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シナリオ詳細

<ラドンの罪域>流星、暗雲を切り裂いて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ラドンの罪域
 ゴウゴウ、と。
 鬱蒼と茂った木々と、先を隠すような黒い霧と風が吹き荒れて激しい音の鳴り響く場所。
 ピュニシオンの森を進んだその先。出口付近に存在するその領域。
 ラドンの罪域と呼ばれるその場所は黒き靄、霧、風が吹き荒れ先を見通すことなど出来はしない。
 見通しが悪いだけではない。どうにも黒い風が重苦しい空気を纏っているこの場所は、地点によって異なる効果を持っているようだった。
 あの恐ろしいピュニシオンの森の出口付近にこんなものがあるという、その絶望。
 『狂黒竜ラドン』の住まう地であるこの場所には、当然のように他の竜種も出入りする。
 たとえば……そう、夜空の中に星を散りばめたような輝きを誇る美しい鱗を持つ竜もまた、その1体であった。
「なんとも言い難い場所です。こんな場所では星も見えない。そう思いませんか、ザナデス」
「知らん。此処であれば星詠みの特訓が出来るとほざいたのは貴様だろう、アルテイア」
「ええ。そして貴方も虫の羽音などに惑わされない特訓が出来るかもしれない。そう言いましたね」
 黒い竜種の名は『天智竜』アルテイア。この場で本気の特訓をする為、そのドラゴンとしての姿を見せているようだ。
 もう一方の亜竜種にも似た男の名は『激渦竜(げっかりゅう)』ザナデス。
 どうやら乗り気ではないようで、今すぐにでも帰りたがっているのが態度から透けて見える。
「そんなに帰りたいなら、もう帰りますか? 私も丁度此処に来たのは失敗かと……おや?」
「……フン」
 アルテイアとザナデスは、同時に何かに気付く。
「どうやら、虫が近寄ってきているようだ……少々遊んでから帰ってもいいだろう」

●その先へ進む為に
「さて。ピュニシオンの森についての話はもう聞いたかのう」
 『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀(p3n000250)は集まった面々にそう切り出した。
 『フリアノン里長』である珱・琉珂を中心に行なわれた『ピュニシオンの森』の調査で、一つの結果が齎された。
 ピュニシオンの森の先にベルゼーは退避している。
 彼の周囲には竜種達が存在し、人の文明を真似て作られた竜種の里が存在している、と。
 その地の名を『ヘスペリデス』と言う。
 黄昏の似合う、最果ての地に彼等は居る。何を目論んでいるか、その真意も知らされずに――。
 しかし、そのヘスペリデスを目指す先に待ち受けていたのが『ラドンの罪域』と呼ばれる地であった。
 黒き靄、霧、風が吹き荒れ先を見通すことなど出来はしない、そんな場所だが……その風がどうにも重たい空気を纏い、場所によって様々な効果があるようなのだ。
 しかし、そうであろうとその場所をどうにか抜けなければならない。
 だからこそ、相賀は1つの地点を選定した。そこはどうやら黒い風が生き物の気力を奪う場所であるらしく、端的に言えば「やる気が無くなる」ようなのだ。
 一瞬のことでありすぐに治るようだが、ここぞという時には致命的な事態になりかねない、そんな区域だ。
「とはいえ、それだけといえばそれだけじゃからの。上手くいけば簡単に通り抜けるじゃろう」
 勿論、そうはいかない可能性が高い。高いが……それをさておいても勝率の高いルートなのは確かだ。
 此処を抜け、ヘルぺリデスを目指さなければならない……!

GMコメント

ラドンの罪域の中で、襲ってくる亜竜の一団を倒せばOKです。
ただし、2体の竜種にして将星種『レグルス』がちょっかいをかけてきます。
本気ではないようですが、とても勝てる相手ではありません。
上手くどうにかしながら亜竜を全滅させれば、彼等は飽きて帰っていきます。

●特殊ルール
・黒い風(気力)
この区域を吹き荒れる黒い風は生き物の気力を奪います。
一定確率で「無気力」状態になり、そのターンの主行動、あるいは副行動、もしくはその両方が「何をしようとしていたか忘れて」行動せずに終わってしまいます。

●出てくる敵
・ソードラプトル×20
 ラドンの罪域に住んでいる亜竜です。いわゆる恐竜ラプトルのような姿をしており、その頭部に剣のような角が生えています。角を活かした突進&斬撃、刺突。角から放つ電撃などを使用します。

・『天智竜』アルテイア
最強生物である竜種にして将星種『レグルス』。
性格は非常に冷静で知的。尊大で傲慢なのは変わらないのですが、深い知識を下敷きにしている為か突発的な行動をあまりせず「一歩引く冷静さ」をも兼ね備えています。
 どうやらある種の星詠みの知識も所持しているようで、その精度は兎も角そうした浪漫を楽しむ洒落っ気も持ち合わせているようです。
 ただ、竜種としての星詠みは人間の星詠みとはあらゆる要素が違うのでそこで意気投合する……などといったことは無謀でしょう。
 自分を中心とした範囲に輝く「星」を降らせるメテオライト、指定した1人に天空より破壊の流星を降らせる「スターライト」を使ってくるようです。皆さんが亜竜を倒し切ると飽きて撤退します。

・『激渦竜(げっかりゅう)』ザナデス
竜種。将星種『レグルス』の一角。竜の中でも天帝種同様に強大な存在達です。
青い髪と目を持つ、涼しげな雰囲気を持つ亜竜種の男のような姿をとっています。実際の姿は不明です。
皆さんのことは歯牙にもかけておらず、その辺を飛んでる虫くらいにしか思っていません。
今回は対象を微塵に砕く水流の渦を放つ「砕渦」、自分を中心に巨大な水流の渦を作り出す「激渦」を使ってくるようです。皆さんが亜竜を倒し切ると飽きて撤退します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はD-です。
 基本的に多くの部分が不完全で信用出来ない情報と考えて下さい。
 不測の事態は恐らく起きるでしょう。

  • <ラドンの罪域>流星、暗雲を切り裂いて完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年04月23日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老練老獪
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
佐藤・非正規雇用(p3p009377)
異世界転生非正規雇用
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
指切りげんまん
メイ・カヴァッツァ(p3p010703)
ひだまりのまもりびと

リプレイ

●ラドンの罪域
「ここがラドンの罪域……今までの常識が全く通じなさそうな所ですね。注意して先を進まねばなりませんね」
「この場所の先に俺達の目指す場所があるのだな……異様な空気、生き物のやる気を奪う風とは厄介な物が渦巻いているな。かの竜種達にとって、この程度の事象は何とも無いのだろうか……」
 『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)と『騎士の矜持』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)の言葉通り、此処はラドンの罪域だ。
 そう、ピュニシオンの森のその出口付近には、ラドンの罪域を呼ばれる場所がある。
 吹きすさぶ黒い風は視界すら奪い、不可思議な力で訪れた者の歩みを阻む。
 しかし、そんな場所でも挑まなければならない時がある……それが、今なのだ。
「今回ばかりは静かにはできないね。なんとかしなきゃいけない。この先に進む為に……!」
 この黒い風の向こうにいる凄まじい気配を前に、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)はそう決意する。
 ハイセンスで周囲警戒を行うヨゾラだが、この黒い風は視界を塞いでどうにも邪魔だが……仕方がない。
 それに、今更戻るわけにもいかない。この黒い風の向こうからでも感じる強大な視線は……2つ。
 竜種と思われるソレに、確実に気付かれている。
「竜種二体に気力を削ぐ風……相手が本気なら致命的だな。これで先制攻撃してこねえってこたぁ観察されてるってこったな。良い気はしねえがどうしようもないか。とっとと邪魔者を蹴散らさんとな」
 この黒い風吹き荒れる中でも聞こえてくる亜竜の声に、『老兵の咆哮』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)はそう舌打ちする。広域俯瞰を使ってなお、この地の黒い風を見通すことは出来ない。
「ひええ、竜がいる森を抜けてくなんてゲームみたい! でもこれはゲームじゃなくて、死んだらデスカウントが増えてリトライだー! じゃない。回復手としてはすっごいプレッシャーだけど、でも今日は大丈夫って思える。だって今日は、黒狼の仲間がいっぱいいるんだもん!」
 『ノームの愛娘』フラン・ヴィラネル(p3p006816)も頼りになる仲間を見回しながらそうグッと拳を握る。
「竜種、我々を虫ケラとしか思っていないそうですが。なんだかんだでこうやって構ってくるのは、実は私たちのことが好きだからなのではないでしょうか? 私は美しいので構いたくなるのも仕方ないですよね……」
「竜種が2体か……ぞっとしないな。あいつらが俺達のこと好きなのかもだって? 敵に好かれても嬉しくねえぜ。ヨゾラさんもそう思うだろ?」
「え、あっ、うん?」
 いつも通りの『竜は視た』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)と『モンスターハンター』佐藤・非正規雇用(p3p009377)にヨゾラはなんとなく頷くが、この状況でいつものテンションを保って道化ることの出来る2人は中々に頼もしくも見えるだろう。
「『ラドンの罪域』ですか……ここを通らなければ、竜種の人たちの住む場所には行けないのですね」
 『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)もそう頷きながら黒い風を受ける。
「メイは、竜種のみなさんがどんな生活をしているのか。お友達になれたらいいなと思ってるです。ですが、ベルゼーさんは魔種だという。倒さなきゃいけない相手なのだと。いつかそうじゃない未来が来ればいいなと思いながらも、今は、ここを通り抜けることを一番に」
 気力を奪うこの風は、しかしこの先に進むには乗り越えなければならない障害だ。
 ヨゾラも闘志全開にすることで、自分に激や気合を入れるよう心がけていたし、他にも様々な手段を講じる者もいた。
「できるだけ黒い風に当たらないように注意しましょう。木々を壁にするようにすればやり過ごせるでしょうか? とはいえ、最悪は気合でなんとかしてみせましょう」
(御主人様の前で無気力な状態を晒すなど私のプライドが許しません。いざという時は唇を噛んで痛みによって、対抗しましょう)
 リュティスなどはそんなことを考えていたが、上手くいくかはやってみなければ分からない部分はある。しかし、そうやって挑む心こそが常に道を拓くものだ。
「我々にとっては選択肢は一つだ。何があろうともこの場所を抜け出し、目的地であるヘスペリデスへ到達する。その為ならば、困難な道程も踏破してみせようとも」
「虫にしてはさえずるものですね」
「そうだな。大言に相応しいか遊んでやる価値はありそうだ」
 ベネディクトの声に応える声が2つ。
「『天智竜』アルテイア。貴方達が並の虫よりはマシだと証明なさい」
「『激渦竜(げっかりゅう)』ザナデス。さあ、生き残ってみせろ。そのくらい出来ねば、この先に進む価値などない」
 この風の中、聞こえてきたのは2つの竜種の声。そして、けたたましい亜竜たちの声だ……!

●その先へ向かうために
「亜竜と遭遇する事は想定済みではあったが……! まさか、竜種が二体も現れる事になるとはな!」
(彼らを撃破、いや、撃退する事も俺達には今は難しいだろう。ならば、亜竜達を押し切りこの場を切り抜ける事を最優先に俺は動こう)
 ベネディクトはそう即座に判断する。何しろ黒い風の向こうからやってくるのは無数の亜竜ソードラプトルたち。
 これを相手しながら竜種2体を相手にするなど、勝つどころか生き残ることすら難しいかもしれないほどの状況だ。
「我らが黒狼隊の隊長、ベネディクト=レベンディス=マナガルムに続けー!」
 えへ、こういうのかっこよくない? と笑うフランにベネディクトも微笑むが、そのくらいの心意気が必要なのかもしれない。
「いきます……」
「飲み込め、泥よ……!」
 リュティスとヨゾラのケイオスタイドが広がっていき、ベネディクトは黒牙無慙を放つ。文字通りの出し惜しみなしの短期決戦。
 ヨゾラが煌めく星空の願望器を発動させたのもまた、たとえその消費が激しくとも使う必要があると判断したからである。
 そう、この場はそれほどまでに厄介だ。無数の亜竜ソードラプトルたちに竜種2体。これだけで命の危機だというのに、そこに黒い風が吹きすさぶ。
「くそ、気が散る! 厄介な風だな」
 バクルドも思わず悪態をつきながらも自分の気力を突然奪っていく黒い風を忌々しく思う。
 ラフィング・ピリオドの一撃はソードラプトルに確かなダメージを与えてはいるものの、並の亜竜よりも実力が高くタフだ。
「この風、精霊さんでもどうにもならないみたい! やっぱり普通の風じゃない!」
 フランもそう叫びながら天上のエンテレケイアを発動させていく。
 確かにこの黒い風……何やらおかしなものであるのは間違いないのだろう。
「ああ、存外にしぶといな……どれ」
 ザナデスの声が聞こえてくると同時に、凄まじい水流がヴィルメイズを襲う。
「おお……っ!?」
 身体をバラバラにされそうな、凄まじい水流の一撃にヴィルメイズはしかし、メイの幻想福音でなんとか踏みとどまる。
「助かりました……! いやはや、竜種のちょっかいで死ぬのは勘弁願いたいので〜」
「メイはみなさんの回復、がんばるです! その分攻撃にはあまり回れないかもですが……!」
「いえいえ、本当に助かっておりますよ~」
 心の底からそう言いながら、ヴィルメイズは糸切傀儡を展開していく。そんなヴィルメイズを見ながら、メイは思う。
(だいじなのは、みんなを守り切ること。ヒーラーのせんぱい、フランさんもいらっしゃいます。だいじょうぶ!)
 竜種も本気ではない。ならば、大丈夫。守り切れる。そうメイは再度強い気持ちを持つ。この黒い風に、負けてなるものかと。
「とんでもない敵が出て来たな!! これぞ逆境! 燃えてきたぜぇえええ!!」
 非正規雇用も闘志全開で叫びながら紫電一閃を放つ。強い。この黒い風の向こうにいる竜種たちは、とんでもなく強い。
 ちっとも動く気が見えないのに、片手間のようにとんでもない威力の技を放ってくる。
 正しく最強種。それが分かっているからこそ、この黒い風に負けじと非正規雇用は叫ぶのだ。
 そしてそれは、全員が同じ気持ちであった。
「相手が相手だ、一秒の時間たりとも気を抜く暇などある筈も無い!」
 ベネディクト自身、一つ一つの動作を素早く、そして全身全霊行い、この場の亜竜達を殲滅する事を最優先に動いていた。
「俺が竜種達の相手をするのは、ほぼ不可能……なればこそ、託せる部分は仲間に託し、その間に俺は己の全てをこの場で出し切ろう! 無気力だと? この場に足を踏み込む以上、俺は命を奪われる事も奪う事も覚悟して戦いに臨んでいる。この様な黒い風になど、俺は負けない!」
「そうですか。では、貴方たちに星の輝きを。仰ぎ、そして潰れなさい。その矮小さに相応しく」
 アルテイアの声が響き、空を切り裂き流星が降り注ぐ。メテオライト。そう呼ばれるアルテイアの技は敵味方関係なく降り注いでいく。まるで星の裁きは平等だとでも言うかのように。空を切り裂き大地をも砕く星々を見ながら、ヨゾラはその「姿」を見た。
 美しい……とても美しい、夜空の輝きを秘めたようなその姿を。
「星を降らせるんだ、綺麗……って見とれてる場合じゃない!」
(いいなぁ、羨ましい…綺麗な星空の竜種……!)
 星天の願歌を発動させながら、ヨゾラは仲間たちの傷を癒していく。
「誰も倒れさせない……これが僕の願い歌だ!」
 たとえどれだけアルテイアが星々を閉じ込めたかのように美しくとも、今この場では敵なのだ。
 ちらりと、しかし確実に見えたその姿は美しく、壮大で……今この場では絶対に敵わないと確認し直すには充分すぎるほどだった。
(竜種にも星の破撃で全力……は意味がないかな。悔しいけど……今はラプトルを倒さないと!)
 意味がない、というのは効かない、という意味ではなくこの場では意味がないということだ。
 ヨゾラとて、此処で竜種2体にやる気を出させることに意味がないことは分かり切っているからだ。
「ま、思った通りだな。元より他をなんとも思わん連中だ、巻き込むことすら躊躇ねえんだろ?」
 バクルドもそう言いながら残ったソードラプトルへと銃口を向ける。
「とはいえ……攻撃としても厄介だが接近を阻む手法としても成立させてるな」
 実際、その竜種の傲慢さを凝縮したような攻撃は「自分以外は全て死ね」とでも言うかのような容赦のないものだ。
 安全地帯が「範囲外」にしかないというのは、想像以上に厄介だとバクルドは思う。
「ぴかーってするからぴゃーってよろしく!」
「わかりました!」
 一緒に戦うことも増えたし、このニュアンスで伝わる……はず!
 そんなフランの期待にメイは見事に応え、幻想福音をリュティスへと向ける。
 無表情を装っているリュティスではあるが、今のメテオライトによるダメージは相当なものだった。
 それでもリュティスがそうしていたのは、アルテイアとザナデスの動向に気を配っていたからこそだ。
 アクションは起こさず、興味がないように振る舞う。それが今は最善だと判断したのだ。
(反応しない遊び相手ほど面白くないものはないでしょう?)
 事実、2体の竜種はリュティスにはあまり興味を向けていないように見えた。
 敵ではなく、遊んでいる。実際、そんなところなのだろう。だからこそこの戦いに勝機がある。
(とはいえ、即使えるものではないですね……今回限りの技といったところではあるでしょうか)
 竜種がどのような行動に興味を示すのかは戦闘中に分析しておくつもりだったが……予想以上に此方に興味がないとリュティスは気付いていた。
(ここまで興味がないとなると……別の機会に活かせるかもしれません)
「来いよ! 俺のことが好きなんだろ!?」
 非正規雇用もそんなギャグじみた言葉を投げかけて注意を惹こうとしてみるも、全く反応がなくちょっと寂しそうだ。
 それくらいに興味がないようなのだ。
「もっと熱くなれよ! 熱い血燃やしてけよ!! でございますよ〜!!」
 気付けば無気力になりそうになる中で、ヴィルメイズのそんな声も響き……最後のソードラプトルが倒れた時、黒い風の向こうの2体のドラゴンの姿が一瞬見えた。
「……まあ、こんなものだろう」
「ええ。義理は果たしましたし、戻るとしましょうか」
 そんなことを言いながら、2体の竜……アルテイアとザナデスの気配は何処かへと消えていく。
 霧散する圧は、2体がこの場を去った事の証だろうか?
「竜の人たちには一時のお遊びかもですが……メイ達は必死なのです!」
「これ以上のちょっかいはかけさせないし、貴方とあたし達が本気でやりあうのはまた今度ね!」
 そんなメイとフランの叫びも、聞こえていたかどうか。
「竜種達は……行ったか? 遭遇するにしても彼らが俺達に興味を持たず、助かったな」
「うん。去って……くれた、かな」
 ベネディクトとヨゾラもそれをようやく実感し、大きく息を吐く。
「本当に竜種ってすごいね……僕等も先に進もう」
「そうですね。特に何もなさそうであれば先に進みましょう。竜種の対策も考えながら進んだ方が良さそうですね」
 ヨゾラにリュティスも同意し、そう頷く。
(竜種の対策、か)
 ヨゾラは先程までこの場にいた竜種について想いを馳せる。
 ザナデスは以前の依頼で姿を見た、そして声を聞いた事あるし星空のように綺麗なアルテイアもとても気になっていた。
 しかし実際に会ってみると、なんと恐ろしいことか。竜種の名に相応しい、そんな実力を持っていた。
「ザナデスにアルテイア……水に星か。相対するなら接近戦に持ち込む手段も考えねえといかんな」
「『激渦竜』ザナデス……悔しいですが紛うことなきグッドルッキングガイでございましたね」
 ヴィルメイズもそんな風に妙な納得を見せているが……実力もまた凄まじいものであった。
 だから、だろうか。バクルドの心はいまいち晴れてはいない。
 はぁ、この風にいると本当にやる気が削がれる……とバクルドは軽いため息をつく。
 竜種がいなくなっても黒い風は消えない。此処は未だ危険地帯のままなのだ。
「やれやれ、やっと行ってくれたか……。フン……もう攻撃は見切ったぜ。次会う時が、アイツの命日さ」
 非正規雇用がそうカッコつけるのを全員が生暖かい目で見守っているが、非正規雇用は強靭なメンタルで全く気にした様子もない。
「ヴィルメイズ君、俺が活躍してたって知り合いの巫女さんには言っといてくれよ」
「……クシュン! おっと佐藤様、すみません何かおっしゃいましたか?」
「……話を聞け!!」
「おや、急に暴風が」
「吹いてねえー!」
 2人の漫才をそのままに、ベネディクトも思う。
「竜種か……竜種といえば、俺にとっては伝説の存在でもあり、そして最強の生物……という認識だった。最も、それは俺が元居た世界での話ではあるが」
 そんなベネディクトの言葉をリュティスは、フランは……仲間たちは、黙って聞いていた。
「この世界でも竜種は強大で、俺達が挑んでも敵うかどうか解らない強さを持っている。だが、だからこそ心が躍る自分も居る。いつか読んだ物語の様に、彼らの様な竜種に認められる様な者になりたいと。今は虫と同じ様な存在と思われて居ようと、何時かは……そう思うのは俺が夢想家だからなのだろうか」
 きっと、誰も笑いはしない。それが願いであるのならば、いつかそれは届くかもしれない。
 今ではなくとも、いつかは分からずとも……そう、きっと。

成否

成功

MVP

ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

状態異常

バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)[重傷]
老練老獪
佐藤・非正規雇用(p3p009377)[重傷]
異世界転生非正規雇用

あとがき

ご参加ありがとうございました!

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