シナリオ詳細
<ラドンの罪域>森を揺るがすタイフーン
オープニング
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『覇竜領域デザストル』に生息する竜種。
他地域においては伝承の上での存在であったが、覇竜に住む亜竜種達にとっては恐ろしき隣人であり、敬遠すべき存在であった。
その亜竜種達を仲間に加え、ローレットイレギュラーズは覇竜内での活動を進める。
やがて、イレギュラーズが遭遇した事態。
フリアノンに相談役として出入りしていた里おじさまが『冠位暴食』ベルゼーだったのだ。
「わたくし達の敵になってしまうなんて……」
フリアノン出身の『シェインの相方』カレル・タルヴィティエ(p3n000306)、『カレルの相方』シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)は馴染みの相手の正体に驚きを隠せない。
状況もあって、ベルゼーは次なる狙いを覇竜に定めたと考えられている。
『フリアノン里長』である珱・琉珂も対策を立て、ピュニシオンの森を調査。
その先には、ベルゼーを中心に竜種が存在。人の文明を真似て作られた竜種の里が存在するという。
かの地『ヘスペリデス』を目指し、イレギュラーズはピュニシオンの森の攻略を目指すが……。
●
昼間でも日の光の入らぬ深い深い森の中。
イレギュラーズは迷い惑わせる木々の迷路をくぐり、天然のトラップを避け、棲息する亜竜、そして、竜種と遭遇しつつもなんとかやり過ごし、イレギュラーズは森の出口を目指す。
昏き森は陰鬱としており、徐々に一行のムードも重くなる。
それもそのはず、進めば進むほど、先を隠すような黒い霧。そして風が吹きつけていたのだ。まるで、この先に進むなと言わんばかりに。
「振るえが止まらない」
「わたくしも……」
カレル、シェインは竜の尻尾をピンと立てた竜の尻尾を小刻みに震わせる。
これまでも竜種との遭遇はあったが、2人がここまで恐れを抱いたのはなかったとイレギュラーズは思い返す。
それでも、少しずつメンバー達が先へと進んでいくと……。
前方に巨躯の竜を視認し、メンバー達は警戒態勢を強める。
下半身が複数の蛇の脚となっており、背には翼を生やしていた竜。
そいつは金色に輝くリンゴを食しているところだった。
「……森に踏み込む小さな輩がいるとは聞いていたが」
そいつは食事の手を止め、不快そうにイレギュラーズを見下ろしてきた。
「あの姿……話に聞いたことがあります」
シェインに心当たりがあったようで、将星種『レグルス』のティフォンさんだとこの場のイレギュラーズへと伝える。
「この間、ラードンさんが言っていた果実を好む竜種……だね」
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はラードンとの会話を思い出す。
彼の守っていた黄金の果実を好む上位の竜種が存在すると。
いくつか名前を挙げていた中にその名があった。
なんでも、嵐を巻き起こす竜なのだとか……。
「邪魔だ。去れ」
端的に、そいつ……ティフォンはイレギュラーズへと伝える。
イレギュラーズとしても、ここで退くわけにはいかない。森を通り抜けた先へと用があるのだ。
ただ、いかなる理由を告げようとも、ティフォンは鼻息を荒くして。
「貴様らは我の食事を妨げた。その事実は揺るがぬ」
グアオオオオオオオオオオオオオ!!
尊大な態度を崩さぬティフォンは耳をつんざくような咆哮を発し、発生した嵐が黒い霧を巻き込む。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
同時に、森を揺るがすような地鳴りが起こり、周囲の木々や植物が飛ばされぬよう必死に堪える。
無論、イレギュラーズも例外ではない。気を抜けばどこかへと吹き飛ばされかねない暴風なのだ。
自然現象を軽々と巻き起こすような竜。
イレギュラーズは渦巻く嵐に耐えながら、ティフォンの撃退に乗り出すのである。
- <ラドンの罪域>森を揺るがすタイフーン完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年04月23日 22時50分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
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覇竜、ピュニシオンの森。
日の光の入らぬ木々の間を、イレギュラーズ達が歩く。
「カレルとシェインは昇降機の一件以来だな」
「ああ」
「よろしくね」
『揺蕩う黒の禍つ鳥』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)は久しぶりに出会うカレル、シェインと交流を深める。
とはいえ、久しぶりと言いたくとも、今はそんな時ではなさそうだ。
何せ、目の前に巨躯の竜が姿を現したのだから。
「邪魔だ。去れ」
全長6mあまりあるその竜は複数の蛇の尾を下半身とし、背には大きな翼を持つ。
見下ろしてくるそいつ……ティフォンに、皆身構える。
「果物が主食という事は此奴の肉とか喰ったら、やはり甘味を感じたりするのだろうか」
相手が黄金のリンゴを食べるのを受け、『縒り糸』恋屍・愛無(p3p007296)は草食性の動物の方が美味いとも聞いていたことを思い出す。
「練達の時のような真似をさせないためにも、私たちはこの先に進む必要がある」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は端的に通してほしいと告げるのだが。
「貴様らは我の食事を妨げた。その事実は揺るがぬ」
「「……!」」
その視線にすら、威圧を感じるイレギュラーズ。亜竜種少女2人がその圧に表情をこわばらせる。
「やはり交戦は避けられない、か。仕方ありませんね」
『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は何をするにも力を示さねばならないというのが、竜種にほぼほぼ共通する流儀なのだと再認識する。
「偶然遭遇しただけで食事を邪魔したとは中々の言い様であるな」
「ハハッ、やはり竜というのは素晴らしいね」
『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)が竜の態度に呆れる一方で、ゼフィラは竜種が脅威に違いないとしながらもロマンがあると感じていた。
「まあ、かと言って知り合いの住む街で暴れ荒れるのはゴメンだがね」
ただ、彼女は練達の事件を思い出し、その行為を拒絶する。
「竜種ってのは皆お前みたいに喧嘩っ早いのか?」
『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)も練達を襲撃した竜もそうだったと思い返して問うが、相手ももはや聞く耳を持つ気がないようだ。
「ただ無視してくれるならばこちらも黙って此処を通り過ぎたであろうが、立ちはだかると言うのであれば歯向かわれても仕方ないであるな」
「まったく食事を邪魔された程度で怒るとは、竜というのも気まぐれでいけないな」
練倒が身構えれば、『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)も首を振りながら武器を抜いて。
「だが、私達はこの先――ヘスペリデスに用があるんだ」
「せっかくここまで来たのに引き返す訳にはいかない! 全力で迎え撃つよ!」
「此方も退く訳には参りません。力を以て、押して通らせていただきます」
『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)もリースリットも、食事を邪魔した非礼は詫びつつも武器を手に取る。
(……どの道。竜種との遭遇は避けて通れないのなら、此処で一戦しておくのも悪くはない……)
それでも、リースリットは若干の躊躇いがあったのか、戦う理由を心の中で再確認していたようだ。
「悪いが、全力で通らせてもらおうか」
「お前ら種族も程度が知れる。ちょっとは痛い目に遭って頭を冷やすといい、糞蜥蜴」
やや控えめに宣戦布告するゼフィラに対し、アルヴァは敵対姿勢を強めて相手に言い放つ。
「とりあえず、飯の邪魔されて怒ってやがる奴さんをどうにかしねぇとな……簡単には行かなさそうだが」
エレンシアが呟く間に、ティフォンは巻き起こす嵐をイレギュラーズへと差し向けてきたのだった。
●
巻き起こる嵐は次々に木々を巻き込み、空高く巻き上げる。
暴風域の中で戦うことになる為、皆様々なスキルを使って立ち回ることに。
メンバーに先んじて、スティアがティフォンの注意を引き付けるべく天穹を放つ。それは、意志を魔力に転じて放つ一撃だ。
「折れぬ心は力となり、強き意思を刃と化せ」
放たれた魔法を目にし、ティフォンはスティアへとブレスを吐きかける。
ブレスもそこらの魔物が操るようなものではなく、炎に雷が合わさったもの。全て対策するのは難しく、スティアの体を包み込むような熱と衝撃が駆け巡る。
(ティフォン殿の様な力ある竜種の実力を肌で体感出来る機会等そうないであるからな)
仲間達が先んじて仕掛ける中、練倒はその強さをじっくりと観察することに。
(竜か。これで戦うのは四匹目となるが)
また、竜種との交戦を重ねていた愛無は油断できぬと感じていたが、負けるつもりなど毛頭ない。
風圧を凌ぎつつ、視界を確保する愛無は仲間と共にこの竜の抑えに当たる作戦をとる。
プライドの高い竜種とあって、煽り耐性が低そうだとみていたが。
(怒りで攻撃が単調になれば儲けものだが。さて)
嵐を凌ぐ面々は続々と、攻撃に出る。
「ドラゴンが相手とは冒険らしくて結構だが、今回は先を急がせてもらうよ」
スキルによって広く視界を保ち、すぐ不測の事態に対処できるよう備えるゼフィラ。
すでに味方は散開しつつ巨躯のティフォンを取り囲むよう布陣できるよう動いている。
ゼフィラは一旦、盾役となる愛無に天より熾天宝冠を降らせ、加護を与える。
それだけでなく、動けるようならゼフィラは攻撃にも打って出て、魔術を行使する。
至高と光輝の魔術……聖王封魔。
強い光がティフォンの体を縛り付けるが、相手はあまり意にも介していないようにも見えた。
同じタイミング、アルヴァも激しい嵐の中、黒い霧に遮られかねない霧の中でも温度知覚によって敵の位置を捕捉し、飛び上がる。
「自然災害レベルの嵐。竜種は伊達じゃないんだろうが、退く訳にゃいかねえ」
アルヴァは激しい嵐に呑まれる仲間達……特にリースリット、エレンシア、練倒へと、個別に黄金の煌めきを纏わせ、人の可能性を高めて支援する。
その1人、リースリットは風を司る精霊シルフィードの加護を受けて低空飛行する。丁度、ティフォンの胸部から腹の辺りに位置する形だ。
(風を操る竜……風というよりは、これはもう局所的な気象操作)
リースリットと違って精霊に働きかけているわけではない。
ティフォンは強引に従わせるかのような力を持っているのを、彼女は察して。
(特化した能力なのでしょうが、流石は上位の竜種ですね)
将星種『レグルス』の底知れぬ力を感じながら、リースリットは雷の魔術を発動させる。
「竜種を相手に何処まで通用するのかは未だ如何ともし難い所がありますが……打てる手は試して行くしかないですね」
風火の理。風の精霊の力と刻印の炎から編み出した雷光の剣を、リースリットは一閃させる。
他の生物なら、放たれるだけで灼き斬られてしまう一撃だ。
だが、ティフォンはそれを鱗で食い止めるのだから恐ろしい。
「しかしまあ、安心したぜ。竜種もやっぱ飯の邪魔されたら怒るもんなんだな」
仲間達のやり取りを思い返すエレンシアはティフォンとの距離を詰めつつ大太刀に手をかける。
「まあ、アタシ等の事を木っ端だと見くびって素通ししてくれる方がもっと良かったが」
攻撃方法はただ一つ、鉄帝国の武技「鋼覇斬城閃」。
対城技とも称される技を駆使するエレンシアは、激しくティフォンの巨体をぶった切る。
「邪魔をするなら力尽くでどいてもらうまで。そこを通してもらうぞ……!」
沙耶は抑え役となるが、ひとまず自らの間合いにティフォンを捕捉し、殺人剣……三光梅舟で仕掛ける。
繰り出すは邪道の極み。
相手の防御の薄さをついて攻撃する沙耶だが、巨体にも拘らず素早い動きと合わせ、荒れ狂う嵐。さらに堅い鱗と隙がない。
現状、ティフォンの意識はスティアへと向いている。
愛無はその間にと鋭い爪を竜の巨体に突き立てようとする。
傷を負わせることもさることながら、運気を下げてミスを誘うのが狙いだ。
側面からは、カレルやシェインが息の合ったコンビネーションをみせる。
カレルが率先して前で剣戟を叩き込み、その後ろからシェインが雷撃を発する。
「ガーハッハッハッ! 初めましてであるな、ティフォン殿。吾輩は炎 練倒である」
全くティフォンが気にする素振りすら見せぬ傍らから、距離をとったままの練倒が笑いながら相手に呼び掛ける。
「我らの力を知ってなお、戦うか」
「貴殿からしてみれば矮小な存在であろが吾輩、竜種に憧れを持つ者である故に胸を借りる積もり挑まして貰うである」
練倒は仲間を巻き込まぬことを確認し、魔道具を介して魔砲を発射する。
ただの砲撃ではない。防御を捨てて収束性を高めることで貫通力に特化した一撃を発することのできる破式魔砲だ。
圧倒的な火力を持つ砲撃だが、ティフォンは手傷程度といったところ。
練倒も事前にそれがわかっていたからこそ、翼や腕を狙って動きの妨害に主眼を置いて攻撃する。
戦いはまだ始まったばかり。
竜種の力を十全に発揮できぬよう抑えつつ、メンバーはなおもティフォンへと攻撃していくのである。
●
戦況はすぐに動く。
イレギュラーズ側も最初からスティアがずっと抑えを行うわけでなく、ティフォンの意識が他メンバーへと向きそうになったところで、愛無が魔眼で相手を見つめて。
「小童が、我と対するなど片腹痛いわ!」
竜からすれば、イレギュラーズのほとんどは小さき存在であり、取るに足らぬ生物。
相手は竜種故の能力もあり、こちらを侮っているのは間違いない。
そこに付け入る隙があると愛無はみている。
(此方は数の利。相手は手数)
怪光線を発してくる竜はまだ己の力でイレギュラーズを蹴散らせると疑ってはいない。
(巧く事が運ばなければ、それが焦りや怒りにもつながるかもしれぬ)
まずは徹底的に相手に纏わりつくことで、好きにさせぬよう愛無は立ち回る。
じわじわと。薄皮を一枚一枚剥いでいく様に。
抑え役を引き継いだスティアが後方に下がって立て直す間、散開するメンバーは相手を休ませぬよう攻撃を続ける。
代わる代わる立ち回る仲間を巻き込む可能性が出ていることで、練倒は善の右と悪の左手を叩き込む。
ここでも練倒が狙うは相手の翼。とにかく自由に飛び回らせぬことが第一。
「お前は俺らの希望も、奇跡も知らねえ。知らねえお前に俺らは負けねえ!」
メンバーの傷を確認して問題ないとアルヴァは判断すれば、高機動を活かしてその翼の後ろへと回り込む。
すかさず、アルヴァは対人狙撃銃の銃口を突き付ける。
「ザビアボロスに比べたらてめえなんて怖かねえ」
強がりにも見えるが、アルヴァは本気だ。
躊躇う意思に決意を、震える手に勇気を。
神聖を纏わせた弾丸を、アルヴァはその巨体に撃ち込む。
アオオオオオオォォォォォ!!
巨体から発する轟音で周囲を揺さぶるティフォン。
抑える愛無も、度重なる敵の攻撃によって瞬く間に体力を削がれてしまう。
愛無のサインを受け、沙耶が代わりとなって抑えに当たる
戦いの鼓動を高める沙耶は高まる血潮によってティフォンの注意を自身へと向ける。
「どうした、果実ばかり食べているから調子が出ないのではないか? 肉も食べないで強くなれるとでも思ったのか?」
今度は沙耶へと向けられる猛攻。斧と化したティフォンの腕が勢いよく彼女に振り下ろされる。
煽られるティフォンも鼻息荒く怒り狂うようにも見える。
周囲の木々を地面ごと巻き上げるティフォンだが、すぐに落ち着いた振る舞いを取り戻すあたりはさすがというべきか。
それでも、沙耶が鼓動を再度高める傍で、スティアが仲間の状況を見つつ愛無に福音をもたらして傷を塞ぐ。
広域に放たれるティフォンの攻撃がどこまで影響があるのか、スティアは見定める。
「この辺りは大丈夫。次の攻撃に備えてね」
とはいえ、何が起こるかわからぬ戦場。
こんなところで負けていられないと、スティアも一層気を引き締めて夜葬儀鳳花を飛ばす。
ゼフィラも現状、抑え役を担う沙耶へ王冠を降らすことで戦線を支える。
それだけでなく、ゼフィラは攻撃に前のめりとなる仲間の為、号令を発していく。できるだけ多くの仲間を回復できるようにと、ゼフィラは逐一位置取りを変えていた。
仲間の支援を受けるエレンシアも全力で攻撃する1人。
「は! デカブツなら斬り飛ばし甲斐があるってもんだ!」
以前やりあったジャバーウォック以来というエレンシア。
その時は味方も数で攻めたが、今回は少数正直きついと感じていたところで、思わぬ一撃が頭上から振り下ろされてくる。
ティフォンの斧となった腕の一撃をまともに受けてしまったエレンシアは地面へと叩きつけられることとなる。
だが、彼女はパンドラを使って起き上がって。
「これを退けられなければ、強くなった証とはならねぇんだよ!」
叫び、エレンシアが大太刀を携えて駆ける少し上空、リースリットが『死を覆うもの』……フレースヴェルグでティフォンの体を霧氷で閉ざす。
確実とはならぬが、ティフォンも時折、思わぬように力が発揮できぬようで首を傾げるのがリースリットにもわかった。
できるだけ、敵の動きを止められれば、勝機は増す。
リースリットもできる限りティフォンに簡易封印を施し、その力も削ごうと全力を尽くす。
●
激しさ増す森の戦い。
スティアが今度は本格的に抑えに当たるが、敵もこちらの出方をある程度把握し、冷静な立ち回りで個別に対処する。
前方へと発する複合ブレスに、スティアと合わせて沙耶とゼフィラが巻き込まれることとなる。
沙耶は下がって立て直しにも当たっており、ゼフィラがそれを支える形だったが、ティフォンはそこに怪光線を発して3人を纏めて貫いたのだ。
スティアは何とか堪えたが、沙耶とゼフィラはそれぞれ運命力に頼り、気丈に戦場へと留まる。
ゼフィラが聖体頌歌を響かせる手前で、沙耶はシェインの手当ても受けて態勢を立て直す。
ティフォンはなおも攻撃の姿勢を保ったまま。
「危険だ。下がって」
愛無も危険を察し、持前の統率力で敵の攻撃に巻き込まれそうな仲間をへと告げる。
(予期せぬ所で纏めて薙ぎ払われてはかなわん)
思った以上に隙の無い竜だが、確実に己の爪で薙ぎ払い、ダメージを蓄積させる愛無だ。
メンバーが抑えを維持するにも拘らず、高頻度で範囲攻撃を起こすティフォンによって、少しずつ疲弊するメンバー達。
慈悲と無慈悲の攻撃を食らわせる練倒がスティアの近くへと寄ることで、回復役の援護を求める。
前線で抑えるスティアは堪えながらも、魔力の残滓を散らす。
それらは花弁を象って周囲を埋め尽くす程に舞い、メンバー達に癒しをもたらした。
そこに、ティフォンは新たな嵐を巻き起こす。
「この程度の暴風で、吹き飛んで堪るか。倒れて堪るか!」
叫び、耐えるアルヴァは因縁の相手ザビアボロスの姿を思い描く。
再戦するまでは負けられない。その強い想いを抱き、アルヴァは咆哮を発してティフォンの飛行を妨げる。
「ザビアボロスに比べたら、てめえなんて怖かねえ」
アルヴァの叫びによって身を竦めた竜へ、エレンシアや沙耶がお返しとばかりに攻め入る。
切れ味無効の一閃を迸らせたエレンシアの一撃がティフォンの鱗を裂く。
続けざまにカレルが追撃して斬撃を見舞うと、沙耶が殺人剣を刻み込んでティフォンの傷を深める。
そこまでしても、ティフォンを追い詰めた感はなかったが、リースリットが流れるように雷光の剣でその巨体を切り裂いて。
「ぬ……うぅ……」
ついに大きく態勢を崩したティフォン。
6mあまりもある巨体が地面を這えば、周囲には地響きすら巻き起こる。
「なるほど、な」
何かを納得したような声を上げたティフォンは交戦の構えを解き、人の姿をとる。
長身の若い男性を思わせる姿は竜形態とは違い、彼は好感すら抱かせる程に整った顔をした美男子であった。
●
森の嵐は止み、ようやく静けさを取り戻す。
ティフォンの怒りを収めたイレギュラーズ一行。
ボロボロになりながらではあったが、相手もこちらの強さに一定の理解を示したようだ。
「……ここを通りたいと言ったな。好きにするといい」
怒りが収まれば、竜も我関せずといった態度で背を向ける。
強さあってこそそんな尊大な態度をとる竜種が再び黄金のリンゴを食しようとしたのに、愛無が興味を抱く。
「そういえば、この金林檎ってどんな味がするんだろうな」
負けた方が奢るのは世の常。勝ったから奢ってもらいたいと愛無は主張する。
「人の世は殴りあえば友らしいからな」
ティフォンも不服そうではあったが、愛無が今度ラサの果物を持ってきてやろうと主張すると。
「交換条件を持ちかけるとはな。いいだろう」
投げつけてきたのは黄金のリンゴ。早速愛無がそれを齧ると、とてつもなく甘く、芳醇な味が口の中に広がる。
いくつも欲しくなるほど癖になる味。竜達にとっても嗜好品のような位置づけなのだろう。
改めて、イレギュラーズは森を抜けようとするが、今回は消耗も大きいこともあって一度立て直すことに。
「しかし、この先にあると言う竜種の里……はてさて、一体どんなシロモンなんだろうな」
「問答無用で襲いかかってきた辺り、この先に目的の町かそれに準ずる何かがあるのであろうな」
エレンシアがそう話を持ち掛ければ、練倒もこれだけ強き竜種が待ち構えているなら、竜種の里の存在にも信憑性が増すと感じて。
「吾輩、俄然やる気が出てくるであるな」
「ふふ、楽しみになってきたぞ?」
沙耶もまた、これほどまでに強い竜がいるなら、きっと見られてはいけない、あるいは会わせてはいけない何かがあるのだろうと推察する。
「果たして、森の奥には……」
「本当に竜種の里があるのかしら」
カレルやシェインの疑問も、おそらくはすぐに解決することだろう。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開中です。
MVPは抑えに統率と嵐の戦場で存在感を発揮したあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<ラドンの罪域>のシナリオをお届けします。こちらは前回「<帰らずの森>毒沼のガーディアンズ」の成果を受け、スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)さんに優先参加付与を行ったシナリオです。
覇竜『ピュニシオンの森』の出口付近……『ラドンの罪域』に、強大な存在感を示す竜種が存在しております。
探索中に遭遇した竜種と交戦を願います。
●敵:竜種×1体
〇将星種『レグルス』:ティフォン
全長6.5mほど。複数の蛇の尾を下半身として持ち、背には大きな翼、腕を大きな斧状に変化させることもできます。
また、完全な人間種の姿をとることもできるようです。
単身で襲い掛かってきますが、手数と合わせて高火力の攻撃を繰り出します。
攻撃手段は複合ブレス、嵐、轟音、怪光線と多彩な上、環境破壊レベル。
なお、通常攻撃も怪力ゆえに油断なりません。
●NPC
以下2人、同行します。
フリアノン出身、互いを友情以上の感情を抱くペア。
状況に応じて、イレギュラーズの支援を致します。
○カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
18歳、赤いショートヘアの長剣使い女性。軽装鎧を纏い、剣舞を行う彼女は見とれてしまうほどの美しさです。
○シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
17歳、緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
樹でできた長い杖を所持し、先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使うことができます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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