シナリオ詳細
再現性東京202X:丑三つ時だよ! ぜーいんしゅーごー!
オープニング
●「あの山に登ったんか!」「え、何?」
練達。希望ヶ浜の一地方――その地に訪れていたイーリン・ジョーンズ……此処では伊鈴と偽名を名乗っているが、は急に呼び止められた。此方を見て慌てふためている老人に、だ。
只事ではなさそうな形相。息を切らして何事かと思えば。
「お嬢さん、もう終わりじゃぞ! あの山に登ったんじゃったら命はねぇ!!」
「え、は……いや、どういう事?」
「山の主の怒りに触れたのじゃ……お嬢さんはな!」
話を要約するとイーリンが先程まで入っていた山には曰く付きの話があるらしい。化け物に魅入られてしまうと――そして魅入られてしまえばもう逃げる事は叶わぬと――その為、地元の民は決して近寄らぬのだとか。
「ふーん。具体的には何が起こるって言うの?」
「決まっておる! この山に住まう三傑が……襲い掛かってくるのじゃよ!」
「なんで怨霊の類に『三傑』なんて称号が付いてるのよ?? 貴方達が付けたの??」
「一体目が『ぐねぐね』。二体目が『ハチ尺様』。そして三体目が『ターボ婆さん』じゃ――! いずれも人を呪い殺すに足る力を宿した三傑……どこへ逃げようと無駄じゃ。奴らはお主を地の果てまで追ってくる事じゃろう――!!」
「話聞かない上にテンション高いわね、ここの住人……」
まぁともあれ、だ。なんかどこかで聞いた事がある様な洒落怖登場人物達がいるらしい。
見たら死ぬと言われる『ぐねぐね』の化身――
やたら高身長で少年や少女を優先して襲う『ハチ尺様』――
そして己こそが世界一であると自称する超速の『ターボ婆さん』――
その他、なんか違う個体もいたりするようないなかったりする様な、とか中途半端な情報を貰った。山奥にある本堂の中に籠れば多少時間稼ぎが出来るらしいが……しかしイーリンは此処まで話を聞いた所で、脳裏に電流走る。
――そうだ。全員ぶちのめせば早いのでは?
そもそもこの前だってビデオテープから出現するホラー的な夜妖共を滅茶苦茶にしてやったばかりではないか。夜妖であるというのなら必ず対処法はあるもの。最悪、物理的暴力で全てを解決すればヨシッ! 今度こそ『ポマード』や『べっこう飴』で撃退できるタイプが来るかもしれないと思うとむしろテンション上がってきた気がする。
「ふっふっふ。それなら皆も呼んで準備しないとね――」
「ひぃ。どうしたんじゃお嬢さん、突然笑って……気でもお狂われた?」
「ドチャクソ失礼ねここの住人は……近場の駅は、ええとキサ……何駅だったかしら」
何はともあれ己が夜妖に狙われるというのなら、迎撃するのみだ。
イレギュラーズの皆にも連絡を取ってみようか。
どうせ今から夜になる。その怪談を模した夜妖共が襲い掛かってくるのならむしろ万全の状態で迎え撃ってやろうではないか――
……あれ? そういえば己はいつ此処に来て、何をしていたのだったか?
キサ、なんとか駅に乗ってから何か記憶があやふやの様な。
まぁいいか。夜妖を撃滅すれば、無事に帰る事は叶うだろう。
さぁ怪談クラッシュの時間である!
- 再現性東京202X:丑三つ時だよ! ぜーいんしゅーごー!完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年04月30日 23時55分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
――□月□日。
再現性大阪府警の捜査官の私は、キサラ□駅の近くにある山に来た。
当初の目的は該当地域に存在する□□□□□の確認だったが、そもそも此処に来たのが誤りだった様だ。
どうやら私はここまでらしい、多数の呪いを相手に戦う術などない。
せめて出来得ることは次の者に希望を託すことのみであろうか。
この手記はこの山奥の本堂に置いておく。次の人はここから出ない方がいい。
私は今から最後の抵抗を――
●
「最後の抵抗の時間よオラァ! そこに並びなさい、全部薙ぎ払ってあげるわぁ!!」
「プルプル怯える振りにまんまと騙されてますね――
来た、本当に来た……では片っ端から、片付けていきましょうか」
「状況ガ色々ト不鮮明デハアリマスガ、取リ合エズ、ヤル事ハ明確。
コノ御堂ヲ拠点トシタ防衛戦デスネ?
敵ハ正体不明ノ夜妖複数体――シカシ問題ハ無イ数カト」
ぶちかます。『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は怪異フラグなんてぶち壊す勢いで怪異共に撃をかますものだ――! はっ? 冒頭のはなんだったのかって? 考えるな感じろ!
お堂の扉を蹴破って大胆エントリー。さすれば『ささやかな祈り』Lily Aileen Lane(p3p002187)や『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)に引き寄せられていた怪異共にダイレクトアタック。
ぷるぷる。あどけなさをLilyは醸し出しながら、しかしハチ尺の隙が見えれば。
「隙あり。よし、散れです」
『ぴぴぴ!?』
「殴って殺せるならよく来る夜妖依頼も楽だな。てかなんなんだよこれは……頭目に呼ばれてきてみればパチモンのオンパレードじゃねえか。びみょーになんか全部違うし。てかもしかして村人もグルなんじゃねぇの? 事情話す連中全部ひっくるめて怪異なんだろコレ」
「あり得るな……まぁとにかくパチもん夜妖を狩ればいいんだな。
時間をかけてると何が起こるか分からないし――さっくり終わらせるぞ」
ブスッ、と遠慮なく刺すLily。次いで『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)に『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)もお堂周辺に至っていた夜妖共を見据えようか――
まぁ因習だろうがなんだろうが殴って解決できるならまだ簡単なものだと。
意味不明・理解不能な夜妖でもない限り余裕だ。故に視界の端に見えるぐねぐね様へとマカライトは往く――まずは囮として。確かに奴の姿を捉えれば……なんとなし確かに不安が襲い掛かってくるものだ、が。されど彼の心は静寂なる水面の如く。
自らに宿る祝福が機能し対抗していれば、サイズが立ち回りて呪詛を叩き込もうか――
「ここをキャンプ地とする。
……ってな感じのつもりで寝入ろうとしてたのに、うるせぇ連中が来たもんだな。
近所迷惑ってのを知らねぇのか? 今何時だと思ってやがる――」
締め上げてやるしかねぇのかねぇ、と。紡ぐのは『老兵の咆哮』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)だ。キサ……何だったか? ラララララギ駅? ともあれなんか変な駅を通ってようやく寝床を見つけたってのによ――
邪魔するんなら相応の覚悟はあるんだろうな。あぁん?
「吹っ飛べよ」
『――!!?』
然らばバクルドは、予め用意しておいた罠を起爆するものだ。
生じる爆発。設置していた罠がぐねぐねを襲うのである――
「いちいち視界にちらつくってことは罠に嵌めるのも容易くて助かるな。
さ。来いよ、とっとと仕留めてキャンプの続きだ」
追い詰めていく。ぐねぐねはマカライトやサイズ、バクルドが対応し。
ハチ尺様はLilyがぷすぷす刺しつつ、イーリンも参戦。
多少の傷は観測端末が即座に治癒の支援を巡らせて、然らばターボ婆さんは。
「さぁ……言葉なんていらねぇだろ……走(や)ろうぜ」
やる気全開。なんか口調も変に気合が入ってる――『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)が立ち向かうものだ。多くの言葉なんて要らねぇ……百万の言葉よりも、ただ一つの事実をもって紡げばいい。
その辺の枝拾って。地面に適当に線書いて。
ただ言うんだ。
――ターボ婆さん。アンタなら分かるだろう?
さすれば婆さんもやる気である。肩を鳴らしてクラウチングスタート態勢。
これより雌雄決するのだ。どちらが速いか。
「……うーん、あの。こういうのはじゃなぁ、お約束というか、伝承から紐解いた適切な対処法と封印、或いは撃退術とか……触れてはならぬ怪異への畏敬とか……もっとこうちゃんとしたのがあるとおもうんじゃがなあ」
ただ『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)は思うものだ――
なんかおかしくね? 怪異戦ってこんな感じだっけ?
もっとこう、ちゃんとした手順と神秘によってお祓いするとか……雰囲気が……
「マジでぶちのめすのかのう? そのルートが正規なのかのう? ……まあいいか」
祭司長知ってる。混沌の怪異って物理で倒せるヤツもいるんだ。祭司長は詳しいんだ。
吐息一つ零そうか。こういうのも――慣れたものなのだから!
●
そんなこんなで、あちらこちらでやる気満々・怪異クラッシャー全開である。
お堂に押し寄せてくる夜妖達に勢いはあれど――イレギュラーズ側も準備万端。
「多数ノ奇妙ナ存在、恐ラクハ夜妖ガ出現、攻メテ来ルノヲ確認。
――迎撃、開始シマス。戦時モードヘト、以降」
早速に観測端末は、まずは誤射を受けぬ様に人型へと至ろうか。
これで少しでも怪異と間違われぬようにと……そして同時。優れた視力をもってして観測端末は周囲を探り、警戒する。どこから怪異がくるか――味方に傷つける存在あらば、観測端末はすぐさま治癒の術も飛ばして。
「どう? ――アクの強いロリはお好き?」
『ぴ、ぴぴ……!!』
「頭が高いわよ、跪きなさい!!」
同時。観測端末の支援を受けとりながらイーリン……いや伊鈴はハチ尺を打ちのめしていた。
見た目年齢14歳。140cmの伊鈴は正に……ロリ! ハチ尺様ストライクゾーンである。
だからこそハチ尺様に隙が出来る――
その膝を伊鈴は蹴り砕きハチ尺を抑えにかかるものだ。腕を伸ばしてきた? 知らないとばかりに関節に肘鉄! バランス崩して地に背中から倒れ伏せば――煙草の煙をふかしながらジト目で睨みつけ踏んづけてやる。
ああこういうのってご褒美って言うのかしら?
「どう? ロリに上を取られるのは、本望かしら?」
『ぴぴぴぴぴ――!!』
今だ! 悶えた所にベッコウ飴ダンッ――ク!!
悶絶するハチ尺様。ボッコボコにしていれ……ば。
『やって来ました第●●●回如月賞。エントリーしたのは、ターボ婆さん、ジェット婆さん、マッハ婆さん、光速婆さん、100キロ婆さん、ダッシュ婆さん、リヤカー婆さん、一輪車婆さん、ケンケンパッ婆さんあ……あと今回は2名ほど挑戦者が居ますね。今回はどの出走者が勝利するのか、目が離せませんね』
「あ。こんな所にラジオ機が。ターボ婆さんとの実況がされてるみたいですね」
ハチ尺様に追撃の槍をぶすぶす刺してたLilyが気付いた。
そろそろレースが始まる様だと――誰が実況してるかって? 細かい事はいいんだよ!
ともあれ先述の二名とはハッピーとクレマァダの事であろう……なんでいつの間にこんなに増えとるのじゃ? とクレマァダは思考停止気味だが、ハッピーはやる気がむしろ挙がっている。全員ぶっちぎってやるよ――と言う訳で。
「――走る。そう、走るだけさ。そうだろターボ婆さん……!!」
ハッピーは往く! 彼女の超速度は彼方を置き去りにするが如く。
全力の移動に加え、複数回の加速を行えば最早先頭へと飛び出すばかりだ。無論、攻撃や防御を行うとなればこうまではいかなかったろうが、ただ純粋に移動に全てを懸けれるのであれば……!
「ターボ婆さん、限界まで行こうぜ……!!」
『舐めんじゃないよ若いのォォ!! アタシの伝説、魅せてやるよ!!』
しかしターボ婆さんズも追い縋る。早い。なんたる速さか――!!
火照った体に当たる冷たい風。山の息吹が、あぁこんなにも気持ち良いとは。
――汗が雫となって地に堕ちよう。
それでも。そんな雫なんて気にも留めず。
「雑音なんて何も聞こえない世界にいける……! ここが本当の世界……!」
ハッピーは往く。自分の限界なんて押し超えろ――! まぁ走るって言うか足はないのだが。だって幽霊だもん――邪魔な木々があらばすり抜け通り、全霊たる身を晒して往こう。
『さぁ7番、ハッピークラッカー。4番人気です。挑戦者として何処まで通じるか、ぜひ頑張って欲しいですね! 8番、クレマァダ=コン=モスカ。8番人気です。今回のダークホースになるのでしょうか! おおッとぉ!? 早速ハッピーさんがぶち抜いております、婆さん団子状態だ――!!』
「モスカさん、私はモスカさんに一点賭けしてますからね……!」
「そう、一点買いよ二頭立てなんだし、頑張れ、頑張るのよ!!
刺せ――! 行け、行くのよハッピー!! そのままGO-―!!」
「…………あれ。うむ? あ。これ一直線に……
成程。おーいハッピーよ、今から『やる』が故に――上手く躱すのじゃぞ」
「え? 何? 今なんて言った?」
でもクレマァダは閃いた。
――これハッピーを追うように駆け抜けてるターボ婆さん、全部纏めて薙ぎ払えるのでは? 最初は距離を維持してヒットアンドアウェーで倒していこうと思ったが、もっと簡単な方法がありそうであった。うむ。
と言う訳で魔力を収束させる。
幸いと言うべきか先往くハッピーに執着を見せ誰もクレマァダの狙いには気付いていない婆さんばかりだ――やはり怪異とは自らの存在意義にどこまでも従順であるのか。故に、クレマァダは見据えた一直線を逃さない。
「と言う訳で――ドーンなのじゃ」
『ぬわあああああ!! この、何をするのじゃ――!!
レースをするのじゃ!! この小娘がああ!!
プライドってものはないのかえええ!?』
「レースをしろと言われても……我シャチじゃからなぁ。海の中なら付き合うてやらんでもないがなあ。そもそもレースをする意義が分からんと言うか……ぶちのめした方が速いのならそれでも良い気がするというか……」
ま、諦めるのじゃばあ様――全てはイーリンを取り込んだ時から詰みであったのよ。
あれは我らの中でも最も空気を読めるし、読めるが故に読まないこともできる奴じゃ。特に空気を読まない時の奴はヤバい。なにがヤバイってとにかくヤバい。誕生日ケーキがロールケーキだったくらいの読まなさじゃ。
「やるからには徹底的に。その点は同意するが――の」
「なんかラジオの向こうから聞こえてくるクレマァダの私評、ボロクソ言われてない??? ていうかレースしなさいよクレマァダ!! レースウゥゥゥ!! レース!!」
「ええいイーリンめが。何か煩いの……! 人で賭け事でもしとるな、さては!!」
「……なんかあっち、妙に楽しそうじゃねぇか? 何してんだ?」
「気になる所ではあるけれど――まぁとりあえずぐねぐねを片付けておかないとな」
クレーム入れるイーリン。知らんとばかりに立ち回るクレマァダ。
一方でそんな気配を感じ取りながらも戦闘を続行していたのは――バクルドにマカライトだ。そう、ぐねぐねを相手にしているメンバーである。
成程確かにぐねぐねを見ていると、なんぞや不安に駆られる面がある。
だが――先述の通りマカライトは己が身に宿る祝福があれば軽減できるものだ。
……というか、だ。そもそも別の不安が渦巻いているんだよこっちは。何かと言うと、そう。
(……家のガスの元栓閉めてきたっけ? あと鍵も掛けたっけ?)
日常的に襲い来る――些細な不安の種だ――!
閉めた筈。閉めた筈だ。だけどれど不安になる。稀にミスる事があるから。
急な招集だったから大分曖昧だけどもしもミスってたら――光熱費死んじゃうぅ。
「でもそんな不安も白子もどき(お前)を殺せばきっと消えるよな」
『!?』
「――と言う訳で死ね。即刻消えろ。もののついでに炙りになれ」
だから彼は往く。胸の内に渦巻く不安を掻き消す様に。
狼の姿であるティンダロスに騎乗し――一気に接近するのだ。そうして彼はタルタロスの腕を顕現せしめ、敵を穿つ。バクルドの罠にかかって動きが鈍っているぐねぐねを捉えるはそう難しい事ではないのだ。
――あ。一応形が残る様には加減しておこうか。
「後のお楽しみだしな。開きじゃなくてぶつ切りにしないか?」
「おぉ? 其れも一興だな――いや待てよ? いっそ白焼き……蒲焼も悪くないな。だがまぁ、とりあえずは動けないようにしてからまた考えっか。オラ、そろそろ観念するこったな。ぐねぐね鬱陶しいんだよ」
『――!!』
こいつら……夜妖を喰う気か!!?
人間の食欲というのは恐ろしいものである――と、同時。サイズの胸中にも不安が渦巻いていた。心残りに反応し、サイズをかき乱しているのか……だが。
「終われない。終わらない。こんな所では、な……!」
彼は挫けない。彼は折れない。
呪いの質なら負けはせぬと――逆にぐねぐねを追い詰めてやろうか。
奴の身が縛られれば更に追撃。数多の道具を行使し、追い詰めていく。手数をもって押しつぶす。ああ――
「くそ。なんとも、ああ、払えないな」
心の内に渦巻く感情を、と。さすれば……
「サイズ。気に病み過ぎればいつか身にも侵食してくるわよ――バクルド! 酒持ってきなさい酒! こういう時はお清めの時間よ! あと競馬――じゃないレース――味方の奮闘を見守る時にもやっぱりお酒は重要よね!」
「あ? 酒だぁ? ったく、一応連中とまだやり合ってる途中だぞ?
まぁいい。ほれ、まだ呑み足りねぇんだから程々にしろよ。空にすんじゃねぇぞ」
サイズの零す言を聞き取ったのか、イーリンはバクルドより純米大吟醸を受け取るもの。
――酒だ。酒の微睡みは、時として心を晴らす。
故に楽しもう。時の過ぎ去りだけでなく、今をも楽しむ心が必要だと――
思っていたら、新たな夜妖共がお堂の中に突っ込んできた。
「あぁ、お酒が――!! もう次は何よ、ぐねぐね? 口裂け女? シシノケ? サンヌキカノ? ヤマノケ? めんどくさいわね、纏めて母鴉で逆に呪ってやるわ! 呪いで呪いを生む永久機関の完成よ!」
「拠点防衛、第二フェーズデスネ。当端末ハ皆サンノ支援ヲ開始シマス。
――シカシ一斉ニ襲イ掛ラズニ、ソレゾレ至ルトハ……
戦力ノ逐次投入ナド、下策中ノ下策。夜妖ノ判断能力ハ乏シイト判定シマス」
そしたらお酒が犠牲になったのでイーリンはブチギレる。観測端末は即座に味方への治癒行動を強め、負の要素を取り払おうか。多少の傷は観測端末が即座に癒していくのである……あぁ夜妖よ、潰れるがいい。
そして戦線は更に苛烈化する。尤も、ほとんどイレギュラーズが優勢であったが。
ぐねぐねは壊滅気味だ。サイズやバクルド、マカライトの攻勢により開かれている。
おい。逃げようとしたりするんじゃねぇぞぐねぐね?
襲ってきたのはそっちだろ。『分が悪いから逃げます』を……
「『はい、そうですか』で――見逃すわきゃねえだろ」
故にバクルドは仕留めるものだ。ぐねぐねを、さっさと焚火に熾す為にも。
同時。ターボ婆さん方面はハッピーに追いつけない。後ろからはクレマァダが逐次波をもってして追撃してくるし、やがて脱落する個体が出始める。が、意地があるのかターボ婆さんは一体に力を収束させる……!
『これが真の……ババァ力よぉおぉ!!』
「くっ。ターボ婆さん、流石だな――でも!」
それは超速の権能を婆さんに宿そうか。
――負ける。ハッピー脳裏にその文字が想起された、が。
ならばと彼女は真の全霊を注ぐものだ。自らに速度の加護を齎し――往く。
「――あぁ」
ターボ婆さんが消える。最後の追い上げも、無意味だったから。
でも婆さん。婆さんは……早かったよ。
まだ良いじゃん、朝はまだだって、まだまだ幽霊の時間だって……
もっともっと……走(や)りたかった……
悔しさを口端に。紡ぎながらハッピーはそのまま、自らの敗北の念を刻まんと駆けていく。
負けたんだからえっちなイラスト頼まないと――! えっ!!? ハッピーさん!!?
『ぴぴぴ――!!』
「五月蝿いですよハチ尺。今エンディングに向かってるんですから……静かに……!」
そしてボコボコにされてたハチ尺は気が付く――ものの、速攻で再びLilyにボコされた。
もうヤダ帰る!! ハチ尺は逃げようとして、しかし。
「ネェ――ワタシ、キレイ?」
そこに立ち塞がったのが、観測端末だった。
変身解除。人型から『本来の姿』へと変じた端末は、全ての触手でハチ尺を取り押さえに掛かる。肢体に絡ませ、腕を抑えよう。どう見てもこれ完全に同人の触手プレイだけ、ど。
『ぴぴ――!!?』
「逃ガシマセン。此処デ、終ワリデス」
本人的には真面目である。逃さず、仲間の一撃が来るまで時間稼ぎだ。
ああ――山の奥に怪異の叫び声が轟く。
人に呪いを齎す筈の者達は、人によってその邪気を払われたのであった。
●
戦いは終わった――そうしたらマカライトは思い出した。
そもそも練達のビジホ泊まりだったから元栓もクソもないではないか!!
「クソが、絶対許さんぞ怪異共……殺してやる……もう殺してたか……」
「まぁいいだろ。とりあえずもう襲ってはこねぇみたいだな?
明るくなったら下山すっか。おーい、白子灼けたぞ」
「ひ、ひぃ……! お前さんら、怪異を打ち倒したのか……!?」
「あ。さっきの村人……何よ。何をビビってるのよ、そんなに生きてちゃおかしい?」
同時。バクルドは寝ずの番を果たさんとしていれば……おぉ村人が騒動を聞きつけて様子を見に来たようだ。ただ、白子喰ってるのがショッキングなのか、めちゃめちゃビビってるが。え? 新しい怪異指定?
「酷いわね全く! まぁいいわ、後でうどんも食べて帰りましょ!」
「そう言えば、山奥のお堂……なんで夜妖は、入って来られなかったのでしょう……
……不思議です、ね? そういうもの、なのでしょうか……?」
ともあれイーリンは気にせず、酒を飲み喰らうものだ。
そしてLilyは謎の怪しげなお札を張り戻しながら――思考を巡らせようか。
このお札、効果があったんでしょうかと。
……まぁいいや。
「動いたら、お腹すきました、です」
とりあえずは怪異を抑えたのなら――今度は腹の虫を抑えようか。
空には星空が瞬いていた。
静寂に包まれた、平穏なる――空であった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れ様でしたイレギュラーズ!
無事怪異は殲滅できたようです。まさか喰らう方向性があるとは思っていませんでしたが……
怪異を喰らう怪異。それもまた新たな怪異物語の誕生かも……?
ともあれありがとうございました!
GMコメント
ご縁があればよろしくお願いします!
●依頼達成条件
襲い来る怪談を壊滅させる事!
●フィールド
練達、再現性東京……の、とある山中です。
時刻は夜で、周囲は木々に覆われています。なんだったかな。キサ……なんとか駅を経由して此処に来た気がします。あれ。元々なんの用事で来たんだったっけ……? イーリンさんに呼ばれた様な、イーリンさんと一緒に何か用事があって来てた様な……
まぁ細かい事はいいですね!
とにかく。どうにもこうにも怪談存在(夜妖)に狙われています。
なので撃退してやりましょう!
山奥には古ぼけた本堂が存在しています。
此処にいると何故か夜妖達は暫く入ってこれない様です。
その為、準備を整えたりする時間はたっぷりあるでしょう。
●敵勢力
●ぐねぐね
その姿を見た者はいずれ死ぬと言われている存在です――
視界の端にいつのまにやら現れ、胸の内に急速に不安を植え付けてきます。それが過度に至ると呼吸がしづらくなることでしょう……でも超常の存在ではなく夜妖の一種なので撃退は可能です。ぶちのめしてやりましょう。
●ハチ尺様
『ぽぽぽ……』ではなく『ぴぴぴ……』という声を発してきます。特に少年少女を狙う傾向があるのだとか。性癖かな? 長い腕で捕獲せんとしてきます。掴まれれば厄介かもしれませんが、ぶちのめしてやりましょう。
●ターボ婆さん
逃げようとするとすさまじい速度で追いかけてくるスピード型の老婆タイプです。速度にはプライドがある様で、己を世界一だと思っています。超速度からの攻撃を仕掛けてきますが、己よりも反応や機動力が高い者がいると(どうしても追いつけない者がいると)やがて自死の如く消滅するようです。
●その他
他にも『やたら口が裂けてる女』とかの怪談系っぽい存在が襲い掛かってくる可能性がありますが、ぶちのめしてやりましょう。それぞれ弱点とかあったりするかもしれませんね。ポマード!
●情報精度
この依頼の情報精度は、無事に帰りつけたら思い出すと思います。
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