き出てくる酒を飲み干すか酔い潰れるまで終わりません。
明らかに酒樽どころか酒倉庫バリの量が湧き出ます。
飲み干すと分身樽は消え、本物の「聖エールの樽」は自壊します。
なお、町の周囲や空は深い霧のようなものが覆っており、その先には不思議な力で進めません。
「今日は濃霧で町の外には出られない」みたいな感じの認識のようです。
●聖遺物『聖エールの樽』
今回のカギとなっている聖遺物。いわゆる酒樽です。酒樽の聖遺物、これで2個目だと……?
分身含め7個ありますが、飲み干して判別するしかありません。
普通の方法では絶対に壊れません。だから飲め、飲むんだ。
●酒樽を持つ労働者の像
何の変哲もない石像です。なんだか一個、寛治さんにそっくりな像があるような……?
こいつも全部神の国って場所の仕業なんだ。
●出てくる敵
・住民×不明
酒池都市の住人たち。現時点では会話が出来るようです。酔っぱらってますけど。
ROOのNPCの様な、地の国を参照――つまりはコピーされたような存在です。
つまり知り合いっぽいのや自分そっくりなのもいるかもしれませんが、全くの別人です。
皆さんが明確に「敵」となるような行動をしない限りは彼等は「一般人」でしょう。
・影の天使(強化型)×不明
羽の生えた鎧の兵士の姿をしており、倒す事で消滅をするようです。
剣を掲げ、何かに祈り続けるかのような仕草を見せる事が多いようです。
武器は剣による近距離攻撃と、剣から放つ波動による中~遠距離攻撃です。
主に屋根の上や空中に居て、なんらかの敵性行動を取る相手に反応します。
数が減ると分厚い空の煙の向こうから追加が現れます。
・『聖拳』エクス
今回はいません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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